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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A61J
管理番号 1093902
審判番号 無効2002-35308  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-07-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-07-19 
確定日 2004-02-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1908572号発明「医療用バックおよびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第1908572号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第1908572号の請求項1〜4に係る発明についての出願は、昭和63年1月18日に特許出願されたものであって、平成6年5月25日に特公平6-38829号として出願公告がなされ、平成7年2月24日にその発明について特許権の設定登録がなされたものである。
(2)これに対して、請求人は、平成14年7月19日に本件請求項1〜4に係る発明の特許について無効審判を請求した。
(3)一方、被請求人は、平成14年10月18日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、即ち、以下のa)及びb)のとおりに訂正しようとするものである。
a)特許請求の範囲の請求項4における、
「薬液収納部の周縁部分で、被加熱部分が前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように加熱溶着された」との記載を、
「薬液収納部の周縁部分で、加熱金型を用いて、被加熱部分が前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように加熱溶着された」と訂正する。
b)明細書の<課題を解決するための手段>の項における、
「また第2の発明は、・・・薬液収納部の周縁部分で被加熱部分が前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように加熱溶着された」との記載を、
「また第2の発明は、・・・薬液収納部の周縁部分で、加熱金型を用いて、被加熱部分が前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように加熱溶着された」と訂正する。

2.訂正の適否に対する判断
これらの訂正事項について検討する。
上記a)の訂正事項は、特許請求の範囲の請求項4において、薬液収納部の周縁部分での被加熱部分が「加熱金型を用いて」加熱されるものであることを追加限定するためのものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正事項は、明細書の<実施例>の項の「最後に、ポート部挿着部分(4)を含む薬液収納部(2)の周縁部分に加熱金型を適用し、薬液収納部(2)形成時の被加熱部分の一部が再び加熱されるような位置で、第2工程でポート部挿着部分(4)に挿入されたポート部(1)と薬液収納部(2)を熱溶着すれば良い(第3工程)。」(特公平6-38829号公報第3頁第6欄第38〜43行参照。)なる記載に基くものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正である。
次に、上記b)の訂正事項は、上記a)の訂正事項との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記いずれの訂正事項も、「ポリオレフィン系合成樹脂のフィルムを用いて形成された、シール性が良く、経済的かつ溶着時間の改良された医療用バッグおよびその製造方法を提供する」という課題に変更を及ぼすものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
したがって、平成14年10月18日付けの訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書の規定及び同条第5項において準用する同法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
これに対して、請求人は、以下の1)及び2)の理由を挙げて、本件請求項1〜4に係る発明の特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号証乃至甲第4号証を提出している。
1)本件請求項1及び4に係る発明は、甲第1〜4号証のそれぞれに記載された発明であり、本件請求項2に係る発明は、甲第1〜3号証のそれぞれに記載された発明であり、さらに、本件請求項3に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるから、いずれも新規性を欠如しているものである(以下、「無効理由1」という。)。
2)本件請求項1〜4に係る発明は、甲第1〜4号証の記載内容に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、進歩性を欠如しているものである(以下、「無効理由2」という。)。

4.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件請求項1〜4に係る発明は、本件審判請求人の提出した甲第1〜4号証に記載された発明によって新規性を否定されたり進歩性を否定されるべきものではない旨主張している。

5.無効理由について
つぎに、上記無効理由のうち、まず無効理由2について検討する。
(1)本件発明
