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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J |
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管理番号 | 1092799 |
審判番号 | 不服2003-4651 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-20 |
確定日 | 2004-03-04 |
事件の表示 | 特願2002-126230「パン焼き皿の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成14年12月24日出願公開、特開2002-369751]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯・本願発明 本件に係る出願は、昭和61年10月13日に出願された実願昭61-157280号を平成8年10月24日に特許出願に変更した特願平8-282499号の明細書に記載された発明の一部を特許法第44条第1項の規定により平成14年4月26日に新たな特許出願としたものであって、原審において平成15年2月5日付けで拒絶の査定がなされたところ、本件は同査定に対して請求された審判であり、当審において平成15年9月4日付で審尋がなされそれに対する回答書が提出されている。 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年1月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「ペット樹脂よりなる薄い保形フィルムとしてのセロファン紙を準備し、 その保形フィルムとしてのセロファン紙を薄紙としての純白紙の一方の面に食品衛生上問題のない接着剤を用いて貼着し、 その後、前記貼着によって一体化した薄紙としての純白紙及び保形フィルムとしてのセロファン紙をプレス機にてプレスし、 そのプレス成形により、底部とほぼ全周にわたって多数のひだを備えた壁部とからなると共に前記保形フィルムとしてのセロファン紙が薄紙としての純白紙の内側に配置されるパン焼き皿を得ることを特徴とするパン焼き皿の製造方法。」 2. 引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である 実願昭55-11975号(実開昭56-114683号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)、 実願昭56-100140号(実開昭58-7900号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)および 実願昭55-74369号(実開昭56-175085号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。) には、それぞれ以下の事項が記載されている。 2-1 刊行物1 1a. 「或る程度保型性を有する紙料の一方の面に熱可塑性の耐熱性樹脂薄層を形成したものを、この薄層を有する面を内側にして皿状にしぼり成形して成る焼成食品用台片。」(実用新案登録請求の範囲) 1b. 「この考案はパイのような焼菓子、グラタンのような加工食品のようにオーブンなどで焼成することを要する食品の受片に係り、これら食品をのせたままでオーブンに入れて調理することができるようにしたものである。 先ず第1図において、1はある程度保形性を有するすなわち腰のある比較的厚手の紙料であって、この紙料の一方の面に熱可塑性の耐熱性樹脂薄層2を例えばコーティングによって形成する。この薄層2を形成する樹脂の組成については種々考えられるが次のようなものが考慮される。 1.ポリエチレン・テレフタレート及びその共重合体」(明細書第1頁第10行〜第2頁第8行) 1c. 「上記のようにして成る薄層2を形成した紙料1をこの薄層2を有する面が内側になるようにひだ寄せしてしぼり、第2図に示すような台片3とし、この台片3に食品4を盛りつけて、オーブン等によりこの食品4の焼成を行うのである。」(明細書第2頁第12行〜第3頁第2行) ところで、本願発明の記載事項1a〜1cおよび第1図、第2図から、次の事項1dが把握できる。 1d. ポリエチレン・テレフタレート及びその共重合体よりなる薄層2を、ある程度保形性を有するすなわち腰のある比較的厚手の紙料1の一方の面にコーティングし、その後、前記コーティングによって一体化した紙料1及び前記薄層2をひだ寄せして皿状にしぼり成形し、そのしぼり成形により、底部とほぼ全周にわたって多数のひだを備えた壁部とからなると共に前記薄層2が紙料1の内側に配置される皿状の焼成食品用台片を得る焼成食品台片のの製造方法。 2-2 刊行物2 2a. 「本考案は耐熱ラミネート紙に関する。 近年電子レンジ、各種オーブンの普及、調理済食品または加熱する前の段階まで準備された食品の普及にともないこれら食品の流通兼加熱調理用容器として耐熱紙皿つまりオーブナブルペーパートレイが使用される。 これは耐熱性成型性の良い基紙に耐熱性の樹脂をラミネートしたものである。」(明細書第1頁第12行〜末行) 2b. 「本考案の構成をさらに詳しく説明する。 本考案において用いられる基紙は、・・・成型性形態安定性の見地からその厚さは1m2当たり重量(坪量)およそ150〜500gのものが好ましい。 樹脂は、耐熱性のフィルム形成性プラスチックから選ばれる。例えばポリエチレンテレフタレート、・・・等である。 樹脂に配合される白色顔料は・・・。 白色顔料配合樹脂は押出コーティングにより紙に直接ラミネートしてもよいし、一旦フィルムを成型した後、これをラミネートしてもよい。 樹脂層の厚さは、・・・、10〜100μ程度のものが好ましい。 樹脂層は、基紙の一方の面だけに設ける。 以上の如き構成のラミネート紙をトレイに成型するには、絞り成型によるか四角を折り曲げて接着する方法によって作られる。」