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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  H01J
管理番号 1093084
異議申立番号 異議2003-70140  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-12-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-22 
確定日 2004-01-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3303877号「ガス放電表示装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3303877号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第33038771号の請求項1ないし7に係る発明についての出願は、平成5年10月8日に出願した特願平5-253280号の一部を平成12年4月12日(優先権主張平成4年12月28日)に新たな特許出願としたものであって、平成14年5月10日にその発明について特許の設定登録がなされた後、平成15年1月22日付けで特許異議申立人小原和子より請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てがなされ、平成15年5月27日付けで請求項1に係る特許に対する取消理由通知がなされ、その指定期間である平成15年7月23日に訂正請求がなされ、平成15年8月7日に特許異議申立人小原和子に対して審尋がなされたが、何らの応答もない。


2.訂正の適否についての判断

2-1 訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。

【訂正事項a】
特許請求の範囲の請求項1に記載されている
「内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす上記外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたことを特徴とするガス放電表示装置。」を
「内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす上記外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたことを特徴とするガス放電表示装置。」
に訂正する。

【訂正事項b】
段落番号【0014】及び【0063】に記載されている
「交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、」を
「交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、」
に訂正する。


2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

上記の【訂正事項a】及び【訂正事項b】に関連する記載として、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)には、
「【0032】ぞの後、BでXラインにX側維持パルスXSPが印加されるが、この電圧値は消灯状態の画素が放電を開始することができない電圧値に設定してあるので、画素R12は消灯状態を持続する。一方、画素R11は先の書き込み期間で放電しているので、電極間に多数の電荷が存在しており、XSPで再び放電する。この放電により発生した電荷が、外部印加電圧XSPを打ち消す向きに、放電ランプ内壁の電極部表面に蓄積し(以下、壁電荷と呼ぶ)内部電界が弱くなり、放電が停止する。
【0033】その後、CでXラインが0電位になり、YラインにY側維持パルスYSPが印加されると、この外部印加電圧は壁電荷による電圧(以下、壁電圧と呼ぶ)と同方向であるので、両電圧の合計電圧が放電可能な電圧値以上となり、再び放電する。その後、再びYSPを打ち消す向きに壁電荷が蓄積し、放電が停止する。
【0034】その後、DでYSPが立ち下がりYラインが0電位になると、電極間には壁電荷による電界が生じる。このとき電極間の放電空間にはまだ多量の空間電荷が存在しているので、壁電荷による電界だけでも放電する。この放電によって発生した電極部近傍の空間電荷によって、壁電荷の一部は消滅するが、残ったものはその後も残り続け、再びEでXSPが印加されると、外部印加電圧と壁電圧の合計が放電可能な電圧値以上となり、再び放電する。このように書き込み期間に放電した画素は壁電荷を利用して、維持期間は維持パルスで放電発光を持続するが、書き込み期間で放電しなかった画素は、維持パルスが印加されても消灯状態を持続する。」(【0032】〜【0034】)と記載されており、
X側維持パルスXSP とY側維持パルスYSPは、交流電圧パルスを形成し、その立ち上がりBと立ち下がりCで壁電荷を放電させているから、
「交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、」は特許明細書に記載されているものと認める。
そうすると、上記の【訂正事項a】は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、交流電圧を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加にも該当しない。そして、上記訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、上記の【訂正事項b】は、特許明細書に記載された事項と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加にも該当しない。そして、上記訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3 独立特許要件の判断
請求項7は、訂正された請求項1を引用しており実質的に訂正されているので、独立特許要件について判断すると、当審が通知した取消理由通知書で引用した、刊行物1(「Prospects of Multicolor Capabilities in Plasma Display using Tubular Construction」 1973 SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST OF TECHNICAL PAPERS,May 16,1973 pp78-79)、刊行物2(特開平03-225745号公報)のいずれにも、「交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させる」ことについては、記載されていない。
したがって、請求項7に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明と同一であるとも、上記刊行物1及び2に記載された発明から容易に発明をすることができたとも認められないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

2-4 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


3.特許異議の申立てについて

3-1 本件発明
上述のとおり、本件訂正請求は認められるので、本件発明は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本件発明1」という。)

【請求項1】内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす上記外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたことを特徴とするガス放電表示装置。

3-2 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、下記の甲第1号証を提出して、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである旨主張する。

甲第1号証:「Prospects of Multicolor Capabilities in Plasma Display using Tubular Construction」 1973 SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST OF TECHNICAL PAPERS,May 16,1973 pp78-79 (以下の「刊行物1」と同一。)

3-3 取消理由の概要
取消理由の概要は、
理由1.訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
理由2.訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物1〜2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有するものが、容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

刊行物1:「Prospects of Multicolor Capabilities in Plasma Display using Tubular Construction」 1973 SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST OF TECHNICAL PAPERS,May 16,1973 pp78-79 (申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平03-225745号公報

3-4 各刊行物に記載された発明

上記刊行物1(甲第1号証)には、Figure 1. 、Figure 2. 及びTable 1.とともに、

(1-1)「The objective of the work reported here was to investigate the feasibility of achieving multicolor capability with bistable plasma display panels using tublar-type construction.
The tublar construction concept has been discussed previously. Basically it consists of an array of glass capillary tubes with orthogonal sets of drive electrodes bonded to their external surfaces.」(78頁左欄4〜11行)
(ここに報告する研究の目的は、管状構造を用いた双安定プラズマディスプレイの多色化実現性を探ることであった。
管状構造の考えは、以前から議論されている。その考えは、基本的には、ガラス細管のアレイに、ガラス細管の外表面に貼り付けられた駆動電極の複数対を直交状態(マトリックス状)に配置するというものである。)

(1-2)「Figure 1 shows a technique by which a phosphor coating may be deposited on one of the interior walls of the glass capillary tubes.」(78頁右欄3〜5行)
(図1は、ガラス細管の内壁の片側に蛍光体層をデポジットする方法を示している。)

(1-3)「Both static and dynamic characteristics are important in the operation of a plasma display. Static operation is the situation that exists when displayed information is not being altered. Dynamic operation when data is written or erased on the plasma panel.
Typical static sustain voltage limits for phosphor-coated tubes are shown as a function of kryoton and xenon pressure in Figure 2.」(78頁右欄30〜37行)
(静的及び動的特性は、共に、プラズマディスプレイの動作において重要である。静的動作は、表示情報が変化しないときの状態である。動的動作は、データがプラズマパネルに書き込まれたり消去されたりするときに発生する。
図2に、蛍光体がコーティングされた管の、典型的な静的維持電圧の上限値及び下限値が、クリプトン及びキセノンの封入圧の関数として示されている。)

