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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C |
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管理番号 | 1092944 |
審判番号 | 不服2002-13396 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-18 |
確定日 | 2004-03-11 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第 82579号「振動型ジャイロスコープ」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 3月28日出願公開、特開平 7- 83671]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成6年3月28日の出願であって、平成14年6月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月14日付で手続補正がなされたものである。 【2】平成14年8月14日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年8月14日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 2箇所の溝により分離された3個の弾性腕を有する振動子と、前記弾性腕に振動を発生させる駆動手段と、振動子が回転したときに弾性腕に生じる前記振動方向と交叉する方向への振動成分を検出する検出手段とが設けられた振動型ジャイロスコープにおいて、 前記駆動手段は、圧電効果により前記弾性腕に振動を発生させる駆動用の電極を有し、前記駆動用の電極は、前記3個の弾性腕の前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられ、 全ての弾性腕の前記駆動用の電極に同じ駆動電圧が与えられて、この同じ駆動電圧によって両側の弾性腕に同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央の弾性腕に前記両側の弾性腕の振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるように、前記圧電効果を発揮する圧電材料の分極方向が設定されており、 前記検出手段は、前記振動成分を圧電効果により検出する検出用の電極を有しており、この検出用の電極も、前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられていることを特徴とする振動型ジャイロスコープ。」(以下、「本願補正発明」という。) と補正された。 前記補正中、 イ.補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「全ての弾性腕の前記駆動用の電極に駆動電力が与えられて」を「全ての弾性腕の前記駆動用の電極に同じ駆動電圧が与えられて」とする補正は、全ての弾性腕の駆動用電極に供給する駆動電力を、同じ駆動電圧と限定するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 ロ.補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「両側の弾性腕に同じ向きの振動駆動力が与えられ」を「この同じ駆動電圧によって両側の弾性腕に同じ向きの振動駆動力が与えられ」とする補正は、前記イ.の補正に伴い、「同じ向きの振動駆動力が与えられ」る駆動原因を限定したものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 ハ.補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「中央の弾性腕に前記向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるものとなっており」を「中央の弾性腕に前記両側の弾性腕の振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるように、前記圧電効果を発揮する圧電材料の分極方向が設定されており」とする補正は、振動駆動力を発生させる構成を限定するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 したがって、前記補正イ.〜ハ.は、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、前記補正イ.〜ハ.の内容は、いずれも願書に最初に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.刊行物に記載された発明1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、 中村尚他2名著,「三脚音さを用いた振動ジャイロ」,日本音響学会 平成元年度春季研究発表会講演論文集,日本,社団法人 日本音響学会,1989年 3月14日発行,667-668頁 (以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。 イ.「角速度を印加した時その分布コリオリ力は駆動振動モードに対して直角方向に生じ、検出側振動モードを励振する。」(667頁9行〜11行) ロ.「2.構造および振動モード 図3は三脚音さの構造(寸法)ならびに利用モードで、中央アームは駆動(fx)、検出(fy)両モードについてほぼ片持棒の同形モードとなることが有限要素法計算ならびに実測により図4のように確かめられる。本文では、左右アームで駆動、中央アームで検出のジャイロを構成し、実測値ならびに計算値の比較を行う。」