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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特29条の2  A61K
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1094602
異議申立番号 異議2001-72014  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-24 
確定日 2004-02-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3127658号「毛髪化粧料」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3127658号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3127658号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成5年3月12日にされたものであり(特願平5-78873号)、平成12年11月10日にその特許の設定登録がなされ、その後ホーユー株式会社、林純、ライオン株式会社、及び千葉恭弘より請求項1及び2の特許について特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年2月7日に訂正請求がなされ(その後、取り下げられた)、再度取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年12月22日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲に「【請求項1】(A)ピロリドンカルボン酸、乳酸、プロリン、酸性アミノ酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上および(B)力チオン性重合体の1種または2種以上を含有し、(A):(B)の比率が1:10〜10:1(重量比)であり、(A)(B)の配合量の合計が0.1〜10重量%であることを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】(A)成分がピロリドンカルボン酸である請求項1記載の毛髪化粧料。」とあるのを、
「【請求項1】(A)ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種および(B)カチオン性重合体の1種または2種以上を含有し、(A):(B)の比率が1:10〜10:1(重量比)であり、(A)(B)の配合量の合計が0.1〜10重量%であることを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】(A)成分がピロリドンカルボン酸である請求項1記載の毛髪化粧料。」と訂正する。
訂正事項b
明細書第2頁第7〜8行、同第2頁第13〜14行、同第2頁第18〜19行の記載「ピロリドンカルボン酸、乳酸、プロリン、酸性アミノ酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上」を「ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種」と訂正する。
訂正事項c
明細書第2頁第22〜26行の記載「本発明に用いられる(A)成分はピロリドンカルボン酸、乳酸、プロリン、酸性アミノ酸であり、酸性アミノ酸としてはグルタミン酸、アスパラギン酸などが挙げられる。これらはいずれも公知の成分で商業的に入手できる。(A)成分の中では、特にピロリドンカルボン酸、プロリンが好ましい。」を「本発明に用いられる(A)成分はピロリドンカルボン酸、プロリンである。これらはいずれも公知の成分で商業的に入手できる。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
a.訂正事項aについて
上記訂正事項aについては、特許明細書の請求項1に(A)成分として記載されていた乳酸および酸性アミノ酸を削除し、(A)成分をピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種に限定するものである。
したがって、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
b.訂正事項b及びcについて
上記訂正事項b及びcは、特許明細書の発明の詳細な説明の記載を上記訂正事項aと整合するようにしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人ホーユー株式会社、林純、ライオン株式会社、及び千葉恭弘の申し立てた理由は概略以下のとおりである。
a.理由1
本件請求項1に係る発明は、「Cosmetics&Toiletries Vol.103 March l988」(ホーユー株式会社の甲第1号証:以下「刊行物1」という。)、特開平5-43427号公報(林及びライオン株式会社の甲第1号証、千葉の甲第2号証:以下、「刊行物2」という。)、特開平2-180911号公報(林の甲第2号証:以下、「刊行物3」という。)、特開平4-82820号公報(林の甲第3号証:以下、「刊行物4」という。)、特開昭52-156938号公報(ライオン株式会社の甲第2号証:以下、「刊行物5」という。)、「最新洗浄剤処方集」(第3集)[平成7年(1995年)10月1日発行](千葉の甲第1号証:以下、「刊行物6」という。)、及び特開平3-48607号公報(千葉の甲第3号証:以下、「刊行物7」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべきである。
b.理由2
本件請求項1に係る発明は、先願である特願平5-21455号(特開平6-234618号公報)(林及び千葉の甲第4号証)の発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けられないものであり、取り消すべきである。
c.理由3
本件請求項1及び2に係る発明は、(ア)特開平5-43427号公報(刊行物2)、特開昭59-176204号公報(ライオン株式会社の甲第3号証:以下、「刊行物8」という。)に記載された発明に基づいて、或いは特開平5-43427号公報(刊行物2)、特開昭59-176204号公報(刊行物8)、「特許庁公報、59(1984)-184[3880]周知・慣用技術集(化粧品及び類似品)、昭和59(1984).8.21」(ライオン株式会社の甲第4号証:以下、「刊行物9」という。)に記載された発明に基づいて、又は(イ)特開昭56-16406号公報(千葉の甲第5号証:以下、「刊行物10」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項に該当するので、本件請求項1及び2に係る発明についての特許を取り消すべきである。
d.理由4
請求項1に係る発明において、(A)成分として「酸性アミノ酸」が記載されているが、発明の詳細な説明の記載からは、酸性アミノ酸を用いたときに本件特許発明の所期の効果を発揮しうるか否か明らかではないから、本件明細書の記載は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