(1-4)「A rule of thumb which we use with our neon-filled plasma displays is that there is adequate dynamic margin when the static margin exceeds 15 percent.
Here,margin is defined as the quatient of the sustain range divided by the average sustain voltage in that range. With a krypton pressure of 400 Torr,the static sustain margin is approximately 20 percent for the abobe phosphers. Alphanumeric information has been displayed by selectively erasing a fully lighted panel.」(78頁右欄43〜51行)
(経験的には、ネオン充填プラズマディスプレイについては、静的マージンが15パーセント以上あれば、動的マージンは十分である。
ここに、マージンとは、維持電圧の上限値〜下限値の範囲を、その範囲の維持電圧の平均値で割った値である。クリプトンの封入圧が400Torrでは、静的な維持マージンは、上記種々の蛍光体について、約20パーセントである。英数字情報が、全点灯パネルを部分的に消去することによって表示された。)

(1-5)「Table 1.Optical characteristics of a color plasma display panel with 0.030-inch element spacing and a sustain voltage amplitude of 400 volts at 50KHz.

Phosphor Gas Presssure Brightness

- Kr 400Torr
- Xe 250Torr

」(79頁左欄Table 1.)
(表1.カラープラズマディスプレイの光学的特性、素子間距離0.030インチ、維持電圧400V50KHz。

蛍光体 ガス 封入圧 明るさ

- クリプトン 400Torr
- キセノン 250Torr

)

が記載されている。

上記刊行物2には、
(2-1)「かかる構造の希ガス放電灯1は、第3図に示すように、高周波点灯回路8を介して交流電源7に帯状電極6a,6bが接続され、両帯状電極6a,6b間に所定の高周波高電圧、例えば30KHz,1600Vが印加される。」(第3頁右上欄15行〜同19行)

(2-2)「ここで、各サンプルはガラスバルブ2として外径6mmφ、肉厚0.5mm、長さ300mm(φ6×0.5t×300l)のソーダ製ガラスバルブ、帯状電極6a、6bとして幅員Wmm、長さ300mmのアルミ箔、封入ガスとしてキセノンガス65torrとし、印加電源28KHz×1600Vで点灯評価した。」(第3頁左下欄11行〜同16行)

(2-3)「封入圧を上昇することにより高い照度が得られるが、100torr以上封入するとチラツキが発生する。このチラツキを防止するには点灯印加電圧が2000V以上となり好ましくない。従って、封入圧は45torr乃至100torrとすることが適切である。」(第4頁左上欄20行〜同右上欄5行)

が記載されている。

3-5 対比・判断

本件発明と
刊行物1に記載された発明
「内部にクリプトン又はキセノン(希ガスに相当。)を封入したガラス細管(容器に相当。)と、上記ガラス細管(容器に相当。)の外表面(外壁に相当。)に貼り付けられた(設けたに相当。)複数対(一対以上に相当。)の駆動電極(外部電極に相当。)と、上記駆動電極(外部電極に相当。)に面したガラス細管の内壁(容器内壁に相当。)にデポジットした(設けたに相当。)蛍光体層(蛍光体に相当。)とを備えたガラス細管(放電ランプに相当。)をアレイに配列(複数配列に相当。)し、互いに対をなす上記駆動電極(外部電極に相当。)間に上記ガラス細管(放電ランプに相当。)の維持電圧(放電開始電圧より低い所定の電圧に相当。)の交流電圧を印加して、上記駆動電極(外部電極に相当。)に面したガラス細管の内壁(容器内壁に相当。)に蓄積された壁電荷を放電させ、上記ガラス細管(放電ランプに相当。)発光を維持して英数字表示(画像表示に相当。)を行う双安定駆動方式(メモリ駆動方式に相当。)によるプラズマディスプレイ(ガス放電表示装置に相当。)において、上記ガラス細管(容器に相当。)内部に封入するクリプトン又はキセノン(希ガスに相当。)の封入圧(封入圧力に相当。)を400Torr又は250Torr(60Torr以上に相当。)としたことを特徴とするプラズマディスプレイ(ガス放電表示装置に相当。)。」
とを対比すると、両者は

【一致点】
「内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす上記外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたことを特徴とするガス放電表示装置。」で一致し

【相違点】
本件発明は、交流電圧パルスを印加して、交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させているのに対して、
刊行物1に記載された発明は、交流電圧がパルスかどうか不明であるし、駆動電極(外部電極に相当。)に面したガラス細管の内壁(容器内壁に相当。)に蓄積された壁電荷の放電が、交流電圧の立ち上がりと立ち下がりとの両方で起こるかどうかも不明である点
で相違する。