本件請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1〜4」という。)の要旨は、訂正明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
[本件発明1]
ポート部と薬液収納部を含んでなるポリオレフィン系合成樹脂製の袋体の製造において、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分を熱溶着して薬液収納部を形成する工程と、該薬液収納部のポート部挿着部分に前記ポート部を挿入する工程、およびポート部挿着部分を中心とする前記薬液収納部の周縁部分に加熱金型を適用し、前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部が再び加熱されるような位置で前記ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程、とを含んでなる医療用バッグの製造方法。
[本件発明2]
薬液収納部が1対のシート状フィルムから形成されてなる請求項1記載の医療用バッグの製造方法。
[本件発明3]
薬液収納部がインフレーションフィルムから形成されてなる請求項1記載の医療用バッグの製造方法。
[本件発明4]
ポート部と薬液収納部を含んでなるポリオレフィン系合成樹脂製の袋体であって、前記薬液収納部が、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分が熱溶着されて形成されたものであり、かつ前記ポート部挿着部分に挿入されたポート部と前記薬液収納部とが、該ポート部挿着部分を中心とする薬液収納部の周縁部分で、加熱金型を用いて、被加熱部分が前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように加熱溶着されたことを特徴とする医療用バッグ。
(なお、訂正明細書の【請求項1】には、「フィルムの開放周縁部分を熱容着して」と記載されているが、これは「フィルムの開放周縁部分を熱溶着して」の誤記と認められるため、請求項1に係る本件発明1を上記のように認定した。)

(2)甲各号証
a)甲第1号証(特開昭59-209535号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「本発明は、・・・二区画に仕切られた容器に関する。・・・予め定められた量の粉末化したか液体の形の薬剤を添加物移送部材の起動に依り、稀釈剤に添加し、得られる溶液を患者(客体)に非経口的に投与することが可能である。」(第3頁右下欄第6〜13行)
・「発明の一態様の詳細な説明に入り、手動操作の二区画容器20は図1-4で一般的に示される。これはエッジ21でつなぎ合わされ且つシールされている相対する2枚の可撓性物質シートから成る可撓性容器と共に使用するのが相応しい。容器22は例えば29と31の様な相対する側壁体の間に稀釈剤のための流体にタイトな区画25を提供する様に構成されている。」(第4頁右下欄第3〜9行)
・「可撓性容器22の底部には一般的に1個の口74があり、液体稀釈剤82で可撓性容器22を満たし又は流体82と小瓶30の中に保有されている薬剤84との混合物83を投与するために使用出来る。」(第5頁左下欄第5〜8行)
・「二区画容器の製造及び組立ての方法は色々あるが、側壁29及び31を形成するために可撓性材料の二枚のシートから可撓性容器を形成することで始めるのが好ましい。スリーブ24又は口14、114、414及び515のために容器の上部に開口86を設けておき、容器の底に口74のための開口を設けておく。カバー42、55、342、スリーブ24及び口は無菌条件で組立て可撓性容器22のエッジを通してRFマンドレルシール又はヒートシールする。同様に口74も可撓性容器22へRFシール又はヒートシールする。その結果、可撓性容器22は口74を過して稀釈剤82を無菌的に充填出来る。充填後“H”型の投与口76及びキャップ78を口74にかぶせる。」(第12頁右下欄第1〜12行)
・「キャップ70は、RF溶着又はヒート・シーリング・フランジ80のフランジ72への溶着によって、今やスリーブ24に付着可能である。」(第13頁左上欄第2〜4行)
・「可撓性容器キャップ70、スリーブ24、及び小瓶受入れ口を製造するための好ましい材料は半透明のポリエステル又はポリプロピレンのプラスチック材料である。然し、ポリ塩化ビニル又はポリエチレンの様な他の樹脂物質も使用し得る。」(第13頁左下欄第4〜8行)
・また、第1図には、スリーブ24及び口74が可撓性容器22に挿着されており、スリーブ24及び口74の周囲部分に、可撓性容器22のエッジ21のシール部に施された右上がりのハッチングと同様のハッチングが施されており、かつ、これらの周囲部分がエッジ21のシール部の一部に重なるような位置に描かれている二区画容器の構造が示されている。
上記の記載事項及び図示内容によれば、甲第1号証には、
「口74と可撓性容器22を含んでなる二区画容器20の製造において、可撓性材料の二枚のシートからエッジ21でシールして可撓性容器22を形成すると共に可撓性容器22の底に口74のための開口を設けておく工程、口74を可撓性容器22のエッジを通して可撓性容器22へヒートシールするようにする工程、とを含んでなる薬剤溶液を患者に投与するための二区画容器20およびその製造方法。」(以下、「甲第1号証発明」という。)
が記載されているものと認められる。
b)甲第2号証(米国特許第4610684号明細書)には、図面と共に以下の事項が記載されている(和訳は甲第2号証に添付された部分訳参照)。
・「図1および図2は、本発明の手動で操作可能な2区画に分けられた容器、および混合システムを全体的に10として示す。器具10は、可撓性のある熱可塑性物質による2枚のシート18および20から形成されている可撓性の外側容器12を有することを特徴とし、それらのシートが、それぞれの周辺で接合されることにより端部14を形成している。可撓性の外側容器12の最上部において、吊り部35が、最上部のシール33内に形成されている。投与口40および添加口38は、可撓性容器12の底部で端部14内部の37においてマンドレルシールされている。」(第3欄第5〜15行)
