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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1093183
異議申立番号 異議2003-72170  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-27 
確定日 2004-03-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第3384281号「生物処理方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3384281号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
本件特許第3384281号に係る出願は、平成9年5月8日に特許出願され、平成14年12月27日にその発明についての特許権の設定の登録がなされ、その後、平成15年8月27日付けで新田愛子より特許異議の申立がなされたものである。
本件の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】原水を生物処理槽に導入して生物処理を行い、該生物処理槽の汚泥を含む生物処理液を、槽内に分離膜が浸漬された複数の膜浸漬槽に導入し、該分離膜の透過水を処理水として取り出すと共に、該膜浸漬槽内の汚泥を前記生物処理槽に返送する生物処理方法において、該複数の膜浸漬槽内の分離膜を順次洗浄液と接触させて洗浄する方法であって、膜洗浄を行う膜浸漬槽内への生物処理液の導入を停止し、該膜浸漬槽内の液の一部又は全量を移送した後、該膜浸漬槽に洗浄液を導入して膜洗浄を行い、この洗浄排液を貯留槽に移送して、次に膜洗浄を行う膜浸漬槽に導入するまで該貯留槽に貯留し、洗浄液を繰り返し使用することを特徴とする生物処理方法。
【請求項2】請求項1の生物処理方法において、該貯留槽で該洗浄排液に洗浄薬剤を追加して洗浄液の薬剤濃度を調整することを特徴とする生物処理方法。
【請求項3】請求項1又は2のいずれかの生物処理方法において、洗浄後の前記膜浸漬槽に、処理水又は工水を導入することを特徴とする生物処理方法。
2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第3号証を提出し、本件発明1〜3は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1〜3についての特許は、取り消されるべきものであると主張している。なお、甲第3号証は審査の過程で特許権者が平成14年7月11日付で提出した意見書で、本件特許の効果について確認しているものにすぎない。
3.証拠の記載内容
特許異議申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)甲第1号証(特開昭62-279807号公報)には、特許請求の範囲、第3頁右上欄15行〜第4頁左上欄7号及び第1、2図からみて、「貯槽で生物処理を行い、処理液を複数の膜分離手段に導入し、膜の透過水を取り出し、被処理液は貯槽に返送される処理方法であって、複数の膜分離手段を個別に、膜分離手段のケース内を液を排出した後洗浄液貯槽の洗浄液を循環して洗浄し、順次膜分離手段ごとに実施する方法。」の発明(以下、「甲第1発明」という)が記載されているといえる。
(2)甲第2号証(特公平6-83838号公報)には、特許請求の範囲、第3頁左欄10〜31行及び第1図に「生物処理装置において浸漬型膜モジュールが設けられ、薬品洗浄するときには、膜浸漬槽への汚泥スラリーの導入を止め、槽内の汚泥スラリーを排出し、次に清水を導入し洗浄剤を添加したのちエアレーションで膜を洗浄する」ことが記載されている。
4.当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1についての特許異議申立の理由について検討する。
本件発明1と甲第1発明を対比すると、甲第1発明の「貯槽」はそこで生物処理をするものであるから「生物処理槽」であり、また甲第1発明の「循環して洗浄」は膜と洗浄液と接触させて洗浄していることは自明であるから、両者は、「原水を生物処理槽に導入して生物処理を行い、該生物処理槽の汚泥を含む生物処理液から、該分離膜の透過水を処理水として取り出すと共に、汚泥を前記生物処理槽に返送する生物処理方法において、該複数の分離膜を順次洗浄液と接触させて洗浄する方法であって、生物処理液の導入を停止し、内の液の一部又は全量を移送した後、洗浄液を導入して膜洗浄を行い、この洗浄排液を貯留槽に移送する生物処理方法。」点で一致するものの、以下の点で相違している。
相違点a:本件発明が「槽内に分離膜が浸漬された複数の膜浸漬槽に導入し、該膜浸漬槽内の膜浸漬槽内の膜洗浄を行う」ものであるのに対し、甲第1発明は「膜分離手段内の膜洗浄」であり、膜分離手段は膜浸漬槽ではない点。
相違点b:本件発明が「次に膜洗浄を行う膜浸漬槽に導入するまで該貯留槽に貯留し、洗浄液を繰り返し使用する」のに対し、甲第1発明では「循環して洗浄」しているが、貯留槽に貯留し、繰り返し使用するかは不明である点。
そこで、相違点a、bについて甲第2号証を検討すると、甲第2号証には上記記載内容から「膜浸漬槽」が記載されており、その膜洗浄では槽内の液を排出した後洗浄液(清水と洗浄剤)で洗浄することが記載されているとは云えるが、複数の膜浸漬槽を有するものではない。しかも、洗浄廃液は「ドレーン管より排出している」(第3頁左欄33〜34行参照)のであるから、これを繰り返し使用とする技術思想もない。つまり、甲第2号証には相違点a、bの構成について記載されているとは云えない。
なお、異議申立人は、申立書において、洗浄液の繰り返し使用に関し「当業者がリサイクルを考えた場合に当然である」と主張するので、この点についてみてみる。甲第1号証には、上記したように「循環して使用された洗浄液」については貯留されて繰り返し用いられることについては何ら明示はない。確かにリサイクルの観点で使用できるものは用いようとすることは普通に考えられることではあるが、対象によってそのリサイクルの実現は一様ではなく、対象に応じて検討されるべきものである。そして、甲第1号証における洗浄液が繰り返し使用する思想はないことは上述のとおりであるが、また仮に使用しようとしても、甲第1発明の膜分離手段は槽内に配置される浸漬型膜ではなく、槽ごとに排水、浄化液導入、排水するという本件発明1の洗浄方法とも異なるのであるから、膜浸漬槽を複数設置し、浸漬型膜における洗浄後の洗浄液を繰り返し使用して相違点a、bの構成まで構築できるとまでは云うことができない。また、そうした証拠がない、すなわち提示した証拠のどこにも根拠は見当たらない。
そして、本件発明1は、上記相違点a、bの構成を採ることにより、本件明細書に記載の効果を奏するものと云える。
したがって、本件発明1は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1にさらに「貯留槽で該洗浄排液に洗浄薬剤を追加して洗浄液の薬剤濃度を調整する」という構成を付加するものであるから、本件発明1と同様、上記本件発明1で述べた理由により、本件発明2は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2にさらに「洗浄後の前記膜浸漬槽に、処理水又は工水を導入する」という構成を付加するものであるから、本件発明1,2と同様、上記本件発明1で述べた理由により、本件発明3は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-02-17 
出願番号 特願平9-118124
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 米田 健志
岡田 和加子
登録日 2002-12-27 
登録番号 特許第3384281号(P3384281)
権利者 栗田工業株式会社
発明の名称 生物処理方法  

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