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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1092401
審判番号 不服2001-12637  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-09-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-19 
確定日 2004-02-20 
事件の表示 平成 4年特許願第 69560号「オンラインを利用したゲーム装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 9月 7日出願公開、特開平 5-228259]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成4年2月18日の出願であって、平成13年6月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1乃至3に係る発明は、平成13年5月11日付け及び平成13年8月17日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。

【請求項1】
複数のゲームプログラムをデータベースとして格納したホストコンピュータに電話回線を介して接続されるゲーム装置であって、予め書き込まれたプログラムに従って演算し、周辺機器を制御すると共に、選択したゲームプログラムを実行し、或いは料金体系に応じて単位時間でゲームを中断、再開するCPUと、ゲームメニュー、必要な料金およびゲーム内容を表示するディスプレイと、ダウンロードされるゲームプログラムを書き込むRAMと、上記ホストコンピュータからダウンロードされたゲームメニューから必要なゲームを選択する他、ゲーム内容に応じて各種の操作を行う入力キーと、ゲームの種類に応じた料金、追加料金、或いは単位時間毎の追加料金を投入するための料金投入器と、電話回線を制御するNCUとからなり、エントリー料金が投入されれば初めてホストコンピュータをアクセスし、ゲームメニューのみダウンロードしてディスプレイに表示することを特徴とするオンラインを利用したゲーム装置。

2.引用例に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成2年6月27日に頒布された特開平2-166875号公報(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「1.識別コードを付したデジタル情報からなるコンピュータゲーム情報を蓄積したデータベースから、任意のゲーム情報をデジタル回線を介して伝送させる手段1・2と、この伝送されたゲーム情報を記憶するメモリ手段5と、上記識別コードを指定することによって特定したゲーム情報を選択し、かつゲームの進行の制御を行う操作手段4と、このゲーム情報を画像・音声処理する中央処理手段3とからなるゲーム情報処理装置。2.メモリ手段として、複数のゲーム情報を記憶するメモリ6と、これら複数のゲーム情報の目次部分を記憶するメモリ7とを備え、画像化した目次を選択することによってゲームを開始する請求項1記載のゲーム情報処理装置。」(第1頁左欄第4-17行)
「メモリ手段は、複数のゲーム情報を記憶するメモリ、及びこのゲーム情報の一部である目次のみを記憶するメモリで構成されており、ゲーム開始前には記憶された目次情報がCRTに表示される。」(第2頁右下欄第1-4行)
「図中、1はISDN(日本ではINS)回線網の加入者側とのインターフェイスである回線終端装置、2はISDNの通信を制御するための通信制御部、3は中央処理装置で、ISDNによって伝送されてきたゲーム情報を記憶させたり、画像・音声処理を指示する機能を奏する。………次に、4は任意のゲーム情報を取り出すための入力部と、ゲーム開始後のゲーム制御用の入力部とを有する操作手段、5はメモリ手段で、複数のゲーム情報を記憶するためのゲームソフトウエアメモリ6と、記憶されているゲーム情報の目次部分のみを取り出して、これを記憶するための目次メモリ7によって構成されている。8はゲーム画像を処理するための画像処理装置、9はゲーム画像を表示するためのCRTや液晶パネルなどの表示装置、10は効果音を処理するための音声処理装置、11はアンプ、12は音声出力用のスピーカである。」(第3頁左上欄第3行-右上欄第3行)
「次に本発明装置の操作に関しては、先ず電源をオンにすれば、メモリ手段5に記憶されているゲーム情報の目次が目次メモリ7より中央処理装置3および画像処理装置を介して表示装置9に目次画面として表示される。」(第3頁右上欄第10-14行)
「一方、メモリ手段に希望するゲームが記憶されていなかった場合には、識別コードとゲーム内容とを対応させた一覧表等によって希望するゲームのコードを探し、このコードを操作手段4によって入力する。このようにコード入力されれば、中央処理装置3によって通信制御部2をコントロールし、デジタル回線を介してデータベースと接続し、希望するゲーム情報を本装置にロードさせるのである。」(第3頁左下欄第11-19行)
「なお、本発明装置を業務用に利用する場合には、電源スイッチに加えて、コインや貨幣の投入によって装置が作動し、1つのゲームの終了によって入力装置による入力が中断するようにしておけば、従来のゲーム機と同様に、ゲーム機毎に個別に貨幣などを回収することができるので、収益率の管理は容易である。」(第3頁右下欄第17行-第4頁左上欄第3行)

