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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1094397
審判番号 不服2001-12147  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-11-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-12 
確定日 2004-03-29 
事件の表示 平成 3年特許願第201900号「パウチ製造用のシート材料、パウチ及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年11月 5日出願公開、特開平 4-314533]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成 3年 8月12日(パリ条約による優先権主張1990年 8月13日、アメリカ合衆国)の出願であって、その請求項1〜20に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜20に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】物質を収容するためのパウチを製造するために使用されるシート材料であって、バリヤ層を構成する少なくとも1つのフィルム層と密封層を構成する少なくとも1つのフィルム層とを含む複数のフィルム層を備え、前記複数のフィルム層が芳香物に対する部分的透過性を少なくとも備えると共に、約 600cm3/m2/日/バールの酸素透過性を少なくとも備え、前記複数のフィルム層が製造後、約2週間から24週間程度の期間を経ていることを特徴とする、パウチ製造用のシート材料。
【請求項2】請求項1に記載のパウチ製造用のシート材料であって、前記バリヤ層がポリオレフィンであり、前記密封層がエチレンビニルアセテートであることを特徴とする、シート材料。
【請求項3】請求項2に記載のパウチ製造用のシート材料であって、前記エチレンビニルアセテート層が重量比で少なくとも約18%の平均ビニルアセテート含有率を有することを特徴とする、シート材料。
【請求項4】請求項1に記載のパウチ製造用のシート材料であって、前記バリヤ層が約25ミクロンから 100ミクロン程度の厚さを有し、前記密封層が約50ミクロンから 200ミクロン程度の厚さを有することを特徴とする、シート材料。
【請求項5】請求項1に記載のパウチ製造用のシート材料にして、前記複数のフィルム層が製造後、約4週間乃至20週間の期間を経ていることを特徴とする、シート材料。
【請求項6】請求項1に記載のパウチ製造用のシート材料であって、前記複数のフィルム層がフィルムのスリップ剤の含有率に依存する製造後の期間を経ていることを特徴とする、シート材料。
【請求項7】物質を収容するためのパウチであって、密閉空間を形成するように密封されかつ複数のフィルム層を有するシート材料と、バリヤ層である少なくとも1つの層と、密封層である少なくとも1つの層とを備え、前記複数のフィルム層が芳香物に対する部分的透過性を少なくとも備えると共に約 600cm3/m2/日/バールの酸素透過性を少なくとも備え、前記シート材料はパウチ形状に形成される前に製造後、約2週間から24週間程度の期間を経ていることを特徴とする、パウチ。
【請求項8】請求項7に記載のパウチであって、前記バリヤ層がポリエンであり、前記密封層がエチレンビニルアセテートであることを特徴とする、パウチ。
【請求項9】請求項8に記載のパウチであって、前記エチレンビニルアセテート層が重量比で少なくとも約18%の平均ビニルアセテート含有率を有することを特徴とする、パウチ。
【請求項10】請求項7に記載のパウチであって、前記バリヤ層が約25ミクロンから 100ミクロン程度の厚さを有し、前記密封層が約50ミクロンから 200ミクロン程度の厚さを有することを特徴とする、パウチ。
【請求項11】請求項7に記載のパウチであって、前記シート材料が製造後、約4週間から24週間程度の期間を経ていることを特徴とする、パウチ。
