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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F |
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管理番号 | 1094329 |
審判番号 | 不服2002-13307 |
総通号数 | 53 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-01-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-17 |
確定日 | 2004-03-25 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 84154号「プレートフィン型熱交換器」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 1月16日出願公開、特開平10- 9787]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成9年4月2日(国内優先権主張平成8年4月25日)の特許出願であって、原審において平成14年3月11日付けで拒絶理由通知がなされ、平成14年5月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成14年6月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年7月17日付けで審判請求がなされるとともに、平成14年8月6日付けで、この審判請求書を補正対象とする手続補正と、明細書を補正対象とする手続補正の2つの手続補正がなされたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年8月6日付けの、明細書を補正対象とする手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の各請求項に係る発明 補正後の請求項1ないし4に係る発明は、平成14年5月17日付け及び平成14年8月6日付けの各手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるものである。 「 【請求項1】 所定間隔(fp)を介して複数枚積層されたプレートフィン(12)と、 このプレートフィン(12)を、その積層方向に貫通し、内部を被熱交換流体が流れる複数本のチューブ(10)とを備え、 前記プレートフィン(12)間および前記チューブ(10)間を熱交換流体が流れることによって、この熱交換流体と前記被熱交換流体とを熱交換させるプレートフィン型熱交換器において、 前記複数本のチューブ(10)は、前記熱交換流体の流れ方向に対して直角方向に並設され、また、前記チューブ(10)は断面楕円状であり、かつこの楕円状の長径方向が前記熱交換流体の流れ方向と平行となるように前記チューブ(10)が配列されており、 前記プレートフィン(12)には、隣り合う前記チューブ(10)間の位置であって、前記楕円状の短径寸法(d)の範囲外に、前記熱交換流体の流れ方向前縁側から後縁側に向けて前記熱交換流体の流れに向かい合うように切り起こされたルーバ(26)が形成され、 前記ルーバ(26)の側縁(27)は、前記楕円状の長径方向に沿って延びる直線形状になっており、 前記プレートフィン(12)のうち、前記ルーバ(26)の側縁(27)から所定距離(L)離間し、かつ、前記チューブ(10)の熱交換流体流れ上流側にて前記楕円状の短径寸法(d)の範囲内に位置する部位に、前記プレートフィン(12)の積層間隔(fp)を保持するための間隔保持部(28)が形成されていることを特徴とするプレートフィン型熱交換器。 【請求項2】 前記間隔保持部(28)は前記チューブ(10)の熱交換流体流れ上流側及び下流側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレートフィン型熱交換器。 【請求項3】 前記プレートフィン(12)及び前記チューブ(10)はアルミニウム合金より成形されており、 前記チューブ(10)を前記プレートフィン(12)に形成された挿入孔(12a)に挿入した後、前記チューブ(10)を拡管することによって前記チューブ(10)と前記プレートフィン(12)とが結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレートフィン型熱交換器。 【請求項4】 前記間隔保持部(28)は前記熱交換流体の流れ方向と直角方向に所定間隔をおいて形成された一対の突出片(28a、28b)からなり、この一対の突出片(28a、28b)の中心位置と前記チューブ(10)の中心位置とを一致させていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のプレートフィン型熱交換器。」 