・「本発明の可撓性容器12を製造するための好ましい材料は、透光性ポリエステルまたはポリプロピレンプラスチックであるが、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等の、他の樹脂性材料を使用してもよい。」(第5欄第25〜30行)
・「プラスチックシートのシールは、加熱、RF技術または他のいかなる適切な方法を用いて行なってもよい。」(第5欄第36〜37行)
・また、図1では可撓性容器12の底部における投与口40および添加口38のシール部37と可撓性容器12の端部14のシール部とが一部重なっている位置関係状態が示されている。
c)甲第3号証(実願昭60-199879号[実開昭62-111031号]のマイクロフィルム)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「従来の輸液バッグには,プラスチックなどの2枚のシートを重合し,それらの周縁部の一部分を開口縁部とし,残りの部分をヒートシールなどで液密に封じ,上記開口縁部に栓体差し込み口を有する筒体を挿入した状態で,上記開口縁部をヒートシールなどで液密に封じることにより製作されたものがある。」(明細書第1頁第19行〜第2頁第5行)
・「実施例 シール部(12)や開口縁部(10),(11)のシールは,シート(8),(9)や筒体(13)に使用される素材に応じてヒートシール,即ち熱溶着や高周波溶着,接着剤による接着など適当な接着手段により形成しうる。」(明細書第4頁第2〜6行)
d)甲第4号証(特開昭61-90729号公報)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「たわまない不浸透性筒状材を或る長さとし、その両端の溶接部7,8を部分溶接し、両部屋3,4を分離する溶接部6も溶接し、次にチューブ18を所定の位置におき、長さ方向の一部分とその全外周に沿って5のところで袋2に両部屋を分離する溶接部6の辺りで溶接し、同時にチューブ18と隣接する両部屋を分離する溶接部6″を溶接し、このため容器の横縁部からチューブに到るまでの両部屋の分離部分が固く結合され、先に製品を充填して密封溶接したカートリッジ10をチューブ内に入れるのに大きい直径を有するカートリッジの一部分を保持して袋に溶接されていないチューブ18の一部分により密封をなすようにし、最後に端部のチューブ9′,9″を所定の位置におき、容器の両端部の溶接部7,8を完成することを特徴とする混合用容器の製造方法。」(第2頁左下欄第12行〜右下欄第7行)
・「第1図に示した混合用容器1は、不浸透性のたわみ材、好ましくは1枚物の透明な、または不透明な材料で作った筒状の袋2から成っている。この材料はポリビニールまたはポリエチレンのようなプラスチック材である方が都合がよい。」(第3頁右下欄第1〜5行)
・「混合用容器1の袋2はその両端部が溶接部7,8となっていて、部屋3,4を外部と遮断させている。注入用チューブ9′は必要ならば設け、通常は1つまたはいくつかの排出用チューブ9″が各溶接部7,8にある、袋2の上下両端に設けてある。」(第4頁左上欄第15〜20行)
・「混合容器1を作るには、筒状で不浸透性のたわみ材を或る長さに切断し、その両端の溶接部7,8の一部を溶接し、・・・最後に端の導管を所定の位置において、部屋の両端の溶接部7,8を溶接して完全に密封する。」(第5頁右上欄第9行〜第17欄第4行)

(3)本件発明1についての対比・判断
本件発明1と甲第1号証発明とを比較すると、後者における「口74」が前者における「ポート部」に相当し、以下同様に、「可撓性容器22」が「薬液収納部」に、「二区画容器20」が「袋体」に、「薬剤溶液を患者に投与するための二区画容器20」が「医療用バッグ」にそれぞれ相当する。
そして、後者において、「口74を・・・可撓性容器22へヒートシールする」とされているところから、可撓性容器22には熱溶着可能な材質が採用されており、「可撓性材料の二枚のシートからエッジ21でシールして可撓性容器22を形成する」際にも、熱溶着によるシールが施されているものと認められるため、後者の「可撓性材料の二枚のシートからエッジ21でシールして可撓性容器22を形成すると共に可撓性容器22の底に口74のための開口を設けておく工程」が、前者の「ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分を熱溶着して薬液収納部を形成する工程」に相当し、同様に、「口74を可撓性容器22のエッジを通して可撓性容器22へヒートシールするようにする工程」が「薬液収納部のポート部挿着部分に前記ポート部を挿入する工程、およびポート部挿着部分を中心とする前記薬液収納部の周縁部分に(て)、前記ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程」に、それぞれ相当している。
したがって、両者は、
「ポート部と薬液収納部を含んでなる袋体の製造において、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分を熱溶着して薬液収納部を形成する工程と、該薬液収納部のポート部挿着部分に前記ポート部を挿入する工程、およびポート部挿着部分を中心とする前記薬液収納部の周縁部分に(て)、前記ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程、とを含んでなる医療用バッグの製造方法」である点で一致し、
a.袋体に関し、本件発明1が、「ポリオレフィン系合成樹脂製」としたのに対し、甲第1号証発明は、その具体的な材料が明確にされていない点(以下、「相違点a」という。)、