【請求項12】請求項7に記載のパウチであって、前記複数のフィルム層がフィルムのスリップ剤の含有量によって定まる製造後の期間を経ていることを特徴とする、シート材料。
【請求項13】請求項7に記載のパウチであって、上方部分が吐出口を有することを特徴とする、パウチ。
【請求項14】パウチの製造方法であって、(a)少なくともバリヤ層と密封層とを有する多層フィルムであって、 600cm3/m2/日/バールの酸素透過性を少なくとも有すると共に、芳香物に対する部分的透過性を少なくとも有する、多層フィルムを形成する工程と、(b)前記フィルムの製造後、約2週間から24週間程度の期間内に高周波エネルギを使用して、前記パウチの重合縁部を密封することにより前記フィルムをパウチに変換する工程と、を有することを特徴とする、パウチの製造方法。
【請求項15】請求項14に記載のパウチの製造方法であって、前記バリヤ層がポリオレフィンであり、前記密封層がエチレンビニルアセテートであることを特徴とする、パウチの製造方法。
【請求項16】請求項14に記載のパウチの製造方法であって、前記エチレンビニルアセテート層が重量比で平均約18%のビニルアセテートを少なくとも含有することを特徴とする、パウチの製造方法。
【請求項17】請求項14に記載のパウチの製造方法であって、前記バリヤ層が約25ミクロンから 100ミクロン程度の厚さを有し、前記密封層が約50ミクロンから 200ミクロンの厚さを有することを特徴とする、パウチの製造方法。
【請求項18】請求項14に記載のパウチの製造方法であって、前記多層フィルムが製造後、約4週間から24週間程度の期間を経ていることを特徴とする、パウチの製造方法。
【請求項19】請求項14に記載のパウチの製造方法であって、前記多層フィルムがフィルムのスリップ剤の含有量によって定まる製造後の期間を経ていることを特徴とする、パウチの製造方法。
【請求項20】請求項12に記載のパウチの製造方法であって、吐出口が前記パウチの一部に形成されることを特徴とする、パウチの製造方法。」

2.引用例及び引用例記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭55- 93451号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の発明が記載されている。
ア.「(1)少くとも1個の基層並びにエチレン70モル%乃至90モル%と、酢酸ビニル10モル%乃至30モル%とよりなる共重合体の高周波溶接表面層を含む積層フイルム。

(5)少くとも1個のキヤリアー層、すなわち押出成形しうるプラスチツク層、好ましくはポリオレフイン、ポリエステル、若しくはポリアミドよりなる層を含有することを特徴とする特許請求の範囲第(1)項乃至第(4)項に記載の積層フイルム。
(6)ポリエチレン若しくはポリプロピレンよりなる少くとも1個のキヤリアー層を含有することを特徴とする特許請求の範囲第(5)項に記載の積層フイルム。
(7)少くとも1個の基層並びにエチレン70モル%乃至90モル%と、酢酸ビニル10モル%乃至30モル%とよりなる高周波溶接層とを含有する積層フイルムを製造する方法であつて、
熱可塑性樹脂基礎重合体と、エチレン70モル%乃至90モル%、及び酢酸ビニル10モル%乃至30モル%とを共に押出成形することを特徴とする積層フイルムの製造方法。
(8)少くとも1個の基層、並びにエチレン70モル%乃至90モル%と、酢酸ビニル10モル%乃至30モル%とよりなる共重合体の高周波溶接表面層を含む積層フイルムを材料とし、
入口部を剥離可能に高周波溶着し、かつ入口部以外の側端部を剥離不可能に溶着してなる容器。
(9)容器が、刻み煙草入れであることを特徴とする特許請求の範囲第(8)項に記載の容器。」(特許請求の範囲)、
イ.「本発明は、積層フイルム、それを製造する方法及びそれを使用して製造した容器に関するもので、特に刻み煙草入れなどに使用されるものに関する。」(第2頁上左欄第6行〜第8行)、
ウ.「包装用容器、特に、袋状の容器に中身を充填して保存している…例えば、刻み煙草入れは、保存の間に、湿分と芳香を失わず…」(第2頁上右欄第4行〜第9行)、
エ.「更に、本発明による積層フイルムを使用する際に、フイルム自体をシールしているので、…その溶着部は、大きな耐久性と堅牢性とを有し…高周波溶着部の耐久性と堅牢性とにより、中身の品質、例えば煙草の湿分、風味、及び芳香が保存される。」(第3頁上左欄第5行〜第11行)、