上記記載事項によると、第1引用例には、
「複数のゲームソフトウェアーを蓄積したデータベースにデジタル回線を介して接続されるゲーム情報処理装置であって、予め書き込まれたゲームソフトウェアーに従って演算し、画像・音声処理を指示すると共に、選択したゲームソフトウェアーを実行するCPUと、ゲーム情報の目次部分、及び、ゲーム内容を表示する表示手段9と、ダウンロードされるゲームソフトウェアーを書き込むゲームソフトウェアメモリ6と、上記データベースからロードされたゲーム情報の目次から必要なゲームを選択する他、ゲーム内容に応じて各種の操作を行う操作手段4と、ISDNの通信を制御する通信制御部2とからなり、ゲーム情報の目次を表示装置9に表示するようにしたオンラインを利用したゲーム情報処理装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また、同じく原査定の拒絶の理由に周知例として引用された、本願の出願の日前である昭和61年12月23日に頒布された実願昭60-87377号(実開昭61-204287号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「投入口より投入されたコインを検出するコイン検出部と、ゲーム用テレビジョン信号を送出するゲーム機本体と、ゲームと自主ビデオ放送の視聴を選択する操作部と、上記ゲーム機本体からのゲーム用テレビジョン信号と共聴ラインからの自主ビデオ放送信号とを上記コイン検出部の出力信号により投入コインに応じた各時限だけ上記操作部からの信号により選択的にテレビジョン受像機に送る手段とを備えたコインタイマ。」(実用新案登録請求の範囲)
「制御部18はコインカウンタ19がゼロでない場合一般テレビジョン放送の視聴,自主ビデオ放送の視聴,ゲームの各選択状態でそれぞれ周期を異なるクロックをタイマ20に入力してカウントさせることによって一般テレビジョン放送の視聴,自主ビデオ放送の視聴,ゲームについて100円のコインに対する各基本時限をくり返して計測させ、その基本時限の計測が1回終了する毎にコインカウンタ19がタイマ20の出力信号により1つ減算してカウンタ19の現在値が表示部23により表示される。」(第7頁第16行-第8頁第5行)
「コインカウンタ19がゼロになると、制御部18はゲーム選択の場合には高周波スイッチ21を共聴ライン側に切換えてテレビジョン受像機2の電源を切り、一般テレビジョン放送又は自主ビデオ放送の視聴を選択していた場合にはテレビジョン受像機2の電源を切る。」(第9頁第3-8行)

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成1年3月2日に頒布された特開昭64-56085号公報(以下、「第3引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「この発明の主たる目的は、ROMを含むメモリカートリッジであっても、ゲーム状態データを記憶し、継続的なゲームの開始を可能にするにすることができる、メモリカードリッジと、それを用いたゲーム装置を提供することである。」(第3頁左上欄第20行-右上欄第4行)
「マイクロプロセサは、メモリカートリッジのプログラムROMおよびキャラクタROMからのプログラムデータおよびキャラクタデータに基づいて、オペレータによるコントローラの操作に従って、所定のゲームを実行する。たとえば、ゲーム終了スイッチが押されることによって、あるいはマイクロプロセサ自身の判断によって、ゲーム終了が指示されると、マイクロプロセサは、メモリカートリッジのプログラムROMのプログラムに従って、たとえば得点,パワーあるいはエネルギおよびステージ番号などの、たとえばワーキングRAMにストアされているゲーム状態データに基づいて、パスワードを作成する。このようにして作成されたパスワードがTVモニタ上に表示される。オペレータは表示されたパスワードを次の継続的なゲームのためにメモする。」(第3頁右下欄第6行-第4頁左上欄第2行)

また、同じく原査定の拒絶の理由に周知例として引用された、本願の出願の日前である昭和63年7月22日に頒布された特開昭63-177893号公報(以下、「第4引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「(1)TVゲームのプログラムが格納されたメモリ装置を有するプログラム送出装置およびTVゲームプログラムの伝送のためのチャネルを複数チャネル割り当てるための複数のRFデータモジュレータとを有するセンタ装置と、前記センタ装置と幹線ケーブルを介して接続された端末装置とを備えたCATVシステムにおいて、前記複数チャネルの内の1つのチャネルをメニュ表示のためのメニュ専用のチャネルとし、前記メニュ専用チャネルにおいてメニュ表示データと共に、メニュに示されているゲームの伝送チャネルを示すチャネル割当てデータを伝送することを特徴とするTVゲームシステム。……」(特許請求の範囲)
「本発明は上記した構成により、端末装置にてメニュ画面より選択されたゲームのプログラムデータを例えばチャネル指示データに従ってシンセサイザ方式のRFデータデモジュレータを該当のチャネルに設定することにより、CATVシステムにおいて大容量のプログラムサイズを有した多種類のTVゲームのプログラムを効率よく伝送することができると共に、ゲーム内容の更新に対しても容易に差し換え変更を行なうことができ、しかもゲームを選択した場合のアクセス時間を均等にすることができる。」(第2頁右下欄第1-11行)
「TVゲームの利用者は端末装置115内のTV124に表示されているメニュ画面を見ることにより、自分が希望するゲームの番号をキーボード121から入力する。……その後キーボード121により選択されたゲームが伝送されているデータ信号の周波数を選択受信するため、シンセサイザ方式によるRFデータデモジュレータ116においては周波数制御信号118を送出する。RFデータデモジュレータ116においては周波数制御信号118により該当するゲームのプログラムデータが伝送されているデータ信号を選択受信し、受信データ出力117より復調されたプログラムデータがシリアルで出力される。……ゲーム機123へプログラムデータ出力122を介してプログラムデータが出力され、ゲーム機123からのRF出力124によりTV125において利用者が選択したゲーム画面が表示される。」(第3頁右下欄第4行-第4頁左上欄第7行)
「また利用者がゲームを途中でやめたり、あるいは別のゲームを選択する場合にはキーボード121上に設けられているリセットボタンあるいはメニュ選択ボタンを押すことにより、データ処理装置119から再びメニュ画面が伝送されている第1データ信号を選択受信するための周波数制御信号118がRFデータデモジュレータ116へと送り込まれ、メニュ画面が選択受信される。」(第4頁左上欄第8-15行)