b.ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程に関し、本件発明1が、「加熱金型を適用し」ているのに対し、甲第1号証発明は、その具体的な手段が明確にされていない点(以下、「相違点b」という。)、
c.ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程に関し、本件発明1が、「薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部が再び加熱されるような位置で」熱溶着するのに対し、甲第1号証発明は、そのような位置関係が明確にされていない点(以下、「相違点c」という。)、
で相違する。
以下、上記の相違点について検討する。
・相違点aについて
甲第1号証発明における袋体に関連する材料について、甲第1号証には、「可撓性容器キャップ70、スリーブ24、及び小瓶受入れ口を製造するための好ましい材料は半透明のポリエステル又はポリプロピレンのプラスチック材料である。然し、ポリ塩化ビニル又はポリエチレンの様な他の樹脂物質も使用し得る。」(第13頁左下欄第4〜8行)と記載されている。
上記記載のうちの「可撓性容器キャップ70」については、甲第1号証中の他の記載部分全体に亘って、「キャップ70」及び「可撓性容器22」という互いに別部材を示すものとしての表記が統一して用いられていること、さらに、「キャップ70は、RF溶着又はヒート・シーリング・フランジ80のフランジ72への溶着によって、今やスリーブ24に付着可能」(第13頁左上欄第2〜4行)とされていることから、「キャップ70」は「スリーブ24」のキャップであっても、「可撓性容器22」のキャップとはなっていないこと、等を総合的に勘案すると、上記「可撓性容器キャップ70」との記載は、「可撓性容器22、キャップ70」の誤記と捉えるのが相当であり、結局、甲第1号証には、「可撓性容器22」、「スリーブ24」等がポリプロピレン等のプラスチック材料やポリエチレン等の樹脂物質、即ち、ポリオレフィン系合成樹脂、を使用した例が記載されているというべきである。
また、仮に、上記甲第1号証中の「可撓性容器キャップ70」なる記載が誤記ではないとしても、甲第2号証には、医療用バッグと認められる「器具10」を形成する「可撓性容器12」について、「可撓性容器12を製造するための好ましい材料は、透光性ポリエステルまたはポリプロピレンプラスチックであるが、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等の、他の樹脂性材料を使用してもよい。」(第5欄第25〜30行)として、ポリオレフィン系合成樹脂を使用した例が記載されている以上、甲第1号証発明における「可撓性容器22」をポリオレフィン系合成樹脂製とすることは、当業者にとって容易である。
そして、甲第1号証発明において、「スリーブ24」と同じ円筒形状を有し且つ「可撓性容器22」に挿着して熱溶着される「口74」について、「可撓性容器22」や「スリーブ24」と同じポリオレフィン系合成樹脂を使用することは、シールし易い材質として同じ樹脂同士を選択することがプラスチックの熱溶着における周知慣用技術であることを加味すれば、当業者が容易に推考し得るところである。
したがって、甲第1号証発明において、「可撓性容器22」と「口74」を含んでなる袋体をポリオレフィン系合成樹脂製とすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
なお、被請求人は、甲第1号証に記載のものは、RFマンドレルシールを使用している以上、高周波溶着が可能な材料を対象としたものである旨主張しているが、甲第1号証の「スリーブ24及び口は無菌条件で組立て可撓性容器22のエッジを通してRFマンドレルシール又はヒートシールする。同様に口74も可撓性容器22へRFシール又はヒートシールする。」との記載から、RFマンドレルシール以外の溶着手法であるヒートシールが考慮され、かつ、「可撓性容器キャップ70、スリーブ24、及び小瓶受入れ口を製造するための好ましい材料は半透明のポリエステル又はポリプロピレンのプラスチック材料である。然し、ポリ塩化ビニル又はポリエチレンの様な他の樹脂物質も使用し得る。」との記載から、高周波溶着ができないとされる、ポリプロピレン、ポリエチレン等の材料が使用されていることが明らかである以上、被請求人の上記主張を採用することはできない。
・相違点bについて
熱溶着のための具体的な手法として、インパルスシーラー、加熱金型等が用いられることは良く知られているところであり、これらの手法のいずれを採用するかは、被溶着部の形状等に応じて当業者が適宜選択し得る事項である。
そして、甲第1号証発明のポート部挿着部分のように、被溶着部の形状が円筒形状であれば、平面状の抵抗発熱体を有するインパルスシーラーではリークが発生し易すくなることは容易に理解されるところであり、かかる欠点を解消すべく、円筒形状の被溶着部に適した他の熱溶着手法として、被溶着部の形状に適合した溶着が可能な周知の加熱金型による手法を採用すればよいことは、当業者が容易に想到し得るところである。また、甲第1号証発明のポート部と薬液収納部を熱溶着する工程において、加熱金型による熱溶着手法の適用を阻害する要因も何等認められない。
なお、被請求人は、ポート部挿着部分の溶着工程において加熱金型を適用したことが新規であり、それにより明細書に記載の効果が奏される旨主張しているが、例え新規性を認めることができたとしても、それにより進歩性までが肯定されたことにはならず、また、明細書に記載の効果も、周知の加熱金型の溶着手法自体が有している効果、或いは、該溶着手法を適用した際に当然予測される効果にすぎない。
・相違点cについて