オ.「表面層をなす共重合体の最適の組成は、キヤリアー層…により、大幅に変化しうる。本発明においては、酢酸ビニルのモル比率は、10モル%と30モル%との間であり、…例えば、ポリエチレンキヤリアー層を有する本発明による好適な積層フイルムは、表面層に酢酸ビニルを約16モル%の割合で含有している。
本発明に使用される共重合体の所望の組成は、最初から酢酸ビニルとエチレンとを、所望の割合で共重合させておくか、若しくは酢酸ビニルを異なる割合で含有する2種類の共重合体を混合して、最終的に所望の共重合体を生成する。」(第3頁上右欄第3行〜第16行)、
カ.「積層フイルムは、本発明によるキヤリアー層と表面層とよりなり、そのまま使用したり、他のフイルムに積層したり、接着したり、結合したり…することができる。」(第4頁上左欄第5行〜第9行)、
キ.「本発明によれば、…刻み煙草入れは、いろいろな形状に製造することができる。例えば、入口の部分を除く側端部を、…熱シールして、…扁平、若しくは三角形の煙草入れを形成しうる。その場合、入口のみが高周波溶接により、剥離可能にシールされている。」(第4頁上右欄第1行〜第11行)、
ク.「本発明による積層フイルムで製造した容器は、食料品、コーヒー、茶、飲料品、家庭用品、工業製品、あるいは、例えば肉、新鮮な野菜、果物、薬味、ミルク、パン、生菓子、小麦粉、スクリユー、電気部品などの多種多様の物品を充填するために使用しうる。」(第4頁上右欄第13行〜第18行)、
ケ.「実施例
…共重合体、…共重合体から、エチレン84モル%と酢酸ビニル16モル%とよりなる重合体混和剤を調製した。この共重合体を、重合体のためのキヤリアー層として用いられるポリエチレンと共に押出成形した。
こうして得られた積層フイルムから、本発明による積層フイルムとポリエチレンフイルムとよりなり、紙ラベルを有し、上記フイルムの側端部が溶着された刻み煙草入れを製造した。また刻み煙草入れを煙草で充填した後、煙草入れの入口を、約27 mHzで高周波溶着した。
本発明による積層フイルムの厚さは 0.05 mmであり、外側のポリエチレンフイルムの厚さは 0.03 mmであった。
保管中、入口はきつくシールされているので、包装された煙草からは、湿分と芳香が極く少量しか漏れなかつた。開封に際しては、煙草入れを少しも損なうことなく、容易にシール部を開くことができた。」(第4頁下左欄第1行〜下右欄第2行)。
以上の記載からみて、引用例1には、
「押出成形しうるポリオレフインよりなる少くとも1個の基層ないしキヤリアー層並びにエチレン70モル%乃至90モル%と、酢酸ビニル10モル%乃至30モル%とよりなる共重合体の高周波溶着表面層を含む積層フイルムであって、入口および側端部をシールした扁平、若しくは三角形の煙草入れなどの、袋状の容器の製造に用いられる、上記積層フイルム。」
の発明が記載されているものと認める。

3.当審の判断
(1)本願請求項1に係る発明について
本願請求項1に係る発明と、引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「基層ないしキヤリアー層」、「高周波溶着表面層」、「積層フイルム」は、それぞれ本願請求項1に係る発明の「バリヤ層を構成するフィルム層」、「密封層を構成するフィルム層」、「複数のフィルム層を備えたシート材料」に相当し、引用例1に記載された発明の、入口および側端部をシールした袋状の容器は、いわゆるパウチであり、また、引用例1に記載された発明においても、上記積層フイルムから製造した刻み煙草入れは、上記摘示事項ケ.の実施例によれば芳香が極く少量漏れるものであって、芳香物に対する部分的透過性を備えるものであるので、両者は、
「物質を収容するためのパウチを製造するために使用されるシート材料であって、バリヤ層を構成する少なくとも1つのフィルム層と密封層を構成する少なくとも1つのフィルム層とを含む複数のフィルム層を備え、前記複数のフィルム層が芳香物に対する部分的透過性を少なくとも備える、パウチ製造用のシート材料。」
である点で一致し、
(i)本願請求項1に係る発明が、前記複数のフィルム層が約 600cm3/m2/日/バールの酸素透過性を少なくとも備えるのに対して、引用例1には酸素透過性について記載されていない点、および
