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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  F25D
審判 全部申し立て 2項進歩性  F25D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F25D
管理番号 1093195
異議申立番号 異議2003-71370  
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-23 
確定日 2004-02-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3350492号「冷蔵庫」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3350492号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3350492号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成5年7月2日に特許出願した特願平5-164441号(以下、「原出願」という)の一部を平成11年11月18日に新たな特許出願とし、平成14年9月13日にその発明について特許権の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議申立人 三菱電機株式会社より特許異議の申立てがなされたものである。

2.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許第3350492号の請求項1及び2に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2に係る発明を「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 冷蔵庫本体上部に冷蔵室を、前記冷蔵室の下部に独立した二つの引き出し式の冷凍室を備え、一方の冷凍室の冷気導入口にダンパー装置を設けて前記ダンパー装置を制御して冷気流入量を調節し、他方の冷凍室に多くの冷気を流入することにより前記二つの冷凍室の温度設定を異なる二つの冷凍温度帯とし、前記一方の冷凍室を相対的に高い冷凍温度帯に維持して一時保管など短期保存を目的とした食品を凍結保存し、前記他方の冷凍室を相対的に低い冷凍温度帯に維持して長期保存を目的とした食品を凍結保存するよう構成したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】 圧縮機と、冷却器と、引き出し式の第1および第2の冷凍室と、冷蔵室と、前記冷却器により冷却された冷気を前記第1および第2の冷凍室と冷蔵室に強制送風する送風機と、前記第1の冷凍室に設けられ室内の温度を検知する第1の温度検知手段と、前記第2の冷凍室に設けられ室内の温度を検知する第2の温度検知手段と、前記第2の冷凍室の冷気導入口に設けたダンパー装置を備えて、前記第1の温度検知手段の出力により前記圧縮機と送風機を制御し、前記第2の温度検知手段の出力により前記ダンパー装置を制御して前記第2の冷凍室への冷気流入量を調節し、前記第1の冷凍室に多くの冷気を流入して前記第1の冷凍室を相対的に低い冷凍温度帯に維持して長期保存を目的とした食品を凍結保存し、前記第2の冷凍室を相対的に高い冷凍温度帯に維持して一時保管など短期保存を目的とした食品を凍結保存するよう構成したことを特徴とする冷蔵庫。」

(2)特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 三菱電機株式会社は、本件発明1及び2に係る特許は、次の理由により、特許法第113条第1項各号の規定に該当するものと認められるので、取り消されるべきものである旨の主張をしている。
(a)本件発明1及び2は、甲第2号証(財団法人 日本規格協会、日本工業規格 電気冷蔵庫及び電気冷凍庫、昭和61年10月31日発行)を斟酌すると、原出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内の発明ではなく、本件特許出願は適法な分割出願ではない。したがって、本件発明1及び2は、本件特許出願の出願日である平成11年11月18日前に頒布された、原出願の公開公報である甲第1号証(特開平7-19700号公報)に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
(b)本件発明1及び2は、甲第2号証(財団法人 日本規格協会、日本工業規格 電気冷蔵庫及び電気冷凍庫、昭和61年10月31日発行)及び甲第3号証(加藤 舜郎著、食品冷凍の理論と応用、株式会社 光琳、p.324、平成5年4月25日発行)を斟酌すると、平成14年6月17日付手続補正によって補正された事項が、願書に最初に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものでないので、特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものである。
(c)本件発明1及び2は、甲第2号証(財団法人 日本規格協会、日本工業規格 電気冷蔵庫及び電気冷凍庫、昭和61年10月31日発行)、甲第4号証(特開平1-200176号公報)、甲第5号証(TOSHIBA 冷蔵庫 総合カタログ、平成4年6月1日現在)、甲第6号証(TOSHIBA 優凍生 サクセス指令61 ご販売店様用カタログ)及び甲第7号証(特開昭62-210376号公報)に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