甲第1号証発明も、「ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分を熱溶着して薬液収納部を形成する工程」(以下、「第1溶着工程」という。)と、「ポート部挿着部分を中心とする前記薬液収納部の周縁部分に(て)、前記ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程」(以下、「第2溶着工程」という。)の2つの溶着工程を有するものである。
そして、医療用バッグにおいて、薬液の漏れを防止するとの観点から、第1溶着工程と第2溶着工程における溶着部の一部は互いに重なり合う状態となっていることは容易に理解されるところである。
また、甲第1号証の第1図には、口74の周囲部分に、可撓性容器22のエッジ21のシール部に施された右上がりのハッチングと同様のハッチングが施されており、かつ、この周囲部分がエッジ21のシール部の一部に重なり合っている状態が示されている。
さらに、甲第2号証の図1には、可撓性容器12の底部におけるポート部(投与口40および添加口38)のシール部37と可撓性容器12の端部14のシール部とが一部重なっている位置関係にあり、ポート部のシール部37が、甲第1号証の第1図における口74の周囲部分と同形状に描かれている。
これらを総合的に勘案すると、甲第1号証の第1図における、口74の周囲部分のハッチングが施された箇所は、シールされた領域を表すものと解釈するのが妥当であり、第1溶着工程におけるエッジ21のシール部と第2溶着工程における口74の周囲部分のシール部同士が一部重なり合っている状態は、結局、本件発明1の「薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部が再び加熱されるような位置で」ポート部と薬液収納部を熱溶着する状態を示すものと捉えることができる。
したがって、相違点cは、本件発明1と甲第1号証発明との間の実質的な相違点を成すものではない。
なお、被請求人は、甲第1号証には、シール部の重なりの点については、具体的な記載がない旨主張しているが、甲第1号証の第1図における、口74の周囲部分のハッチングが施された箇所が、シールされた領域であるとの認定を覆すに足る根拠は何ら示されていない。そして、エッジ21と口74の周囲部分のハッチング部同士即ちシール部同士が一部重なり合っていることは、第1図に明らかであるから、被請求人の上記主張は採用できない。

そして、本件発明1により奏される効果は、上記甲第1及び第2号証に記載された内容から当業者が予測し得る程度のものである。
以上のとおりであるので、本件発明1は、甲第1及び第2号証に記載された内容に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明2についての対比・判断
本件発明2は、本件発明1に、「薬液収納部が1対のシート状フィルムから形成されてなる」とする構成をさらに限定付加したものであるが、かかる構成は、甲第1号証発明に「可撓性材料の二枚のシートからエッジ21でシールして可撓性容器22を形成する」として具備されているものである。
したがって、上記(3)での検討内容を踏まえれば、本件発明2も、本件発明1と同様に、甲第1及び第2号証に記載された内容に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明3についての対比・判断
本件発明3は、本件発明1に、「薬液収納部がインフレーションフィルムから形成されてなる」とする構成をさらに限定付加したものであるが、かかる構成は、甲第4号証発明に「ポリビニールまたはポリエチレンのようなプラスチックの筒状で不浸透性のたわみ材(「インフレーションフィルム」に相当。)を或る長さに切断した混合容器1(「薬液収納部」に相当。)」として具備されているところであり、かかる構成を甲第1号証発明に採用することも任意である。
したがって、上記(3)での検討内容を踏まえれば、本件発明3は、甲第1、第2及び第4号証に記載された内容に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明4についての対比・判断
本件発明4と甲第1号証発明とを比較すると、後者における「口74」が前者における「ポート部」に相当し、以下同様に、「可撓性容器22」が「薬液収納部」に、「二区画容器20」が「袋体」に、「薬剤溶液を患者に投与するための二区画容器20」が「医療用バッグ」にそれぞれ相当する。
そして、後者において、「口74を・・・可撓性容器22へヒートシールする」とされているところから、可撓性容器22には熱溶着可能な材質が採用されており、「可撓性材料の二枚のシートからエッジ21でシールして可撓性容器22を形成する」際にも、熱溶着によるシールが施されているものと認められるため、後者の「可撓性材料の二枚のシートからエッジ21でシールして可撓性容器22を形成すると共に可撓性容器22の底に口74のための開口を設けておく工程」によるものが、前者の「薬液収納部が、ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分が熱溶着されて形成されたもの」に相当し、同様に、「口74を可撓性容器22のエッジを通して可撓性容器22へヒートシールするようにする工程」によることが「ポート部挿着部分に挿入されたポート部と薬液収納部とが、ポート部挿着部分を中心とする薬液収納部の周縁部分で、加熱溶着されたこと」に、それぞれ相当している。
したがって、両者は、
「ポート部と薬液収納部を含んでなる袋体であって、前記薬液収納部が、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分が熱溶着されて形成されたものであり、かつ前記ポート部挿着部分に挿入されたポート部と前記薬液収納部とが、該ポート部挿着部分を中心とする薬液収納部の周縁部分で、加熱溶着された医療用バッグ」である点で一致し、
d.袋体に関し、本件発明4が、「ポリオレフィン系合成樹脂製」としたのに対し、甲第1号証発明は、その具体的な材料が明確にされていない点(以下、「相違点d」という。)、