なお、各申立人が提出した証拠は次のとおりである。
申立人ホーユー株式会社提出:
甲第1号証:Cosmetics&Toiletries Vol.103 March l988、102頁及び114頁
甲第2号証:CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary Fourth Edition、1991,第462-463頁及び第513頁

申立人林純提出:
甲第1号証:特開平5-43427号公報
甲第2号証:特開平2-180911号公報
甲第3号証:特開平4-82820号公報
甲第4号証:特願平5-21455号(特開平6-234618号公報)

申立人ライオン株式会社提出:
甲第1号証:特開平5-43427号公報
甲第2号証:特開昭52-156938号公報
甲第3号証:特開昭59-176204号公報
甲第4号証:特許庁公報、59(1984)-184[3880]周知・慣用技術集(化粧品及び類似品)第71頁及び第96頁、昭和59(1984).8.21

申立人千葉恭弘提出:
甲第1号証:「最新洗浄剤処方集」(第3集)平成7年(1995年)10月1日発行、第182〜183頁及び第190頁
甲第2号証:特開平5-43427号公報
甲第3号証:特開平3-48607号公報
甲第4号証:特願平5-21455号(特開平6-234618号公報)
甲第5号証:特開昭56-16406号公報

(2)訂正明細書の請求項1及び2に係る発明
本件特許明細書は、上記訂正請求が認められるものであるから、その請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ、本件発明1及び2という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】(A)ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種および(B)カチオン性重合体の1種または2種以上を含有し、(A):(B)の比率が1:10〜10:1(重量比)であり、(A)(B)の配合量の合計が0.1〜10重量%であることを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】(A)成分がピロリドンカルボン酸である請求項1記載の毛髪化粧料。」