(3)甲号各証に記載された事項
甲第1号証には、冷凍室及び冷蔵室を備えた強制通風方式の冷蔵庫に関して、図面とともに、
「断熱材で区画形成した一方の冷凍室には長期保存を目的とした食品を保存し、一時保管などの短期保存を目的とした食品は他方の冷凍室に保存するように収納区分する。短期保存を目的とした冷凍室は、温度検知手段の出力に基づいて、冷気入口に設けたダンパー装置により冷気が調整され、長期保存を目的とした冷凍室内に冷気が多量に導入されるようになり、冷凍室が低温に保たれ、食品の脂質や色素の酸化を一層抑制できるものである。」(段落【0016】)こと、
「この時、第2の冷凍庫26は、第2の温度センサ33の設定値に基づいて、電動ダンパー52により冷気流入量が調節されるため、第1の冷凍室25に多くの冷気が流入されるようになる。第1の冷凍室25は断熱材50により区画されているため、低温を保つものである。これにより、食品は低温に保たれ、食品の脂質・色素酸化等が抑制できるため、食品の冷凍保存品質が高まるものである。」(段落【0026】)こと、
が記載されている。
甲第2号証には、電気冷蔵庫及び電気冷凍庫 C9607-1986の日本工業規格に関して、
「(5)ワンスター室 5.2に規定された平均冷凍負荷温度が-6℃以下の冷凍室。(6)ツースター室 5.2に規定された平均冷凍負荷温度が-12℃以下の冷凍室。(7)スリースター室 5.2に規定された平均冷凍負荷温度が-18℃以下の冷凍室。(8)フォースター室 5.4の冷凍性能が冷凍室の有効内容積100l当たり24時間で4.5kgの割合以上であり、かつ、5.2に規定された平均冷凍負荷温度が-18℃以下の冷凍室。」(1頁19行〜同23行)であること、
「3.独立の冷凍室が二つ以上あるものについては、それぞれの冷凍室ごとに表1の冷却性能を適用する。」(3頁10行〜同11行)こと、
「このため、従来の冷蔵でも、また、冷凍でもない、0℃近傍以下の温度帯での食品保存が注目されている。すなわち、チルド、氷温、パーシャルフリージング等と称されているもので、それぞれ0℃近辺、-1℃近辺及び-3℃近辺の温度を指しているが、これらは、広義のチルド温度帯(+2〜-5℃)に含まれるものである。そして、基本的には、食品を冷凍させないで保存するか又は部分的に冷凍させて保存するかの違いであって、前二者は食品の凍結点より高い温度で、しかも、できるだけ低い温度で保存しようとするものであり、後者は、凍結点より低い温度だが完全に冷凍するには至らない程度の温度(最大氷結晶生成帯の温度範囲)で保存しようとするものである。これらの温度帯では、食品の凍結点が基準となるが、その温度は食品の種類により一定でなく、チルド温度帯の範囲、食品保存条件などについて定義がまだ確立されていない。」(44頁6行〜同13行)こと、
「解説図1 T-TT曲線」(45頁の日数-品温の関係グラフ)
「冷凍食品の品質保持の期間については前記のようにT-TTの関係があり、温度を低くすればそれだけ保存期間が長くなる。」(45頁本文3行〜同4行)こと、
が記載されている。
甲第3号証には、食品の氷結と凍結温度帯に関して、
「氷結すべき水の全部が氷結析出した完全な凍結状態といえば共晶点を意味するが、品温はそれまで下がらないでも-5℃以下になっていると、だいたい凍結している状態である。このように食品が凍結状態になるのは、凍結点という特定の限界温度によるものではなく、ある温度の幅が必要である。」(324頁3行〜同7行)こと、
「近年は最大氷結晶生成帯の下限に相当する温度を、-15℃にとることが提案され、凍結の際の重要な品温の範囲は食品の氷結点から-15℃まで広がっている。」こと、
が記載されている。
甲第4号証には、冷却貯蔵庫に関して、図面とともに、
「この断熱箱体(11)内は断熱性の仕切壁(12)によって上下に区画され、相互に断熱され且つ空気循環において独立した上部室と下部室とが形成され、この上部室は更に断熱性の区画壁(13)にて左右に区画され、第1の貯蔵室としての第1の冷凍室(14)と第2の貯蔵室としての第2の冷凍室(15)とが形成されている。」(2頁下段左欄17行〜同右欄4行)こと、
