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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1094401
審判番号 不服2001-17665  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-04 
確定日 2004-03-31 
事件の表示 平成10年特許願第227125号「皮膚状態評価方法およびそれに用いる装置」拒絶査定に対する審判事件[平成12年2月22日出願公開、特開2000-51153]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年8月11日の出願であって、拒絶理由が通知され、平成13年5月1日付で手続補正がなされたところ、拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年11月5日付で手続補正がなされたものである。

2.平成13年11月5日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年11月5日付の手続補正を却下する。
[理由]
2.1 補正後の本願発明
本件補正後の発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項1および請求項5に係る発明は、請求項1および請求項5に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 化粧品販売員が、顧客の皮膚温度と皮膚表面水分量を測定するとともに皮膚表面拡大画像を観察して皮膚状態を評価する方法であって、上記皮膚温度および皮膚表面水分量を測定してそれ自身に設けられた測定結果表示部にその結果を表示しうる測定具と、皮膚表面撮像用の拡大カメラと、上記拡大カメラで撮像された皮膚表面拡大画像もしくは上記測定具で測定された測定結果を表示するための画像表示手段と、画像情報処理機能および測定情報処理機能が内蔵された本体部とを有し、上記測定具は本体部に対しコードレスになっている皮膚状態評価装置を用い、上記拡大カメラによって、顧客である被測定者の皮膚表面に照明を当てて撮像した皮膚表面拡大画像Aを、上記画像表示手段における画面の一部分に表示するとともに、上記画面の他の部分に、上記拡大カメラによって上記画像Aとは異なる条件で撮像した皮膚表面拡大画像Bを表示し、両者を比較しながら被測定者の皮膚状態を評価するとともに、上記測定具によって被測定者の皮膚温度と皮膚表面水分量を測定し、測定結果を、測定具自身の測定結果表示部および上記画像表示手段の少なくとも一方に表示して、被測定者の皮膚状態を評価するようにしたことを特徴とする皮膚状態評価方法。」、
「【請求項5】 化粧品販売員が、顧客の皮膚温度と皮膚表面水分量を測定するとともに皮膚表面拡大画像を観察して皮膚状態を評価する際に用いる装置であって、上記皮膚温度および皮膚表面水分量を測定する測定具と、2種類以上の照明条件が選択可能に設定された皮膚表面撮像用の拡大カメラと、上記拡大カメラで撮像された皮膚表面拡大画像もしくは上記測定具で測定された測定結果を表示するための画像表示手段と、画像情報処理機能および測定情報処理機能が内蔵された本体部とを有し、上記測定具が、本体部に対しコードレスで、それ自身に測定結果表示部が設けられているとともに、上記画像表示手段の画面が、2以上の領域に分割可能で、各分割画面に、上記拡大カメラで条件を変えて撮像された2以上の皮膚表面拡大画像が静止画像としてそれぞれ表示できるようになっていることを特徴とする皮膚状態評価装置。」

2.2 補正の目的
上記請求項1の補正は、補正前の請求項1に「化粧品販売員が、顧客の皮膚温度と皮膚表面水分量を測定するとともに皮膚表面拡大画像を観察して皮膚状態を評価する方法であって、」の記載を追加することによって、請求項1の発明の「皮膚状態評価方法」を限定しようとするものであるから、上記補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記請求項5の補正は、補正前の請求項5に「化粧品販売員が、顧客の皮膚温度と皮膚表面水分量を測定するとともに皮膚表面拡大画像を観察して皮膚状態を評価する際に用いる装置であって、」の記載を追加することによって、請求項5の発明の「皮膚状態評価装置」を限定しようとするものであるから、上記補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.3 独立特許要件
そこで、まず最初に、本件補正後の特許請求の範囲に記載された事項によって特定される発明のうち上記請求項5に係る発明(以下、「本願補正発明5」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

ア.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、特開平8-299288号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開平8-36637号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開平5-296851号公報(以下、「刊行物3」という。)、および特開昭63-262123号公報(以下、「刊行物4」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。
(1)刊行物1:
(1a)「本発明は上記問題点に鑑み、顧客の肌状態を測定するとともに、美容アドバイスを容易にすることができる肌状態測定装置を提供するものである。」(第2頁2欄36〜39行)、
(1b)「本発明の肌状態測定装置は、カラーモニターと、環境温度を測定する環境温度センサーと、被験者の皮膚の表面温度を測定する皮膚温度センサーと、被験者の皮膚水分量を測定する皮膚水分量センサーと、被験者の皮脂量を測定する皮脂量センサーと、被験者の肌を所定の倍率で拡大して入力する拡大カメラと、前記環境温度センサーによって測定した環境温度と前記皮膚温度センサーによって測定した皮膚温度とを同時に前記カラーモニターに表示し、前記皮膚水分量センサーによって測定した皮膚水分量を前記カラーモニターに表示し、前記皮脂量センサーによって測定した皮脂量を前記カラーモニターに表示し、前記拡大カメラによって入力した画像を前記カラーモニターに表示する制御手段と、前記制御手段を操作するための操作部とを有するものである。」(第頁右下欄9行〜4頁左上欄2行)、
(1c)「【実施例】以下、本発明の第1の実施例の肌状態測定装置10について、図1及び図2に基づいて説明する。
【0022】図1は、肌状態測定装置10の斜視図であり、図2はそのブロック図を説明している。
【0023】符号12は、肌状態測定装置10の本体であり、内部にCPU14、メモリー16、I/Oポート18を備えている。また、本体12の上面には、操作スイッチ部20が設けられている。
【0024】符号22は、本体12の上面に載置されたカラーモニターである。このカラーモニター22によって、種々のデータや情報をカラーで表示する。
【0025】符号24は、肌拡大カメラであって、CCDを利用して、人間の肌を拡大して入力することができる。この入力方法には、無反射入力と、反射入力の2種類が備えられており、測定状態に応じて適宜選択して入力することができる。そしてこの肌拡大カメラ24は、カメラ台26に載置されている。
【0026】符号28は、センサーであって、その内部に皮膚温度センサー30と水分量測定センサー32が内蔵されている。このセンサー28は、センサー28を人間の肌に押し当てることによって、その人間の皮膚の温度と水分量を測定することができる。
【0027】符号34は人間の皮脂量を測定するためのオイリーチェッカーであり、このオイリーチェッカー34を人間の肌に押し当てることによりその人間の皮脂量を測定することができる。
【0028】符号36は、カラーモニター22に写し出された画像やテキスト情報を印刷するためのプリンターであって、カラープリンターが接続されている。
【0029】符号38は、肌状態測定装置10が置かれている環境温度を測定するための環境温度センサーである。この環境温度センサー38は、本体12に内蔵されている。
【0030】上記構成の肌状態測定装置10を使用する場合について説明する。
【0031】1(原文は丸数字)美容アドバイザーは、オイリーチェッカー34を使用して、被験者の皮脂量を測定し、カラーモニター22にその測定値を表示する。
【0032】2(原文は丸数字)美容アドバイザーは、肌拡大カメラ24を使用して、被験者の肌拡大画像を入力し、カラーモニター22に表示させる。
【0033】3(原文は丸数字)美容アドバイザーは、被験者の肌を2個所、肌拡大カメラ24によって入力し、その測定した2個所の画像をカラーモニター22に並べて表示させる。