e.ポート部と薬液収納部との加熱溶着に関し、本件発明1が、「加熱金型を用いて」いるのに対し、甲第1号証発明は、その具体的な手段が明確にされていない点(以下、「相違点e」という。)、
f.ポート部と薬液収納部との加熱溶着に関し、本件発明1が、「被加熱部分が薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように」しているのに対し、甲第1号証発明は、そのような位置関係が明確にされていない点(以下、「相違点f」という。)、
で相違する。
以下、上記の相違点について検討する。
・相違点d乃至fは、上記(3)における相違点a乃至cとそれぞれ実質的に等価なものであるから、既に検討したとおり、相違点d乃至fも格別なものではない。
そして、本件発明4により奏される効果も、上記甲第1及び第2号証に記載された内容から当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本件発明4は、甲第1及び第2号証に記載された内容に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、上記無効理由1について判断するまでもなく、本件発明1〜4は、いずれも甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
医療用バックおよびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポート部と薬液収納部を含んでなるポリオレフィン系合成樹脂製の袋体の製造において、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分を熱容着して薬液収納部を形成する工程と、該薬液収納部のポート部挿着部分に前記ポート部を挿入する工程、およびポート部挿着部分を中心とする前記薬液収納部の周縁部分に加熱金型を適用し、前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部が再び加熱されるような位置で前記ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程、とを含んでなる医療用バッグの製造方法。
【請求項2】 薬液収納部が1対のシート状フィルムから形成されてなる請求項1記載の医療用バッグの製造方法。
【請求項3】 薬液収納部がインフレーションフィルムから形成されてなる請求項1記載の医療用バッグの製造方法。
【請求項4】 ポート部と薬液収納部を含んでなるポリオレフィン系合成樹脂製の袋体であって、前記薬液収納部が、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分が熱溶着されて形成されたものであり、かつ前記ポート部挿着部分に挿入されたポート部と前記薬液収納部とが、該ポート部挿着部分を中心とする薬液収納部の周縁部分で、加熱金型を用いて、被加熱部分が前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように加熱溶着されたことを特徴とする医療用バッグ。
【発明の詳細な説明】
<産業上の利用分野>
本発明は医療用バッグおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリオレフィン系合成樹脂のポート部とフィルムから形成された薬液収納部、とを有する経済的かつシール性の良い医療用バッグおよびその製造方法の改良に関する。
<従来の技術>
誘電体損失が小さく、高周波ウェルダーを用いて溶着させることができない熱可塑性樹脂を溶着する方法としては、一般にインパルスシーラーを用いて溶着する方法、加熱した金型を用いて溶着する方法および超音波発生装置を用いて溶着する方法が知られている。
インパルスシーラーを用いて溶着する方法は、その表面が平面状である金属製の抵抗発熱体に電流を流して発熱させ、かかる熱を利用しておもに熱可塑性樹脂からなるフィルムどうしを帯状または直線状に溶着させる方法であり、抵抗発熱体の温度調節が容易であるという長所を有する。しかしインパルスシーラーを用いて溶着する方法では、たとえば2枚のシート状の被着体のあいだに硬度の小さいチューブを挿入して溶着したばあい、チューブが歪曲したり、またチューブと2枚のシートの境界面を完全にシールすることができないためにリークが発生することがあるという欠点がある。
加熱した金型を用いて溶着する方法は、金型を加熱し、かかる熱を利用して熱可塑性樹脂からなる被着体どうしを溶着させる方法であり、金型の形状を被着体の形状に合致させることにより種々の形状の被着体に適合させ、加熱溶融させることができるという長所を有する。しかしながら、金型温度は周囲の雰囲気温度によって影響を受けて変化し、また溶着をくり返し行うにつれて低下することがあるので、被着体によっては、該金型温度を制御するのがきわめて困難な場合がある。たとえば、金型温度が高いなり過ぎたばあいには、溶着した際に被着体が溶融変形して外観不良となり、また該金型温度が低いばあいには、溶着した際に被着体が溶融変形して外観不良となり、、また該金型温度が低いばあいには、溶着する時間が長くなって生産性が低下したり、被着体どうしが完全に均一に溶着しない、すなわち溶着不良を生じることがある。
超音波発生装置を用いて溶着する方法は、超音波発生装置から発生した超音波を被着体に伝播し、複数の接触された被着体の境界面に超音波の振動エネルギーにより熱を発生させ、かかる熱によって被着体どうしを溶着させる方法であり、被着体の境界面を溶着するものであるから、溶着による外観不良が発生せず、また熱源を必要としないので、容易に被着体どうしを溶着させることができる。しかし超音波発生装置を用いて溶着する方法では、たとえばポリブタジェン、低密度ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、エチレン系共重合体などの軟質材料からなる被着体は発熱溶融しないので、これらの軟質材料を適用することはできない。またとくに表面上に付着した微粒子をはじめ、形状、材質、性能などに対して厳しい規制が設けられ、高い安全性が要求されている、たとえば輸液バッグ、血液バッグなどの医療用容器を超音波発生装置を用いて作製するばあい、該容器の表面上に超音波による振動によって微粒子が発生することがあり、該微粒子を除去するのに膨大な労力を必要とすることがある。さらに溶着時には溶融した被着体が流出し、バリが発生することがある。