「仕切壁(12)下方の下部室は冷蔵室(38)とされ、更にその上部は断熱性の仕切板(39)と内扉(40)によって氷温室(41)が形成される。」(3頁上段右欄2行〜同4行)こと、
「即ち、前述同様主送風機(19)によって吹出された冷気は区画板(15)に衝突して図中波線矢印の如く左右に分かれようとするが、補助送風機(28)によってこの冷気が強制的に第1の冷凍室(14)方向に吸引されるので補助送風機(28)によりダクト(30)を通り、吹出口(29)、(23)から多量の冷気が第1の冷凍室(14)内に吹出される。これによって第1の冷凍室(14)は平均-32℃に150分間強力に冷却され、食品の急速な凍結と急速な製氷を達成できる。」(5頁下段左欄6行〜同15行)こと、
が記載されている。
甲第5号証には、TOSHIBA 冷蔵庫 引き出す冷凍GLACIOに関して、
「引き出しを開けると全体が見わたせ、奥にしまった食品も取り出しやすくなっています。また上下2段に分かれているから、よく使うものと長く保存するものを分けて収納できます。」(3頁左下)こと、
「上から冷やす引き出し式はドア式の冷凍室に比べて、ドアを開けても冷気の逃げが少なくなりました。」(3頁左下)こと、
「上は「見やすい冷蔵」 下は「引き出す」冷凍」(4頁左下)であること、
が記載されている。
また、9頁に示された各種冷蔵庫の仕様をみると、例えば、型名350lの4ドア冷蔵庫には、178lの冷蔵室の下に、上段フリーザー47l、その下に下段フリーザー50l、その下に野菜&ボトル室75lのものが示されている。
甲第6号証には、「セレクトルームの技術」のところに、自動ダンパーを「閉じる」、「開閉をくりかえす」により「冷凍に切り換え」、「チルドに切り換え」ることが示されている。また、「2温度帯と上手な使い方」のところに、「冷凍」の温度帯が「-12〜-25℃」であることが、「チルド(新温度帯)の(1)半冷凍」の温度帯が「-2〜-5℃」であることが、示されている。
甲第7号証には、冷蔵庫に関して、図面とともに、
「(1)冷凍室 冷却器18によって冷却された冷気は、ファン19により、冷凍室吹出口100a、100bを介して、冷凍室3へ吹出され、冷凍室3を冷却した後、3方に分かれ、一方は吸込口100cを介して風路10fに戻り、他方は、ダクト9dを介して製氷室11に流れ込み、もう一方は、バスケット21の吸入口21sを介して製氷室5に流れ込む。室温は室内に取り付けた図示しないセンサにより圧縮機23をON/OFF制御して-18℃以下に保たれる。
(2)製氷室 ダクト9dと、バスケット21の吸込口21sとを介して流れ込んだ冷気は、製氷室5iを冷却した後、吸込口11fから吸込まれ、風路11cを介して冷却室2に戻る。また、製氷室5には、冷却器18からの冷気が、風路10fを経て製氷室吹出口100dから吹出され、吹出された冷気は製氷室5iを冷却した後、吸込口11fから吸込まれ、風路11cを介して冷却室2に戻る。
(3)低温室 冷却器18により冷却された冷気の一部は、ファン19により、ダクト104およびダクト22を介して低温室6に吹出され、低温室6を冷却した後、吸込口11eを介して風路11aに吸込まれ、風路11aを経て冷却室2に戻る循環を行う。低温室6の温度は、センサ6sによりダンパー106を開閉して約0℃に保たれる。なお、前記ダンパー106を開放状態にすることにより、冷却室として使用することもできる。(4)冷蔵室 吹出ダクト17に送られた冷気は、冷蔵室7を冷却した後、風路11bを介して冷却室2に戻る循環を行う。また、前記吹出ダクト17から吹出された冷気の一部は、仕切り壁12に設けた吸込口12aを介して野菜室8に流入する。」(3頁上段右欄20行〜同下段右欄19行)こと、
が記載されている。

