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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1094213 |
審判番号 | 審判1999-16699 |
総通号数 | 53 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-10-15 |
確定日 | 2004-03-24 |
事件の表示 | 平成4年特許願第206722号「文書処理方法及び文書処理装置」拒絶査定に対する審判事件[平成6年2月25日出願公開、特開平6-52161]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成4年8月3日の出願であって、その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年6月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項7に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項7】 グラフ理論におけるグラフによって表現される1以上の文書若しくは文書部品に対して所定の処理を施す文書処理装置において、 前記文書若しくは文書部品のデータ形式として前記グラフのノード位置を示す識別子がテキスト記述されたものを含んでテキスト記述された少なくとも1つの構成子からなる構成子記述列から、指定された第1の条件に適合する構成子に対応する識別子を第1の識別子列として取得して出力する第1の識別子列取得手段と、 前記第1の識別子取得手段が出力した第1の識別子列を保持する識別子列保持手段と、 前記識別子列保持手段に保持されている第1の識別子列を読み込んで、指定された第2の条件に適合する識別子を第2の識別子列として取得して出力する第2の識別子列取得手段と、 前記第2の識別子列取得手段が出力した第2の識別子列を読み込んで、各識別子に対応する構成子を含む構成子記述列を出力する構成子記述列出力手段と を具備することを特徴とする文書処理装置。」 2.引用例に記載された発明 これに対して、当審において平成14年4月12日付けで通知した拒絶の理由に引用された特開平3-161864号公報(以下「引用例1」という。)には、以下(a)〜(f)の事項が記載されている。 (a)「複数階層の入れ物により、マルチメディア対応の文書を管理する機能を有するデータ処理システムにおいて、文書または文書要素間の論理的関係を、クラスと、クラス配下の複数のサブクラスと、クラスまたはサブクラス配下に接続される文書または文書要素に対応するエンティティとの結び付きからなる木構造の論理構造により管理する論理構造管理手段(12)と、上記木構造について、少なくとも作成・更新・削除を含む操作を行う木構造操作手段(11)と、上記木構造による論理構造を文書または文書要素の実際の物理的な格納場所を示す物理構造にマッピングするための格納構造を管理する格納構造管理手段(13)とを備えたことを特徴とする文書管理処理方式。」(特許請求の範囲。第1頁左下欄第5行〜同頁右下欄第2行) (b)「本発明は…、文書または文書要素間の論理的関係を自由に操作し、長大文書の管理や版数管理、共用管理などの文書の管理を体系的に行うことができるようにすることを目的としている。」(第3頁右上欄第19行〜同頁左下欄第4行) (c)「本発明では、…、第1図に示すように、ユーザービューとして論理構造を設け、さらに、格納構造、物理構造の3階層レイヤによる文書データベースによって、マルチメディア対応の文書または文書要素を管理する。」(第3頁左下欄第15行〜同頁右下欄第3行) (d)「木構造操作手段11は、論理構造管理手段12が管理する木構造について、クラス単位またはサブクラス単位で、その作成・更新・削除などの操作を行う処理手段である。」(第4頁左上欄第15〜18行) (e)「第3図は、クラスの木構造を管理するリレーショナルデータベースによる部品展開型テーブルの例を示している。…「識別名」は、クラス、サブクラスまたはエンティティのいずれかを示し、システム生成の一意名である。-「所属名」は、サブクラスまたはエンティティが所属する識別名である。…「論理名」は、利用者が指定した名前である。サブクラス名、エンティテイ名は、クラス内で一意である。」(第5頁右上欄第2行〜同頁左下欄第4行) (f)第8図に示された文書データベースが動作するシステムの全体構成の説明として、「特に、文書管理サーバ42は、構造管理ファイル51に格納された木構造の論理構造に関する管理情報について、クラス単位またはサブクラス単位での作成・更新・削除・複写・移動・分離・結合などの操作処理機能を持つ。」(第7頁左上欄第13〜17行) 上記の「識別名」は、木構造を構成するクラス、サブクラスまたはエンティティのいずれかを示す一意名であるから、木構造のノード位置に一意であることは明らかである。さらに、第3図をみると、管理テーブルの各レコードは「識別名」、「論理名」、「所属名」の他に「所属名1」、「所属名2」も含んで記述されており、「所属名」は「1レベル上の親」と説明され、「所属名1」は「2レベル上の親」と説明され、「所属名2」は「3レベル上の親」と説明されており、「所属名」が1レベル上の親の識別名を示し、「所属名1」が2レベル上の親の識別名を示し、「識別名2」が3レベル上の親の識別名を示していることが看取される。 