そこで上記相違点について検討すると、
刊行物2には、「高周波点灯回路8」、「印加電源28KHz×1600Vで点灯評価した。」との記載があるのみで、「交流電圧パルスを印加して、交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させる」ことを示唆する記載はない。
したがって、本件発明は、刊行物1〜2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
そして、本件発明は、その技術的事項により明細書記載の効果を奏するものと認められる。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ガス放電表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす上記外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、
上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたことを特徴とするガス放電表示装置。
【請求項2】 内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体と、上記容器の内部に挿入された内部電極とを備えた放電ランプを複数配列し、上記外部電極及び上記内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、
上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたことを特徴とするガス放電表示装置。
【請求項3】 内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす上記外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、
上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記電気的特性の違いに応じて別々に電圧印加手段を設け、上記各電圧印加手段により各放電ランプに印加する電圧のパルス波形を変えて各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性を変化させたことを特徴とするガス放電表示装置。
【請求項4】 内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす上記外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、
上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を上記各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性の違いに応じて別々に調整し、メモリ駆動における電気的特性を変化させたことを特徴とするガス放電表示装置。
【請求項5】 内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体と、上記容器の内部に挿入された内部電極とを備えた放電ランプを複数配列し、上記外部電極及び上記内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、
上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記電気的特性の違いに応じて別々に電圧印加手段を設け、上記各電圧印加手段により各放電ランプに印加する電圧のパルス波形を変えて各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性を変化させたことを特徴とするガス放電表示装置。
【請求項6】 内部に希ガスを封入した容器と、上記容器の外壁に設けた外部電極と、上記外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体と、上記容器の内部に挿入された内部電極とを備えた放電ランプを複数配列し、上記外部電極及び上記内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、
上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を上記各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性の違いに応じて別々に調整し、メモリ駆動における電気的特性を変化させたことを特徴とするガス放電表示装置。
【請求項7】 互いに対をなす電極間に放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持する手段と、上記電極間に印加される交流電圧パルスの一方の極性の電圧パルスを1回以上除去し、他方の極性の電圧パルスを2回以上続けて印加することにより放電発光を停止する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のガス放電表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は複数のガス放電ランプを用いて大画面を構成する大型カラーディスプレイ装置や電光掲示板などのガス放電表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスバルブなどの誘電体容器の外壁に複数対の面状電極を設け、内部にキセノンなどの希ガスを封入した蛍光ランプを複数配列し、上記面状電極に印加される電圧を制御して、蛍光ランプを部分的に放電発光制御し、画像表示を行う表示装置が本出願人により発明され、例えば特開平5-82101号公報に示されている。この種の表示装置は放電により希ガスのエキシマ(excimer)を発生させ、エキシマから放射される紫外線により蛍光体を励起発光させるので高輝度・高効率である。
【0003】
図1(a)及び(b)は、例えば特開平5-82101号公報に示されたこの種の表示装置を構成する蛍光ランプを示す斜視図および断面図であり、図において1は蛍光ランプ、2は蛍光ランプ1を構成するガラスバルブ、3はガラスバルブ2の内壁のほぼ半面に形成された蛍光体層、4は蛍光体層3の対向側であって蛍光体層が形成されていない光出力部である。5a、5bは蛍光体層3が形成されている部分の外壁に設けられ、画素6を構成する外部電極で、ガラスバルブ2の軸方向に沿って複数対設けられている。7は画素と画素の間にガラスバルブ2を窪ませて形成した窪み部である。またガラスバルブ2の内部にはキセノンなどの希ガスが封入されている。図19において、8は上述の蛍光ランプ1を複数配列し各画素の電極をマトリクス状に接続して構成した表示装置である。
【0004】
外部電極5a及び5bより交流電圧が印加されると、電極間で放電が起こり、放電によりガラスバルブ2の内壁の電極部表面上に希ガスのエキシマが生じ、このエキシマから放射される紫外線によって、ガラスバルブ2の内壁に形成された蛍光体層3を励起し可視光が光出力部4より照射される。このとき放電を起こした電極部しか発光しないので、画素とすることができる。従って、この蛍光ランプを複数配列することにより、画像表示を行うことができる。
【0005】
一方、外部電極より印加された電力が、誘電体であるガラスを介して放電空間内部に供給され、放電発光が起こることにより表示を行う表示装置として、AC形プラズマディスプレイパネル(以下、AC-PDPと呼ぶ)がよく知られている。
【0006】