(667頁21行〜28行) これらの記載、及び ・刊行物には明記されていないが、刊行物における振動ジャイロは、両側のアームを振動させるドライブ(drive、図3参照)を含む何らかの駆動手段と、中央のアームの振動を検出するピックアップ(pick up、図3参照)を含む何らかの検出手段とを有すると考えられること、 ・図3におけるドライブとピックアップについて、具体的な構成は明記されていないが、振動ジャイロにおいて、振動子に駆動用圧電素子や検出用圧電素子を張り付けて、振動を励起、検出することはごく普通に採用されている構成であり(例えば、特開平4-102013号公報、特開昭61-191917号公報参照)、刊行物に記載のものが、このような構成を備えているとしても、何等不自然な点は見受けられないから、この点をあえて相違点として採り上げるまでもないこと、 ・駆動用圧電素子や検出用圧電素子が表面に電極を有することは技術常識であること、 ・図3によれば、両側のアームは左右対称に作られていると考えられ、略々同じ周波数、略々同じ振幅で同相に振動するものと解されることから、両側のアームのドライブ(drive)には同じ駆動電圧が印加されると解するのが自然であること、 ・図3によれば、中央のアームは両側のアームの振動の向きと逆の向きの振動が励振されること、すなわち、両側のアームに同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央のアームに前記両側のアームの振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられること、を考慮すると、刊行物には、 (刊行物に記載された発明1) 「2箇所の溝により分離された3個のアームを有する三脚音さと、前記アームに振動を発生させる駆動手段と、三脚音さが回転したときにアームに生じる前記振動方向と直角方向への振動成分を検出する検出手段とが設けられた振動ジャイロにおいて、 前記駆動手段は、圧電効果により前記アームに振動を発生させるドライブを有し、前記ドライブは、前記3個のアームの前記溝の貫通方向に平行な平面に設けられ、 両側のアームの前記ドライブに同じ駆動電圧が与えられて、両側のアームに同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央のアームに前記両側のアームの振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられ、 前記検出手段は、圧電効果により検出するピックアップを有しており、このピックアップは、前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられている振動ジャイロ」 (以下「刊行物に記載された発明1」という。)が開示されていると認めることができる。 3.対比 そこで、本願補正発明と刊行物に記載された発明1とを比較すると、 刊行物に記載された発明1における 「アーム」、「三脚音さ」、「直角方向」、「振動ジャイロ」、「ドライブ」、「ピックアップ」は、それぞれ、本願補正発明における 「弾性腕」、「振動子」、「交叉する方向」、「振動型ジャイロスコープ」、「駆動用の電極」、「検出用の電極」にそれぞれ相当し、 「3個の弾性腕の前記溝の貫通方向と直交する平面」も「3個のアームの前記溝の貫通方向に平行な平面」も共に「3個の弾性腕の平面」であるから、 両者は、 (一致点) 「2箇所の溝により分離された3個の弾性腕を有する振動子と、前記弾性腕に振動を発生させる駆動手段と、振動子が回転したときに弾性腕に生じる前記振動方向と交叉する方向への振動成分を検出する検出手段とが設けられた振動型ジャイロスコープにおいて、 前記駆動手段は、圧電効果により前記弾性腕に振動を発生させる駆動用の電極を有し、 前記駆動用の電極は、前記3個の弾性腕の平面に設けられ、弾性腕の前記駆動用の電極に同じ駆動電圧が与えられて、両側の弾性腕に同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央の弾性腕に前記両側の弾性腕の振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるようにされており、 前記検出手段は、圧電効果により前記振動成分を検出する検出用の電極を有しており、この検出用の電極は、前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられている振動型ジャイロスコープ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点) イ.駆動用の電極について、 本願補正発明では「3個の弾性腕の前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられ」ているのに対し、刊行物に記載された発明1では、3個の弾性腕の前記溝の貫通する方向に平行な平面に設けられ」ている点。 ロ.中央の弾性腕について、 本願補正発明では「全ての弾性腕の前記駆動用の電極に同じ駆動電圧が与えられて」おり、「この同じ駆動電圧によって・・・中央の弾性腕に前記両側の弾性腕の振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられる」のに対し、刊行物に記載された発明1では、両側の弾性腕の前記駆動用の電極に同じ駆動電圧が与えられて、両側のアームに同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央のアームに前記両側のアームの振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられているが、中央の弾性腕には駆動用の電極が設けられておらず、中央の弾性腕は「この同じ駆動電圧によって」前記振動駆動力が与えられていない点。 ハ.圧電材料の分極方向について、 本願補正発明では、「同じ駆動電圧によって両側の弾性腕に同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央の弾性腕に前記両側の弾性腕の振動の向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるように、前記圧電効果を発揮する圧電材料の分極方向が設定されて」いるのに対し、刊行物に記載された発明1では、その点明記されていない点。 4.当審の判断 相違点イ.について 振動ジャイロ装置において、駆動用の電極を溝の貫通方向と直交する平面上に配置する構成は、周知であるから(例えば、特開昭61-191917号公報、特開昭62-217115号公報参照)、刊行物に記載された発明1において、駆動用の電極を、3個の弾性腕の溝の貫通する方向に平行な平面上に配置する構成から、溝の貫通方向と直交する平面上に配置する構成に変更することは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 相違点ロ.、相違点ハ.