(4)対比・判断
(a)特許法第29条第1項第3号違反について
特許異議申立人は、本件発明1及び2は、原出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「原明細書」という。)に記載された事項の範囲内の発明ではないから、本件特許出願は適法な分割出願ではなく、本件特許出願の出願日である平成11年11月18日前に頒布された、原出願の公開公報である甲第1号証(特開平7-19700号公報)に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである旨の主張をしている。そこで、本件発明1及び2が、原明細書に記載されたものであるか否かを検討する。

原明細書の段落【0016】には、「短期保存を目的とした冷凍室は、温度検知手段の出力に基づいて、冷気入口に設けたダンパー装置により冷気が調整され、長期保存を目的とした冷凍室内に冷気が多量に導入されるようになり、冷凍室が低温に保たれ、」と記載があり、また、同じく段落【0026】には、「第2の冷凍庫26は、第2の温度センサ33の設定値に基づいて、電動ダンパー52により冷気流入量が調節されるため、第1の冷凍室25に多くの冷気が流入されるようになる。第1の冷凍室25は断熱材50により区画されているため、低温を保つものである。」と記載があるから、該冷気の第1の冷凍室及び第2の冷凍室へ流入する流入量に着目すれば、冷気の流入量の多い長期保存を目的とした第1の冷凍室が、ダンパー装置により冷気流入量が調節される短期保存を目的とした第2の冷凍室よりも低温となることは、技術常識といえる。
そうすると、本件発明1及び2の構成要件である、「前記一方の冷凍室を相対的に高い冷凍温度帯に維持して」及び「前記他方の冷凍室を相対的に低い冷凍温度帯に維持して」という構成は、原明細書に記載されている事項の範囲内においてなされたものと認められる。

次に、「凍結」なる用語について、検討する。
原明細書において、「冷凍」という用語を使用しているが、平成14年6月17日付手続補正により、該「冷凍」を「凍結」と補正をしている。
そこで、この「冷凍」と「凍結」とに技術的な差異があるかを検討する。
甲第2号証には、「チルド、氷温、パーシャルフリージング等と称されているもので、それぞれ0℃近辺、-1℃近辺及び-3℃近辺の温度を指しているが、これらは、広義のチルド温度帯(+2〜-5℃)に含まれるものである。そして、基本的には、食品を冷凍させないで保存するか又は部分的に冷凍させて保存するかの違いであって、前二者は食品の凍結点より高い温度で、しかも、できるだけ低い温度で保存しようとするものであり、後者は、凍結点より低い温度だが完全に冷凍するには至らない程度の温度(最大氷結晶生成帯の温度範囲)で保存しようとするものである。」と記載されていること、また、甲第3号証には、「氷結すべき水の全部が氷結析出した完全な凍結状態といえば共晶点を意味するが、品温はそれまで下がらないでも-5℃以下になっていると、だいたい凍結している状態である。このように食品が凍結状態になるのは、凍結点という特定の限界温度によるものではなく、ある温度の幅が必要である。」と記載されていること、を斟酌すれば、甲第2号証に記載されたものにいおては、「-5℃」の温度帯の食品の状態を「冷凍」といい、甲第3号証に記載されたものにおいては、「凍結」といっていることからみて、「冷凍」も「凍結」も格別な差異がある用語とは認められず、この「凍結」なる用語も、原明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものである。

したがって、本件発明1及び2に係る出願は、原明細書に記載された事項の範囲内になされた適法な分割出願であり、本件発明1及び2が、甲第1号証に記載された発明と同一であるとする特許異議申立人の主張は採用することはできない。

(b)特許法第17条の2第3項違反について
前記(a)において検討したように、本件発明1及び2に係る出願は、平成5年7月2日に出願されたもの(平成2年法の適用)であって、本件発明1及び2について、特許法第17条の2第3項の規定を適用することはできない。

(c)特許法第29条第2項の規定違反について
・本件発明1について
本件発明1を分節すると、次の構成要件からなるものと認められる。
(イ)冷蔵庫本体上部に冷蔵室を、
(ロ)前記冷蔵室の下部に独立した二つの引き出し式の冷凍室を備え、
(ハ)一方の冷凍室の冷気導入口にダンパー装置を設けて
(ニ)前記ダンパー装置を制御して冷気流入量を調節し、
(ホ)他方の冷凍室に多くの冷気を流入することにより
(ヘ)前記二つの冷凍室の温度設定を異なる二つの冷凍温度帯とし、
(ト)前記一方の冷凍室を相対的に高い冷凍温度帯に維持して一時保管など短期保存を目的とした食品を凍結保存し、
(チ)前記他方の冷凍室を相対的に低い冷凍温度帯に維持して長期保存を目的とした食品を凍結保存するよう構成したことを特徴とする
(リ)冷蔵庫。