(明細書第2頁第14行〜第4頁第5行) 2-3 刊行物3 3a. 「ケーキとかパンをオーブンや電子レンジで加熱調理する際に使用するトレーには、アルミニウム製、シリコン樹脂製等のものがある。 ・・・ 本考案は以上の諸欠点が解消され、オーブン用にも電子レンジ用にも使用でき、かつまた、耐熱、保型性及び調理性にもすぐれている食品調理用容器を提供できるようにした。」(明細書第1頁第7行〜第2頁第11行) 3b. 「しかして本考案の食品調理用容器は、適度の剛性を有する紙製容器主体1の内面にポリエステル膜2を形成したものとしてある。 ここで紙製容器主体1にはコート紙が好適であり、かつコート面を内面とする。 また、ポリエステル膜2は、ポリエステルのフィルムを適宜の接着剤3、例えば二液反応ウレタン系接着剤をもって紙製容器主体の内面へ貼り付けて形成する。」(明細書第2頁第12〜20行) 3. 対比・判断 本願発明と刊行物1の発明(事項1d参照)を対比すると、刊行物1の発明の「ポリエチレン・テレフタレート及びその共重合体」は本願発明の「ペット樹脂」に相当し、刊行物1の発明の「しぼり成形」は、プレス成形に含まれる一形態であり、同じく「皿状の焼成食品用台片」は食品焼成皿と云えるものであってパン焼き皿を包含するものであるから、両発明は、 ペット樹脂よりなる薄層を紙の一方の面にコーティングし、その後、前記コーティングによって一体化した紙及び前記ペット樹脂よりなる薄層をプレス機にてプレスし、そのプレス成形により、底部とほぼ全周にわたって多数のひだを備えた壁部とからなると共に前記ペット樹脂よりなる薄層が紙の内側に配置される食品焼成皿を得る食品焼成皿の製造方法 の発明である点で軌を一にし、 本願発明は、ペット樹脂よりなる薄い保形フィルムとしてのセロファン紙を準備し、その保形フィルムとしてのセロファン紙を薄紙としての純白紙の一方の面に食品衛生上問題のない接着剤を用いて貼着することによって一体化した薄紙としての純白紙及び保形フィルムとしてのセロファン紙を用いたパン焼き皿の製造方法であるのに対して、刊行物1の発明は、ペット樹脂よりなる薄層2を、ある程度保形性を有するすなわち腰のある比較的厚手の紙料1の一方の面にコーティングすることによって一体化した該紙料1及び該薄層2を用いた焼成食品皿の製造方法である点 で両発明は相違している。 前記の相違点について検討すると、刊行物2にはペット樹脂よりなる薄フィルムを成型、準備し、該フィルムを紙の一方の面にラミネートして一体化した加熱調理皿に適用するラミネート紙が記載され(記載事項2a、2b参照)、かつ、ラミネート加工法として接着剤を用いて貼着することは、従来周知のラミネート加工の一方式であり(参考例 荒木正義編「新ラミネート加工便覧」昭和58年11月30日 加工技術研究会発行、第12頁参照)、接着剤による貼着の採用は格別の事項とは認められず、更に、食品に係る皿等の調理道具に用いる接着剤を食品衛生上問題のないものとすることは、当業者にとって通常選択されるべき設計上の選択事項というべき事項である。 さらに、刊行物3にはコート紙からなる紙製容器主体の一方の面である内面に二液反応ウレタン系接着剤を用いてポリエステルのフィルムを貼着して一体化したものから構成したパンなどの加熱料理に使用するトレーすなわち皿が記載されており(記載事項3a、3b参照)、コート紙は、印刷や印画用に用いられる白色顔料を塗工した紙であって、厚紙と比べて薄く、薄紙としての純白紙と云えるものである。 ところで、本願明細書には「保形フィルムと接着剤とが相俟って保形機能が実現される」旨記載されているのに対して(本願明細書段落番号【0009】参照)、刊行物1には「1はある程度保形性を有するすなわち腰のある比較的厚手の紙料であって、」(記載事項1b参照)と記載され、該紙料1が主として保形機能を有するものと認められるが、一体化積層材を構成するペット樹脂、紙及び場合により介在する接着剤の各層がそれぞれ保形機能を程度の差はあれ有することは自明であり、どの層にどの程度保形性を按分させるかは層を設定するにあたっての設計上の事項というべきものである。さらに、本願発明の「セロハン紙」は、ペット樹脂である点においては、刊行物1のものと差異はなく、セロハン紙風のペット樹脂フィルム自体は、特段の例示を待つまでもなく従来周知であり、本願明細書には、セロファン紙であることについて格別の技術的事項が記載されるものではないから、予め準備するペット樹脂の薄いフィルムを保形フィルムとしてのセロハン紙とすること自体困難性はなく、かつ、刊行物1〜3の発明はいずれもパン焼きを含むことが当業者の常識である食品焼成ないし加熱調理の皿に係わるものであって、技術分野も共通であるから、刊行物1の発明において刊行物2や3に記載の前記した手段や構成材を適用して相違点における本願発明の構成を採ることは当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願発明の効果は刊行物1〜3の発明から予測し得る程度であって、格別ではない。 4. むすび したがって、本願発明は、刊行物1〜3の発明に基づいて当業者が容易 に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する |
審理終結日 | 2003-12-19 |
結審通知日 | 2004-01-06 |
審決日 | 2004-01-20 |
出願番号 | 特願2002-126230(P2002-126230) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A47J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千葉 成就 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
櫻井 康平 長浜 義憲 |
発明の名称 | パン焼き皿の製造方法 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |