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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1094307
審判番号 不服2002-2389  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-13 
確定日 2004-03-25 
事件の表示 平成 9年特許願第 13216号「振込方式」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 7月31日出願公開、特開平10-198840]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成9年1月10日の出願であって、その請求項1及び2係る発明は、平成13年11月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。

【請求項1】 振込人の氏名・名称の他に受取人から通知された「顧客データ」を付加することについて金融機関と提携した販売業者またはサービス提供業者などの企業に対して、振込人が現金自動預け払い機を使用して振込む際に、上記企業を受取人とする振込先データが入力されたとき、振込人の氏名・名称の他に、上記受取人から通知された「顧客データ」を入力する画面を提供して上記「顧客データ」を入力させて振込処理を完了し、振込人が入力した上記「顧客データ」を氏名・名称に付加して上記受取人に通知することを特徴とする振込方式。
【請求項2】 金融機関と提携した受取人は、振込人に通知した「顧客データ」に基づいて、既払者と未払者とを識別することを特徴とする請求項1に記載の振込方式。

2.引用例に記載された事項

原審における平成13年9月11日付けの拒絶理由通知で引用した特開昭61-52793号公報(以下「引用例」という)には次の記載がある。

・「この発明は、たとえば他の金融機関に現金を振り込むことができる現金自動預出金機などの自動取引装置に関する。」(第1頁左欄19行目〜同右欄1行目)

・「最近では上記自動取引装置で、現金を受入れその受入れた現金を他の銀行口座に振り込んだり、カード取引により自分の口座から所定金額を他の銀行口座に振り込んだりする自動振り込み取引を行うものが開発され、実用化されている。」(第1頁右欄17行目〜第2頁左上欄1行目)

・「第1図はこの発明に係わる自動取引装置を示すものである。すなわち、筐体1の前面には略L字形状の操作部2が形成されている。この操作部2の水平面には、振替、振込すべき紙幣を多数枚一括して投入し得るとともに、紙幣の釣銭を受取る紙幣挿入口3が設けられていて、この紙幣挿入口3には開閉自在な扉4が設けられている。また、操作部2の水平面には、タッチセンサ内蔵のカラーCRT表示部5が設けられている。このCRT表示部5は操作手順、その他の情報をイラスト、文字あるいは文言によってCRT画面に表示し、利用者を誘導するとともに、その表示によって暗証番号、金額、口座番号、取引の承認、確認あるいは取消などに応じた表示部分を押圧することによりタッチセンサ(図示しない)がそれを検知し、後述する主制御部11への対応する信号を出力するいわゆるキー操作が行われるものである。すなわち、たとえば第2図に示すように、「お振込人名をどうぞ」という文言を表示するとともに、振込人名を投入するカタカナと振込先の事業所形態を支持するキーの表示を行うようになっている。そして、機械の操作やステップの状態が変化するごとに内容と表示を変化させていくようになっている。」(第2頁右上欄6行目〜同左下欄9行目)

・「次に、このような構成において、第5図(a)〜(e)に示す、フローチャートを参照しつつ振込動作について説明する。・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・利用客は案内にしたがってカード挿入口6にカードを挿入する(ST5)。すると、カードは磁気カードリード部12に取り込まれ、図示しない磁気ヘッドによって磁気ストライプ部に記録されている暗証番号、口座番号などの口座情報が読み取られる(ST6)。上記口座情報は主制御部11によってチェックされ(ST17)、カードが正しくないと判断した場合、主制御部11はエラー処理を行う。また、主制御部11はカードが正しいと判断場合、CRT表示部5で「あなたの暗証番号を押して下さい」と表示せしめるとともに、テンキーと訂正キーとを表示せしめる(ST8)。ついで、利用客は案内にしたがって、テンキーが表示された部分を押し下げることにより暗証番号を投入する(ST9)。この暗証番号の投入により、主制御部11は暗証番号が一致するか否か判断し(ST10)一致しない場合、暗証再投入処理を行う。また、主制御部11は暗証番号が一致した場合、あるいは上記ステップ3’で現金でかつカード利用なしと判断したとき、CRT表示部5で「お振込金額を押して下さい」とともに、テンキーと金額キーとを表示せしめる(ST11)。
ついで、利用客は案内にしたがって、振込金額を投入する(ST12)。この投入により、主制御部11はCRT表示部5で「送り先が登録済みか登録以外かに応じて登録キーあるいは指定キーを押して下さい」と表示せしめる(ST13)。ついで、利用客は案内にしたがって指定キーを投入する(ST14)。この指定キーの投入を主制御部11が判断したとき(ST15)、主制御部11はCRT表示部5で「送り先の金融機関名を押して下さい」と表示せしめるとともに、フロッピーデイスク19のファイルaから読み出した金融機関名データに基づき金融機関名の選択キーを表示せしめる(ST16)。この案内にしたがって利用客は金融機関名を押下げる(ST17)。この押下げにより主制御部11が農協でないと判断し(ST17’)、かつ個別機関名でないと判断し(ST18)、さらに一覧が不可と判断した場合(ST19)、主制御部11はCRT表示部5で「送り先の銀行名の頭文字をどうぞ」と表示せしめるとともに、カタカナキー、訂正キー、完了キーを表示せしめる(ST20)。そして、完了キーが押下げられたとき(ST21)、あるいはステップ19で主制御部11が一覧が可と判断した場合、主制御部11は「送り先の銀行名を押して下さい」と表示せしめるとともに、フロッピーデイスク19のファイルcから読み出した銀行名データに基づき銀行名の選択キーを表示せしめる(ST22)。すなわち、一覧が可と判断した場合、主制御部11はフロッピーデイスク19におけるファイルaで示される種別毎のポインタにより、ファイルcから複数の銀行名データ(選択された金融機関に対応する銀行の一覧)を読み出し、銀行名の頭文字が投入された場合、主制御部11はフロッピーデイスク19におけるファイルbで投入された頭文字と一致するデータのポインタにより、ファイルcから銀行名データを読み出し、それらの銀行名をCRT表示部5で表示する。この案内にしたがって利用客は送り先の銀行名を押下げる(ST23)。
この押下げにより、あるいはステップ18で主制御部11が個別銀行名が投入されたと判断したとき、主制御部11は支店名の一覧が不可と判断した場合(ST24)、CRT表示部5で「送り先の支店名の頭文字をどうぞ」と表示せしめるとともに、カタカナキー、訂正キー、完了キーを表示せしめる(ST24’)。そして、完了キーが押下げられたとき(ST25)、あるいはステップ24で支店名の一覧かを判断した場合、主制御部11はCRT表示部5で「送り先の支店名を押してください」と表示せしめるとともに、フロッピーデイスク19のファイルeから読み出した支店名データに基づき支店名の選択キーを表示せしめる(ST26)。すなわち、支店名の一覧が可と判断した場合、主制御部11はフロッピーデイスク19におけるファイルcで示される銀行名ごとのポインタにより、ファイルeから複数の銀行支店名データ(選択された銀行に対応する支店の一覧)を読み出し、支店名の頭文字が投入された場合、主制御部11はフロッピーデイスク19におけるファイルdで投入された頭文字と一致するデータのポインタにより、ファイルeから銀行支店名データを読み出し、それらの銀行支店名をCRT表示部5で表示する。この案内にしたがって利用客は送り先の支店名を押下げる(ST27)。
この押下げにより、主制御部11はCRT表示部5で「送り先の口座番号と預金種目をどうぞ」と表示せしめるとともに、テンキー、訂正キー、普通キー、当座キーを表示せしめる(ST28)。この案内にしたがって、利用客は口座番号、預金種目を投入する(ST29)。この投入により、主制御部11は本支店でないと判断した場合(ST30)、CRT表示部5で「受取人名を押してください」と表示せしめるとともに、カタカナキー、訂正キー、完了キーを表示せしめる(ST31)。そして、完了キーが押し下げられたとき(ST32)、ステップ30で本支店と判断した場合、主制御部11はCRT表示部5で「送り先を登録しますか」を表示せしめるとともに、「登録する」「登録しない」というキーを表示せしめる(ST71)。この案内により利用客は今後同じ振込取引を行う場合、「登録する」キーを押下げる(ST72)。すると、主制御部11は送り先きの登録を判断し、ホストコンピュータに送る電文の中に送り先の登録を示すデータを入れステップ33へ進む。また、ステップ71における案内により、利用客は今後同じ取引を行わない場合、「登録しない」キーを押し下げる(ST73)。すると、主制御部11は送り先の登録を判断せずそのままステップ33へ進む。
ついで、ステップ15で登録キーの投入を判断した場合と同じで、主制御部11はCRT表示部5で「ただいまコンピュータ処理中です、しばらくお待ちください。」と表示せしめる(ST33)。このとき、ホストコンピュータ(図示しない)からの電文には受取人の店番、口座番号、氏名、住所、電話番号と複数の振込先情報(銀行名(カタカナコード)、支店名(カタカナコード)、口座番号及び預金種目などからなる)が含まれている。また、主制御部11は照会電文を送受信し、その結果をジャーナル用紙に印字せしめる(ST34)。上記照会電文における振込人情報としての金融機関名、銀行名、支店名は、カタカナコードで送受信されるようになっている。ついで、主制御部11は登録を判断した場合(ST35)、第6図に示すように、CRT表示部5で「お受取人がよろしければ確認を押して下さい。」と表示せしめるとともに、受取人情報、1番目に登録されている振込先情報(銀行名、銀行支店名)を漢字で表示し、さらに確認キー、取消キー及び次の登録の指定キーを表示せしめる(ST36)。上記振込先情報つまり銀行名、銀行支店名は、上記カタカナコードに応じてフロッピーデイスク19のファイルc、e等から読み出したデータに基づいて漢字で表示されるようになっている。この案内にしたがって利用客は次の登録の指定キー、確認キーあるいは取消キーを押下げる(ST37)。そして、主制御部11が次の登録指定キーの投入を判断したとき(ST38)。ステップ36に戻り振込先情報を次の振込先情報に変更して表示を行い、取消キーの投入を判断したとき(ST38)、取消処理を行う。また、ステップ35で主制御部11が登録でないと判断した場合、主制御部11はCRT表示部5で「受取人を確認してください。」と表示せしめるとともに、フロッピーデイスク19のファイルc、e等から読み出したデータに基づき受取人情報を漢字表示し、さらに確認キー、取消キーを表示せしめる(ST40)。この案内にしたがって、利用客は確認キーあるいは取消キーを押下げる(ST41)。そして、主制御部11が取消キーの投入を判断したとき(ST42)、取消処理を行う。
また、ステップ38,42で主制御部11が確認キーの投入を判断し、カード口座の利用でないと判断したとき(ST39)、主制御部11はCRT表示部5で「お振込人名をどうぞ」と表示せしめるとともに、カタカナと振込先の事業所形態を支持するキーとを表示せしめる(ST43)。この案内にしたがって、振込人名と完了キーを押し下げる(ST44)。
ついで、ステップ39で主制御部11がカード口座利用を判断した場合、主制御部11は第7図に示すように、CRT表示部5で「お振込の内容がよろしければ確認を押してください」と表示せしめるとともに、振込内容、取消キー、確認キーを表示せしめる(ST47)。この案内にしたがって、利用客は確認キーあるいは取消キーを押下げる(ST38)。・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・すると、主制御部11は送り先の登録を判断せずそのままステップ101へ進む。ついで、ステップ99で登録キーの投入を判断した場合と同じで、主制御部11はCRT表示部5で「ただいまコンピュータ処理中です、しばらくお待ちください。」と表示せしめる(ST101)。このとき、ホストコンピュータ(図示しない)からの電文には受取人の店番、口座番号、氏名、住所、電話番号と複数の振込先情報(農協名(カタカナコード)、農協支店名(カタカナコード)、口座番号及び預金種目などからなる)が含まれている。また、主制御部11は照会電文を送受信し、その結果をジャーナル用紙に印字せしめる(ST102)。上記照会電文における振込人情報としての県名、農協名、支店名は、カタカナコードで送受信されるようになっている。・・・・・・・・・・」(第3頁左下欄15行目〜第7頁右下欄20行目)