(3)判断
〈請求項1に係る発明について〉
a.理由1について
刊行物1の第102頁にはプロテインローションコンディショナーが、また、第114頁にはモイスチャライジングシャンプーが記載されており、これらには乳酸とクォータニウム-79加水分解動物蛋白質あるいはポリクォータニウム-11が配合されている。
刊行物2には、「(a)両性界面活性剤、(b)カチオン化ポリマー、(c)油剤、(d)有機酸及び/又は無機酸、を含有し、組成物全体のpHが5以下であることを特徴とするアフターシャンプー用乳化毛髪化粧料。」(請求項1)について記載されており、具体的には上記(d)成分として乳酸を含有する化粧料が、実施例6及び8に記載されている。
刊行物3には、実施例12において、乳酸と本件発明の(B)成分に相当する合成例2の共重合体を含有するシャンプーが記載されている。
刊行物4には、実施例1において、乳酸と本件発明の(B)成分のカチオン性重合体に相当する「合成例1で得た共重合体」を含有するヘアスプレー用組成物が記載されている。
刊行物5には、「皮膜形成樹脂としてキトサンの水溶性塩と必要に応じて通常の添加物とを含むことを特徴とする皮膜形成樹脂の水溶液あるいは水性アルコール溶液からなる髪型の固定剤。」(特許請求の範囲(1))が記載されており、又、発明の詳細な説明には、「キトサン塩は陽イオン性樹脂の性質をもっている」(公報第2頁左上欄2〜3行)旨記載されると共に、実施例〔3〕に、キトサンと乳酸を含有する髪型の固定剤が記載されている。
刊行物6には、乳酸及びカチオン性重合体の「Polyquaternium-10」を配合した、毛髪化粧料の多相シャンプー/ヘアコンディショナーが記載されている。(第182頁下から9行目〜第183頁15頁)
刊行物7には、本件発明の(B)成分のカチオン性重合体であり得る状態調節剤と、(A)成分の乳酸であり得る補酸性緩衝剤が配合され得る、水性ヘアコンディショニング組成物が記載されている(特許請求の範囲(1)及び(4))。
そこで、本件発明と上記刊行物1〜7に記載の発明を対比すると、上記1及び3〜7の各刊行物には乳酸を含有する毛髪化粧料が記載されているが、上記訂正により、本件発明は「(A)ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種」を含むものに限定され、乳酸は含まれないものとなったので、本件発明が刊行物1及び3〜7に記載された発明とはいえない。また、刊行物2には、「(a)両性界面活性剤、(b)カチオン化ポリマー、(c)油剤、(d)有機酸及び/又は無機酸を含有する毛髪化粧料」が記載されており、有機酸として「クエン酸、乳酸、リン酸等」が挙げられており(公報第7頁11欄1行)、また、実施例では、クエン酸及び乳酸が使用されている。しかしながら、本件発明で使用される「ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種」を使用することについては何も記載されておらず、また、本件発明は、かかる化合物を選択することにより両面活性剤等を使用しなくとも、毛髪の保水性を向上させてなめらかな感触を付与し得たものであるから、本件発明が刊行物2に記載された発明であるということはできない。
b.理由2について
先願(特願平5-21455号)明細書の請求項1には、「(a)両性界面活性剤、(b)カチオン化ポリマー、(c)油剤、(d)殺菌剤、(e)有機酸又は無機酸を含有し、組成物全体のpHが5以下であることを特徴とするアフターシャンプー用乳化頭皮・毛髪化粧料。」について記載され、その実施例5には、「カチオン化ポリマー(カチセロH-80)及び乳酸」を含有するアフターシャンプー用乳化頭皮・毛髪化粧料が記載されている。