このAC-PDPの駆動方式の一つにメモリ駆動がある。即ちAC-PDPは発光パネル自体が、放電発光状態と消灯状態の二つの状態を、容易に持続できるというメモリ機能を有しており、このメモリ機能を利用した駆動方式がメモリ駆動である。メモリ駆動はその動作期間が、書き込み、維持、消去期間に分かれており、書き込み期間で一度放電を起こした画素は、維持期間中、放電開始電圧より低い電圧で放電発光を持続し、消去期間で放電発光を停止する。このため走査時しか発光しないリフレッシュ駆動など他の駆動方式とは異なり、高輝度の画像表示が可能である。メモリ駆動はAC-PDPでよく用いられている。
【0007】
図20(a)及び(b)は、例えば、“プラズマディスプレイ”(大脇健一他:21頁乃至22頁,共立出版,1983年発行)に示された従来のAC-PDPの構造を示す斜視図及び断面図である。図において、8は従来のAC-PDP、2a及び2bは従来のAC-PDP8を構成するガラス板で、ガラス板2a、2bの内側表面には線状電極5a,5bが互いに直行して設けられており、線状電極5a,5bの交点は放電により発光する画素6となっている。また、ガラス板2a,2bの内側表面には線状電極5a,5bを覆って、誘電体層11が形成され、さらにその上には保護層12が形成されており、図示していないが、AC-PDP8の内側の適当な箇所には赤(R),緑(G),青(B)に発光する蛍光体が印刷などの方法で形成されており、AC-PDP1の内部にはヘリウムとキセノンの混合ガスなどが封入されている。
【0008】
AC-PDPの線状電極5a,5b間には、放電開始電圧未満の交流電圧が常時印加されている(維持パルス)。電極間に放電開始電圧を越える電圧(書き込みパルス)が印加されると、電極間で放電を開始し、その後はAC-PDP内側の誘電体層表面に電荷が蓄積し壁電荷を形成するので、放電開始電圧未満の維持パルスでも放電発光を持続する。次に、電極間に微弱放電を起こすような電圧パルス(消去パルス)を印加すると、この放電によって発生した空間電荷が誘電体層表面の壁電荷と再結合し、壁電荷が消滅するので、その後は維持パルスが印加されても放電発光は起こらない。
【0009】
図21(a)及び(b)は例えば上記同一文献に示された従来のAC-PDPの消去方式(太幅消去法)及びその消去可能範囲(消去特性)を示す図である。図においてSPは従来のAC-PDP8の線状電極5a,5b間に印加され、放電発光を持続するための維持パルス、EPは微弱放電を起こして、放電発光を停止させるための消去パルスである。消去パルスは、維持パルスとほぼ同じ幅で、電圧値が小さいものである。図21(b)は消去パルス電圧値(横軸)と維持パルス電圧値(縦軸)の関係を示したもので、図の略三角形で囲まれた部分が消去可能範囲で、維持パルス電圧値、消去パルス電圧値はこの範囲に設定される。
【0010】
またAC-PDPでは上記太幅消去法のほかに、例えば同一文献に示された細幅消去法がある。これは維持パルスとほぼ同じ電圧値で、印加時間の短い消去パルスを印加して消去を行う方式で、太幅消去法に比べ消去可能範囲が大きい。すなわち消去パルスを印加し放電が起こると、逆極性の壁電荷を形成する前に電圧が除去されるので、電圧除去直後に残存していた壁電荷は、放電によって発生した空間電荷をクーロン力によって吸引し、再結合し、消滅する。太幅消去法は外部電圧による強制吸引によって、空間電荷と壁電荷を再結合させているため、消去可能範囲が略三角形になるが、細幅消去法は壁電荷自身の自然吸引力によって再結合を行っているので、壁電荷は常に0に収束し、消去可能範囲を大きくすることができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このAC-PDPで既に確立されているメモリ駆動方式を利用して前述のエキシマ発光によるガス放電表示装置を駆動することは有効な手段であるが以下のような課題がある。
即ち、上記前者のようなエキシマ発光を利用した蛍光ランプを複数配列し、各画素の電極をマトリクス接続したガス放電表示装置では、AC-PDPと画素サイズが大きく異なるため、放電特性が異なり、メモリ駆動により駆動制御すべく上記AC-PDPの消去方式をそのまま採用しようとしても、大きな放電空間では空間電荷の残存量が多く消去動作が困難であるという問題点があった。
【0012】
更に、異なる発光色の蛍光体を使用した蛍光ランプ間では、電極部表面に蛍光体層が形成されているので、放電開始電圧、最小維持電圧などの電気的特性が蛍光体の種類によって異なるため、複数の発光色の蛍光ランプを配列した画像表示装置でメモリ駆動しようとしても、上記AC-PDPのような消去方式では、各色毎の消去可能範囲が殆ど重ならず各画素の電極をマトリクスに接続し放電発光制御できないという問題点があった。
【0013】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、電気的特性が異なる放電ランプを複数配列した場合でも放電発光制御が可能なガス放電表示装置を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るガス放電表示装置は、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたものである。
【0015】
また、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた外部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体と、上記容器の内部に挿入された内部電極とを備えた放電ランプを複数配列し、上記外部電極及び上記内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたものである。
【0016】
また、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記電気的特性の違いに応じて別々に電圧印加手段を設け、上記各電圧印加手段により各放電ランプに印加する電圧のパルス波形を変えて各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性を変化させたものである。
【0017】
また、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた一対以上の外部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす外部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を上記各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性の違いに応じて別々に調整し、メモリ駆動における電気的特性を変化させたものである。
【0018】
また、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた外部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体と、容器の内部に挿入された内部電極とを備えた放電ランプを複数配列し、外部電極及び内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記電気的特性の違いに応じて別々に電圧印加手段を設け、上記各電圧印加手段により各放電ランプに印加する電圧のパルス波形を変えて各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性を変化させたものである。
【0019】