【0034】4(原文は丸数字)センサー28を使用して、被験者の皮膚温度及び水分量を測定し、カラーモニター22にこの値を表示する。この場合に、環境温度センサー38によって測定した環境温度も同時に表示する。
【0035】美容アドバイザーは、1〜4(原文は丸数字)の結果に基いて、被験者に対し、適切な美容アドバイスを行うことができる。」(第4頁5欄16行〜6欄17行)、
が図面と共に記載されている。
これらの記載から刊行物1には、「美容アドバイザーが、顧客の皮膚温度と皮膚水分量を測定するとともに肌拡大画像を観察して肌状態を評価する際に用いる装置であって、上記皮膚温度および皮膚水分量を測定するセンサーと、無反射入力と、反射入力の2種類の入力方法が備えられた人間の肌を拡大して入力することができる肌拡大カメラと、上記拡大カメラで撮像された肌拡大画像もしくは上記センサーで測定された測定結果を表示するためのカラーモニターと、本体とを有し、上記モニターの画面が、2の領域に分割可能で、各分割画面に、上記肌拡大カメラで2個所撮像し、その2個所の肌拡大画像が静止画像としてそれぞれ表示できるようになっていることを特徴とする肌状態測定装置。」が記載されているものと認められる。

(2)刊行物2:
(2a)「【0009】【作用】上記のように構成されたこの発明における検査装置においては、皮膚等の被検査物1の状態を撮像手段2によって撮像し、この撮像手段2によって撮像された画像を必要に応じて記憶手段3に記憶し、このように記憶手段3に記憶された画像や撮像手段2によって撮像された画像を、表示手段4における画面41を分割させて複数同時に表示させるようになっている。
【0010】このため、例えば、この検査装置において、被検査物1として皮膚の状態を検査する場合、上記の撮像手段2により、皮膚の表面状態を撮像すると共に、皮膚の内部状態も撮像し、これらの撮像された画像を必要に応じて記憶手段3に記憶させ、表示手段4における画面41を2分割させて、皮膚の表面状態における画像と皮膚の内部状態における画像とを同時に画面41上に表示させ、皮膚の表面状態と内部状態とを合わせて比較しながら検査することができるようになる。
【0011】また、上記の撮像手段2によって正常な皮膚、例えば、脇の下等における皮膚の表面状態や内部状態を撮像すると共に、寒気乾燥や日焼け等によって荒れた肌等における皮膚の表面状態や内部状態を撮像し、このように撮像された各状態の画像を必要に応じて記憶手段3に記憶させるようにし、表示手段4における画面41を2つに分割させ、正常な皮膚の表面状態の画像と荒れた皮膚の表面状態の画像とを同時に画面41上に表示させたり、正常な皮膚の内部状態の画像と荒れた皮膚の内部状態の画像とを同時に画面41上に表示させたり、さらには、表示手段4における画面41を4つに分割させ、正常な状態にある皮膚の表面及び内部状態の画像と荒れた状態にある皮膚の表面及び内部状態の画像とからなる四つの画像を同時に画面41上に表示させたりして、正常な皮膚の状態と荒れた皮膚の状態とを比較しながら検査できるようになる。」(第2頁2欄12〜43行)、
(2b)「【0014】そして、この実施例の検査装置においては、上記の撮像手段2として、図1及び図2に示すように、その装置本体20の内周に沿って多数の光ファイバー等の導光体21を装置本体20の開口された先端側に向けて配すると共に、この導光体21の内周側に皮膚等の被検査物1で反射された光学像を結像させる光学系22と、この光学系22によって結像された像を撮像するCCDカメラ等の撮像素子23とを設け、さらにこの装置本体20の開口された先端部に偏光子24が設けられたキャップ25を装着させるようにした。
【0015】ここで、上記の装置本体20の先端部に装着させるキャップ25として、この実施例においては、図2に示すように、装置本体20の開口された部分と対応する部分に1種類の偏光子24aを設けた第1キャップ25aと、図3に示すように、装置本体20の開口された部分と対応する部分において、上記の導光体21を通して被検査物1に照射される光を偏光させるリング状になった第1偏光子24bと、この第1偏光子24bの内周側において被検査物1で反射された光を偏光させる第2偏光子24cとをそれぞれ偏光面の角度を異ならせて設けた第2キャップ25bとを用いるようにした。