3.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「ゲームソフトウェアー」「デジタル回線」「ゲーム情報の目次部分」「表示装置9」「ゲームソフトウェアメモリ6」「ロード」「操作手段4」「通信制御部2」及び「ゲーム情報処理装置」は、それぞれ本願発明の「プログラム、ゲームプログラム」「電話回線」「ゲームメニュー」「ディスプレイ」「RAM」「ダウンロード」「入力キー」「NCU」及び「ゲーム装置」に相当すると認められる。
また、引用発明の予め書き込まれたゲームソフトウェアーに従って演算し、「画像・音声処理を指示する」ことは、ディスプレイやスピーカー等の周辺機器を制御することを意味するのであるから、「周辺機器を制御する」ことに他ならない。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「複数のゲームプログラムを格納したデータベースに電話回線を介して接続されるゲーム装置であって、予め書き込まれたプログラムに従って演算し、周辺機器を制御すると共に、選択したゲームプログラムを実行するCPUと、ゲームメニュー、及び、ゲーム内容を表示するディスプレイと、ダウンロードされるゲームプログラムを書き込むRAMと、上記データベースからロードされたゲームメニューから必要なゲームを選択する他、ゲーム内容に応じて各種の操作を行う入力キーと、電話回線を制御するNCUとからなり、ゲームメニューをディスプレイに表示するようにしたオンラインを利用したゲーム装置。」
の点で一致し、以下の点で構成が相違する。
(相違点1)
本願発明は、データベースをホストコンピュータに格納しているのに対し、引用発明は、データベースが、ホストコンピュータに格納されているか否か不明である点
(相違点2)
本願発明は、CPUが、料金体系に応じて単位時間でゲームを中断、再開し、ディスプレイが必要な料金を表示し、ゲームの種類に応じた料金、追加料金、或いは単位時間毎の追加料金を投入するための料金投入器を備えているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えているか否か不明である点
(相違点3)本願発明が、エントリー料金が投入されれば初めてホストコンピュータをアクセスし、ゲームメニューのみダウンロードするのに対し、引用発明を認定した第1引用例には、コインの投入によって装置が作動することだけが記載されており、コインの投入とゲームメニューのダウンロードとは関係がない点

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
(1) 相違点1について
電話回線等で端末からアクセス可能なデータベースであれば、ホストコンピュータに格納されていることが通常であり、引用発明のデータベースがホストコンピュータに格納されていることは、当業者にとって自明な事項である。
(2) 相違点2について
第2引用例には、料金(投入コイン)に応じた単位時間でゲームをすることが可能であるという周知の技術が、第3引用例には、実行中のゲームを途中で中断し、その後、継続的にゲームを再開するという周知の技術がそれぞれ記載されており、第1引用例には、ゲームが業務用であることが明示されている以上、引用発明を、料金に応じた単位時間でゲームをすることが可能である構成とし、その際にゲームを中断、再開するという周知技術を適用することに格別の困難性は認められない。
また、複数のゲームの種類に対応した複数の料金体系を設定することは、サービスの内容、ゲームの内容が高度であるか否か、あるいは、ゲームプログラムの作成に要した負荷等の諸事情を考慮して当業者によって適宜決定され得るものにすぎず、それに応じて料金、追加料金、あるいは、単位時間毎の追加料金のディスプレイへの表示、そして当該料金を料金投入器により回収することも、引用発明が業務用であることを前提としていることからみて、当業者が容易に想到し得たものである。
(3) 相違点3について
ゲーム装置が、ゲームメニューのみをプログラムとは別にダウンロードすることは、第4引用例に記載されているように周知の技術であり、さらに、ゲーム開始前に、遊技者の何らかの操作によって、ゲームメニューをゲーム装置にダウンロード及び表示することも、特開昭61-76182号公報(特に第23頁左上欄第1-8行参照)、特開昭62-286489号公報(特に第3頁右上欄17行-左下欄第4行、第7図参照)、あるいは、特開平2-13490号公報(特に第3頁右上欄第19行-左下欄第13行参照)等に記載されているように周知の技術である以上、引用発明において、ゲームメニューをプログラムとは別にダウンロードするようにし、その際に、コインの投入による装置が作動するタイミングに合わせて当該ダウンロードを実行するようにして、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別の困難性は無い。

そして、本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、第1引用例及び周知技術に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、請求項1に記載された発明が特許を受けることができないものであるから、請求項2及び請求項3に記載された発明については検討するまでもないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-12-04 
結審通知日 2003-12-09 
審決日 2003-12-24 
出願番号 特願平4-69560
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 白樫 泰子
鉄 豊郎
発明の名称 オンラインを利用したゲーム装置  
代理人 濱田 俊明  

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