しかしながら、上記先願明細書には、「(e)成分の有機酸又は無機酸としては、クエン酸、乳酸、リン酸等の有機酸又は塩酸等の無機酸が用いられる。」(段落【0057】)と記載されているだけであり、また、実施例ではクエン酸及び乳酸が使用されているのみであって、本件発明の「(A)ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種」という特定の酸については何も記載されていないから、本件発明は先願に記載された発明とはいえない。
c.理由3について
申立人ライオン株式会社は、刊行物2には、カチオン化ポリマーとして、本件明細書に例示されたカチオン性重合体と同一の化合物が挙げられており、また、カチオン性重合体及びグリセリン又はプロピレングリコールを含有するヘアコンディショナー、ヘアリンス剤が記載されており、さらに、刊行物8には、保湿剤(グリセリン)とカチオン性重合体を有する頭髪用化粧料が記載されているところ、刊行物9には、グリセリン,プロピレングリコール,2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウム等の保湿剤はシャンプー(毛髪化粧料)のコンディショニング剤であることも記載されているから、刊行物2及び刊行物8に記載のカチオン性重合体及びグリセリン又はプロピレングリコールを含有する毛髪化粧料において、保湿剤であるグリセリン又はプロピレングリコールに代えてこれらと同様に保湿剤として汎用されている2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウムを使用することは、当業者が容易に想到し得ることであると主張している。
しかしながら、本件明細書の実施例6及び比較例5の記載によれば、カチオン性重合体であるポリエチレンイミンとピロリドンカルボン酸を含有させたものは所期の目的、効果を達成し得るのに対して、ピロリドンカルボン酸ナトリウム塩を含有させたものは、塗布時及びすすぎ後のしっとり感やすすぎ後のしなやかさが感じられず、そのため、その総合評価は「×」であることが記載されている。即ち、刊行物9に列記されているような2-ピロリドン-5-カルボン酸ナトリウムによっては所期の目的を達成することができず、本件発明の特定の化合物を含有させることにより始めて所期の目的を達成し得たことが明らかであるから、本件発明において、グリセリン又はプロピレングリコールに代えて、ピロリドンカルボン酸およびプロリンという特定の化合物をカチオン性重合体に配合させることが、当業者が容易になし得たとはいうことはできない。
申立人千葉は、刊行物10には、特定のカチオン化水溶性高分子化合物と特定の非イオン界面活性剤を含有するへアリンス組成物が記載されており、また、その実施例1には、カチオン化高分子であるカチオン化ヒドロキシエチルセルロースにPCAトリエタノールアミン(ピロリドンカルボン酸トリエタノールアミン)が含有されたヘアリンスが記載されており、得られたヘアリンス組成物は、優れた毛髪保護性を有し、毛髪のしなやかさ、くし通し、つや出し効果、柔軟性付与効果に優れる旨が記載されているから、当業者がカチオン性高分子とピロリドンカルボン酸類を組み合わせることによって、毛髪に対し適度な水分を保持させ、なめらかな感触を付与するという本件特許発明の毛髪化粧料に想到する動機は十分に存在すると主張している。
しかしながら、上記したとおり、本件発明はピロリドンカルボン酸ナトリウムによっては所期の目的を達成することはできず、ピロリドンカルボン酸又はプロリンという特定の化合物をカチオン性重合体とともに含有させて始めて所期の目的を達成し得たものであるから、刊行物10に記載された「第4級窒素基にてカチオン化された水溶性化合物と分子中にアミド基を有する非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とするヘアリンス組成物」(特許請求の範囲(1))なる発明に基づいて本件発明を当業者が容易になし得たということはできない。
d.理由4について
請求項1に係る発明において、(A)成分として記載されていた「酸性アミノ酸」は同項から削除されたから、この点に関する記載不備は解消された。