【0016】そして、この実施例の検査装置において、皮膚等の被検査物1の状態を検査するにあたっては、上記の撮像手段2における装置本体20の先端部に上記の第1及び第2のキャップ25a,25bを順々に装着させるようにし、それぞれ光源(図示せず)からの光を装置本体20内に設けられた上記の導光体21を通して皮膚等の被検査物1に照射させ、皮膚等の被検査物1で反射された光学像を上記光学系22によって結像させ、このように結像された像を上記の撮像素子23によって撮像するようにした。
【0017】ここで、装置本体20の先端部に第1キャップ25aを装着させた場合には、上記の導光体21を通して導かれた光がこの第1キャップ25aにおける偏光子24aによって偏光され、このように偏光された光が被検査物1の表面及び内部において反射され、この反射された光が再度上記の偏光子24aに導かれ、この偏光子24aにより再度偏光されて光学系22に導かれるようになった。
【0018】ここで、このように偏光子24aによって偏光された光が被検査物1で反射されて再度この偏光子24aに導かれた場合、被検査物1の表面で反射された光はそのままこの偏光子24aを通過するようになり、上記の光学系22には被検査物1の表面で反射された光が多く導かれるようになった。
【0019】そして、このように第1キャップ25aにおける偏光子24aを通過して光学系22に導かれた光学像をこの光学系22によって結像させ、これを前記の撮像素子23によって撮像すると、主として被検査物1の表面状態を表した画像が撮像されるようになった。
【0020】一方、装置本体20の先端部に前記の第2キャップ25bを装着させた場合には、上記の導光体21を通して導かれた光がこの第2キャップ25bにおける第1偏光子24bによって偏光され、このように偏光された光が被検査物1の表面及び内部において反射され、この反射された光がこの第2キャップ25bに設けられた第2偏光子24cに導かれ、この第2偏光子24cにより偏光されて光学系22に導かれるようになった。
【0021】ここで、このように第1偏光子24bによって偏光された光が被検査物1の表面及び内部において反射され、この反射された光が第2偏光子24cに導かれると、この第2偏光子24cの偏光面と上記の第1偏光子24の偏光面との角度が異なるため、被検査物1の表面で反射された光の多くはこの第2偏光子24cによって遮断され、被検査物1の内部で反射された光がこの第2偏光子24cを通して上記光学系22に導かれるようになった。
【0022】そして、このように第2キャップ25bにおける第2偏光子24cを通過して光学系22に導かれた光学像をこの光学系22により結像させ、これを撮像素子23によって撮像すると、主として被検査物1の内部状態を表した画像が撮像されるようになった。」(第3頁3欄7行〜4欄29行)、
(2c)「【0023】そして、この実施例の検査装置において、皮膚等の被検査物1の状態を検査するにあたっては、例えば、上記のように第1キャップ25aを装着させて撮像した被検査物1の表面状態の画像と、第2キャップ25bを装着させて撮像した被検査物1の内部状態の画像とをそれぞれ画像処理装置5によって処理し、このように処理された画像情報を上記のように必要に応じて記憶手段3に記憶させると共に、表示手段4における画面41を2つに分割させ、被検査物1の表面状態の画像と被検査物1の内部状態の画像とを同時に上記の画面41上に表示させるようにした。
【0024】このようにすると、表示手段4における画面41上において、皮膚等の被検査物1における表面状態と内部状態とを合わせて比較して検査することができ、皮膚等の被検査物1の状態を正確に検査できるようになった。
【0025】また、この実施例の検査装置において、例えば、寒気乾燥や紫外線による日焼け等によって荒れた皮膚等の被検査物1の状態を検査するにあたっては、上記のように撮像手段2における装置本体20の先端部に第1及び第2のキャップ25a,25bを順々に装着させて、上記のような荒れた状態にある皮膚等の被検査物1の表面状態や内部状態を撮像すると共に、同様にして脇の下等の正常な状態にある皮膚等の被検査物1の表面状態や内部状態を撮像し、これらの撮像された画像をそれぞれ上記の画像処理装置5によって処理し、このように処理された各画像情報を上記のように必要に応じて記憶手段3に記憶させるようにした。