したがって、上記(a)〜(f)の記載事項及び図面の記載から、引用例1には、 「文書または文書要素間の論理関係を木構造により表現して、文書または文書要素間の論理的関係を操作処理する文書管理処理方式において、 前記文書または文書要素のデータ形式として前記木構造のノード位置に一意な識別名とノードの1レベル上の親、2レベル上の親、3レベルの上の親の識別名を示す所属名、所属名1、所属名2と利用者が指定した名前である論理名とを含んで記述されたレコードからなる管理テーブルを用い、前記操作処理を行う文書管理処理方式。」 との発明(以下「引用例1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。 そして、引用例1には、第7頁右上欄第1行〜同頁左下欄第13行に、 階層検索の場合の処理として、クライアントが階層名を指定し(Z.Z2)、階層検索を指示し(NEXT)、管理情報による検索を指示する(CREATEDATE>=19890801)と、システムが管理テーブルを検索して、検索結果を返却する(0 CURSOR1 2 Z.Z2.S,Z.Z2.T)処理も記載されており、該階層検索の場合の処理は、引用例1に記載された発明の文書または文書要素間の論理的関係の操作処理の一例として理解される。 同じく引用された特開平3-210668号公報(以下「引用例2」という。)には、以下(g)〜(j)の事項が記載されている。 (g)「各メンバ間の関係を示すテーブルを用いて、階層構造を辿ることにより、階層構造をもつ文書の中から、その階層構造を用いて任意のメンバを参照できるようにすることを目的とする。」(第2頁左下欄第11〜15行) (h)「(1)大規模なドキュメント(ペーパマニュアル)を章、節、項というモジュールに分割し、メンバとして区分データセット(ファイル)に格納する。この場合、それぞれのメンバには、メンバの構造的位置を表すユニークな名前を付与し、メンバ間の階層関係を表すため、各メンバにインデクスポインタを持つ行を追加するか、あるいはインデクスポインタを持つ替わりに、階層関係を表わすテーブルを付加する。これにより、目次、索引から自由にドキュメントの検索を行う。」(第2頁右下欄第14行〜第3頁左上欄第4行) (i)「また、各メンバのメンバ名をユニークに決めるため、次に示すようにメンバ名を付与する。(1)マニュアル本文のメンバの名前には、編番号、章番号、節番号、項番号を付与し、各メンバの名前がユニークになるようにする。すなわち、第6図(a)のように、本文のメンバ名を示す8桁は、マニュアル相互を区別するための名前(3桁)n1n2n3と、マニュアルの本文であることを示す記号G、編番号m1、章番号m2、節番号m3、項番号m4から構成される。」(第5頁左下欄第3〜12行) (j)「本実施例では、第21図の*次の項目*にカーソルを当てて送信キーを押すと、マニュアル処理装置では、マニュアル区分データセット(第3図)の中にある第22図のメンバ名ET1CCNVのメンバが*3の欄を走査して、現在表示中のメンバのメンバ名のET1G112のある行を捜す。それは、レベル番号が05であるので、それよりも下に続く行で次に05があるかを捜す。しかし、次の05に当たる前に、メンバ名ET1G12のレベル番号04にぶつかる。これは、第1.1節の中の項としては、弟メンバがないことを示すので、何もせず、端末に入力指令を出して、次の指令を待つ。一方、*前の項目*にカーソルを当てて送信キーを押すと、マニュアル処理装置は、ET1G112の行よりも前へ、レベル番号05を捜しに行く。その結果、直前の行に05が見つかるので、ET1G111のメンバ名を持つ兄メンバを、マニュアル区分データセットから読み出して表示し、入力指令を端末に発行しておく。」(第8頁右上欄第12行〜同頁左下欄第11行) 上記の「階層構造をもつ文書」は、図面第1図に示されるようにグラフ理論におけるグラフによって表現されるものであり、また、メンバの構造的位置を表すユニークな名前である「メンバ名」と階層関係を表す「レベル番号」とで、ノード間の親子関係と兄弟関係を示しており、グラフのノード位置を示す識別子として機能することは明らかである。 したがって、上記(g)〜(j)の記載事項及び図面の記載から、引用例2には、 グラフ理論におけるグラフによって表現される文書のメンバにグラフのノード位置を示す識別子を付与し、該識別子を利用してメンバの検索を行うこと が記載されていると認められる。 3.本願発明と引用例に記載された発明との対比 本願発明(以下「前者」という。)と引用例1に記載された発明(以下「後者」という。)とを対比すると、 (イ)後者の「文書管理処理方式」は、前者の「文書処理装置」に相当し、 (ロ)後者の「木構造」は、前者の「グラフ理論におけるグラフ」に相当し、 (ハ)後者の「文書要素」は、前者の「文書部品」に相当し、 (ニ)後者の「文書または文書要素間の論理的関係を操作処理する」は、前者の「文書若しくは文書部品に対して所定の処理を施す」に相当し、 (ホ)後者の「木構造のノード位置に一意な識別名」と「ノードの1レベル上の親、2レベル上の親、3レベルの上の親の識別名を示す所属名、所属名1、所属名2」とで、木構造のノード位置を識別するための木構造のノード位置に一意な識別子といえるから、前者の「グラフのノード位置を示す識別子」と、グラフのノード位置に一意な識別子として共通しており、 (ヘ)後者の「レコード」は、木構造のノードを記述しており、本願明細書の発明の詳細な説明において「グラフのノードを構成子として定義し」(段落【0044】)ているのであるから、前者の「構成子」に相当し、 (ト)後者の「管理テーブル」は、引用例1図面第3図に示されるようにレコード(構成子)の記述列からなるといえるから、前者の「構成子記述列」に相当している。 