2.引用刊行物に記載された事項 (1)原審における拒絶査定の中で引用された特開昭48-58434号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のa〜fの記載がある。 a.「本発明は空気調和機等に使用するフイン付熱交換器に関するものである。」(第1頁左下欄8,9行) b.「以下本発明の詳細を図により説明する。1はアルミニューム等の金属製平板フインで、奥行方向に適当間隔にて多数配置されている。2は前記多数のフイン1に各フインに対して複数本貫通された断面楕円形パイプで、フイン1との接触を良好にするためフイン1に貫通された状態にて拡管されている。而して熱交換器はパイプ2の両端にベンドパイプ(第2図に図示せず)を接続して各パイプ2,2…間を連通したものて内部に冷水,温水,冷媒等を通過させることによりパイプ2およびフイン1を介して熱交換する。」(第1頁右下欄5〜15行) c.「かかる熱交換器によればパイプ2が断面楕円形てあるため、心円形パイプに比較して、フィン効果が高く、管内流体と管壁との熱伝達率が増大し更に通風抵抗が少ないという効果を有する。即ちフイン効率が高くなるのはパイプ2,2間のフインの平均温度が上昇するためであり、熱伝達率が増大するのは同一流量のとき管内流速が速くなるためである。又、通過抵抗が少ないというのは通風の乱れが少ないということであり、通風抵抗が少ないことにより小型の熱交換器で同一風量を得ることができる。しかも各フイン1に対して断面楕円形パイプ2を複数本平行に貫通しているため断面楕円形パイプ2を拡管する際にパイプの偏平方向に座屈を生ずることはない。」(第1頁右下欄16行〜第2頁左上欄9行) d.「本考案熱交換器において熱交換量を増大する方法としては第4図に示す如く断面楕円形パイプ2,2の偏平面間のフイン1にスリット8を形成することが考えられる。即ち、スリット8によってフィン1の通風の境界層を薄くすることができるため熱交換量は著しく増大する。」(第2頁左上欄12〜17行) e.「第10図には各種スリット10〜15の断面形状を示す。(ロ)の如く切欠11aを設けることにより境界層を更に薄くすることができ、(ハ)の如く切欠12aに折曲部12bを設けることにより強度を強くすることができ、(ニ)の如く円弧状にすることにより加工が容易にできる。」(第2頁右上欄15〜20行) f.第4図には、断面楕円形パイプ2,2の偏平面の外にスリット8が形成されこのスリット8側縁は断面楕円形パイプ2,2の長径(偏平)方向に沿って延びる直線形状であることが図示されている。 (2)原審における拒絶査定の中で引用された実願昭62-153216号(実開平1-61572号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、次のa〜dの記載がある。 a.「本考案は熱交換器のチューブ外面に取付けられるプレート型のフィンに関する。」(第1頁19,20行) b.「一般に熱交換器用プレートフィンには、偏平なチューブ又は円形のチューブが多数互いに離間して挿通され、各チューブ間においてフィン表面に多数のルーバ又はスリット等を切り起こし形成してなる。そして一例としてチューブ内に冷媒等の液体又は気体の熱交換媒体を流通させると共に、チューブの外面及びフィン外面側に空気流を流通させていた。そして両者の間に熱交換を行うものである。このようなプレートフィンにおいて放熱性の向上及び空気側圧力損失の低滅のためチューブに楕円管を用いるものが提案されている。即ち、第6図の如くプレート本体1に楕円形のチューブ挿通孔2を互いに離間して配設すると共に、チューブ挿通孔2,2間にスリットを多数切り起こし形成し、それを空気流変更部3としたものである。しかしながらこのようなプレートフィンにおいても更に放熱性の向上が望まれていた。」(第2頁2〜19行) c.「なお本考案は・・・例えば、空気流変更部3を傾斜したルーバ状に切り起こし形成してもよい。」(第5頁9〜11行) d.第6図には、空気流変更部3側縁はチューブ挿通孔2,2に挿通された楕円管の長径方向に沿って延びる直線形状であることが図示されている。 (3)原審における拒絶査定の中で引用された特開昭55-107896号公報(以下「刊行物3」という。)には、次のa〜gの記載がある。 a.「本発明は・・・熱交換器に関するもので、自動車用ラジェータ、空調用温水放熱器等の用途に用いて好適なものである。」(第1頁右下欄16〜19行) b.「ところで、第1図に示すごとく・・・従来チューブ1’としては一般に断面形状が円形の丸パイプが使用されている。 ・・・・・ またフイン2の形状は・・・熱交換効率をより一層上げる目的で、平板の先端効果を利用したルーバフィン(第2図(b))、スリット状からなるスリツトフイン(第2図(c))等が従来提案されている。そして、チューブ1’内を流体(エンジン冷却水)が流れる間に、この流体と空気がチューブ1’および前述各種フイン2を介して熱交換し、流体が冷却されるようになっている。」(第2頁左上欄5行〜同頁右上欄2行) c.「上記の従来の熱交換器に於いては円形チューブ1’を使用しているため、コア内部に流入する空気への最大絞りが大きくなり(コア通過断面積小)、かつ円形チューブ1’の後方に発生する空気流の乱れのため、・・・空気側圧力損失が大幅に増大してしまう。」(第2頁右上欄15行〜同頁左下欄1行) d.「本発明は上記の点に鑑みて案出されたもので、冷却媒体からの熱の受熱部であるチューブを楕円状に成形し、放熱作用をなすプレートフインに対しては、予じめチューブの断面である楕円形よりも大なるチューブ挿入穴を必要数だけ設けて積層し、その後前記楕円チューブを挿入し、拡管することにより、従来と同じ作業性,環境性でもつて熱交換器用コアーを組み付けることができ、さらに、従来の円形パイプでの欠点である伝熱面でのフイン効率の低下、空気側圧力損失の増大を大幅に改善できる熱交換器を提供することを目的とする。 以下本発明を図に示す実施例について説明する。第4図〜第7図は本発明熱交換器を自動車用ラジェータに適用した一実施例を示すもので、1は・・・たとえばアルミニウム製のチューブで、その断面形状は丸パイプをローラにて押圧成形することにより楕円状に形成されている。2はアルミニウム製のプレートフィンで、楕円形状からなるチューブ1を挿入するための楕円形挿入穴2aが予じめ必要数設けてあり、この穴2aはチューブ1より0.3〜0.4mm程度大きくしてある。フイン形状については任意のルーバ2b例えば第2図(b)のごときルーバ2bを設けてフインの熱伝達率を向上させるようにしてある。そして、このチューブ1とプレートフィン2とによりコア一部10が形成されており、チューブ1はその断面長手方向がコア一部10に送風される空気の流れ方向(矢印ィ方向)と平行になるように配列されている。」(第2頁左下欄9行〜同頁右下欄18行) e.「そして、上記構成よりなる熱交換器では、入口パイプ3aから上部のタンク3内にエンジン冷却水が流入し、ここから各チューブ1内にエンジン冷却水が分配され、チューブ1を流れる間にエンジン冷却水は、図示しない送風機によって送風される冷却空気と熱交換され、下部タンク4を経て出口パイプ4aからエンジン側に戻るようになっている。」(第3頁左上欄16行〜同頁右上欄3行) f.「・・・第4図に示すコアー部前面寸法l1=490mm.l2=325mm に固定し、かつプレートフィン2の全放熱面積がほぼ同一となるようなフィンピッチFPとコアー幅CD(プレートフィン2の空気流イと平行となる方向の幅寸法)の組み合わせのとき(すなわちCD/FP=26/1.5=17.3 となる条件のもとで)、第7図に示すチューブ1の形状寸法A及びB、ないしチューブピッチTPと空気側平均熱伝達率・・・との関係を実験により求めた。」(第3頁右下欄1〜10行) g.第6,7図には、ルーバ2b側縁は断面形状が楕円状に形成されているチューブ1の長径(長手)方向に沿って延びる直線形状であることが図示されている。 (4)原審における拒絶査定の中で引用された実願昭63-74773号(実開平1-178481号)のマイクロフィルム(以下「刊行物4」という。)には、次のa〜iの記載がある。 a.「本考案は空気調和機等に使用される熱交換器に関する。」(第1頁16,17行) b.「〔従来の技術〕 第11図および第12図に従来のルーバフィンを具備したプレートフィン型熱交換器の一例を示す。 ・・・・・ 第11図に示すように、このタイプの熱交換器は相互に間隔を隔てて平行に配列され、実質的に鉛直方向に伸びるプレートフィン11と、プレートフィン11をその面に垂直に貫通して実質的に水平方向に伸びる伝熱管12とにより構成されている。 プレートフィン11には第12図に示すようにルーバフィン13が切り起こされている。 伝熱管12内には冷媒、水などの媒体Bが流れ、伝熱管12及びプレートフィン11、ルーバフィン13を介して管外を白抜矢印方向に流れる空気Aと熱交換している。 ・・・・・ 上記従来の熱交換器には解決すべき次の課題があった。即ち、・・・能力を向上させるためにフィンピッチPfを狭くして伝熱面積を多くする方法がとられるがこの場合は・・・空気側の圧力損失が増大する・・・という不具合があった。」(第1頁18行〜第3頁6行) c.「本考案は上記課題の解決手段として、相互に間隔を隔てて鉛直面にほぼ平行に配列された多数のプレートフィンと、同プレートフィンをその面にほぼ垂直に貫通した複数の伝熱管とからなるプレートフィン型熱交換器において、・・・段階状に切り起こしたルーバフィンと、・・・フィンピッチを調整するための突起とを具備してなることを特徴とする熱交換器を提供しようとするものである。 ・・・・・ 本考案は上記のように構成されているので、・・・突起が隣接プレートフィンとの間隔を保つためフィンピッチの狭くなるのを回避して熱交換器性能を向上させることができる。」(第3頁15行〜第4頁9行) d.「本考案の一実施例を第1図ないし第10図により説明する。 ・・・・・ 両図において、1は相互に間隔を隔てて鉛直面にほぼ平行に配列されたプレートフィン、2はプレートフィン1を垂直に貫通して実質的に水平方向に伸びる伝熱管、3はプレートフィン1に段階状に切り起こされたルーバフィンである。 管外を白抜矢印A方向に流れる空気などの媒体Aはプレートフィン1とルーバフィン3の間を流れる媒体Bと熱交換している。」(第4頁15行〜第5頁6行) e.「次に、ルーバフィン3等の構成について第2図ないし第10図にもとづき具体的に説明する。ここに第3図は第2図に対応する別の実施例の図である。これら第2図及び第3図はプレートフィン1に対しルーバフィン3を段階状に切り起こした図で、第2図は・・・ルーバフィン3を・・・3段階に切り起こしたものである。第3図はルーバフィン3を・・・2段階に切り起こしたものである。 いずれの場合も、ルーバフィン3間隙間Cを広くとれるとともに、それぞれのルーバフィン3が空気の流れに対し、前流側のルーバフィン3の影響を受けずに空気と接するようになるため、伝熱性能が向上し、上記の効果が得られる。」(第5頁19行〜第6頁13行) f.「第4図ないし第10図はフィンピッチ調整用突起の例を示したものである。」(第6頁14,15行) g.「以下、このフィンピッチPf調整のための突起について説明する。 第4図ないし第10図は、フィンピッチ調整用突起の例を示したもので、第4図は第1図の突起部を示した平面図、第5図は第4図の右側面図、第6図は第4図の突起部の斜視図てある。 第4図ないし第6図において、4はプレートフィン1の一部を切り欠いて設けられた突起である。 ・・・・・ 第7図ないし第9図は第4図ないし第6図の他の実施例を示す図である。この場合、フィンピッチ調整用の突起4aはプレートフィン1を押し出して設けられている。 第10図は第9図の突起4aの頂部を平らにしフィンピッチを出しやすくした突起4bの例である。」(第7頁5〜20行) h.「本考案は上記のように構成されるので次の効果を有する。即ち、ルーバを段階状に切り起こし、突起によりフィンピッチを調整しルーバの配列を適正化することにより熱交換器の性能を向上させることができる。」(第8頁2〜6行) i.第1図ないし第10図には、ルーバフィン3側縁から離間し且つ伝熱管2の白抜矢印A空気流上流側にて該伝熱管2直径寸法の範囲内に位置してフィンピッチ調整用突起4が形成されていることが図示されている。 3.対比・一致点・相違点 本願の上記請求項1の前半に記載されたような、 「所定間隔(fp)を介して複数枚積層されたプレートフィン(12)と、 このプレートフィン(12)を、その積層方向に貫通し、内部を被熱交換流体が流れる複数本のチューブ(10)とを備え、 前記プレートフィン(12)間および前記チューブ(10)間を熱交換流体が流れることによって、この熱交換流体と前記被熱交換流体とを熱交換させるプレートフィン型熱交換器において、 前記複数本のチューブ(10)は、前記熱交換流体の流れ方向に対して直角方向に並設され、また、前記チューブ(10)は断面楕円状であり、かつこの楕円状の長径方向が前記熱交換流体の流れ方向と平行となるように前記チューブ(10)が配列されており、 前記プレートフィン(12)には、隣り合う前記チューブ(10)間の位置であって、前記楕円状の短径寸法(d)の範囲外に、前記熱交換流体の流れ方向前縁側から後縁側に向けて前記熱交換流体の流れに向かい合うように切り起こされたルーバ(26)が形成され、 前記ルーバ(26)の側縁(27)は、前記楕円状の長径方向に沿って延びる直線形状になっており、」 といったプレートフィン型熱交換器は、刊行物1ないし刊行物3等にも記載されているように、本願の出願前に既に周知の技術である。 《一致点》 そこで、この周知技術と、本願の補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正後発明」という。)を対比すると、 両者は、 「所定間隔(fp)を介して複数枚積層されたプレートフィン(12)と、 このプレートフィン(12)を、その積層方向に貫通し、内部を被熱交換流体が流れる複数本のチューブ(10)とを備え、 前記プレートフィン(12)間および前記チューブ(10)間を熱交換流体が流れることによって、この熱交換流体と前記被熱交換流体とを熱交換させるプレートフィン型熱交換器において、 前記複数本のチューブ(10)は、前記熱交換流体の流れ方向に対して直角方向に並設され、また、前記チューブ(10)は断面楕円状であり、かつこの楕円状の長径方向が前記熱交換流体の流れ方向と平行となるように前記チューブ(10)が配列されており、 前記プレートフィン(12)には、隣り合う前記チューブ(10)間の位置であって、前記楕円状の短径寸法(d)の範囲外に、前記熱交換流体の流れ方向前縁側から後縁側に向けて前記熱交換流体の流れに向かい合うように切り起こされたルーバ(26)が形成され、 前記ルーバ(26)の側縁(27)は、前記楕円状の長径方向に沿って延びる直線形状になっている、 プレートフィン型熱交換器。」 