また、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた外部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体と、容器の内部に挿入された内部電極とを備えた放電ランプを複数配列し、外部電極及び内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を上記各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性の違いに応じて別々に調整し、メモリ駆動における電気的特性を変化させたものである。
【0020】
また、上記各ガス放電表示装置に対して、互いに対をなす電極間に放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持すると共に、上記電極間に印加される交流電圧パルスの一方の極性の電圧パルスを1回以上除去し、他方の極性の電圧パルスを2回以上続けて印加することにより放電発光を停止するようにしたものである。
【0021】
【作用】
この発明におけるガス放電表示装置は、容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上とすることにより放電ランプ内の空間電荷の再結合が促進され、維持電圧の設定範囲及び相関関係にある消去電圧の設定範囲が拡大する。
この結果、電気特性が異なる放電ランプ間における維持電圧及び消去電圧の共通電圧範囲が拡大する。
【0022】
また、電気的特性の異なる放電ランプ毎に別々に設けられた電圧印加手段により各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性に適合したパルス波形の電圧が印加され、各放電ランプ毎に見掛け上統一した制御がなされる。
【0023】
また、電気的特性の異なる放電ランプ毎に希ガスの封入圧力を個別に設定して各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性を変化させることにより、各放電ランプの電気的特性が近似され、各放電ランプが同等に制御される。
【0024】
また、互いに対をなす電極間に放電開始電圧より低い所定の維持電圧が印加されると、該電極付近に蓄積する壁電荷及び容器内に残存する空間電荷とで放電ランプが発光可能な電圧値に達し放電が起き、発光が維持する。
さらに、交流電圧パルスの一方の極性が1回以上除去されると共に他方の極性が2回以上続けて印加されることにより、電極に蓄積された壁電荷が消滅し、維持電圧を印加しても放電ランプが発光可能な電圧値に達せず、発光が停止する。
【0025】
【実施例】
実施例1.
以下、この発明の一実施例を図を用いて説明する。図1において、1はこの発明の表示装置を構成する蛍光ランプ、2は蛍光ランプ1を構成する外径3mm、厚さ0.2mm、長さ192mmの鉛ガラス製のガラスバルブ、ガラスバルブ2の内壁のほぼ半面には蛍光体層3が形成され、蛍光体層3の対向面は蛍光体層が形成されていない光出力部4となっており、ガラスバルブ2の内部にはキセノンなどの希ガスが所定の圧力で封入されている。蛍光体層3が形成されている部分の外壁には、長さ約4mm、幅約4mmの外部電極5a,5bが電極間隔0.4mmで設けられ画素6を構成し、ガラスバルブ2の軸方向に沿って12mmピッチで16画素設けられており、1つの画素と隣合う画素との間には、ガラスバルブ2を窪ませて形成した窪み部7が設けられている。
【0026】
また、図2(a)及び(b)はこの発明の表示装置を示す正面斜視図及び背面斜視図で、8はこの発明の表示装置、1R,1G,1Bは表示装置8を構成する図1の構造の蛍光ランプである。1R,1G,1Bはそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の発光色の蛍光体層3が形成された蛍光ランプで、縦方向には同発光色、横方向にはR,G,Bの順に規則正しく配列され、必要画面サイズの表示面を構成している。また、各画素の外部電極5aは縦方向に、外部電極5bは横方向にマトリクス接続されている。すなわち外部電極5aは同色のランプのみ接続されており、表示データ内容に応じて電圧が印加されるデータライン(以下、Xラインと呼ぶ)で、また外部電極5bはR,G,Bの順に接続されており、走査用の走査ライン(以下、Yラインと呼ぶ)である。
【0027】
図3はこの発明の表示装置の駆動部の概略を示すブロック図で、8はこの発明の表示装置、6は上記外部電極5a,5bより構成された画素、9はXラインに接続されたX側駆動回路(データ側駆動回路)、10はYラインに接続されたY側駆動回路(走査側駆動回路)である。なお、図示していないがX側駆動回路9及びY側駆動回路10は制御回路に接続されている。
【0028】
このような構成の表示装置について動作を説明する。X側駆動回路9及びY側駆動回路10よりXライン及びYラインに放電開始電圧以上の電圧が印加されると、その交点の画素6が放電発光する。Yラインは走査用ラインであるので、Y方向に順次あるいは任意に走査して、電圧が印加される。Xラインはデータラインであるので、放電発光させたい画素がYラインによって走査されたとき、放電発光させたい画素のXラインに電圧を印加すると、その交点の画素が放電発光する。このようにして、任意の画素を放電発光させることができ、画像表示を得ることができる。また、メモリ駆動により駆動する場合は、全画素にほぼ常時維持パルスが印加されており、書き込み走査、消去走査を行うことにより、任意の画素を放電発光制御することができる。
【0029】
以下、この発明の表示装置のメモリ駆動について詳しく説明する。図4は例えばこの発明の表示装置の画素R11,R12の駆動電圧波形を示したもので、上から順にXR1,Y1,Y2電極に印加される電圧波形、及びXR1-Y1電極間,XR1-Y2電極間の電圧波形である。図においてXSP及びYSPはX側及びY側維持パルス、XWP及びYWPはX側及びY側書き込みパルスである。X側維持パルスXSP、Y側維持パルスYSPは20〜200kHz程度で、X側書き込みパルスXWPはX側維持パルスXSP2回以上に1回の割合で印加され得る。
【0030】
Y側電極は走査ラインであるから、動作期間が、書き込み、維持、消去期間に分かれており、その動作期間に対応した電圧パルスが各Y側電極に印加され、消去期間以外は規則的にY側維持パルスYSPが印加される。また、書き込み期間にはY側維持パルスとは逆極性のY側書き込みパルスYWPが印加される。一方、Xラインはデータラインであるから、表示内容に応じて任意にX側書き込みパルスXWPが印加され、X側維持パルスXSPは常時規則的に印加される。なお、図4ではXWP,XSP,YSPは負極性、YWPは正極性としたが、それぞれその逆でもよい。
【0031】
次に図4のAからHまでの期間の動作を順を追って説明する。まずAの書き込み期間前では、画素R11,R12は消灯状態である。次にY1書き込み期間にY1ラインにY側書き込みパルスYWPが印加され、このとき同時にX側書き込みパルスXWPが印加され、YWPとXWPの合計電圧が放電開始電圧以上になり、画素R11は放電を開始する。次にY2書き込み期間になると、Y2ラインにY側書き込みパルスYWPが印加されるが、このときX側書き込みパルスXWPが印加されていないので、画素R12は放電しない。
【0032】
ぞの後、BでXラインにX側維持パルスXSPが印加されるが、この電圧値は消灯状態の画素が放電を開始することができない電圧値に設定してあるので、画素R12は消灯状態を持続する。一方、画素R11は先の書き込み期間で放電しているので、電極間に多数の電荷が存在しており、XSPで再び放電する。この放電により発生した電荷が、外部印加電圧XSPを打ち消す向きに、放電ランプ内壁の電極部表面に蓄積し(以下、壁電荷と呼ぶ)内部電界が弱くなり、放電が停止する。
