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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1094621
異議申立番号 異議2002-71952  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-08 
確定日 2003-10-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3255309号「熱安定性と金型耐腐食特性に優れた樹脂組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3255309号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 本件特許第3255309号の請求項1に係る発明は、訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。
これに対し、平成15年5月30日(起案日)付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、特許権者からは何らの応答もない。
そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
熱安定性と金型耐腐食特性に優れた樹脂組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリカーボネート樹脂とABS樹脂を必須成分とする樹脂組成物において、該ABS樹脂が式1で定義されるアルカリ金属指数が1以下、式2で定義されるアルカリ土類金属指数が30以下かつ塩素含有量が500ppm以下であり、さらに式3で表されるペンタエリスリト-ルジホスファイト系化合物を樹脂成分100重量部に対して0.1〜3.0重量部添加することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【数1】

【数2】

【化1】

(式中のR1及びR2はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とを必須成分とする樹脂組成物で、その優れた物理的特性を維持しつつ、滞留時の熱安定性及び金型腐食特性を改良した組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性や耐衝撃性に優れているため、自動車部品、電気・電子機械部品、精密機械部品などの広い分野で使用されているが、高価であり、また成形性や低温での耐衝撃性に劣とるなどの欠点がある。
一方、ABS樹脂(アクリロニトリルーブタジエンースチレン系共重合体)は、機械的強度、成形性に優れた安価な材料であるが、耐熱性や高度の耐衝撃性を要求される自動車部品やOA部品などの部材に用いるには、耐熱性や耐衝撃性が不十分であり、用途が限定されている。
【0003】
これらのお互いの欠点を補う方法として、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とからなる樹脂組成物とする方法が知られている。この方法により、ポリカーボネート樹脂の短所であった成形性や低温での耐衝撃性が改良されるとともに、ABS樹脂の短所であった耐熱性や不十分であった耐衝撃性が改良される。しかしながら、新たな問題点として、滞留時の熱安定性が低下する問題点が現れた。
該樹脂組成物の滞留時の熱安定性を改良する方法として、無機酸、有機酸及び有機酸無水物から選択された一種以上の酸化合物を添加する方法(特開昭56-131657)、有機フォスフォン酸もしくは、リン酸エステル金属塩を含有させる方法(特開昭55-123647,特開昭54-40854)等が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法により、確かに滞留時の熱安定性は改良されてきたが、その改良と共に従来はあまり成形されなかった大型の成形物や薄肉の成形物にも使用されるケースが増えてきた。これら成形しにくい大きな成形物や薄肉の成形物を成形する場合、成形温度等が従来より高目に設定されたり、大型の射出成形機が使用されなど成形条件が樹脂に対して厳しくなり、その結果、成形時の樹脂の滞留時間が長くなりフラッシュ等の外観不良が発生しやい問題が再発し、また金型の腐食の発生する問題点も顕著になってきている。
【0005】
そこで、本発明者はこれらの課題を改良すべく鋭意検討を重ねた結果ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とを必須成分とする樹脂組成物の耐熱性や耐衝撃性を何ら損なうことなく、従来改良された品質を越えさらに一層、滞留時の熱安定性を改良し、併せて金型耐腐食特性をも改良した樹脂組成物を見出し、本発明に到達したものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明はポリカーボネート樹脂とABS樹脂を必須成分とする樹脂組成物において、該ABS樹脂が式1で定義されるアルカリ金属指数が1以下、式2で定義されるアルカリ土類金属指数が30以下かつ塩素含有量が500ppm以下であり、さらに式3で表されるペンタエリスリト-ルジホスファイト系化合物を樹脂成分100重量部に対して0.1〜3.0重量部添加することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
【数3】

