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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1094630
異議申立番号 異議2002-72644  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-10-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-29 
確定日 2004-02-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3278662号「オゾン発生装置用放電セル」の請求項1ないし18に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3278662号の訂正後の請求項1〜17に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許出願 平成12年 1月31日
設定登録 平成14年 2月22日
特許異議申立 平成14年10月29日
取消理由通知 平成15年 3月19日
訂正請求 平成15年 6月 3日
特許異議意見書 平成15年 6月 3日
審尋 平成15年 7月 8日
回答書 平成15年 9月16日
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち訂正事項a乃至fのとおりに訂正しようとするものである。
訂正事項a
特許明細書の【特許請求の範囲】を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】一対の第1電極と、一対の第1電極の間に、各第1電極との間に一対の放電空隙が形成されるように隙間をあけて配置された、ガラス板からなる一対の誘電体と、一対の誘電体の間に、各誘電体と接触して配置された第2電極とを備えており、第2電極を導電性の金属の薄板により形成して一対の誘電体の間に挟んで保持すると共に、一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し、且つ、一対の第1電極の間に空間を形成するべく、該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、前記薄板を挟んだ一対の誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置したことを特徴とするオゾン発生装置用放電セル。
【請求項2】前記薄板の厚みを200μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項3】前記ガラス板は、SiO:40〜70%、Al2O3:5〜30%、B2O3:0〜20%、MgO:0〜5%、CaO:0〜10%、SrO:0〜8%、BaO:0〜20%、ZnO:0〜1%から実質的になる成分構成である請求項1又は2に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項4】一対の誘電体を前記薄板より広くし、一対の誘電体の略周囲全体でその縁部より外側へ突出させたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項5】前記薄板の縁部より外側の少なくとも一部分で、一対の誘電体を接合したことを特徴とする請求項4に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項6】接合部を内側の薄板から離したことを特徴とする請求項5に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項7】前記薄板の縁部の一部を、一対の誘電体の間からその外へ帯状に引き出して端子部を形成したことを特徴とする請求項1、2,3,4,5又は6に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項8】前記端子部に放熱促進部材を取り付けたことを特徴とする請求項7に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項9】前記端子部の長手方向の一部に、その幅を小さくしてヒューズ部を形成したことを特徴とする請求項7又は8に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項10】前記薄板の両側の側縁部を、一対の誘電体の両側の側縁部より2〜70mm内側に侵入させたことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8又は9に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項11】前記薄板の前縁部及び後縁部を、一対の誘電体の前縁部及び後縁部より2〜70mm内側に侵入させたことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9又は10に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項12】前記薄板の前縁部及び後縁部を、一対の第1電極の前縁部及び後縁部より2〜20mm前方及び後方へ突出させたことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9、10又は11に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項13】前記薄板の両方の側方部分で、一対の誘電体を接合したことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10、11又は12に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項14】接合部を内側の薄板から1mm以上離したことを特徴とする請求項13に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項15】前記薄板の前縁部及び/又は後縁部を、横幅方向の一部で、一対の誘電体の間から前方及び/又は後方へ帯状に引き出して端子部を形成したことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13又は14に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項16】前記導電性の薄板は、圧延により製造され、圧延後の熱処理を受けない圧延ままの金属板であることを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13、14又は15に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項17】前記導電性の薄板はステンレス鋼板であることを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15又は16に記載のオゾン発生装置用放電セル。」
