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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D05B
管理番号 1094127
審判番号 不服2002-13539  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-18 
確定日 2004-03-18 
事件の表示 平成 4年特許願第206413号「刺繍ミシン」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 2月22日出願公開、特開平 6- 47179]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の特定
本願は、平成4年8月3日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成15年9月17日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。

「模様領域の位置決定を容易とするために、縫製可能範囲、及び、該縫製可能範囲に対して移動可能とされた複数の模様の模様領域を共に表示する表示器を有する刺繍ミシンにおいて、縫製終了後の縫い位置と模様領域を記憶しておくメモリと、縫製前の模様の縫製位置を移動可能とする移動操作手段と、該メモリに記憶された縫製終了後の模様の模様領域と縫製前の模様の模様領域を同時に表示すると共に、この同時表示中に移動操作手段により該縫製前の模様の縫製位置が移動された場合には、その移動操作に応じて縫製終了後の模様の模様領域に対して、縫製前の模様の模様領域を移動表示するための制御手段と、を備えたことを特徴とする刺繍ミシン。」

2.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由で引用した、本願の出願前の昭和62年3月17日に頒布された特開昭62-60586号公報(以下「引用例」という。)には、次の記載事項AないしGの記載がある。

記載事項A.(2ページ右下欄5行〜15行)
「前記ミシンテーブル1の右側部上面にはタブレットボード9及び指定部材としての入力ペン10が配設されるとともに、CRTディスプレイよりなる表示装置11が配設されている。前記タブレットボード9上には縫製要素配列部12が設けられ、その配列部12には各種の文字及び模様等の縫製要素13が一要素毎に区画された状態で配列表示されている。そして、前記入力ペン10によって1個の縫製要素13を指定することにより、その縫製要素13が前記表示装置11上に表示されるようになっている。」

記載事項B.(3ページ左下欄3行〜8行)
「第1の記憶手段としてのフロッピィディスク28が着脱可能に装着される。このフロッピィディスク28には各種の漢字,ひらがな,カタカナ,アルファベット文字,数字及び模様等よりなる各種縫製要素のコードデータに対応する縫製データが記憶されている。」

記載事項C.(4ページ右下欄8行〜18行)
「そして、ステップS15において、入力ペン10により縫製位置指定エリア14上で縫製位置を指定入力することにより、・・・第5図(c)に示すように、縫製要素13の縫製位置が十字状のカーソルKによって表示装置11上に表示されるとともに、カーソルKの近傍に縫製要素13が表示され、かつ縫製位置のX,Y座標が枠組F内に表示される。また、前記拡大縮小率,角度及び座標の各データは縫製データと組にしてRAM21に記憶される。」

記載事項D.(5ページ右上欄19行〜右下欄6行)
「一方、各縫製要素13の縫製位置を変更入力するために、前記ステップS20においてファンクションキー15の内のウインドウキー15iが指定されると、CPU20はウインドウ表示モードを設定し、次のステップS28において第5図(d)に示すように第1番目の縫製要素データとともに、先に設定された円形あるいは矩形の縫製エリアAc,Abを表示する。また、前記縫製エリアAc,Ab内にはすべての縫製要素に対応するデータ番号N及び表示枠Dfが先に指定された縫製位置に表示される。
次に、ステップS29で各縫製要素のデータ番号がタブレットボード9上の数字キー16の指定によって入力されると、ステップS30でその番号に応じた縫製要素データの表示に切替えられる。
また、前記ステップS29において番号が入力されなかった場合には、第1番目のデータがそのまま表示される。
その後、各縫製要素13の縫製位置を変更するためのサブルーチン(ステップS32)に進む。
このサブルーチンにおいては前記ステップS22〜ステップS26までとほぼ同一の処理が実行され、バックキー15k及びフォワードキー15eに代えて、複数のジョグキー15lを指定することにより、その指定されたジョグキー15lの種類及び指定回数に応じて縫製要素表示枠Dfが各方向へ移動され、各縫製要素13の縫製位置が変更される。
その変更データはRAM21に記憶される。」

記載事項E.(6ページ左上欄12行〜15行)
「CPU20はそのファイル名データとともに縫製要素の組み合わせデータをフロッピィディスク28に書き込み、次のステップS47で、表示装置11に「登録終了」の表示を行う。」

記載事項F.(第5図)
第5図(d)には、複数の縫製要素1〜3に対応する複数の表示枠Dfを、縫製エリアAb内に表示した表示装置11が、開示されている。

記載事項G.(2ページ左上欄10行〜15行)
「その目的は縫製される要素を短時間で簡単に検索することができるとともに、縫製位置を簡単に入力することができ、それによって縫製要素の編集に要する時間を短縮して効率良く縫製作業を遂行することができる文字等を縫製可能なミシンを提供することにある。」