【0026】そして、上記の表示手段4における画面41を2つに分割させ、上記の荒れた状態にある皮膚等の被検査物1の表面状態の画像と、正常な状態にある皮膚等の被検査物1の表面状態の画像とを同時に画面41上に表示させたり、荒れた状態にある皮膚等の被検査物1の内部状態の画像と、正常な状態にある皮膚等の被検査物1の内部状態の画像とを同時に画面41上に表示させたり、さらには上記の表示手段4における画面41を4つに分割させ、荒れた状態にある皮膚等の被検査物1の表面状態及び内部状態の画像と、正常な状態にある皮膚等の被検査物1の表面状態及び内部状態の画像とを同時に画面41上に表示させるようにした。
【0027】このようにすると、表示手段4における画面41上において、荒れた状態にある皮膚等の被検査物1の画像と、正常な状態にある皮膚等の被検査物1の画像とを比較することができ、これによって荒れた状態にある皮膚等の被検査物1の状態をより正確に検査できるようになった。」(第3頁4欄30行〜第4頁5欄25行)、
が図面と共に記載されている。
これらの記載から刊行物2には、「2種類の照明条件が選択可能に設定された皮膚表面撮像用の撮像手段と、前記撮像手段で撮像された皮膚表面拡大画像を表示するための表示手段とを有し、前記表示手段の画面が、2以上の領域に分割可能で、各分割画面に、前記撮像手段で条件を変えて撮像された2以上の皮膚表面拡大画像が静止画像としてそれぞれ表示できるようになっている検査装置。」が記載されているものと認められる。

(3)刊行物3:
(3a)「このような従来の体温データ管理装置においては、ケーブルが電子体温計と管理装置本体との間に介在するため、このケーブルが邪魔になって、使用者にとって非常に使いづらいくなるという問題点があった。また、病院のように複数の体温計からデータを収拾する様な場合は、体温計と管理装置本体とをケーブルで接続することができないため、体温値を10キーで入力しなければならず、手間がかかるという問題点があった。【0004】従って、本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、体温データを、電子体温計から管理装置本体へコードレスで自動的に転送することができる様な体温データ管理システムを提供することにある。」(第2頁1欄29〜42行)、
(3b)「上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明の体温データ管理システムは、電子体温計と、該電子体温計を装着可能にされた管理装置本体とを備える体温データ管理システムであって、前記電子体温計は、点滅することにより、計測した体温値を時系列的なデジタル信号として表示するためのLCDドットを具備し、前記管理装置本体は、前記LCDドットの点滅状態を光学的に検出して前記デジタル信号を読み取る読み取り装置を具備することを特徴としている。」(第2頁1欄44行〜2欄3行)、
(3c)「図1は、体温データ管理システムに使用される専用電子体温計12の構造を示した図である。【0008】図示した様に、電子体温計12は、先端部にセンサ14を備えており、また、体温計本体16の中央部には、計測した体温等を表示するためのLCD表示部18を備えている。」(第2頁2欄14〜20行)、および
(3d)第1図、第2図、第5図、第6図
が記載されている。
これらの記載から刊行物3には、「管理装置本体と表示部が設けられた電子体温計との組合せからなる体温データ管理システムにおいて、前記電子体温計と管理装置本体とのデータの送受をコードレスで行うこと」が記載されているものと認められる。

(4)刊行物4:
(4a)「第1図は本発明の健康管理機の一実施例の概要を示す外観図であり、第1図において、1は健康管理機の本体、2はデータをワイヤレスで送信するものに対する受信部、・・・、4は体重、体温、血圧、その他の4ポジションあるグラフィック表示の選択スイッチ、・・・。15は4桁の日文字の数字表示と、・・・よりなる液晶表示器で、・・・測定データの数字表示に用いられる。16は・・・のフルドットのグラフィック液晶表示器で、健康管理機に管理されているデータの日・週・月・年単位の表示をグラフィックに表示するためのものである。」(第2頁左上欄10行〜右上欄20行)、
(4b)「また第1図において、18は個人の測定データを送信する能力のある体重計であり、19は個人の測定データを送信する能力のある血圧計である。」(第2頁左下欄3〜6行)、
が第1図と共に記載されている。
これらの記載から刊行物4には、「本体と測定結果表示部が設けられた体重計、血圧計、体温計、およびその他の測定機器との組合せからなる健康管理機において、前記各測定機器と本体とのデータの送受をワイヤレスで行うこと」が記載されているものと認められる。

