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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 H04N 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N |
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管理番号 | 1092653 |
審判番号 | 不服2003-21226 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2003-02-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-31 |
確定日 | 2004-03-19 |
事件の表示 | 特願2002- 11936「写真シール自動販売機および写真シール自動販売機の画像処理方法、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 7日出願公開、特開2003- 37813,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は,平成14年1月21日(優先権主張平成13年4月9日,同年5月14日)の出願であって,平成14年11月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明について拒絶査定がなされ,審判請求の際に,平成15年12月1日付けで手続補正がなされた「写真シール自動販売機および写真シール自動販売機の画像処理方法,並びにプログラム」に関するものと認められる。 第2 原査定の理由 一方,原査定の拒絶の理由の概要は,平成14年11月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明は,次の刊行物の記載から当業者が容易に推考できたというものである。 (刊行物) 1 登録実用新案第3064486号公報 2 株式会社ジャストシステム,「花子Ver.2[花子]」,第1版,株式会社ジャストシステム,1990年5月14日,p.330-335 3 特開平10-308911号公報 そして,前置報告書において,審判請求時の平成15年12月1日付け手続補正は,特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず,同法第17条の2第4項の規定に違反するものである旨,報告がなされている。 その前置報告の概要は,「撮影空間において」被写体を撮影する点,及び,「前記撮影空間とは異なる位置に設けられた編集空間において」被写体の画像を表示する点を追加したことは,補正前の発明の課題が「簡単な操作で複雑な編集作業を行う」点にあるのに対して,補正後の課題には「撮影の待ち時間を短縮し,編集する時間を長く設定する」ことが追加されており,補正前後の発明の解決しようとする課題が同一ではない,というものである。 第3 当審の判断 1 補正の適否 そこで,まず補正の適否について検討する。 以下,平成14年11月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を「補正前の請求項1」などといい,審判請求時の平成15年12月1日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を「補正後の請求項1」などという。 (1) 補正前及び補正後の請求項1に係る発明は次のとおりである。 【補正前の請求項1】 ユーザに,撮影させたのち,撮影された画像を編集させ,編集済みの画像が印刷されたシールシートを前記ユーザに提供する写真シール自動販売機において, 被写体を撮影する撮影手段と, 前記撮影手段により撮影された前記被写体の画像の表示とともに,前記画像を編集するためのペンツールもしくはスタンプツールの表示を制御し,表示を制御している所定の前記スタンプツールが選択された場合,前記ユーザが手作りスタンプを作成するためのスタンプ作成部,および前記ユーザによって書き込まれたスタンプを登録するときに選択されるスタンプ登録ボタンの表示をさらに制御する表示制御手段と, 前記表示制御手段により表示が制御されている前記スタンプ登録ボタンが選択された場合,前記表示制御手段により表示が制御されている前記ペンツールもしくは前記スタンプツールにより,前記ユーザが前記スタンプ作成部に描いた絵または文字を,前記手作りスタンプとして登録する登録手段と を備えることを特徴とする写真シール自動販売機。 【補正後の請求項1】 ユーザに,撮影させたのち,撮影された画像を編集させ,編集済みの画像が印刷されたシールシートを前記ユーザに提供する写真シール自動販売機において, 撮影空間において,被写体を撮影する撮影手段と, 前記撮影空間とは異なる位置に設けられた編集空間において,前記撮影手段により撮影された前記被写体の画像を表示するとともに,前記ユーザが前記被写体の画像の編集に利用する入力ツールを選択するためのペンボタン群またはスタンプボタン群の内,前記ユーザに選択されたいずれか一方を表示し,前記ユーザが前記スタンプボタン群を選択し,さらに,その選択により前記被写体の画像とともに表示された前記スタンプボタン群に含まれる所定のボタンを選択した場合,前記被写体の画像に加えて,描画した絵や文字のスタンプである手作りスタンプの作成のためのスタンプ作成部,並びに,前記スタンプ作成部において描画された絵や文字を前記手作りスタンプとして登録するときに選択されるスタンプ登録ボタンを表示するとともに,前記ペンボタン群をさらに表示する表示手段と, 前記表示手段により表示されている前記スタンプ登録ボタンが選択された場合,前記ユーザが,前記ペンボタン群を用いて前記入力ツールを選択し,選択した前記入力ツールを利用して,前記スタンプ作成部に描画した絵や文字を,前記手作りスタンプとして登録する登録手段と を備えることを特徴とする写真シール自動販売機。 (2) 補正後の請求項1では,補正された主要な点として,撮影空間と編集空間が異なる位置である点が付加されておいる。 補正前の請求項1では,「画像を編集させ」及び「被写体を撮影する」とあることから,用語として記載されていないが画像を編集する「編集空間」と被写体を撮影する「撮影空間」が存在することは明らかといえる。 そして,補正後の請求項1に係る発明は両空間の関係を限定するものとなっている。 (3) ところで,拒絶査定不服審判の請求時に行う補正は,特許法第17条の2第4項第2号の規定によると,特許請求の範囲の減縮は,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る,と規定されている。 