【0033】
その後、CでXラインが0電位になり、YラインにY側維持パルスYSPが印加されると、この外部印加電圧は壁電荷による電圧(以下、壁電圧と呼ぶ)と同方向であるので、両電圧の合計電圧が放電可能な電圧値以上となり、再び放電する。その後、再びYSPを打ち消す向きに壁電荷が蓄積し、放電が停止する。
【0034】
その後、DでYSPが立ち下がりYラインが0電位になると、電極間には壁電荷による電界が生じる。このとき電極間の放電空間にはまだ多量の空間電荷が存在しているので、壁電荷による電界だけでも放電する。この放電によって発生した電極部近傍の空間電荷によって、壁電荷の一部は消滅するが、残ったものはその後も残り続け、再びEでXSPが印加されると、外部印加電圧と壁電圧の合計が放電可能な電圧値以上となり、再び放電する。このように書き込み期間に放電した画素は壁電荷を利用して、維持期間は維持パルスで放電発光を持続するが、書き込み期間で放電しなかった画素は、維持パルスが印加されても消灯状態を持続する。
【0035】
その後、Fの消去期間になるとYSPが印加されず、Yラインは0電位のままであるので、XSPの立ち下がりで放電を起こし、この放電により壁電荷が消滅され、その後逆方向には蓄積されないので、次のGでXSPが印加されても放電することができない。この壁電荷を消滅することを消去動作と呼ぶ。その後、再び書き込み期間になり、各書き込み期間でXWPが印加されると、画素R11,R12は放電し、H以後の維持期間は上述と同様に放電発光を持続し、再び次の消去期間で壁電荷を消滅し、放電発光を停止する。
【0036】
このように壁電荷を利用し、点灯・消灯の状態を維持することができる特性がメモリ機能であり、AC-PDPやこの発明のガス放電方式の蛍光ランプ自体が本来持っている特性である。なお、図4で維持期間にXWPが印加されているが、これはこのとき他のYラインが書き込み期間であり、それに対する書き込みパルスであり、もちろんこれによって点灯あるいは消灯の状態は変化しない。
【0037】
次に消去動作の原理について詳しく説明する。図5は本発明の表示装置の蛍光ランプの電圧波形と発光波形を示したものである。図のように本発明の表示装置は維持パルスの立ち下がりで放電が起こるが、一般にAC-PDPでは維持パルスの立ち下がりで放電は起こらない。これは放電空間のサイズが本発明のものとAC-PDPとで大きく違うため、放電によって生じた空間電荷の消滅に懸かる時間が大きく違うからである。
【0038】
AC-PDPではパルスの立ち上がりで放電し、そのとき発生した電荷が電極に吸引されて、壁電荷を形成し、外部印加電圧を打ち消し、内部電界が放電持続不可能なまで弱くなると放電が停止する。その後、放電空間に残った空間電荷は、放電空間容積が小さいため、空間電荷の残存量が少なく、短期間で再結合を完了し、パルスの立ち下がりでは放電可能な程度までは残っていない。そのためパルスの立ち下がりでは放電せず、壁電荷は蓄積されたままの状態を持続する。したがってAC-PDPでは細幅消去法のように、細幅消去パルスを印加し放電させ、この放電によって空間電荷を発生させ、その後は壁電荷自身の自然吸引力によって、壁電荷と空間電荷が再結合し、壁電荷を消滅させている。
【0039】
一方、この発明の表示装置の蛍光ランプは、空間容量がAC-PDPに比べはるかに大きいため、空間電荷の残存量が多く、図5のようにパルスの立ち下がりで必ず放電が起こるので、AC-PDPのように細幅消去パルスを印加せず、維持パルスの立ち下がりで起こる放電によって壁電荷を消滅することができる。これはAC-PDPの細幅消去法と同様の原理、すなわち壁電荷自身の自然吸引力による壁電荷の消滅を応用したものである。したがって本実施例に示したように、一方の維持パルスを一回以上除去する消去方式は、放電空間が大きい場合のガス放電表示装置に適した特に有効な消去方式である。
【0040】
次にこの蛍光ランプの放電特性について述べる。図6(a)は蛍光体をGd2O3:Eu(赤)とし、内部にキセノンを70Torr封入し、維持パルスの立ち下がりで起こる放電後の電極間の壁電荷及び空間電荷の残存量の時間的変化を示すものである。また、図6(b)及び(c)は蛍光体をそれぞれGd2O3:Eu(赤)及びBaAl12O19:Mn(緑)とし、内部にキセノンを90Torr封入したときのものである。図7は図6(a)乃至図(c)の測定結果を得るために用いた電圧波形である。これは放電発光状態の画素において、図7のようにY側維持パルスYSPの立ち下がりから、次にX電極に印加する電圧パルスの時間を変化させて、そのとき放電が起こる電圧値を測定し、時間を横軸に、電圧値を縦軸にグラフ化したものである。
【0041】
なお、一つの図に複数本の測定結果があるが、これらはそれぞれ放電発光時のX側及びY側維持パルス(XSP及びYSP、測定結果はXSP=YSP)の電圧値を変えたものである。この蛍光ランプは上述のように、壁電荷による電圧(壁電圧)と外部印加電圧の合計が放電可能な電圧値以上であれば放電する。放電可能な電圧値は電極間の空間電荷の残存量とも大きく関係する。すなわち空間電荷の残存量が多いと放電が起こり易く、放電可能な電圧値は低くなり、空間電荷残存量が少ないと、放電可能な電圧値は高くなる。したがって、図6(a)乃至(c)で約20μsec以内でグラフが急激に上昇しているのは、空間電荷が多量に残存しているためで、時間が経つとグラフが飽和しているのは、空間電荷の残存量が非常に少なくなっているためである。
【0042】
一方、グラフが飽和している電圧値が異なるのは、壁電荷の残存量が異なるためである。すなわち、壁電圧と外部印加電圧値の合計が放電可能な電圧値になると放電が起こるので、グラフの飽和電圧値が低いほど、壁電荷の残存量が低いということになる。したがって維持パルスの電圧値が低いと壁電荷の残存量が多いということになり、これは維持パルスの立ち下がりでの放電が小さいと、その放電によって発生する空間電荷量が少なく、壁電荷の再結合に利用される壁電荷近傍の空間電荷量も少ないためである。なお、約20μsec以内のグラフの上昇は封入ガス圧が高い方が急激であり、これは封入ガス圧が高いほど、空間電荷が互いに衝突する確率が高くなるため、空間電荷の再結合が起こり易くなるからである。
【0043】
図6(a)乃至(c)に示すように、グラフは維持パルス電圧値が最小維持電圧の約1.4倍の電圧値のとき最も急激に上昇し、最も高い電圧値で飽和している。ここで最小維持電圧とはX側維持パルスXSPとY側維持パルスYSPの電圧値を同じ値として、放電発光状態から電圧を徐々に低下させたときの、放電発光が維持可能な最小の電圧値である。このように最小維持電圧の1・4倍の電圧値でグラフが最も急激に上昇するのは、このとき壁電荷の蓄積量と、壁電荷の消滅に利用される空間電荷量が釣り合っており、1.4倍の電圧値以下では壁電荷の消滅に利用される空間電荷量が不足しており、壁電荷が蓄積されたまま残存し、1.4倍の電圧値以上では壁電荷を全て消滅しても、過剰の空間電荷が残存しているためである。Y側維持パルスは維持期間において、放電発光を持続するためのものであるから、Y側維持パルスの立ち下がりの放電で壁電荷を全て消滅させることは好ましくなく、したがって、Y側維持パルスは最小維持電圧の1.4倍の電圧値以下にすることが望ましい。
【0044】
また、消去動作はY側維持パルスを1回以上除去し、X側維持パルスの立ち下がりの放電によって行われるので、壁電荷の消滅に利用される空間電荷を多量に発生させるためにはX側維持パルス電圧値は高い方がよい。しかし、過剰の空間電荷が発生すると、X側あるいはY側のどちらか一方が印加されただけでも放電してしまうなど、他の動作に悪影響を与えるので好ましくない。図8(a)及び(b)は例えば蛍光体をBaAl12O19:Mn(緑)及びLaPO4:Ce,Tb(黄緑)とし、図4の駆動方式で、維持パルス周波数を61kHzとし、メモリ駆動した場合の正常動作電圧範囲を示したものである。これよりX側維持パルス電圧値は最小維持電圧値の1.1倍乃至1.6倍の範囲に設定することが望ましい。
