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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1092630
審判番号 不服2002-13835  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-23 
確定日 2004-02-26 
事件の表示 平成10年特許願第504612号「細胞結合と細胞侵入に関与するミコバクテリア由来タンパク質をコードしている遺伝子とその使用法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 1月15日国際公開、WO98/01559、平成12年12月12日国内公表、特表2000-516449]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求人は、原審での拒絶査定後の平成14年 8月21日付手続補正書により、本件請求項1〜20に係る発明(平成14年3月4日付手続補正書)を、当該手続補正書に記載された請求項1〜20に補正しようとしており、そのうちの請求項1には下記の通り記載されている。

「【請求項1】 結核菌複合体のミコバクテリウム(Mycobacterium)属の菌株から単離された核酸断片であって、
該核酸断片の有する核酸配列が、配列番号:2(SEQ.ID.No.2)のDNA配列と比較して少なくとも85%の相同性を有し、かつ結核菌複合体のミコバクテリウム(Mycobacterium)属の菌株の細胞結合及び細胞侵入に関与する45〜60kDaの分子量を有するミコバクテリアタンパク質をコードすることを特徴とする核酸断片。」

2.そこで、これら補正後の請求項1〜20に記載された発明が独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。

3.補正後の請求項1の発明について:
下記引用文献1には、本件明細書で用いられたMycobacterium bovisと同じ属に属する結核菌のMycobacterium tuberculosisに由来する「マクロファージなどの哺乳動物細胞に侵入を起こさせるための蛋白質(以下、「細胞侵入性蛋白質」という。)」をコードするDNAをクローニングし、その塩基配列を決定して対応するアミノ酸配列も推定している。
ここで、当該M.tuberculosisは、本件のM.bovisよりも一般的なヒト感染性結核菌であるが、ヒトも含めて哺乳動物感染性結核菌である点では同様である。
そうしてみると、同一属内の微生物であって、極めて類似した特性を有するM.bovisも、M.tuberculosisと同様な「細胞侵入性蛋白質」を産生していると考えることは自然であるといえるから、引用文献1に記載される「細胞侵入性蛋白質」をコードするDNAを含む単離DNA(配列番号1)をプローブとして用い、M.bovisのゲノムライブラリー中から「細胞侵入性蛋白質」をコードするDNAをクローニングすることは、当業者が容易に想到することである。
なるほど、上記「配列番号1」には、「単離DNA」中の「細胞侵入性蛋白質をコードする遺伝子」の両端が表示されていないとはいえ、引用文献1の実施例によれば、当該「単離DNA」を含むベクターで形質転換した大腸菌がHeLa細胞侵入性を獲得したことが記載されており、このことは、取りも直さず上記「配列番号1」に「細胞侵入性蛋白質をコードする遺伝子」が含まれていることが確認されていることに他ならない。
このように目的遺伝子が確実に含まれている「単離DNA」をプローブとして用いる場合、ORFのN端、C端の位置が決定されていないことは何ら阻害要因とはならない。例えば、周知のニックトランスレーション法などを用いて上記「単離DNA」全体を断片化と同時にラベルすることができるから、これらラベル化断片を全てプローブ群として用いることができる。コード配列以外の部分に対応するプローブが存在することによるノイズも、そもそもサイズの小さい微生物ゲノムライブラリーからの検索であるから、格別の障害となると考えられない。
ところで、本件補正後の請求項1の発明に記載される発明には、特定の「配列番号:2」のDNA配列からなるDNA断片のみならず、その85%程度の相同性があるDNA断片も包含されている。すなわち、ORFの末端配列にDNAが付加されたもの、大幅に末端配列が欠如したものも包含することになる。
そうであるから、本件明細書で得られた「細胞侵入性蛋白質」をコードするDNAについて、そのN末端およびC末端配列を決定することに困難性があるとしても、その点を勘案することはできないことになり、結局、本件補正後の請求項1に記載された発明全般に対しては、「製法(取得工程)の困難性」も「効果の顕著性」も格別のものとはいえない。
したがって、補正後の請求項1に記載された発明は、下記引用文献1の記載に基づいて特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。


引用文献1.国際公開第95/6726号パンフレット

4.以上述べたとおり、補正後の請求項1に記載された発明が独立して特許を受けることができない以上、補正後の他の請求項に記載された発明については検討するまでもなく、前記手続補正は特許法第159条第1項の規定により却下されるべきものである。

5.前記手続補正が却下されるべきものであるから、本件発明は、平成14年3月4日付手続補正書に記載された請求項1〜20により特定されたとおりのものである。
そして、請求項1に係る発明は、前記3.で検討した補正後の請求項1に係る発明からその核酸断片(核酸分子)が有する核酸配列の限定事項である、「配列番号:2(SEQ.ID.No.2)のDNA配列と比較して少なくとも85%の相同性を有する」との構成を省いたものである。
そうすると、本件請求項1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後の請求項1に記載された発明が、前記3.に記載したとおり引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に記載された発明も、同様の理由により引用文献1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本件請求項1〜20に係る発明は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-24 
結審通知日 2003-10-01 
審決日 2003-10-17 
出願番号 特願平10-504612
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 575- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深草 亜子  
特許庁審判長 佐伯 裕子
特許庁審判官 河野 直樹
鵜飼 健
発明の名称 細胞結合と細胞侵入に関与するミコバクテリア由来タンパク質をコードしている遺伝子とその使用法  
代理人 伊藤 克博  
代理人 金田 暢之  
代理人 石橋 政幸  

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