【数4】

【化2】

(式中のR1及びR2はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。)
なお上記の式1及び式2において、23、39、24、40の数値はナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの各原子量であり、0.95、1.33、0.65、0.99の数値はナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの各イオン半径(単位はÅ)を表す。
【0007】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明におけるポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ー芳香族ポリカーボネートなどが挙げられるが、好ましくは、2,2-ビス(4-オキシフェニル)アルカン系、ビス(4-オキシフェニル)エーテル系、ビス(4-オキシフェニル)スルホン系、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレノン系、イソフォロン系などのビスフェノール及びこれらの核アルキル化誘導体、核ハロゲン化誘導体から選ばれた1種以上のホモ及びコポリカーボネートである。これらポリカーボネート樹脂は,粘度平均分子量が15000以上、好ましくは18000以上のものである。
【0008】
本発明におけるABS樹脂とは、共役ジエン含有エラストマー100重量部の存在下で、スチレン、αーメチルスチレン、ハロゲン叉はアルキル基の置換した核置換スチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル等のシアン化ビニル単量体及びメタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、フマル酸ジメチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体からなる群より選ばれた2種以上の単量体10〜200重量部と、必要に応じてメチルビニルエーテル、マレイミド、N-フェニルマレイミド等のその他の共重合可能な単量体0〜50重量部とを共重合してなる共重合体である。
【0009】
前記ABS樹脂における共役ジエン含有エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンースチレン共重合体、ブタジエンーアクリロニトリル共重合体、クロロプレン重合体、イソプレンースチレン共重合体、アクリル酸アルキルーブタジエン共重合体及びこれら共重合体の部分水素添加物等を挙げることができ、1種または2種以上の単独重合体又は共重合体を用いることができる。
【0010】
前記ABS樹脂は、通常、乳化グラフト重合法で製造され、乳化剤やラテックス析出剤の残留量が多くなりがちであった。先の式1、式2で定義したアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びハロゲン化物等の不純物量が所定の範囲に入るように製造するには、ラテックス析出剤の種類や量及び析出物の洗浄条件を最適化することである。好ましくは、アルカリ金属塩のみでの析出は避け、しかもハロゲン化合物の使用割合が少ない析出剤組成を用いることである。具体的には、硫酸マグネシュウムと硫酸併用析出剤が好ましい。
残留の許容され不純物量の量は、それぞれアルカリ金属指数は1以下、好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.5以下であり、アルカリ土類金属指数は30以下、好ましくは25以下、特に好ましくは20以下である。更に塩素量は500ppm以下、好ましくは400ppm以下、特に好ましくは300ppm以下である。
【0011】
ABS樹脂中に残留するアルカリ金属指数が1を超えたり、アルカリ土類金属指数が30を超えたりするいずれの場合も、たとえ、安定剤を添加しも、滞留時の熱安定性をさらに一層改良することが難しくなる。また、塩素量が500ppmを超えると添加剤を添加しても、金型耐腐食特性の改良効果が乏しくなる。
【0012】
なおABS樹脂中に残留するアルカリ金属としては、主にナトリウム及びカリウムであり、リチウム、ルビジウム、セシウム、フランジウム等の残存量は微量であるので、本発明では、アルカリ金属としてナトリウム及びカリウムの残存量に限定することとする。同様に、ABS樹脂中に残留するアルカリ土類金属は、殆どがマグネシウム及びカルシウムであり、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等は微量であるので、本発明では、アルカリ土類金属としてマグネシウム及びカルシウムに限定することとする。
【0013】
樹脂組成物中に含まれる、これらアルカリ金属、アルカリ土類金属、塩素は公知の分析法で定量することができる。例えば、カリウム、カルシウム、塩素の定量はエネルギー分散型もしくは波長分散型X線分光法で、ナトリウムとマグネシウムの定量は灰化後、原子吸光法で実施することができる。
【0014】
本発明において、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂との割合は、目的とする成形品の用途、製品の剛性、衝撃強度、耐熱性、価格、成形性などの関係から種々の混合割合に設定しうるが、ポリカーボネート樹脂95〜5重量%、好ましくは90〜10重量%、特に好ましくは85〜15重量%、ABS樹脂5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは15〜85重量%である。ポリカーボネート樹脂の割合が5重量%未満では、耐熱性及び耐衝撃性の向上効果が乏しく、また95重量%を越えると成形性や耐熱水性の低下する傾向が現れる。
【0015】