〈請求項2に係る発明について〉
請求項2に係る発明は請求項1に係る発明における(A)成分をピロリドンカルボン酸に限定したものであるが、請求項1に係る発明が上記のとおり特許し得るものであるから、請求項2に係る発明も特許し得るものであることは明らかである。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
毛髪化粧料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種および(B)カチオン性重合体の1種または2種以上を含有し、(A):(B)の比率が1:10〜10:1(重量比)であり、(A)(B)の配合量の合計が0.1〜10重量%であることを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】 (A)成分がピロリドンカルボン酸である請求項1記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、毛髪に対し適度な水分を保持し、なめらかな感触を付与する毛髪化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術および課題】
毛髪水分は毛髪保護の観点から重要であり、毛髪に適度な水分を付与する試みが種々なされている。例えばヘアトリートメント、ヘアリンスなどの毛髪用化粧料には、ピロリドンカルボン酸塩、グリセリンなどの多価アルコール、ヒアルロン酸、蛋白質誘導体、尿素などの保湿成分が配合されたり、高級アルコール、ワセリン、動植物性油脂などの油分が配合されたりするが、油分によって毛髪に水分を高めようとすると使用感など不都合を生じる場合がある。
【0003】
保湿剤について検討もなされており、例えば 特開昭55ー149369号公報にはプロリンと2ーピロリドンー5ーカルボン酸の湿潤剤組成物が、優れた保湿効果を発揮することが開示され、さらに特開昭56ー71020号公報には2ーピロリドンー5ーカルボン酸塩基性アミノ酸が保湿性を高める目的で化粧料に配合できることが開示されている。しかし、本来、保湿性成分は毛髪への親和性に乏しく、特にヘアリンスなど洗い流して使う製剤では、ほとんどその効果が期待できない。そのため、洗い流したとしても毛髪に適度な水分を保持し、なめらかな優れた感触を付与する毛髪化粧料の開発が望まれている。このような事情を鑑み、本発明では毛髪化粧料にあって、洗い流したとしても毛髪に適度な水分を保持し、且つ感触に優れた毛髪化粧料の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種とカチオン性重合体の1種または2種以上を組合せて配合することにより、相乗的に毛髪の水分を補い(吸湿性)、水分保持する効果(保水性)があることを見出し本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明はピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種とカチオン性重合体の1種または2種以上を組合せて配合してなる毛髪に適度な水分を付与する感触に優れた毛髪化粧料に関する。
【0006】
以下に、本発明を詳しく説明する。本発明は(A)ピロリドンカルボン酸、プロリンよりなる群から選ばれる1種または2種と(B)カチオン性重合体の1種または2種以上を含有し、(A):(B)の比率が1:10〜10:1であり、(A)(B)の配合量が合計0.1〜10%であることを特徴とする毛髪化粧料であり、本発明に用いられる(A)成分はピロリドンカルボン酸、プロリンである。これらはいずれも公知の成分で商業的に入手できる。
【0007】
本発明の毛髪化粧料に用いるカチオン性重合体の代表的なものとしてはポリエチレンイミン(エポミン SPー006、エポミン Pー1000:日本触媒製)、カチオン化セルロース誘導体(カチナール HCー100:東邦化学製)、カチオン化多糖類誘導体(ラボールガムCGーM:大日本製薬製)、カチオン化プロテイン誘導体(プロモイス Wー42QP:成和化成製)、ポリエチレングリコール/エピクロルヒドリン/プロピレンアミン/牛脂脂肪酸の縮合生成物(ポリコートH:ヘンケル製)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(マーコート100:メルク製)、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド/アクリルアミド共重合体(マーコート550:メルク製)、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体カチオン化物(ガフコート755、ガフコート734:ISP製)などが挙げられる。
【0008】
これらカチオン性重合体は単独でも2種以上を併用してもよく、中でもポリエチレンイミンが好ましく、特に分子量が、300〜2000のポリエチレンイミンが好ましい。
【0009】
また、(A)(B)の比率(重量比)は1:10〜10:1の範囲で配合され、特に、1:3〜5:1の範囲が好ましい。カチオン性重合体(B)に対する(A)が1:10〜10:1の範囲をはずれると、毛髪にしっとり感が十分付与されない。又、(A)(B)の配合量の合計は0.1重量%〜10重量%、特に1重量%〜5重量%の範囲が好ましい。0.1重量%に満たないと、しっとり感付与効果が十分でなく10重量%を越えると、べたついた感触を与える。
【0010】
本発明の毛髪化粧料の形態は、特に限られることはなく、ヘアリンス、乳液、ブロー剤、ヘアトリートメント、ヘアムース、ヘアエッセンスなどの形態とすることができる。また、他の配合成分は特に限定されるものでなく、通常この種の化粧料に配合されるものが用いられる。また、要すれば、本発明の毛髪化粧料には、その性能を損なわない範囲で周知の成分が適宜配合でき、その例として、油分、着色料、乳化剤、香料、水、エタノール等の溶剤、カチオン活性剤のごとき帯電防止剤、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどの噴射剤等が挙げられる。
【0011】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。言うまでもなく本発明はこれら実施例に限られるものではない。なお、実施例、比較例中の[%]は、いずれも重量%を意味する。
表1に示す成分を混合攪拌し毛髪化粧料を得た。次いで、これらを用いて以下の如く評価した。
【0012】
(評価方法)
(1)保水性
表1に示すポリエチレンイミン・ピロリドンカルボン酸混合水溶液の各々約10gを精秤(Wa)し、80℃の条件下に5時間おいた後の重量(Wb)を測定し、保水性変化を求めた。なお、対照には各々の濃度に対応するポリエチレンイミン水溶液を用い、同じ条件で保水性変化を求めた。保水性(%)の算出式を式(I)に示す。
【0013】
【数1】