上記記載及び第1乃至第7図の記載を参酌すれば、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「受取人に対して、利用客が自動取引装置を使用して振り込む際に、振込先情報が入力されたとき、利用客の振込人名を入力する画面を提供して入力させて振込処理を完了し、利用客が入力した振込人名をホストコンピュータと送受信する振込方式」

3.対比

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)と、引用例記載の発明(以下「引用例発明」という)を対比すると、引用例発明の「利用客」、「自動取引装置」、「振込先情報」及び「振込人名」は、それぞれ本願発明の「振込人」、「現金自動預け払い機」、「振込先データ」及び「氏名・名称」に相当するものと認められる。
そして、一般に自動取引装置を介して振込操作を行うに際しては、当該自動取引装置がホストコンピュータと送受信した内容は、取引明細や通帳記入といった方法で受取人に通知されるものであるから、ホストコンピュータと送受信することと、受取人に通知することはその内容において実質的に同じことである。
してみると、本願発明と引用例発明は、次の一致点と相違点を有する。
【一致点】
「受取人に対して、振込人が現金自動預け払い機を使用して振り込む際に、振込先データが入力されたとき、振込人の氏名・名称を入力する画面を提供して入力させて振込処理を完了し、振込人が入力した氏名・名称を受取人に通知する振込方式。」
【相違点】
A.本願発明は、受取人が振込人の氏名・名称の他に受取人から通知された「顧客データ」を付加することについて金融機関と提携した販売業者またはサービス提供業者などの企業であるのに対して、引用例発明にはその旨の限定がない点
B.本願発明は、受取人から通知された「顧客データ」を入力する画面を提供して顧客データを入力させて、振込人が入力した「顧客データ」を氏名・名称に付加しているのに対し、引用例発明はそのようにしていない点

4.相違点の検討

(1)相違点Bについて
振込人が記入した整理番号(すなわち、仮名、数字、アルファベット等よりなる「顧客データ」、以下、単に「整理番号」という)を氏名・名称に付加する点は、前審の拒絶理由通知で示した、平成13年5月7日付け刊行物等提出書における「平成8年振込のご案内」(以下「公用例」という)に示されるように金融機関における振込手続において、本願出願前から公然実施されていたことであり、かかる公然実施の技術を引用例発明に適用することに格別の困難性は認められない。そして、当該点を引用例発明のような自動取引装置を用いた取引に適用するに際して、当該整理番号を入力する画面を提供して当該整理番号を入力させるようにすることは当業者であれば容易に予測できることである。
なお、上記公用例は振込用紙による振込に関して整理番号を氏名・名称に付加することを示すにすぎないが、本願明細書の段落【0011】〜【0014】に示されるように、そもそも本願発明の解決しようとする課題は消込み作業の効率化であり、当該消込み作業は本願明細書の段落【0011】に示されるように、振込用紙による振込及びATMによる振込に共通する課題であるから、振込用紙による振込にかかる上記公用例に開示された技術のATM(すなわち、自動取引装置)による振込にかかる引用例発明への適用は当業者であれば容易に想到できたことと認められる。

(2)相違点Aについて
上記(1)で言及する相違点Bにかかる発明の構成を採用すれば、受取人は自ずと「振込人の氏名・名称の他に受取人から通知された「顧客データ」を付加することについて金融機関と提携した」者となり、そのような者を、「販売業者またはサービス提供業者などの企業」に限定することに格別の意味があるものとは認められない。

5.むすび

したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用例記載の発明及び公然実施の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、請求項2に係る発明について判断するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-20 
結審通知日 2004-01-27 
審決日 2004-02-09 
出願番号 特願平9-13216
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡崎 克彦  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 井上 哲男
櫻井 康平
発明の名称 振込方式  
代理人 役 昌明  
代理人 林 紘樹  
代理人 平野 雅典  
代理人 大橋 公治  

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