そこで本件の場合についてみると,産業上の利用分野は,補正前後共「写真シール自動販売機」であり変更がないことから同一といえる。 一方,解決しようとする課題は,補正の前後共,特許請求の範囲に明確に課題として表現されていないため,発明の詳細な説明を参照することになる。 出願当初の明細書によると,課題に関連する箇所は次のとおりである。 ア【0007】撮影した画像に対して,簡単な操作で,複雑な編集作業を行うことができるようにするものである。 イ【0059】ユーザは,筐体11の正面(面11-1)前方の場所(以下,適宜撮影空間と称する)で自分自身を撮影したのち,面11-6の前方の場所(以下,適宜編集空間と称する)へ移動して,撮影した自分自身の画像を編集する。 ウ【0067】図1および図2に示したように,撮影空間と編集空間とを異なる位置に設けることにより,次に順番待ちをしているユーザがいる場合,そのユーザは,それまで撮影空間で撮影をしていたユーザと入れ替わりに撮影空間に入場し,撮影を開始することができる。そのため,撮影の待ち時間を短縮することができ,それとともに,編集する時間を長く設定することができる。 エ【0235】また,以上においては,撮影空間と編集空間とを異なる位置に設けるようにしたが,勿論,撮影空間と編集空間を兼用させるようにしてもよい。この場合,撮影空間に設置されている撮影用モニタ14を編集入力用モニタとして使用させるようにしてもよいし,もしくは,撮影用モニタ14の近傍に編集入力用モニタを別途配置するようにしてもよい。 (4) 補正前の請求項1では,撮影空間と編集空間の関係は特定されていないため,上記エに摘記したところから明らかなように,撮影空間と編集空間とを異なる位置に設ける場合と,撮影空間と編集空間を兼用させる場合とが含まれる記載である。 一般に,特許請求の範囲には複数の実施態様を含ませるように記載することは許容されており,必要により,特許請求の範囲に限定を加えることによって含ませる実施態様を減少させることも許容されることから,本件の場合,撮影空間と編集空間とを異なる位置に設ける場合と撮影空間と編集空間を兼用させる場合の両方を含む記載から,異なる空間のみとする補正は特許請求の範囲の減縮に当たり,許容されるものである。 これを課題の観点からみると,出願当初の明細書の課題の項には,次の明示がある。 「【0005】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,様々な落書き機能を編集画面に表示させることによって,ユーザの操作が煩雑になる課題があった。 【0006】従って,ユーザの間では,このような画像印刷装置に対して,様々な落書き機能の追加を期待している反面,複雑な編集作業を簡単な操作で行えるようにすることを望んでいる。 【0007】 本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり,撮影した画像に対して,簡単な操作で,複雑な編集作業を行うことができるようにするものである。」 請求項に記載された発明の解決しようとする課題は,本来請求項に含まれる構成に対応する課題を明示的に課題の項に記載することが望ましいのは確かであるが,課題として明細書全体から把握できれば,必ずしも課題の項にすべて記載しなければならないとまで法が要求しているともいえない。 補正前の請求項1では,前記(3)エの記載から撮影空間と編集空間とを異なる位置に設ける場合には,簡単な操作で,複雑な編集作業を行うことができるとともに撮影の待ち時間を短縮することができ,それとともに,編集する時間を長く設定することができることの課題も把握することができ,明細書全体から課題をみた場合,解決しようとする課題が補正前と補正後で同一であると判断できる。 そうすると,当該補正は特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たしているといえる。 同様に,他の請求項に係る補正も後記する独立特許要件を含め適法になされた補正である。 2 引用例との対比・判断 前記拒絶の理由に引用された刊行物である登録実用新案第3064486号公報には,撮影手段で撮影された画像の表示を行い,表示された画像に対してユーザの登録したスタンプツールを用いて編集を行う画像処理装置が記載されている。 また,株式会社ジャストシステム発行の「花子Ver.2[花子]」,第1版,(1990年5月14日)p.330-335には,画像処理装置において,ユーザが描いた絵や文字を登録して必要に応じて編集に用いるようにすることが示され,さらに,特開平10-308911号公報には,画像編集において用いるデータを携帯可能な記録媒体に記憶させて,他の編集作業において使用する点が記載されている。 しかし,これらの公知な文献には,補正後の請求項1に係る発明の必須要件である撮影空間と編集空間とを異なる位置に設けることについては,記載も示唆も認められない。 そしてこの構成により前記課題に対応する効果を奏するものであり,補正後の請求項1に係る発明を前記刊行物及び審査の過程で呈示された他の公知な文献記載の発明から当業者が容易に推考できたとはいえない。 補正後の請求項2及び3に係る発明は,請求項1を引用し,さらに限定事項を付加するものであるから,請求項1に係る発明と同様進歩性が認められる。 また,補正後の請求項4及び5に係る発明は,請求項1に係る発明を方法及びプログラムとして表現したものであり,実質的な判断は請求項1に係る発明と同様であり,前記文献から当業者が容易に想到できたとはいえない。 第4 むすび 以上のとおり,本願の審判請求時の補正が不適法とはいえず,また,本願の請求項1ないし5に係る発明は,上記各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,原審の拒絶の理由によっては本願を拒絶することはできず,また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2004-03-10 |
出願番号 | 特願2002-11936(P2002-11936) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04N)
P 1 8・ 572- WY (H04N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野村 章子、豊島 洋介 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
橋本恵一 小林秀美 |
発明の名称 | 写真シール自動販売機および写真シール自動販売機の画像処理方法、並びにプログラム |
代理人 | 稲本 義雄 |