したがって、両者は、 「グラフ理論におけるグラフによって表現される1以上の文書若しくは文書部品に対して所定の処理を施す文書処理装置において、 前記文書若しくは文書部品のデータ形式として前記グラフのノード位置に一意な識別子が記述されたものを含んで記述された構成子からなる構成子記述列を用い、所定の処理を施すことを特徴とする文書処理装置。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 前者の識別子が、グラフのノード位置を示すものであるのに対して、後者のグラフのノード位置に一意な識別子は、ノード間の親子関係を示しているがノード間の兄弟関係を示しておらず、グラフのノード位置を示すものとはいえない点。 [相違点2] 前者の構成子が、識別子がテキスト記述されたものを含んでテキスト記述されたものであり、構成子記述列は少なくとも1つの該構成子からなるのに対して、後者の構成子は、識別子が記述されたものを含んでレコードとして記述されており、構成子記述列は該レコードからなる管理テーブルである点。 [相違点3] 前者が、構成子記述列から、指定された第1の条件に適合する構成子に対応する識別子を第1の識別子列として取得して出力する第1の識別子列取得手段と、前記第1の識別子取得手段が出力した第1の識別子列を保持する識別子列保持手段と、前記識別子列保持手段に保持されている第1の識別子列を読み込んで、指定された第2の条件に適合する識別子を第2の識別子列として取得して出力する第2の識別子列取得手段と、前記第2の識別子列取得手段が出力した第2の識別子列を読み込んで、各識別子に対応する構成子を含む構成子記述列を出力する構成子記述列出力手段とを具備するのに対して、後者は、そのような手段を具備していない点。 4.当審の判断 [相違点1]について検討する。 引用例2に、グラフ理論におけるグラフによって表現される文書のメンバにグラフのノード位置を示す識別子を付与し、該識別子を利用してメンバの検索を行うことが記載されているから、後者において、グラフのノード位置に一意な識別子をグラフのノード位置を示すものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点2]について検討する。 論理構造がグラフ理論におけるグラフによって表現される対象を記述するのに、グラフのノードをノード位置に一意な識別子がテキスト記述されたものを含んでテキスト記述し、該テキスト記述されたものからなる記述列により対象を記述することが周知であるから(例えば特開平2-140843号公報、特に、第2頁左下欄第11行〜同頁右下欄第8行の記載参照。)、後者において、識別子が記述されたものを含んでレコードとして記述された構成子を識別子がテキスト記述されたものを含んでテキスト記述された構成子とし、構成子記述列をテキスト記述された少なくとも1つの構成子からなるものとすることは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点3]について検討する。 引用例1には、第7頁右上欄第1行〜同頁左下欄第13行に、後者の文書若しくは文書部品に対する所定の処理(文書または文書要素間の論理的関係の操作処理)の一例として、クライアントが階層名を指定し(Z.Z2)、階層検索を指示し(NEXT)、管理情報による検索を指示する(CREATEDATE>=19890801)と、システムが管理テーブルを検索して、検索結果を返却する(0 CURSOR1 2 Z.Z2.S,Z.Z2.T)処理が記載されている。 後者において、上記の所定の処理(文書または文書要素間の論理的関係の操作処理)を行うのに、構成子記述列(管理テーブル)の構成子(レコード)に含まれる識別子を利用することは自明であるから、構成子記述列(管理テーブル)から、指定された階層名に論理名が適合する構成子(レコード)に含まれる第1の識別子を取得し、該第1の識別子を基に、指定された階層検索に適合する第2の識別子を取得して、該第2の識別子に対応する構成子を得るようにし、そのために、構成子記述列から、指定された第1の条件に適合する構成子(指定された階層名に論理名が適合する構成子)に対応する識別子を第1の識別子列として取得して出力する第1の識別子列取得手段と、前記第1の識別子取得手段が出力した第1の識別子列を保持する識別子列保持手段と、前記識別子列保持手段に保持されている第1の識別子列を読み込んで、指定された第2の条件に適合する識別子(指定された階層検索に適合する第2の識別子)を第2の識別子列として取得して出力する第2の識別子列取得手段と、前記第2の識別子列取得手段が出力した第2の識別子列を読み込んで、各識別子に対応する構成子を含む構成子記述列を出力する構成子記述列出力手段とを具備するようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明の効果も、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術事項の効果から当業者が容易に予測し得た程度のものである。 5.まとめ 以上のとおりであるので、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-01-07 |
結審通知日 | 2004-01-20 |
審決日 | 2004-02-02 |
出願番号 | 特願平4-206722 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 茂和、久保 正典 |
特許庁審判長 |
小林 信雄 |
特許庁審判官 |
村上 友幸 山本 穂積 |
発明の名称 | 文書処理方法及び文書処理装置 |
代理人 | 木村 高久 |