イ.対比・判断
そこで本願補正発明5と刊行物1に記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明においては、肌拡大カメラで撮像した肌拡大画像もしくはセンサーで測定された測定結果を表示手段に表示するものであるから、本体には、画像情報処理機能および測定情報処理機能が当然内蔵されているものとして把握すべきである。そして、引用発明における「美容アドバイザー」、「皮膚温度」、「皮膚水分量」、「肌拡大画像」、「肌状態」、「センサー」、「肌拡大カメラ」、「カラーモニター」、「本体」、および「肌状態測定装置」が、それぞれ本願補正発明5における「化粧品販売員」、「皮膚温度」、「皮膚表面水分量」、「皮膚表面拡大画像」、「皮膚状態」、「測定具」、「皮膚表面撮像用の拡大カメラ」、「画像表示手段」、「本体部」、および「皮膚状態評価装置」に相当するから、両者は、「化粧品販売員が、顧客の皮膚温度と皮膚表面水分量を測定するとともに皮膚表面拡大画像を観察して皮膚状態を評価する際に用いる装置であって、上記皮膚温度および皮膚表面水分量を測定する測定具と、皮膚表面撮像用の拡大カメラと、上記拡大カメラで撮像された皮膚表面拡大画像もしくは上記測定具で測定された測定結果を表示するための画像表示手段と、画像情報処理機能および測定情報処理機能が内蔵された本体部とを有し、上記画像表示手段の画面が、2以上の領域に分割可能で、各分割画面に、上記拡大カメラで条件を変えて撮像された2以上の皮膚表面拡大画像が静止画像としてそれぞれ表示できるようになっている皮膚状態評価装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点a:皮膚表面撮像用の拡大カメラが、本願補正発明5では、「2種類以上の照明条件が選択可能に設定された皮膚表面撮像用の拡大カメラ」であるのに対し、引用発明では、「無反射入力と、反射入力の2種類の入力方法が備えられた肌拡大カメラ」である点。
相違点b:測定具が、本願補正発明5では、「上記測定具が、本体部に対しコードレスで、それ自身に測定結果表示部が設けられている」のに対し、引用発明では、センサーの本体部への接続手段およびそれ自身の測定結果表示部については明記されていない点。
相違点c:拡大カメラで撮像された2以上の皮膚表面拡大画像が、本願補正発明5では、条件を変えて撮像されているのに対し、引用発明では、撮像の条件に関しては明記されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点aについて、
上記相違点aに係る「2種類以上の照明条件」の実施例に相当する記載として、本願明細書には、発明の詳細な説明の段落【0021】〜【0023】に、拡大カメラの照明に関して、偏光板の組合せを換えることによって、反射画像または無反射画像が得られることが記載されている。
一方、引用発明の肌拡大カメラにおいても、反射入力と無反射入力の2種類の入力方法が選択可能に備えられており(上記摘記事項(1c)【0025】)、これによって本願補正発明5と同様に反射画像または無反射画像が得られるものと理解されるが、その具体的構成については明記されていない。
ところで、刊行物2には、本願補正発明5と同様に偏光板の組合せを換えることによって、反射画像または無反射画像が得られる皮膚等の撮像手段が示されており(摘記事項(2b))、前記撮像手段で撮像された2以上の画像を、2以上の領域に分割された各分割画面にそれぞれ表示することが示されている。
そして、刊行物2の撮像手段と引用発明の肌拡大カメラとは共に皮膚表面を撮像できるカメラとして共通するものであるから、引用発明の肌拡大カメラとして前記刊行物2に記載の皮膚等の撮像手段を用いることによって、相違点aは容易になし得たものと認められる。
相違点bについて、
一般に、本体部と測定結果表示部が設けられた測定部との組合せからなる装置において、前記測定部と本体部とのデータの送受をコードレスで行うことは刊行物3または4に示されるように周知技術である。このとき、測定部は単独で用いることと共に、本体部の測定端末機器としても用いることができる。
一方、本体と測定端末機器とからなる装置において、測定端末機器の使用の自由度を増すために測定端末機器を独立して使用できる測定機器とし、かつ、本体と前記測定機器とをコードレスでデータの送受ができるようにすることは刊行物3にも示されるように一般的な要求であると言える。