また、本発明において必須成分であるポリカーボネート樹脂とABS樹脂の合計量100重量部当たり、他の熱可塑性樹脂0〜100重量部、好ましくは0〜70重量部、特に好ましくは0〜50重量部を併用することができる。併用することができる他の熱可塑性樹脂の量が100重量部を越えると耐熱性、耐衝撃性及び成形性等の物性の少なくともいずれか1つの特性が損なわれる。
【0016】
本発明において、併用することができる他の熱可塑性樹脂の例として、スチレン、αーメチルスチレン、ハロゲン叉はアルキル基の置換した核置換スチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル等のシアン化ビニル単量体及びメタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、フマル酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル単量体、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸(無水物)、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等の不飽和ジカルボン酸イミド化合物、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物からなる群より選ばれた1種以上の単量体の単独重合体及び/又は共重合体、AAS樹脂(アクリロニトリルーアクリルゴムースチレン共重合体)、AES(アクリロニトリルーエチレン・プロピレン・ジエンエラストマーースチレン共重合体)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ビスフェノールAとフタル酸との縮合物等の芳香族ポリエステル樹脂、6-ナイロン、66-ナイロン、46-ナイロン、MXD6ナイロン、6・10ナイロン、12ナイロン、6Tナイロン、6/6Tナイロン等のポリアミド樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、シンジオタクティック・ポリスチレン等が挙げられる。
【0017】
前記の併用することができる熱可塑性樹脂の中で、AAS樹脂やAES樹脂を併用すると耐候性が向上し、スチレンー無水マレイン酸ーN-フェニルマレイミド共重合体の添加は耐熱性の向上をもたらし、また、適当量のポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートを併用すると、耐熱性や耐衝撃性を保持したままウェルド強度や成形性をさらに向上させることができる。
【0018】
勿論、本発明の樹脂組成物には、安定剤として亜リン酸やリン酸等の無機リン酸、ベンゼンフォスホン酸、エチルフォスホン酸、オクチルアシッドフォスフェート、ジオクチルフォスフェート、ジブチル・ハイドロジェンフォスファイト、ペンタエリスリトールジホスファイト系化合物、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィンオキシド、トリブチルフォスフィンオキシド、トリフェニルフォスフェート、ジブチル・ブチルフォスフェート、テトラキス(2,4-ジーt-ブチルフェニル)-4,4-ビフェニレンフォスフォナイト、トリラウリルチオフォスファイト等の有機燐化合物、テレフタル酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、トランスアニット酸、β,β’-ジチオカルボン酸等の有機カルボン酸無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ジフエン酸、無水シクロペンタンカルボン酸、無水ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、スチレンと無水マレイン酸との低分子共重合体、低分子ポリプロピレンの無水マレイン酸変性物等の酸無水物、ペンタエリスリチルーテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフエニルアクリレート等のヒンダードフェノール化合物、2,2-メチレンビス((1,1,3,3-テトラメチルブチル)-4-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノール)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール誘導体、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペルジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン化合物、ポリマー型のヒンダードアミン化合物、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物等を添加することができる。
【0019】
これらの添加剤は勿論、2種類以上併用することがもできる。これらの添加剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とを必須成分とする樹脂成分100重量部に対して0〜5.0重量部,好ましくは0.01〜3.0重量部、特に好ましくは0.02〜2.0重量部である。この配合量が5.0重量部を越えると耐熱性や機械的性質が低下したり、該安定剤が成形体表面にブリードしたりする短所が現れる。
【0020】
上記の安定剤の中で、燐化合物、特に式3で表されるペンタエリスリト-ルジホスファイト系化合物を添加すると、滞留時の熱安定性を一層改良することができる。式3において、R1及びR2がアリール基叉はアラルキル基、特に2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル基や2,6-ジ-t-ブチルフェニル基であることが好ましい。
【0021】
【化3】