本出願人は上記の事情に鑑み、先に、従来高周波ウェルダーを用いて溶着することのできなかった熱可塑性樹脂同士を容易にしかも均一かつ確実に溶着しうる方法を提案している(特願昭61-286248号)。
また、加熱金型を用いた医療用バッグの製造に関しては、上記問題点を解決するために、ポート部を例えば舟形に成形して、該舟形部分の側壁とフィルムを均等に溶着することによりポート部付近でのシール不良を防ぐ方法や、外側に相対的に高い融点を有するフィルムを配したラミネートフィルムを用いる方法などが採用されている。
<発明の解決しようとする課題>
しかしながら、上記特願昭61-286248号において提案された発明は、従来技術の問題点を解決するものではあるが、比較的溶着時間が長く、また高周波ウェルダーと被着体との間に発熱体の、たとえば塩化ビニル樹脂のシートなどを挟む必要があるため不経済であり、医療用バッグの生産など、安価にしかも大量生産が要求される製品の溶着方法としては問題がある。
また加熱金型を用いる方法は、ポート部を舟形に成形するのは材料コストが高いうえ、溶着時間が長くなるという欠点を有し、ラミネートフィルムを使用するのはコストが高くなるので問題がある。
本発明は如上の問題点に鑑みてなされたもので、ポリオレフィン系合成樹脂のフィルムを用いて形成された、シール性が良く、経済的かつ溶着時間の改良された医療用バッグおよびその製造方法を提供することを目的とする。
<問題を解決するための手段>
本発明は上記の課題を解決するものであり、第1の発明は、ポート部と薬液収納部を含んでなるポリオレフィン系合成樹脂製の袋体の製造において、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分を熱溶着して薬液収納部を形成する工程と、該薬液収納部のポート部挿着部分に前記ポート部を挿入する工程、およびポート部挿着部分を中心とする前記薬液収納部の周縁部分に加熱金型を適用し、前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部が再び加熱されるような位置で前記ポート部と薬液収納部を熱溶着する工程、とを含んでなる医療用バッグの製造方法に関する。
また第2の発明は、ポート部と薬液収納部を含んでなるポリオレフィン系合成樹脂製の袋体であって、前記薬液収納部が、前記ポート部を挿着するためのポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分が熱溶着されて形成されたものであり、かつ前記ポート部挿入部分に挿入されたポート部と前記薬液収納部とが、該ポート袋挿着部分を中心とする薬液収納部の周縁部分で、加熱金型を用いて、被加熱部分が前記薬液収納部形成時の被加熱溶着部分の一部に及ぶように加熱溶着されたことを特徴とする医療用バッグに関する。
<作用>
次に本発明の作用について第1の発明を用いて説明する。
本願第1の発明によれば、ポート部挿着部分を除くフィルムの開放周縁部分を熱溶着して薬液収納部を形成した後、ポート部を該薬液収納部のポート部挿着部分に挿入し、ポート部と薬液収納部とを熱溶着しているので、溶着時に加熱金型でフィルムを変形させながら溶着する場合のような、加熱金型がフィルムを押圧する力にアンバランスが生じることがなく、従って、フィルムとポート部との溶着からフィルム同士の溶着に移行する部分でフィルムが破れることがないので、ポート部と薬液収納部の溶着部分でのリークを防ぐことができる。
またポート部挿着部分にポート部がほぼ密着するように挿入されるので、フィルムが加熱され溶融される時に、フィルムがポート部から浮き上がることがなく、従ってポート部と薬液収納部との溶着部付近でのフィルムの破れやリークが防止できる。
さらにまた、ポート部挿着部分を含む薬液収納部の周縁部分を加熱溶着しているので、ポート部挿着部分と、これと隣接する周縁部分との間の移行部分で溶着不良を生ずることがなく、従って確実なシールを行うことができる。
<実施例>
次に本発明の医療用バッグについて図面に基づいて説明する。
第1図は本発明の一実施例に係る医療用バッグの概略図であり、フィルムとしてインフレーションフィルムを用いた場合を示している。
第1図に示すように本発明の医療用バッグはポート部(1)と薬液収納部(2)とからなる袋体であって、フィルムを第1シール部(3)で熱溶着して袋状に形成した薬液収納部(2)の唯一の開口部分であるポート部挿着部分(4)にポート部(1)を挿入して、ポート部(1)と薬液収納部(2)とを第2シール部(5)で熱溶着したことを特徴とするものである。
ポート部(1)は薬液等の出入口とて設けられたもので、開口端と閉鎖端を有する管状体である。医療用バッグに薬液等が収納された後、ポート部(1)はゴム栓(図示されていない)などで密栓されているが、ポート部(1)の閉鎖端は、ゴム栓の外側を被覆して無菌的状態に保護するための薄膜に形成されている。
薬液収納部(2)はインフレーションフィルムまたは1対のシート状フィルムを熱溶着して形成された薬液等を収納する袋状部分であり、ポート部挿着部分(4)を除くフィルムの開放周縁部分である第1シール部(3)が熱溶融圧着されて形成される。すなわちフィルムとしてインフレーションフィルムを用いる場合には、バッグの肩部および底部が、フィルムとして1対のシート状フィルムを用いる場合には、バッグの肩部と底部および両側部が熱溶着される。