【0045】
実施例2.
図9はこの発明の他の実施例の駆動電圧波形を示す図であり、電圧波形は上から順に、X電極(データ側),Yi,Yj(走査側)電極に印加される電圧波形、及びX-Yi電極間,X-Yj電極間の電圧波形である。図においてXWP,YWPは上記実施例と同様、X側,Y側書き込みパルスである。またXSP,YSPはともにY側電極に印加される正負の電圧パルスであるが、上記実施例のXSP,YSPと同様の働きをするので、本実施例においてもXSP,YSPとする。本実施例ではデータ側であるX電極は、表示内容に応じてX側書き込みパルスXWPが印加され、それ以外のときはGND電位に固定されている。また、走査側のY電極は各動作期間に応じて、正負の電圧パルスが印加される。この結果、X-Y電極間の電圧波形は上記実施例と同様になり、上記実施例と同様の動作を行う。
【0046】
なお、本実施例では上記実施例とは書き込み方式が異なっているが、書き込み方式は特にこれに限るものではなく、本出願の発明は電圧パルスの立ち下がりで起こる放電で消去動作を行うものであれば、どのような駆動方式でもよい。また、本実施例の書き込み方式では、Y側書き込みパルスYWPは維持パルス(XSP)と同じ電圧値とし、パルス幅を書き込み期間にまで広げているもので、これにより、特にY側書き込みパルス用と維持パルス用のスイッチング素子や電圧源を、別々に設ける必要がなく、駆動回路を簡略化できる。
【0047】
実施例3.
図10及び11はこの発明の他の実施例の電極間の電圧波形を示す図で、図10は電極間電圧が0Vを経て、極性が変わる場合であり、図11は電極間電圧が0Vを経ないで、極性が変わる場合である。このような電圧波形によって駆動される場合であっても、一方の極性の電圧パルスを1回以上除去し、他方の極性の電圧パルスを2回以上続けて印加することにより、電圧が0Vになるパルスの立ち下がりで消去放電が起こり、上記実施例と同様に消去動作が行える。
【0048】
実施例4.
図12は例えば、この発明の表示装置をAC-PDPと同様に太幅消去法によってメモリ駆動した場合の消去期間の1画素に印加される電圧波形を示したものである。図において、正側の電圧パルスがX側電圧パルス、負側の電圧パルスがY側電圧パルスである。維持パルス周波数は122kHz、パルス幅は約2μsecである。消去パルスはY側にのみ2個印加されている。図13(a)及び(b)は蛍光ランプ内壁に形成される蛍光体を、それぞれ(Y,Gd)BO3:Eu(赤)及びBaAl12O19:Mn(緑)とし、蛍光ランプ内部に封入されるキセノンの封入圧力を変化させたときの消去パルス電圧値と維持パルス電圧値の関係を示したものである。また図13(c)はこれらを重ね合わせたものである。
【0049】
これより、封入圧力が50Torr以下では、消去可能範囲が従来の消去特性と同様、略三角形であり、この2色の蛍光ランプでは共通の消去可能範囲が得られない。しかし、封入圧力を60Torr以上に高くしていくと、消去パルス電圧値0Vでも消去可能となり、消去可能範囲の形状が略三角形から略台形に近づく。この消去パルス電圧値を0Vとした場合は上記実施例と同一の消去原理となる。この2組の蛍光体を使用した表示装置では、(Y,Gd)BO3:Eu(赤)が60Torr以上のとき、BaAl12O19:Mn(緑)を70Torr以上にすれば、共通の消去可能範囲ができるので、放電発光制御が可能である。
【0050】
このように、蛍光ランプ内に封入するキセノンの封入圧力を高くすると、太幅消去法でも消去可能範囲が拡大し、複数種類の蛍光体を使用した表示装置でも、メモリ駆動が可能になる。この表示装置の蛍光ランプは電極部表面に異なる種類の蛍光体層が形成されているので、蛍光体の種類によって二次電子放出係数などが異なり、このため電気的特性が異なる。上述のようにこの表示装置は画素サイズが大きく空間電荷の残存時間が長いことが消去動作において大きな問題であり、空間電荷の残存量が多いと放電可能な電圧値が低くなり、このため封入ガス圧が低いと空間電荷の残存量が多く、消去可能範囲が重ならなくなる。したがって、空間電荷の消滅を促進するため、封入ガス圧は高い方が良く、60Torr以上が望ましい。
【0051】
なお、本実施例では複数の発光色の蛍光ランプで構成された表示装置について述べたが、単色の発光色の蛍光ランプで構成された表示装置でも、各画素の消去可能範囲を拡大することができるので、画素間の電気的特性の影響を小さくすることができる。
【0052】
実施例5.
図14は画素を構成する外部電極をマトリクス状に接続し、同色の蛍光ランプに接続されたX側の電極に、蛍光体の発光色毎に別々のX側駆動回路を設けた、この発明のガス放電表示装置の他の実施例を示すブロック図である。図において表示装置8は上記実施例1に示したものと同一のものである。
【0053】
図15は例えば、蛍光体に(Y,Sc)2SiO5:Tb(黄緑)を用い、キセノンの封入圧力を50Torrとし、Y電圧パルスを上記実施例4に示したものと同一条件とし、X電圧パルス幅を変化させたときの、消去可能範囲の変化を示したものである。このように、X電圧パルスのパルス幅、電圧値などを変えることにより、メモリ駆動特性を変化させることができるので、発光色毎に電気的特性の異なる蛍光ランプであっても、発光色毎に駆動回路を別々にすれば、画像表示装置として駆動制御が可能である。さらに、X側電圧パルスの電圧値、パルス幅を色毎に変えることにより、各色の輝度を別々に変えることができるので、輝度比、色バランスを調整することができる。
【0054】
実施例6.
蛍光体の種類により放電開始電圧、最小維持電圧などの電気的特性が異なる蛍光ランプは、内部に封入する希ガスの圧力を調節することによって、電気的特性を近づけることができる。例えば、上記実施例1に示したように、蛍光体にGd2O3:Eu(赤)を使用した蛍光ランプの封入圧力を80Torrとすると、BaAl12O19:Mn(緑)を使用した蛍光ランプの封入圧力は90Torr程度が適当である。また、蛍光体に(Y,Sc)2SiO5:Tb(黄緑)を使用したものは、Gd2O3:Eu(赤)やBaMgAl14O23:Eu2+(青)を使用したものに比べ、放電開始電圧が高いので、例えば、これらを使用した画素表示装置では、Gd2O3:Eu(赤):80Torr、(Y,Sc)2SiO5:Tb(黄緑):60Torr、BaMgAl14O23:Eu2+(青):80Torr程度にすれば、駆動制御が可能である。
【0055】
実施例7.
図16(a)及び(b)はともに円筒状のガラスバルブ2の端面のひとつを透明にして光出力部4とし、他の部分の内壁に単色の蛍光体層3を設けた場合の実施例を示す。外部電極5a,5bはガラスバルブ2の周面のほぼ全面に設けられている。これは極めて大きな光出力を必要な場合に適した構造である。図17はこのような蛍光ランプを複数色マトリクスに配列し画像表示装置8としたものである。図において各蛍光ランプ1の外部電極5a,5bは上記実施例と同様、マトリクス接続されている。
【0056】
このように1画素を1個の蛍光ランプで構成した表示装置においても、上記全ての実施例が適用でき、同様の効果が得られる。
【0057】
実施例8.
図18は円筒状のガラスバルブ2の端面のひとつを透明にして光出力部4とし、他の部分の内壁に単色の蛍光体層3を設けた場合の他の実施例を示す。ガラスバルブ2の周面のほぼ全面にはひとつの外部電極5aが設けられ、光出力部4の反対側の端面から内部電極5bが蛍光ランプ1の内部に挿入されている。