(式中のR1及びR2はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基を示し、同一でも異なっていてもよい。)
【0022】
本発明の樹脂組成物は、通常用いられる混練機、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、混練押出機、2軸押出機等により溶融混練することにより製造することができるが、好ましくはベント付きの2軸押出機をもちいる。また、溶融混練時の押出温度は特に制限がなく、原料樹脂成分のガラス転移点や融点に応じて樹脂温度を選定すべきである。特に好ましい樹脂温度は230℃から300℃の範囲である。
【0023】
本発明の樹脂組成物には、必要ならば、顔料、染料、滑剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、離型剤、可塑剤、シリコーン化合物、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、カップリング剤やガラス繊維、ウィスカー、カーボン繊維等の充填剤等を添加することができる。勿論、これらのものを添加する場合には、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び塩素含有量の少ない品種を選別して使用することが、望ましい。
【0024】
【実施例及び比較例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、本明細書記載の部はいずれも重量基準で示したものである。
また、実施例及び比較例における物性の測定は次の方法によって行った。
(1)耐熱性(ビカット軟化点):JIS K7206
(2)メルトフローインデックス(以下、MFRと略す):JIS K7210に準拠、温度250℃、荷重5kg
(3)滞留時の外観性:射出成形機住友ネスタール75Tを用い、成形温度を260℃に設定して、シリンダー内に樹脂を30分間滞留後、55×90×2mmの大きさの試験片を,1点ゲートで成形し、フラッシュ発生状況を目視で判定した。
○ … フラッシュなし
△ … 一部フラッシュ発生
× … プレート全面にフラッシュ発生
(4)滞留時のアイゾット衝撃強度:射出成形機東芝IS-55EPNを用い、成形温度を280℃に設定して、シリンダー内に樹脂を2分間滞留後、ダンベルバーを成形・切り出しを行い、アイゾット衝撃強度評価用試験片とした。(試験品の厚み1/8インチ,温度23℃の値)
(5)金型耐腐食特性:プラスチック成形金型用鋼として広く使用されている大同特殊鋼製PDS3の金属片(20×30×2mm)を上から吊るし、樹脂組成物に浸漬するように工夫したステンレス製オートクレーブに樹脂組成物20部を仕込み、窒素置換後、250℃ギアオーブンに4hr放置した。室温に冷却後、オートクレーブを開封し、取り出した金属片をテトラヒドロフラン溶媒中で浸漬・洗浄して、腐食の状況を目視で判定した。
○ … 金属片は試験前の状態と殆ど同等であった。
△ … 金属片は試験前と比較して、若干の変色が認められる。
× … 金属片は試験前と比較すると、変色が著しい。
【0025】
まず、以下の実施例及び比較例において使用した樹脂、燐化合物等の安定剤を示す。
(1)ABS樹脂の製造
ポリブタジエンラテックス80部(平均粒子径350mμ、固形分50重量%)にアクリロニトリル18部、スチレン42部をグラフト重合して得たABS樹脂ラテックスを塩化カルシウム水溶液で析出・水洗・濾過・乾燥して得られた粉末をABS-1とする。同じABS樹脂ラテックスを硫酸マグネシウム水溶液で析出・水洗・濾過・乾燥して得られた粉末をABS-2とする。同様に、硫酸と硫酸マグネシウムとのモル比が1:2,1:1,2:1の析出剤の水溶液で析出・水洗・濾過・乾燥して得られた粉末をそれぞれABS-3,ABS-4,ABS-5とする。また、ABS-5の製造において、析出物の水洗水の量を半減して得られた粉末をABS-6とする。塩酸と硫酸マグネシウムとのモル比が2:1の析出剤の水溶液で析出・水洗・濾過・乾燥して得られた粉末をABS-7とする。
【0026】
(2)ポリカーボネート樹脂
ビスフェノールAタイプのポリカーボネートである三菱瓦斯化学製ユーピロンE-2000を使用した。以下、PCと略す。
【0027】
(3)ポリブチレンテレフタレート樹脂
三菱化成製ノバドゥール5020を使用した。以下、PBTと略す
【0028】
(4)ポリエチレンテレフタレート樹脂
ユニチカ製NEH2050を使用した。以下、PETと略す。
【0029】
(5)スチレンー無水マレイン酸ーN-フェニルマレイミド共重合体(スチレン48.8%,無水マレイン酸 3.8%,N-フェニルマレイミド 47.4%)以下、ST-MIと略す。
【0030】
(6)燐化合物
ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト 以下、PEP-24Gと略す。
ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト 以下、PEP-36と略す。
トリラウリルトリチオホスファイト以下、TLTPと略す。
【0031】
(7)その他の安定剤
ペンタエリスリチルーテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)以下、Irganoxと略す。
【0032】
実施例1〜9,比較例1〜5
第1表、2表、3表に示した配合で、ヘンシェルミキサーに仕込、低速回転で3分間混合する。この混合物をベント付きの35φ2軸押出機で溶融混練し、物性評価用のペレットを製造し、前記した測定方法によって評価・測定した結果を第1表、2表、3表に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【発明の効果】
ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とを必須成分とする樹脂組成物において、ABS樹脂中の不純物量がアルカリ金属指数≦1かつアルカリ土類金属指数≦30であるABS樹脂を使用することにより、滞留時の外観性や耐衝撃性を改良することができた。一方、塩素含有量が500ppm以下であるABS樹脂を使用することにより、金型腐食特性を改良することがでできた。これらアルカリ金属指数≦1、アルカリ土類金属指数≦30かつ塩素含有量が500ppm以下であるABS樹脂を使用し、さらにペンタエリスリト-ルジホスファイト系化合物を樹脂成分100重量部に対して0.1〜3.0重量部添加する熱可塑性樹脂組成物とすることにより、滞留時の熱安定性と金型耐腐食特性を両立させることができた。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-08 
出願番号 特願平5-49793
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原田 隆興  
特許庁審判長 柿 崎 良 男
特許庁審判官 佐 野 整 博
舩 岡 嘉 彦
登録日 2001-11-30 
登録番号 特許第3255309号(P3255309)
権利者 電気化学工業株式会社
発明の名称 熱安定性と金型耐腐食特性に優れた樹脂組成物  
代理人 北原 康廣  
代理人 松井 光夫  
代理人 山本 宗雄  
代理人 三原 秀子  
代理人 柴田 康夫  

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