【0014】
(2)吸湿性
保水性を求めた後、引き続いて20℃、相対湿度80%の条件下に7時間おき、重量(Wc)を測定して、吸湿量変化を求めた。なお、対照も同様にして吸湿性を求めた。吸湿性(%)の算出式を式(II)に示す。
【0015】
【数2】

【0016】
表1に示すように、明らかに相乗的な保水性および吸湿性の向上が認められる。
【0017】
【表1】
【0018】
次に、表2に示す実施例6〜11、比較例5〜10を常法にて調製し、性能評価に用いた。性能評価方法は次の通りである。
(3)性能評価
▲1▼塗布時のしっとり感
専門パネラー(20代女性)5名による官能評価
○:「しっとり感がある」と判定した専門パネラーの4名以上
×:「しっとり感がある」と判定した専門パネラーが4名未満
▲2▼すすぎ後のしっとり感
専門パネラー(20代女性)5名による官能評価
○:「しっとり感がある」と判定した専門パネラーが4名以上
×:「しっとり感がある」と判定専門したパネラーが4名未満
▲3▼すすぎ後のしなやかさ
専門パネラー(20代女性)5名のによる官能評価
○:「しなやかさがある」と判定した専門パネラーが4名以上
×:「しなやかさがある」と判定した専門パネラーが4名未満
▲4▼総合評価
○:塗布時、すすぎ後のしっとり感があり、すすぎ後しなやかである
×:塗布時またはすすぎ後にしっとり感がない、または、すすぎ後しなやかさがない
【0019】
【表2】
表2に示すように、いずれの実施例も、比較例に比べて毛髪にしっとり感を付与し、且つしなやかに仕上げる効果に優れている。
【0020】
さらに、以下の実施例を調製した。
実施例17 (乳液)
成分 配合量(%)
(成分A)
ピロリドンカルボン酸 2.0
ポリエチレンイミン(分子量:300) 2.0
1、3ーブチレングリコール 1.0
ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル 1.2
カルボキシビニルポリマー 0.1
水 残量
(成分B)
流動パラフィン 2.0
(成分C)
トリエタノールアミン 0.1
合計 100.0
60℃に加熱した成分Aに60℃に加熱した成分Bを加え攪拌混合した。次いで冷却しながら成分Cを加えた。
【0021】
実施例12 (ヘアブロー剤)
成分 配合量(%)
乳酸 1.0
カチオン化プロテイン 1.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
香料 0.1
95%エタノール 10.0
水 残量
合計 100.0
上記成分を順次加え、攪拌溶解した
【0022】
実施例13(ヘアトリートメント)
成分 配合量(%)
(成分A)
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3.0
セチルアルコール 3.0
メチルポリシロキサン 3.0
(成分B)
プロリン 4.0
プロピレングリコール 5.0
防腐剤 微量
カチオン化グアガム 2.0
水 残量
(成分C)
香料 0.1
合計 100.0
成分Bを混合して80℃に保ち、これに別に成分Aを混合して80℃に保った物を加えた。攪拌しながら成分Cを添加してヘアトリートメントを製造した。
【0023】
実施例14(ヘアムース)
成分 配合量(%)
(成分A)
ピロリドンカルボン酸 1.0
ポリエチレンイミン(分子量70000) 0.5
ポリエーテル変性シリコーン 0.5
ハマメリス抽出液 0.1
水 残量
(成分B)
95%エタノール 5.0
香料 0.1
成分Aを常温にて均一に攪拌混合した後成分Bを加えて、原液を調整した。この原液90部と噴射剤(液化石油ガス)10部をエアゾール容器に充填して、ヘアムースを製造した。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、ピロリドンカルボン酸などとカチオン性重合体とを用いると、相乗的に毛髪の保水性、吸湿性が向上して、毛髪に適度な水分を保持し、なめらかな感触を付与することのできる優れた毛髪化粧用組成物を提供できる。
【表1】

【表1】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-21 
出願番号 特願平5-78873
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A61K)
P 1 651・ 531- YA (A61K)
P 1 651・ 16- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塚中 直子  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 松浦 新司
深津 弘
登録日 2000-11-10 
登録番号 特許第3127658号(P3127658)
権利者 サンスター株式会社
発明の名称 毛髪化粧料  
代理人 柳野 隆生  
代理人 小島 隆司  
代理人 柳野 隆生  
代理人 西川 裕子  

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