について 音叉型振動ジャイロ装置において、全ての弾性腕に駆動用の電極を設け、検出用の電極が設けられている弾性腕を強制駆動させる駆動態様も、検出用の電極が設けられている弾性腕には駆動用の電極を設けず、受動的に駆動させる駆動態様も共に周知であり(例えば、特開昭61-191917号公報参照)、そのどちらの駆動態様を採用するかは、当業者が実施の際、適宜に選択し得る技術的事項と言うべきものであるから、刊行物に記載された発明1において、中央の弾性腕にも駆動用の電極を設け、全ての弾性腕の前記駆動用の電極に同じ駆動電圧を与える構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 そして、圧電材料の分極方向を選択することにより、弾性腕の振動駆動力を所望方向に設定することも、周知の技術的事項である(例えば、前記特開昭61-191917号公報参照)から、刊行物に記載された発明1において、中央の弾性腕に駆動用の電極を設けて強制駆動とし、圧電材料の分極方向を駆動すべき方向に合わせて選定することは、当業者が容易に想到し得たところと言えるものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物に記載された発明1、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【3】本願発明 平成14年8月14日付の手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜5に係る発明は、平成14年5月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおりに記載されている。 「【請求項1】 2箇所の溝により分離された3個の弾性腕を有する振動子と、前記弾性腕に振動を発生させる駆動手段と、振動子が回転したときに弾性腕に生じる前記振動方向と交叉する方向への振動成分を検出する検出手段とが設けられた振動型ジャイロスコープにおいて、 前記駆動手段は、圧電効果により前記弾性腕に振動を発生させる駆動用の電極を有し、前記駆動用の電極は、前記3個の弾性腕の前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられて、全ての弾性腕の前記駆動用の電極に駆動電力が与えられて、両側の弾性腕に同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央の弾性腕に前記向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるものとなっており、 前記検出手段は、前記振動成分を圧電効果により検出する検出用の電極を有しており、この検出用の電極も、前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられていることを特徴とする振動型ジャイロスコープ」(以下、「本願発明」という。)。 1.刊行物に記載された発明2 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「【2】2.」に記載したとおりであり、刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。 (刊行物に記載された発明2) 「2箇所の溝により分離された3個のアームを有する三脚音さと、前記アームに振動を発生させる駆動手段と、三脚音さが回転したときにアームに生じる前記振動方向と直角方向への振動成分を検出する検出手段とが設けられた振動ジャイロにおいて、 前記駆動手段は、圧電効果により前記アームに振動を発生させるドライブを有し、前記ドライブは、前記3個のアームの前記溝の貫通する方向に平行な平面に設けられ、 両側のアームの前記ドライブに駆動電力が与えられて、両側のアームに同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央のアームに前記向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるものとなっており、 前記検出手段は、前記振動成分を圧電効果により検出するピックアップを有しており、このピックアップは、前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられている振動ジャイロ」。 2.対比 本願発明と刊行物に記載された発明2とは次の点で一致する。 (一致点) 2箇所の溝により分離された3個の弾性腕を有する振動子と、前記弾性腕に振動を発生させる駆動手段と、振動子が回転したときに弾性腕に生じる前記振動方向と交叉する方向への振動成分を検出する検出手段とが設けられた振動型ジャイロスコープにおいて、 前記駆動手段は、圧電効果により前記弾性腕に振動を発生させる駆動用の電極を有し、 前記駆動用の電極は、前記3個の弾性腕の平面に設けられ、弾性腕の前記駆動用の電極に駆動電力が与えられて、両側の弾性腕に同じ向きの振動駆動力が与えられ、中央の弾性腕に前記向きと逆の向きの振動駆動力が与えられるものとなっており、 前記検出手段は、前記振動成分を圧電効果により検出する検出用の電極を有しており、この検出用の電極は、前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられている振動型ジャイロスコープ。 また、本願発明と刊行物に記載された発明2とは次の点で相違する。 (相違点) イ.駆動用の電極について、 本願発明では「3個の弾性腕の前記溝の貫通方向と直交する平面に設けられ」ているのに対し、刊行物に記載された発明2では、3個の弾性腕の前記溝の貫通する方向に平行な平面に設けられ」ている点。 ロ.中央の弾性腕について、 本願発明では「全ての弾性腕の前記駆動用の電極に駆動電力が与えられて」おり、したがって、中央の弾性腕にも駆動用の電極が設けられているのに対し、刊行物に記載された発明2では、両側の弾性腕の前記駆動用の電極に駆動電力が与えられているが、中央の弾性腕には駆動用の電極が設けられておらず、駆動電力が与えられていない点。 3.当審の判断 相違点イ.ロ.に対する判断は、前記【2】4.における相違点イ.ロ.に対する判断と同様である。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 前記のとおり、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願の請求項2〜5に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-01-07 |
結審通知日 | 2004-01-13 |
審決日 | 2004-01-27 |
出願番号 | 特願平6-82579 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01C)
P 1 8・ 575- Z (G01C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 有家 秀郎 |
特許庁審判長 |
西川 一 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 三輪 学 |
発明の名称 | 振動型ジャイロスコープ |
代理人 | 野▲崎▼ 照夫 |
代理人 | 野▲崎▼ 照夫 |