そうすると、上記周知技術を引用発明のセンサーと本体とからなる装置に適用することによって、センサーを単独の測定器として用いるために、センサーに測定結果表示部を設け、かつ、センサーと本体とをコードレスでデータの送受を行うようにすることは、当業者が必要に応じて容易になし得たことにすぎない。
相違点cについて、
引用発明においても、2個所の皮膚表面画像は比較のために並べて表示されるのであって、また、撮像手段は条件を変えて撮像できるものであるから、前記2個所の皮膚表面画像を撮影する際に、比較のためにそれぞれの所望の条件で撮像することは、刊行物2(摘記事項(2c))にも示されるように必要に応じて適宜なし得たことにすぎない。

以上のとおり、相違点aないしcはいずれも当業者が必要に応じて容易になし得た程度のものにすぎない。
そして、本願明細書に記載された本願補正発明5の作用効果は、上記当業者が容易に成しえた構成によって自ずと得られるものであって格別のものとは認められない。

したがって、本願補正発明5は、刊行物1ないし2に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ウ.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
3.1 本願発明
平成13年11月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成13年5月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち請求項5に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、請求項5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項5】 皮膚温度および皮膚表面水分量を測定する測定具と、2種類以上の照明条件が選択可能に設定された皮膚表面撮像用の拡大カメラと、上記拡大カメラで撮像された皮膚表面拡大画像もしくは上記測定具で測定された測定結果を表示するための画像表示手段と、画像情報処理機能および測定情報処理機能が内蔵された本体部とを有し、上記測定具が、本体部に対しコードレスで、それ自身に測定結果表示部が設けられているとともに、上記画像表示手段の画面が、2以上の領域に分割可能で、各分割画面に、上記拡大カメラで条件を変えて撮像された2以上の皮膚表面拡大画像が静止画像としてそれぞれ表示できるようになっていることを特徴とする皮膚状態評価装置。」

3.2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、上記「2.3 ア.引用刊行物」に記載したとおりである。

3.3 対比・判断
本願発明は、上記「2.3 イ.対比・判断」で検討した本願補正発明5から限定事項である「化粧品販売員が、顧客の皮膚温度と皮膚表面水分量を測定するとともに皮膚表面拡大画像を観察して皮膚状態を評価する際に用いる装置であって、」の構成を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明5が、上記「2.3 イ.」に記載したとおり、刊行物1ないし2および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1ないし2および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし2に記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その他の請求項に係る発明についての判断をするまでもなく、この出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-20 
結審通知日 2004-01-27 
審決日 2004-02-09 
出願番号 特願平10-227125
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 居島 一仁小原 博生  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 河原 正
水垣 親房
発明の名称 皮膚状態評価方法およびそれに用いる装置  
代理人 西藤 征彦  
代理人 西藤 征彦  

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