で一致する。 《相違点》 本願補正後発明では、 「前記プレートフィン(12)のうち、前記ルーバ(26)の側縁(27)から所定距離(L)離間し、かつ、前記チューブ(10)の熱交換流体流れ上流側にて前記楕円状の短径寸法(d)の範囲内に位置する部位に、前記プレートフィン(12)の積層間隔(fp)を保持するための間隔保持部(28)が形成されている」 とされているが、上記の周知技術では、このような「間隔保持部(28)」は形成されていない。 本願補正後発明は、この点で上記周知技術と相違する。 4.判断 刊行物4には、 「プレートフィン1のうち、ルーバフィン3の側縁から離間し、かつ、伝熱管2の白抜矢印Aで図示される空気流の上流側にて該伝熱管2直径寸法の範囲内に位置する部位に、相互にほぼ平行に配列された多数のプレートフィン1の間隔(フィンピッチPf)を保つフィンピッチ調整用突起4が形成されているプレートフィン型熱交換器」 なる発明が記載されている。 この刊行物4に記載された発明中の、 ・プレートフィン1、 ・ルーバフィン3の側縁、 ・伝熱管2、 ・白抜矢印Aで図示される空気流の上流側、 ・相互にほぼ平行に配列された多数のプレートフィン1の間隔(フィンピッ チPf)、 ・フィンピッチ調整用突起4、 は、上記相違点における本願補正後発明の構成中の ・プレートフィン(12)、 ・ルーバ(26)の側縁、 ・チューブ(10)、 ・熱交換流体流れ上流側、 ・プレートフィン(12)の積層間隔(fp)、 ・間隔保持部(28)、 にそれぞれ相当する。 また、刊行物4には、「フィンピッチ調整用突起4が隣接プレートフィン1との間隔を保つためフィンピッチPfの狭くなるのを回避して熱交換器性能を向上させることができる。」旨が記載されている(上記2.(4)c.後半参照。)。他方、上記周知技術においても、プレートフィンの間隔を適正に保持することは当然に想定される課題である。 したがって、上記の刊行物1ないし刊行物3等に記載されている周知技術における「断面楕円状のチューブ」の熱交換流体流れ上流側にて楕円状の短径寸法(d)の範囲内に位置する部位に、刊行物4の「フィンピッチ調整用突起4」を組み合わせ、本願補正後発明の構成に到達することは当業者にとって容易である。 さらに、本願補正後発明の効果は、上記の刊行物1ないし刊行物3等に記載されている周知技術、及び刊行物4に記載された発明より当業者が容易に想到できたと認められる。 5.まとめ 以上のように、本願補正後発明は、上記の刊行物1ないし刊行物3等に記載されている周知技術、及び刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、上記、平成14年8月6日付けの明細書を補正対象とする手続補正は、特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明についての検討 1.本願発明 平成14年8月6日付けの明細書を補正対象とする手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成14年5月17日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるものである。 「 【請求項1】 所定間隔(fp)を介して複数枚積層されたプレートフィン(12)と、 このプレートフィン(12)を、その積層方向に貫通し、内部を被熱交換流体が流れる複数本のチューブ(10)とを備え、 前記プレートフィン(12)間および前記チューブ(10)間を熱交換流体が流れることによって、この熱交換流体と前記被熱交換流体とを熱交換させるプレートフィン型熱交換器において、 前記複数本のチューブ(10)は、前記熱交換流体の流れ方向に対して直角方向に並設され、また、前記チューブ(10)は断面楕円状であり、かつこの楕円状の長径方向が前記熱交換流体の流れ方向と平行となるように前記チューブ(10)が配列されており、 前記プレートフィン(12)には、隣り合う前記チューブ(10)間の位置であって、前記楕円状の短径寸法(d)の範囲外に、前記熱交換流体の流れ方向前縁側から後縁側に向けて前記熱交換流体の流れに向かい合うように切り起こされたルーバ(26)が形成され、 前記プレートフィン(12)のうち、前記ルーバ(26)の側縁(27)から所定距離(L)離間し、かつ、前記チューブ(10)の熱交換流体流れ上流側にて前記楕円状の短径寸法(d)の範囲内に位置する部位に、前記プレートフィン(12)の積層間隔(fp)を保持するための間隔保持部(28)が形成されていることを特徴とするプレートフィン型熱交換器。 