【0058】
このような構造の蛍光ランプでも電極間に電圧を印加すると、放電を起こし、外部電極5aに面した、蛍光ランプ内壁の蛍光体層表面上に、エキシマを発生するので、高輝度・高効率の蛍光ランプが得られる。
【0059】
この蛍光ランプ1を上記実施例と同様、複数色をマトリクス状に配列して構成した表示装置においても、上記実施例が適用でき、同様の効果が得られる。
【0060】
実施例9.
上記実施例5乃至8では主にメモリ駆動について述べたが、この発明は特にメモリ駆動に限るものではなく、走査期間しか放電発光しないリフレッシュ駆動でも、同様の効果が得られる。
【0061】
また、この発明は上記実施例1乃至8に示した蛍光ランプサイズ、蛍光体種類などのランプ構造、あるいは駆動周波数、および駆動波形などの駆動条件に限るものではない。
【0062】
実施例10.
上記実施例1乃至9では蛍光ランプ内にキセノンを封入した場合について述べたが、クリプトン、アルゴン、ネオン、ヘリウムなど他の希ガス、あるいは2種類以上の希ガスを混合したものでもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた一対以上の外部電極又はこの容器の外壁に設けた外部電極及び容器の内部に挿入された内部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす外部電極間又は外部電極及び内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記交流電圧パルスの立ち上がりと立ち下がりとの両方で、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、容器内部に封入する希ガスの封入圧力を60Torr以上としたので、電気特性が異なる放電ランプ間における維持電圧及び消去電圧の共通電圧範囲が拡大するという効果が得られる。
【0064】
また、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた一対以上の外部電極又はこの容器の外壁に設けた外部電極及び容器の内部に挿入された内部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす外部電極間又は外部電極及び内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持して画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記電気的特性の違いに応じて別々に電圧印加手段を設け、上記各電圧印加手段により各放電ランプに印加する電圧のパルス波形を変えて各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性を変化させたので、表示装置を確実に駆動制御できるという効果が得られる。
【0065】
また、内部に希ガスを封入した容器と、この容器の外壁に設けた一対以上の外部電極又はこの容器の外壁に設けた外部電極及び容器の内部に挿入された内部電極と、この外部電極に面した容器内壁に設けた蛍光体とを備えた放電ランプを複数配列し、互いに対をなす外部電極間又は外部電極及び内部電極間に上記放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧を印加して、上記外部電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持してメモリ駆動により画像表示を行うメモリ駆動方式によるガス放電表示装置において、上記各放電ランプは上記蛍光体の種類によってメモリ駆動における電気的特性が異なるものであって、上記容器内部に封入する希ガスの封入圧力を上記各放電ランプのメモリ駆動における電気的特性の違いに応じて別々に調整し、メモリ駆動における電気的特性を変化させたので、各放電ランプの電気的特性が近似され、表示装置を確実に駆動制御できるという効果が得られる。
【0066】
また、互いに対をなす電極間に放電ランプの放電開始電圧より低い所定の電圧の交流電圧パルスを印加して、上記電極に面した容器内壁に蓄積された壁電荷を放電させ、上記放電ランプの発光を維持する手段と、上記電極間に印加される交流電圧パルスの一方の極性を1回以上除去し、他方の極性を2回以上続けて印加することにより放電発光を停止する手段とを備えたので、電圧の立ち下がりで放電が起こり、この放電を利用して壁電荷を消滅するので、メモリ駆動における消去動作が確実に行えるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の表示装置を構成する蛍光ランプを示す斜視図及び断面図である。
【図2】 この発明の表示装置を示す正面斜視図及び背面断面図である。
【図3】 この発明の実施例1及び2の表示装置の駆動部の概略を示すブロック図である。
【図4】 この発明の実施例1の表示装置の駆動電圧波形を示す図である。
【図5】 この発明の表示装置の電圧波形と発光波形を示したものである。
【図6】 この発明の表示装置の放電空間内部の電荷特性を示したものである。
【図7】 この発明の表示装置の放電空間内部の電荷特性の測定に用いた電圧波形を示す図である。
【図8】 この発明の実施例1の表示装置の動作電圧範囲を示す図である。
【図9】 この発明の実施例2の表示装置の駆動電圧波形を示す図である。
【図10】 この発明の実施例3の表示装置の駆動電圧波形を示す図である。
【図11】 この発明の実施例3の表示装置の駆動電圧波形を示す図である。
【図12】 この発明の実施例2の表示装置の消去方式の電圧波形を示す図である。
【図13】 この発明の実施例2の希ガスの封入圧力と表示装置の消去可能範囲の関係を示す図である。
【図14】 この発明の実施例3の表示装置の駆動部の概略を示すブロック図である。
【図15】 この発明の実施例3によって消去可能範囲を調整することができることを示す図である。
【図16】 この発明の実施例5の表示装置を構成する蛍光ランプを示す斜視図である。
【図17】 この発明の実施例5の表示装置を示す斜視図である。
【図18】 この発明の実施例6の表示装置を構成する蛍光ランプを示す斜視図及び断面図である。
【図19】 従来の表示装置を示す斜視図である。
【図20】 従来のAC-PDPの構造を示す斜視図及び断面図である。
【図21】 従来のAC-PDPの消去方式の電圧波形及び消去可能範囲を示す図である。
【符号の説明】
1 蛍光ランプ、2 ガラスバルブ、3 蛍光体層、4 光出力部、5a,5b 外部電極、6 画素、8 表示装置、9 X側駆動回路、10 Y側駆動回路。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-12-04 
出願番号 特願2000-110807(P2000-110807)
審決分類 P 1 652・ 161- YA (H01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小川 浩史橋本 直明  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 樋口 信宏
山川 雅也
登録日 2002-05-10 
登録番号 特許第3303877号(P3303877)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 ガス放電表示装置  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 宮田 金雄  
代理人 宮田 金雄  

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