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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  E01C
審判 全部申し立て 2項進歩性  E01C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E01C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E01C
管理番号 1093162
異議申立番号 異議2003-71909  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-12-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-28 
確定日 2004-03-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第3378802号「コンクリート構造物の構築工法及びその構築用モールド」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3378802号の請求項1,2に係る特許を維持する。 
理由 【1】本件発明
特許第3378802号(平成10年5月26日出願、平成14年12月6日設定登録。)の請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】所定の内部形状をもつ成形部と該成形部にコンクリートを流入せしめるホッパ部とを有して成るモールドを前記ホッパ部から成形部にコンクリートを供給しつつ施工面に沿って移動させ、その移動方向に成形部の内部形状に合う断面をもつコンクリート構造物を一連に構築する工法において、前記モールドの成形部に予め所定形状に組み立てた鉄筋を導入し、この鉄筋の上部両側を前記成形部内にあってその長手方向に摺動可能に設けられる可動軸を備えた一対の並列状を成すブラケットで長手方向に摺動自在にして吊支し、その状態にして前記成形部にホッパ部からコンクリートを供給して該コンクリート中に前記鉄筋をその一端側から順に埋設しつつ前記モールドを移動させることを特徴とするコンクリート構造物の構築工法。
【請求項2】所定の内部形状をもつ成形部と該成形部内にコンクリートを流入せしめるホッパ部とを有し、そのホッパ部より前記成形部内にコンクリートを供給しつつ施工面に沿って移動され、その移動方向に前記成形部の内部形状に合う断面をもつコンクリート構造物を一連に構築するモールドであって、前記成形部内に、所定形状に組み立てられた鉄筋の上部両側をその長手方向に摺動自在にして吊支する一対の並列状を成すブラケットが設けられると共に、その両ブラケットは前記成形部内に取り付けられる固定軸と、この固定軸により成形部の長手方向に摺動可能にして支持される可動軸とを有して可変長とされて成ることを特徴とするコンクリート構造物の構築用モールド。」

【2】異議申立ての理由
申立人は、証拠として甲第1,2号証を提出し、下記の理由により、本件発明の特許を取り消すべき旨主張している。
(2-1)『請求項1(及び、段落0014,0016)に記載の「長手方向に摺動可能に設けられる可動軸」の記載はコンクリート構築物の構築工法として把握した場合、意味不明であり、且つ一工程を記載したものではない。また、その記載は単なる不必要な事項を記載したものでもない。従って、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載したものでなく、且つ特許を受けようとする発明を明確にしたものでもない。また、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでもない。』から、本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4,6項に規定する要件を満たしていない。
(2-2)本件発明は、甲第1号証記載の発明であり特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、甲第1,2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

【3】特許法第36条についての判断
請求項1の「長手方向に摺動可能に設けられる可動軸」は、請求項1に係る発明の構築工法の実施に必要な機器を構成する「モールド」に設けられた「ブラケット」が備える一要素であり、そのような要素が記載されていても当該発明の構築工法を何ら不明確にするものではない。
また、特許明細書の「ブラケットを可変長にしていることから、長尺の鉄筋にしてこれを適正に支持することができる。」(段落0027)の記載によれば、上記「可動軸」を設けた技術的意義は当業者に明らかであり、特許明細書は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていると認められるから、申立人の主張には理由がない。

【4】特許法第29条についての判断
(4-1)甲第1号証(特開平9-203009号公報)には、以下の記載がある。
「【請求項1】先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する方法において、
前記鉄筋を浮動設置し、前記モールドの移動と共に前記鉄筋を先導モールドに導入させ、前記鉄筋を前記先導モールドの内面と接触させながらホッパー部まで移動させることにより先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工方法。
【請求項2】前記先導モールドの内面の大きさを前記鉄筋の外形の大きさと略同じくすることにより前記鉄筋を前記先導モールドの内面と接触させ、先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の機械施工方法。
【請求項3】前記先導モールドの内面に前記鉄筋の外形が接触する接触部材を設けて前記鉄筋を該接触部材と接触させ、先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の機械施工方法。
【請求項4】先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する方法において、
前記鉄筋を浮動設置し、前記モールドの移動と共に前記鉄筋を先導モールドに導入させ、前記鉄筋の内形を前記先導モールドの内部に設けられた接触部材と接触させながらホッパー部まで移動させることにより先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工方法。
【請求項5】先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する装置において、
前記鉄筋が浮動設置された鉄筋であり、前記先導モールドが前記鉄筋の外形と接触する先導モールドであり、先導モールド内での鉄筋の振れを防止してなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工装置。
【請求項6】前記先導モールドの内面の大きさを前記鉄筋の外形の大きさと略同じであることを特徴とする請求項5記載のコンクリート構造物の機械施工装置。
【請求項7】前記先導モールドの内面に前記鉄筋の外形が接触する接触部材を設けてなることを特徴とする請求項5記載のコンクリート構造物の機械施工装置。
【請求項8】先導モールドとホッパー部と成形モールドからなるモールドをコンクリート構造物が施工される経路に沿って移動させ、その移動経路に沿って予め鉄筋を組み立てて置き、前記ホッパー部に生コンクリートを連続的に供給しながら先導モールドに前記鉄筋を順次導入して成形モールドによってコンクリート構造物を自動的に機械施工する装置において、
前記鉄筋を浮動設置された鉄筋であり、前記鉄筋の内形と接触する接触部材を前記先導モールドの内部に設けてなることを特徴とするコンクリート構造物の機械施工装置。
【請求項9】前記先導モールドの鉄筋導入端部に傾斜したガイド板を設けてなることを特徴とする請求項5ないし請求項8記載のコンクリート構造物の機械施工装置。」
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、道路に設けられる側溝や防護柵、側壁、中央分離体等の有筋コンクリート構造物を機械施工する方法及び装置に関し、更に詳しく述べると、スリップフォーム工法と称される有筋コンクリート構造物の機械施工方法及び装置の改良に関する。」

