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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01R |
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管理番号 | 1093194 |
異議申立番号 | 異議2002-71998 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-03-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-08-06 |
確定日 | 2004-03-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3276607号「差込プラグ端子」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについてした平成15年6月18日付けの決定に対し、東京高等裁判所において決定取消しの判決(平成15年(行ケ)第347号、平成15年11月27日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3276607号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
〔1〕手続の経緯 特許第3276607号の請求項1に係る発明についての出願は、平成10年9月3日に特許出願され、平成14年2月8日にその発明についての特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人・三笠産業株式会社より特許異議の申立てがされ、平成15年6月18日付けで取消しの決定がされたものである。 それに対し、平成15年7月31付けで東京高等裁判所に上記取消決定取消しの訴えが提起され、本訴係属中に、本件特許の出願の願書に添付された明細書の訂正をする審判が請求され、その結果、特許庁が平成15年10月23日付けで訂正を認める審決をし、これが確定し、同裁判所において上記訴えについての取消決定取消しの判決があったものである。 〔2〕本件発明 特許第3276607号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「差込部は筒状とし、その軸方向にスリットを設け、前記差込部内に芯部材を装着した差込プラグ端子において、前記芯部材は前記差込部の内寸と同等の外寸の円柱状とし、前記芯部材は前記差込部に圧入国定され、前記差込部は僅かに外開きとして差込部の内面と芯部材との間に差込部の弾性変形限度内の間隙を形成し、前記差込部の先端部は半球状とし、前記スリットの狭窄化が阻止されるようにした、差込プラグ端子」 〔3〕申立ての理由の概要 特許異議申立人・三笠産業株式会社は、本件発明は、甲第1号証(登録実用新案第3024440号)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、当該特許は取り消されるべきである、と主張している。 〔4〕刊行物に記載された発明 当審が平成15年2月19日付けで通知した取消しの理由で引用した刊行物(登録実用新案3024440号公報、異議申立人が提出した甲第1号証)には、コネクタ、コンセントの受電側接触子に関して、図1〜3とともに以下の事項が記載されている。 (1)「受電側接触子の棒状電極部の孔部に軸方向のすり割りを入れた受電側接触子と、この受電側接触子が差し込み接続される電源側接触子とからなるコネクタ、コンセントにおいて、受電側接触子の電源部孔部に、孔径よりやや小径の金属性の丸棒を嵌挿取付けたことを特徴とするコネクタ受電側接触子」(実用新案登録請求の範囲の【請求項1】) (2)「【従来の技術】コネクタ及びコンセントの受電側接触子の棒状電極部にはすり割りを入れ、このすり割りを広げることで電極部に弾性を持たせ、電源側接触子に差し込んだときの接触圧を強め、接触子の電気的抵抗を小さくして通電性を良くしている。」(段落【0002】) (3)「上記の受電側接触子のすり割りの電極部の孔部と挿入丸棒との間隙及び棒状電極部のすり割りと挿入板との間隙は、電極の金属弾性限界を越えない寸法にするものである。」(段落【0005】) (4)「接触子に、その接触子金属の弾性限界を越える大きな衝撃が加わっても、接触子の変形を防止できるため、製作時に調整した良好な接触圧を保つことができる。」(段落【0006】) 以上の(1)、(3)、(4)の記載から、上記刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「コネクタ受電側接触子において、その受電側接触子は筒状とし、その軸方向にすり割りを設け、前記受電側接触子内に丸棒を嵌挿し、前記すり割りの狭窄化が阻止されるようにするとともに芯部材は差込部に止めピンで止めた、コネクタ受電側接触子」 〔5〕対比・判断 本件発明と引用発明を対比すると、引用発明の「コネクタ受電側接触子」は「差込プラグ端子」に、「すり割り」は「スリット」に、「受電側接触子」は「差込部」に、「丸棒」は「芯部材」に、「嵌挿」は「装着」に、それぞれ相当するから、 両者は、「差込部は筒状とし、その軸方向にスリットを設け、前記差込部内に芯部材を装着した差込プラグ端子において、差込部の内面と芯部材との間に差込部の弾性変形限度内の間隙を形成し、前記スリットの狭窄化が阻止されるようにした、差込プラグ端子」の点で一致し、 (相違点1) 前者は、「芯部材は差込部の内寸と同等の外寸の円柱状とし」、「芯部材は差込部に圧入固定され」たのに対し、後者は、芯部材は、差込部との間に間隙を有することから孔部よりやや小径である円柱状であり、芯部材は差込部に止めピンで止められた点、 (相違点2) 前者は、「差込部は僅かに外開きとして」いるのに対し、後者は、そのようにしているかどうか不明である点、 (相違点3) 前者は、「差込部の先端部は半球状とし」たのに対し、後者は、差込部の先端部は角がある点、 で相違する。 上記相違点について検討する。 まず、最初に相違点1について検討すると、差込プラグ端子の差込部内への部品の装着に際して、圧入固定を採用することを開示ないし示唆する証拠を見い出すことができない。 そして、上記相違点1に係る本件発明の構成により芯部材の圧入固定が可能、すなわち、芯部材の固定に止めピン等を必要としないという効果を奏するものといえる。 したがって、相違点2、3を判断するまでもなく、本件発明は、引用発明に記載された発明でないものであるばかりでなく、引用発明に基き当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 〔6〕むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-06-18 |
出願番号 | 特願平10-267334 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01R)
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最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 和泉 等 |
登録日 | 2002-02-08 |
登録番号 | 特許第3276607号(P3276607) |
権利者 | 株式会社エヌピーシー エクセン株式会社 |
発明の名称 | 差込プラグ端子 |
代理人 | 峯 唯夫 |
代理人 | 武田 明広 |
代理人 | 武田 賢市 |
代理人 | 峯 唯夫 |