(ii)本願請求項1に係る発明が、前記複数のフィルム層が製造後、約2週間から24週間程度の期間を経ているとされているのに対して、引用例1にはフィルム層製造後の期間について記載されていない点で、相違する。
上記相違点について、以下、検討する。
まず、(i)の点について検討する。引用例1には、上記摘示事項ケ.に記載のように、実施例に、エチレン84モル%と酢酸ビニル16モル%とよりなる共重合体をポリエチレンフイルムと共に押出成形した厚さ 0.05 mmの積層フイルムが記載されている。引用例1には、この積層フイルムの酸素透過性について記載されていないが、ポリエチレンフィルムは酸素透過性が大きく、エチレンと酢酸ビニルの共重合体のフィルムはさらに酸素透過性が大きいことは、周知の事項である。例えば、特開昭57-163414号公報には、30℃で、厚み30μ(= 0.03 mm)の高密度ポリエチレンフイルムの酸素透過度(本願発明の酸素透過性に相当、以下同じ。)が 1,700cc/m2/24hrs atm (=1700cm3/m2/日/バール)、厚み20μ(= 0.02 mm)のエチレン-酢ビ共重合体フイルムの酸素透過度が 7,000cc/m2/24hrs atm (=7000cm3/m2/日/バール)であることが記載されている(第1頁下右欄第18行〜第2頁上右欄第1行)。引用例1の実施例に記載の積層フイルムの各層を構成するフイルムは、この文献に記載された上記両フイルムと同系統の材質であり、各層は、この程度の厚みでは同程度の酸素透過度を有するものと推認され、積層して厚みが 0.05mmになった場合、より酸素透過度の小さいポリエチレンフイルムの酸素透過度を考慮しても、 600cm3/m2/バールより十分大きい酸素透過度を有するものと推認される。
よって、上記(i)の点は実質的な相違点でない。
次に、(ii)の点について検討する。引用例1には、フイルム層製造後の期間について記載されていないが、引用例1に記載の積層フイルムの各層は、製造後一定期間を経たからといって材料が異なるものとなるとはいえないから、本願発明において、上記フィルム層が製造後、特定の期間を経ていると規定した点は、物の発明であるパウチ製造用シート材料の発明の構成を何ら特定して記載したものとは認められない。
よって、上記(ii)の点も実質的な相違点でない。
したがって、本願請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明である。
(2)本願請求項2に係る発明について
本願請求項2に係る発明は、本願請求項1に係る発明の密封層を「エチレンビニルアセテート」と樹脂を特定したもので、「エチレンビニルアセテート」は引用例1に記載された発明の「エチレン70モル%乃至90モル%と、酢酸ビニル10モル%乃至30モル%とよりなる共重合体」に相当するので、引用例1に記載された範囲内のことであるから、上記(1)で記載した理由により、本願請求項2に係る発明は、引用例1に記載された発明である。
(3)本願請求項5に係る発明について
本願請求項5に係る発明は、本願請求項1に係る発明で特定した製造後の経過する期間をさらに限定したに過ぎないものであるから、上記(1)で記載した理由により、本願請求項5に係る発明は、引用例1に記載された発明である。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1、2及び5に係る発明は、引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-28 
結審通知日 2003-11-07 
審決日 2003-11-19 
出願番号 特願平3-201900
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 中田 とし子
石井 淑久
発明の名称 パウチ製造用のシート材料、パウチ及びその製造方法  
代理人 今井 庄亮  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 増井 忠弐  
代理人 佐野 邦廣  
代理人 富田 博行  

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