そこで、本件発明1と甲第4号証ないし甲第7号証に記載されたものとを対比して検討する。

甲第4号証には、上記摘示した事項から、第1の冷凍室と第2の冷凍室を備え、急冷スイッチを操作することにより、第1の冷凍室に補助送風機を連続して運転し第1の冷凍室にきわめて多量の冷気を供給して急冷する冷凍室を備えた冷蔵庫は、記載されているが、二つの冷凍室の温度設定を異なる冷凍温度帯に維持する記載もなく、少なくとも本件発明1の構成要件である(イ)ないし(ニ)、(ヘ)ないし(チ)の構成は認められない。
甲第5号証には、上記摘示した事項から、冷蔵庫本体上部に冷蔵室を、前記冷蔵室の下部に独立した二つの引き出し式の冷凍室を備え、二つの冷凍室をよく使うものと長く保存するものに使い分けて使用できる冷蔵庫は、記載されているが、よく使うものの冷凍室を、長く保存するものの冷凍室よりも相対的に高い冷凍温度帯に維持するようにしたことの記載もなく、少なくとも本件発明1の構成要件である(ハ)ないし(チ)の構成は認められない。
甲第6号証には、上記摘示した事項から、セレクトルームを冷凍とチルドに切り換える手段として自動ダンパーを使うという記載があるだけで、少なくとも本件発明の構成要件である(イ)ないし(ハ)、(ホ)ないし(チ)の構成は認められない。
甲第7号証には、上記摘示した事項から、冷蔵室の上部に低温室、製氷室が、その上部に冷凍室があることが記載されているだけであり、少なくとも本件発明1の構成要件である(イ)ないし(チ)の記載は認められない。

そして、これらの甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第2号証に記載された日本工業規格を総合的に検討しても、少なくとの本件発明1の構成要件である(ヘ)ないし(チ)の構成は認められないし、また、本件発明1は、これらの甲号各証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。また、本件発明1は、上記構成要件を備えることによって、明細書記載の作用効果を奏するものと認められる。

・本件発明2について
本件発明2を分節すると、次の構成要件からなるものと認められる。
(ヌ)圧縮機と、
(ル)冷却器と、
(オ)引き出し式の第1および第2の冷凍室と、
(ワ)冷蔵室と、
(カ)前記冷却器により冷却された冷気を前記第1および第2の冷凍室と冷蔵室に強制送風する送風機と、
(ヨ)前記第1の冷凍室に設けられ室内の温度を検知する第1の温度検知手段と、
(タ)前記第2の冷凍室に設けられ室内の温度を検知する第2の温度検知手段と、
(レ)前記第2の冷凍室の冷気導入口に設けたダンパー装置を備えて、
(ソ)前記第1の温度検知手段の出力により前記圧縮機と送風機を制御し、
(ツ)前記第2の温度検知手段の出力により前記ダンパー装置を制御して前記第2の冷凍室への冷気流入量を調節し、
(ネ)前記第1の冷凍室に多くの冷気を流入して前記第1の冷凍室を相対的に低い冷凍温度帯に維持して長期保存を目的とした食品を凍結保存し、
(ナ)前記第2の冷凍室を相対的に高い冷凍温度帯に維持して一時保管など短期保存を目的とした食品を凍結保存するよう構成したことを特徴とする
(ラ)冷蔵庫。

そこで、本件発明2と甲第4号証ないし甲第7号証に記載されたものとを対比して検討する。

甲第4号証には、上記摘示した事項からみて、少なくとも本件発明2の構成要件である(オ)、(レ)、(ツ)ないし(ナ)の構成の記載は認められない。
甲第5号証には、上記摘示した事項からみて、少なくとも本件発明2の構成要件である(ヨ)ないし(ナ)の構成の記載は認められない。
甲第6号証には、上記摘示した事項からみて、少なくとも本件発明2の構成要件である(オ)、(カ)、(ヨ)ないし(ナ)の構成の記載は認められない。
甲第7号証には、上記摘示した事項からみて、少なくとも本件発明2の構成要件である(オ)、(カ)、(ヨ)ないし(ナ)の構成の記載は認められない。

そして、これらの甲第4号証ないし甲第7号証及び甲第2号証に記載された日本工業規格を総合的に検討しても、少なくとの本件発明2の構成要件である(ツ)ないし(ナ)の構成は認められないし、また、本件発明2は、これらの甲号各証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。また、本件発明2は、上記構成要件を備えることによって、明細書記載の作用効果を奏するものと認められる。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-02-03 
出願番号 特願平11-328013
審決分類 P 1 651・ 113- Y (F25D)
P 1 651・ 55- Y (F25D)
P 1 651・ 121- Y (F25D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 櫻井 康平
長浜 義憲
登録日 2002-09-13 
登録番号 特許第3350492号(P3350492)
権利者 松下冷機株式会社
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 宮田 金雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 高瀬 彌平  

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