(4-2)甲第2号証(特開平6-173442号公報)には、以下の記載がある。
「【請求項1】階段の蹴込面に対向配置しつつ同蹴込面の両端方向に向け伸縮調整可能に形成された伸縮型枠と、この伸縮型枠の両端に設けられたガイド部と、この伸縮型枠のガイド部に係嵌し、階段の両側壁側に仮固定されたガイド受部と、を備え、
前記階段の蹴込面に沿って伸縮調整した伸縮型枠の両端のガイド部をガイド受部に係嵌させて成る階段部分のコンクリート型枠装置。
【請求項2】前記伸縮型枠は、透明部材から成る請求項1記載の階段部分のコンクリート型枠装置。
【請求項3】前記伸縮型枠の少なくとも蹴込面側は、滑面状に形成されて成る請求項1又は2記載の階段部分のコンクリート型枠装置。
【請求項4】階段の蹴込面に対向配置しつつ同蹴込面の両端方向に向け伸縮調整可能に形成された伸縮型枠と、この伸縮型枠の両端に設けられたガイド部と、この伸縮型枠のガイド部に係嵌するガイド受部と、を備え、
階段の両側壁側にガイド受部を仮固定し、
階段の蹴込面に沿って伸縮調整した伸縮型枠の両端のガイド部を前記ガイド受部に係嵌させ、
前記階段の蹴込面と、伸縮型枠との間隙にモルタルを充填して成る階段部分の仕上げ方法。」
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、構築した建物の階段をモルタルで表面仕上げするための階段部分のコンクリート型枠装置及び階段部分の仕上げ方法に関するものである。」

(4-3)対比・判断
本件発明と甲号各証記載の発明とを対比すると、甲号各証には上記のとおり、本件発明が備える「鉄筋の上部両側」を「吊支」する「可動軸を備えた一対の並列状を成すブラケット」について何等記載されておらず、示唆もない。
甲第1号証記載の発明は、上記のとおり、本件発明と同一の技術分野に属するものであり、本件発明と一部同一の技術的事項を有してはいるが、鉄筋の支持手段が全く相違しており、また、甲第2号証記載の発明は、上記のとおり、階段部分の施工に用いる伸縮型枠に関するものであり、これらに基づき本件発明の技術的事項、特に上記「ブラケット」を想起することが当業者にとって容易であるとは到底いえない。
そして、本件発明は、上記「ブラケット」を備えることにより、特許明細書記載の
「【0026】特に、鉄筋を成形部内に吊支することから、その鉄筋が成形部内での接触圧で変形したりすることがなく、これを移動中のモールドで引きずることなくその成形部内に円滑に導入して該成形部内に供給されるコンクリート中に適正に埋設することができる。
【0027】又、鉄筋を吊支するべく成形部内に設けたブラケットを可変長にしていることから、長尺の鉄筋にしてこれを適正に支持することができる。」
という、甲号各証記載のものからは期待できない作用効果を奏するものである。

以上のとおりであるから、本件発明の特許は、甲第1号証記載の発明であるとも、甲第1,2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

【5】むすび
従って、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1,2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-02-17 
出願番号 特願平10-144662
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E01C)
P 1 651・ 537- Y (E01C)
P 1 651・ 113- Y (E01C)
P 1 651・ 536- Y (E01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鹿戸 俊介松浦 久夫  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 鈴 木 憲 子
木 原 裕
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3378802号(P3378802)
権利者 末広産業株式会社
発明の名称 コンクリート構造物の構築工法及びその構築用モールド  
代理人 羽鳥 亘  
代理人 伊藤 哲夫  

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