3.当審の判断
(1)対比
引用例の「ミシン」は、文字等を縫製可能なものであるから(記載事項G)本願発明の「刺繍ミシン」に相当する。
また、引用例の「縫製エリア」は、この範囲内に縫製の対象となる縫製要素が配置されるものであるので、本願発明の「縫製可能範囲」に相当し、引用例の「縫製要素」は、各種の文字及び模様等であって(記載事項A参照)、複数選択され、縫製エリア内に、縫製位置変更可能に配置されるものであるので(記載事項D,F参照)、本願発明の、縫製可能範囲に対して移動可能とされた複数の「模様」に相当する。
引用例の「縫製要素表示枠Df」は、縫製エリア内で縫製を行う部分に対応した位置を枠として表示するものであるから(記載事項D,F参照)、本願発明の「模様領域」に相当する。
引用例の「フロッピィディスク」及び「RAM」は、縫製要素に対する拡大縮小率、角度及び座標の各データを縫製データと組にして記憶するものであり、少なくとも「フロッピィディスク」は、縫製終了後も縫い位置と模様領域を記憶しておくものであるから、(記載事項C,D,E参照)、本願発明の、縫製終了後の縫い位置と模様領域を記憶しておく「メモリ」に相当する。
引用例の「ジョグキー」は、縫製要素表示枠Dfを移動させるための手段であるから(記載事項D参照)、本願発明の「移動操作手段」に相当する。
また、引用例記載のミシンが、縫製位置を簡単に入力、編集できるようにすることを目的としていること(記載事項G参照)、縫製前の縫製要素がジョグキーで移動されること、引用例記載のものが、ジョグキーで移動された内容を表示に反映することができることから(記載事項D参照)、このものが移動表示のための制御手段を備えていることは明らかである。

してみると、引用例には、本願発明の用語を用いて記載すると、
「模様領域の位置決定を容易とするために、縫製可能範囲、及び、該縫製可能範囲に対して移動可能とされた複数の模様の模様領域を共に表示する表示器を有する刺繍ミシンにおいて、
縫製終了後の縫い位置と模様領域を記憶しておくメモリと、
縫製前の模様の縫製位置を移動可能とする移動操作手段と、
該メモリに記憶された複数の模様の模様領域を同時に表示すると共に、この同時表示中に移動操作手段により一つの模様の縫製位置が移動された場合には、その移動操作に応じて他の模様の模様領域に対して、前記一つの模様の模様領域を移動表示するための制御手段と、を備えたことを特徴とする刺繍ミシン。」が開示されている。

そこで、本願発明と引用例に記載された事項から把握される発明(以下、「引用例発明」という。)とを対比すると、両者は、前述した引用例記載の刺繍ミシンである点で一致し、次の相違点で相違している。

相違点
本願発明の制御手段は、縫製終了後の模様の模様領域と縫製前の模様の模様領域を同時に表示すると共に、この同時表示中に移動操作手段により該縫製前の模様の縫製位置が移動された場合には、その移動操作に応じて縫製終了後の模様の模様領域に対して、縫製前の模様の模様領域を移動表示するものであるのに対し、引用例の制御手段は、縫製前の複数の模様の模様領域を同時に表示すると共に、この同時表示中に移動操作手段により一つの模様の縫製位置が移動された場合には、その移動操作に応じて他の模様の模様領域に対して、前記一つの模様の模様領域を移動表示するものである点。

(2)相違点についての検討
表示を参照しつつ、縫製可能範囲内に複数の模様をレイアウトする作業を、縫製開始前に行うようにするか、縫製途中に行うようにするかは、当業者が必要に応じ、適宜選択し得た程度の事項であり、いずれの場合でも、すべての模様が表示されていれば、制御手段によって位置変更を表示に反映しつつ、選択した模様を、他の模様の位置を参照しながら配置できることに違いはないものである。
そして、縫製途中でレイアウトする場合、すでに縫製した模様は、もはやその位置を変えることはできないのであるから、縫製前の模様のみを移動表示するように制御手段を構成することは、当然のことである。
したがって、相違点に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

4.むすび
本願発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-19 
結審通知日 2004-01-20 
審決日 2004-02-03 
出願番号 特願平4-206413
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 奥 直也
山崎 豊
発明の名称 刺繍ミシン  
代理人 松山 圭佑  
代理人 高矢 諭  
代理人 牧野 剛博  

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