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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01J
管理番号 1092620
審判番号 不服2001-5408  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-06 
確定日 2004-02-27 
事件の表示 平成 6年特許願第115927号「焦電型赤外線検出器」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年11月14日出願公開、特開平 7-301558]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成6年5月4日の出願であって、平成13年2月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.審判請求時の補正・本願発明

平成13年4月25日付けの審判請求時の補正は、特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】 ケース内に導電部が形成された基板を設け、電極とセラミックスを素材とした8角形の焦電体からなる焦電素子を前記基板上に設けた焦電型赤外線検出器において、正方形断面を有する角柱の前記正方形断面の4隅のそれぞれに面取りを施すことにより8角柱の焦電体を得たあと、その厚み方向にスライスして前記8角形の焦電体を得ることを特徴とする焦電型赤外線検出器。」から、
「【請求項1】 ケース内に導電部が形成された基板を設け、電極とセラミックスを素材とした焦電体からなる焦電素子を前記基板上に設けた焦電型赤外線検出器において、前記焦電体として、正方形断面を有する角柱の焦電体を、その正方形断面の四隅のそれぞれに面取りを施すことにより八角柱の焦電体とした後、この八角柱の焦電体を、その厚み方向においてスライスして得られる八角形の焦電体を用いたことを特徴とする焦電型赤外線検出器。」と補正するものであり、この補正は、焦電型赤外線検出器の基板上に設けられる焦電体として、「正方形断面を有する角柱の焦電体を、その正方形断面の四隅のそれぞれに面取りを施すことにより八角柱の焦電体とした後、この八角柱の焦電体を、その厚み方向においてスライスして得られる八角形の焦電体」を用いることについて、明りょうにしようとする補正であり、特許法第17条の2第3項第4号の明りょうでない記載の釈明に該当する。

前述のとおり、審判請求時の上記補正は適法なものであるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年4月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 ケース内に導電部が形成された基板を設け、電極とセラミックスを素材とした焦電体からなる焦電素子を前記基板上に設けた焦電型赤外線検出器において、前記焦電体として、正方形断面を有する角柱の焦電体を、その正方形断面の四隅のそれぞれに面取りを施すことにより八角柱の焦電体とした後、この八角柱の焦電体を、その厚み方向においてスライスして得られる八角形の焦電体を用いたことを特徴とする焦電型赤外線検出器。」

2.刊行物

原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-79908号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載・図示されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、赤外線を検出する炎感知器などに使用される焦電素子に関するものである。」、
「【0003】
このような焦電素子の一例として、図6に断面図を示すような素子がある。焦電体1は、PZT、タンタル酸リチウム、チタン酸鉛、PVDFおよびそのコポリマ等の焦電材料をフィルム状にしたものであり、枠状のその基台となる素子基板2を介してプリント基板3に載置されており、同様にプリント基板3には、焦電体1の電位差を取り出すためのFET等による電気回路部4が構成されている。この基台2およびプリント基板3の材質にはアルミナが使用されている。」、
「【0004】
プリント基板3は、ステム5を貫通(必要に応じて絶縁体6を介する)する3本の端子7の先端に接続され、その周囲をフィルタ8による窓を有するキャン9により気密に覆われている。フィルタ8は、シリコン等の赤外線透過能を有する材質が用いられ、フィルタ8と鉄鋼等の金属製のステム5およびキャン9によりシールド作用がなされている。」、
「【0006】
焦電体1、基台2、プリント基板3は、それぞれ適切な材質により接着固定されており、焦電体1上下面の電極10、11と、プリント基板3の図示しない回路パターンとの間は、導電性接着剤12、13の塗布により、導通がとられている。導電性接着剤12、13には、銀フィラーが混入されているものなどが使用される。」、
「【0014】
第1実施例において、電極10、11は、焦電体1の上下面に形成されていて、図1の如く、表面上には焦電体1を介して円形の吸収電極部10c、11cが重なって見え、その左右に引出電極部10d、11dが突出している。導電性接着剤12、13は、引出電極部10d、11dの部分に着けられるとともに、その下方に位置するプリント基板3の図示しない回路パターンに電気的に接続されている。」、
第1,2図(特に「八角形の焦電体1」、「プリント基板3」、「電極10,11」。)、第6図(特に、「キャン9」)。

3.対比・判断

本願発明と刊行物に記載された発明とを比較すると、刊行物の第1図に記載された赤外線検出器における、「焦電体」は八角形の焦電体であり、また、刊行物に記載された「表面に電極10,11が構成され、PZTからなる焦電体1」、「キャン9」、「回路パターン・電気回路部が設けられたプリント基板3」は、それぞれ、本願発明の「電極とセラミックスを素材とした焦電体からなる焦電素子」、「ケース」、「導電部が形成された基板」に相当するから、両者は、
「ケース内に導電部が形成された基板を設け、電極とセラミックスを素材とした焦電体からなる焦電素子を前記基板上に設けた焦電型赤外線検出器において、前記焦電体として、八角形の焦電体を用いたことを特徴とする焦電型赤外線検出器。」である点一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
本願発明においては、八角形の焦電体として、「正方形断面を有する角柱の焦電体を、その正方形断面の四隅のそれぞれに面取りを施すことにより八角柱の焦電体とした後、この八角柱の焦電体を、その厚み方向においてスライスして得られる」ものを用いているのに対して、
刊行物に記載された発明においては、八角形の焦電体として、どのようにして得られたものを用いるかについて記載されていない点。

上記(相違点)について検討する。
焦電型赤外線検出器の焦電体として、柱状の焦電体をその厚み方向においてスライスして得られるものを用いることは本願の出願前に周知の技術にすぎず(必要であれば、特開平4-5526号(2頁右上欄15行-左下欄1行)や特開平5-99741号公報(【0003】、【0013】欄)を参照。)、また、刊行物に記載された焦電型赤外線検出器の八角形の焦電体として、どのような形状のものを用いるか、また、どのようにして作成されたものを用いるかも、当業者が適宜に選択・設定し得る技術的事項にすぎないことから、刊行物に記載された焦電型赤外線検出器において、焦電体として、柱状の焦電体を、その厚み方向においてスライスして得られたものを用いる構成とするとともに、八角形の焦電体を得る構成として、柱状の焦電体を正方形断面を有する角柱の焦電体とし、その正方形断面の四隅のそれぞれに面取りを施すことにより八角柱の焦電体とした後、この八角柱の焦電体を、その厚み方向においてスライスする構成とする程度のことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

よって、本願発明は、刊行物に記載された発明及び上記の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ

以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-12-10 
結審通知日 2003-12-16 
審決日 2004-01-05 
出願番号 特願平6-115927
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁藤原 伸二安田 明央平田 佳規  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 河原 正
菊井 広行
発明の名称 焦電型赤外線検出器  
代理人 藤本 英夫  

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