【請求項2】 前記間隔保持部(28)は前記チューブ(10)の熱交換流体流れ上流側及び下流側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレートフィン型熱交換器。 【請求項3】 前記プレートフィン(12)及び前記チューブ(10)はアルミニウム合金より成形されており、 前記チューブ(10)を前記プレートフィン(12)に形成された挿入孔(12a)に挿入した後、前記チューブ(10)を拡管することによって前記チューブ(10)と前記プレートフィン(12)とが結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレートフィン型熱交換器。 【請求項4】 前記間隔保持部(28)は前記熱交換流体の流れ方向と直角方向に所定間隔をおいて形成された一対の突出片(28a、28b)からなり、この一対の突出片(28a、28b)の中心位置と前記チューブ(10)の中心位置とを一致させていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のプレートフィン型熱交換器。」 2.対比・一致点・相違点 《一致点》 本願の請求項1に係る発明を、上記第2、で述べた、刊行物1ないし刊行物3等に記載された周知技術と、対比すると、 両者は、 「所定間隔(fp)を介して複数枚積層されたプレートフィン(12)と、 このプレートフィン(12)を、その積層方向に貫通し、内部を被熱交換流体が流れる複数本のチューブ(10)とを備え、 前記プレートフィン(12)間および前記チューブ(10)間を熱交換流体が流れることによって、この熱交換流体と前記被熱交換流体とを熱交換させるプレートフィン型熱交換器において、 前記複数本のチューブ(10)は、前記熱交換流体の流れ方向に対して直角方向に並設され、また、前記チューブ(10)は断面楕円状であり、かつこの楕円状の長径方向が前記熱交換流体の流れ方向と平行となるように前記チューブ(10)が配列されており、 前記プレートフィン(12)には、隣り合う前記チューブ(10)間の位置であって、前記楕円状の短径寸法(d)の範囲外に、前記熱交換流体の流れ方向前縁側から後縁側に向けて前記熱交換流体の流れに向かい合うように切り起こされたルーバ(26)が形成されている、 プレートフィン型熱交換器。」 で一致する。 《相違点》 本願の請求項1に係る発明では、 「前記プレートフィン(12)のうち、前記ルーバ(26)の側縁(27)から所定距離(L)離間し、かつ、前記チューブ(10)の熱交換流体流れ上流側にて前記楕円状の短径寸法(d)の範囲内に位置する部位に、前記プレートフィン(12)の積層間隔(fp)を保持するための間隔保持部(28)が形成されている」 とされているが、上記の周知技術では、このような「間隔保持部(28)」は形成されていない。 本願の請求項1に係る発明は、この点で上記周知技術と相違する。 3.判断 本願の請求項1に係る発明と上記周知技術との相違点は、上記、第2、3.欄に記載した本願補正後発明と上記周知技術との相違点と完全に同一である。そうすると、上記、第2、4.欄で述べた本願補正後発明についての判断の理由と同一の理由により、上記周知技術に、刊行物4に記載された発明を組み合わせ、本願の請求項1に係る発明の構成に到達することは当業者にとって容易である。 また、本願の請求項1に係る発明の効果は、上記周知技術、及び刊行物4に記載された発明より当業者が容易に想到できたと認める。 4.むすび 以上のように、本願の請求項1に係る発明は、上記の刊行物1ないし刊行物3等に記載された周知技術、及び刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本願の請求項2ないし4に係る各発明については判断するまでもなく、本出願は拒絶すべきものであり、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-01-20 |
結審通知日 | 2004-01-27 |
審決日 | 2004-02-10 |
出願番号 | 特願平9-84154 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F28F)
P 1 8・ 121- Z (F28F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐野 遵 |
特許庁審判長 |
橋本 康重 |
特許庁審判官 |
会田 博行 櫻井 康平 |
発明の名称 | プレートフィン型熱交換器 |
代理人 | 伊藤 洋二 |