尚、バッグには一般的に第1図に示すような肩部吊り下げ穴(6)や底部吊り下げ穴(7)が設けられるので、肩部および底部の第1シール部はフィルムの周縁部分だけでなく、たとえば第1図に示すように、吊り下げ穴(6)や(7)を囲むように設けられる。また、ポート部挿着部分(4)を含む肩部は肩部吊り下げ穴(6)の有無に関係なく、ポート部の挿入および溶着に便利なように、図示のような形状にシールされるのが好ましい。
ポート部(1)および薬液収納部(2)は同一の材料で形成されるが、その形成材料は耐薬品性の良いオレフィン系の合成樹脂であり、たとえばポリエチレンやポリプロピレン、およびこれらの共重合体やエラストマーなどが挙げられる。
ポート部(1)と薬液収納部(2)の熱溶着は第2シール部(5)で行われるが、第2シール部(5)は、ポート部挿着部分(4)を含む薬液収納部(2)の周縁部分であり、図示のようにポート部挿着部分(4)に挿入されたポート部(1)を横断するようにして肩部の第1シール部(3)と重複する位置まで延びる帯状の形状に設けられる。従っての第1シール部(3)と第2シール部(5)の境目においてシール不良が生じることがない。
次に本願第1の発明である医療用バッグの製造方法について説明する。
まずポート(1)を挿着するためのポート部挿着部分(4)を除くフィルムの開放周縁部分、すなわちフィルムがインフレーションフィルムの場合にはバッグの肩部および底部を、フィルムが1対のシート状フィルムの場合にはバッグの肩部と底部および両側部を熱容着して薬液収納部(2)を形成する(第1工程)。次に第1工程で形成された薬液収納部(2)の唯一の開口部であるポート部挿着部分(4)にポート部(1)を挿入し(第2工程)、最後に、ポート部挿着部分(4)を含む薬液収納部(2)の周縁部分に加熱金型を適用し、薬液収納部(2)形成時の被加熱部分の一部が再び加熱されるような位置で、第2工程でポート部挿着部分(4)に挿入されたポート部(1)と薬液収納部(2)を熱溶着すれば良い(第3工程)。
ここで一遍にフィルムの開放周縁部分、およびフィルムとポート部(1)とを熱溶着してしまわないで3つの工程に分けて行うのは、作用の欄においてすでに説明したように、フィルムに対する加熱金型の押圧力のアンバランスを無くし、またポート部(1)かフィルムが浮き上がるのを防ぐためであり、本方法の採用によりポート部付近でのリークや破れを完全に防止することができる。
<実施例1>
フィルムとしてプロピレン-エチレンランダム共重合体(FL6711N,住友化学工業(株)製)のインフレーションフィルム(厚さ0.25mm、折り径140mm)を用い、これとポリプロピレン(W101、住友化学工業(株)製)のポート部からバッグを製造し、バッグに550mlの水を入れて121℃、20分のオートクレーブ減菌を行った後、0.7kg/cmの耐圧テスト及び高さ1mからの落下テストを行ったところ、リーク、破袋などの異常は認められなかった。
尚、シール機は熱圧着プレス(MKP-75S,ミカド金属工業(株)製)を用い、シール条件は第1工程、第3工程とも300℃、3秒であった。
<実施例2>
フィルムとしてポリエチレン(F208-1,住友化学工業(株)製)のシート状のフィルムを用い、これとポリエチレン(G801,住友化学工業(株)製)のポート部からバッグを製造し、バッグに550mlの水を入れて110℃、30分のオートクレーブ減菌を行った後、実施例1と同様のテストを行ったところ、リーク、破袋などの異常は認められなかった。
尚、フィルムの寸法およびシール機、シール条件は実施例1とはと同じである。
<発明の効果>
以上説明してきたことから明らかなように、本発明を採用することにより次のような利点を得ることができる。
(1)従来は加熱溶着法でポート部を取り付ける場合、特殊な部材を用いてリーク防止を行っていたが、その必要が無くなるので経済的であり、また溶着時間も短縮できる。
(2)従来の熱溶着によって製造されたバッグに比べ、大幅にリークを減少できる。
(3)ポート部の加工が容易なので、製造上の手間が省ける。
(4)耐薬品性の良いポリオレフィン系合成樹脂のフィルムを用いて熱溶着により医療用バッグを製造するので、衛生的かつ安全な医療用バッグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例を示す概略図である。
<主な符号の説明>
1:ポート部
2:薬液収納部
3:第1シール部
4:ポート部挿着部分
5:第2シール部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2002-12-19 
出願番号 特願昭63-7850
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (A61J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多喜 鉄雄川端 修  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 門前 浩一
千壽 哲郎
登録日 1995-02-24 
登録番号 特許第1908572号(P1908572)
発明の名称 医療用バックおよびその製造方法  
代理人 井崎 康孝  
代理人 福田 あやこ  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 井崎 康孝  
代理人 宇田 浩泰  
代理人 小野 昌延  
代理人 宇田 浩泰  
代理人 亀井 弘勝  
代理人 小野 昌延  
代理人 辻村 和彦  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 山内 康伸  
代理人 福田 あやこ  
代理人 山内 康伸  
代理人 辻村 和彦  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 川崎 実夫  
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