訂正事項b
特許明細書の段落【0011】を次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段】本発明のオゾン発生装置用放電セルは、一対の第1電極と、一対の第1電極の間に、各第1電極との間に一対の放電空隙が形成されるように隙間をあけて配置された、ガラス板からなる一対の誘電体と、一対の誘電体の間に、各誘電体と接触して配置された第2電極とを備えており、第2電極を導電性の金属の薄板により形成して一対の誘電体の間に挟んで保持すると共に、一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し、且つ、一対の第1電極の間に空間を形成するべく、該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、前記薄板を挟んだ一対の誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置したものである。」
訂正事項c
特許明細書の段落【0012】を次のとおりに訂正する。
「本発明のオゾン発生装置用放電セルでは、一対の誘電体の間に介在する第2電極が導電性の薄板によって形成されるため、誘電体ユニットの製作コストが非常に安価となる。また、その薄板はガラス板からなる剛性の高い一対の誘電体の間に保持されるため、高い平面度を有し、材質によっては(例えばステンレス鋼等では)自らも高い平面度を保有し、放電空隙での安定な放電を可能にする。更に、その縁部の一部分を一対の誘電体の間からその外へ帯状に引き出することにより、可撓性の扱い易い端子部が簡単に形成される。」
訂正事項d
特許明細書の段落【0014】を次のとおりに訂正する。
「金属薄板の材質としてはステンレス鋼、ニッケル合金、アルミ合金、鋼合金等が適当であり、なかでもステンレス鋼が耐食性や材料の入手性の点から好ましい。金属薄板は通常、圧延により製造され、その圧延材が平坦度や加工硬化による剛性を期待できる点から好ましく、なかでも圧延後の焼きなまし処理を省略された圧延ままの材料が、加工硬化による剛性、及びこれによる平坦度の維持をそのまま活用できる点から好ましい。特に好ましいのは圧延ままのステンレス鋼薄板である。」
訂正事項e
特許明細書の段落【0015】を次のとおりに訂正する。
「誘電体としては低コスト、耐電圧特性、寸法精度、表面が研磨工程なしで鏡面となることなどからガラス板を用い、特に下記の成分構成のガラス板が好ましいが、アルミナ等のセラミック板、サファイヤ等の結晶板、アルミナ等の溶射によるセラミックコート板、ほうろう板などの使用も可能である。」
訂正事項f
特許明細書の段落【0066】を次のとおりに訂正する。
「【発明の効果】以上に説明したとおり、本発明のオゾン発生装置用放電セルは、第2電極を導電性の金属薄板により形成してガラス板からなる一対の誘電体の間に挟んで保持したことにより、電極形成コストを著しく低減できるので、その製作コストを安価に抑制でき、しかも放電空隙での安定な放電を可能にする。一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除したことにより、誘電体ユニットの厚みを低減できる。一対の第1電極の間に空間を形成するべく、該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、前記薄板を挟んだ一対の誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置したことにより、放電空隙のギャップ量を安定的に微小化でき、且つ、スペーサが配置されている両側部に締め付けを行い、放電セル全体を均等に加圧する必要がないので、締め付け機構を簡略化できると共に、締め付けによる誘電体の破損を防止できる。」
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、(a-1)請求項1において「一対の誘電体」を「ガラス板からなる」ものに限定し、「導電性の薄板」を、「薄板」の材質として「金属」に限定して「導電性の金属の薄板」に訂正し、さらに「第2電極を・・・一対の誘電体の間に保持する」を保持の形態を限定し、「第2電極を・・・一対の誘電体の間に挟んで保持する」と訂正し、「薄板を挟んだ一対の誘電体」の構成に関し「一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し」と限定し、(a-2)請求項3を削除し、請求項3の削除に伴い以降の請求項の番号を繰り上げ、さらに従属する請求項の番号を変更しようとするものである。また、訂正事項b乃至fは訂正事項aと整合を図るとともに特許請求の範囲の記載と整合を図るものであるから、訂正事項a乃至fは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項a乃至fは、特許明細書の訂正前の段落【請求項3】、【0014】、【0025】、【0042】、【0061】及び図5(b)に記載されるのであるから、訂正事項a乃至fは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.取消理由について
3-1.本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の請求項1〜17に係る発明(以下「本件発明1〜17」という)は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】一対の第1電極と、一対の第1電極の間に、各第1電極との間に一対の放電空隙が形成されるように隙間をあけて配置された、ガラス板からなる一対の誘電体と、一対の誘電体の間に、各誘電体と接触して配置された第2電極とを備えており、第2電極を導電性の金属の薄板により形成して一対の誘電体の間に挟んで保持すると共に、一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し、且つ、一対の第1電極の間に空間を形成するべく、該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、前記薄板を挟んだ一対の誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置したことを特徴とするオゾン発生装置用放電セル。
【請求項2】前記薄板の厚みを200μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項3】前記ガラス板は、SiO:40〜70%、Al2O3:5〜30%、B2O3:0〜20%、MgO:0〜5%、CaO:0〜10%、SrO:0〜8%、BaO:0〜20%、ZnO:0〜1%から実質的になる成分構成である請求項1又は2に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項4】一対の誘電体を前記薄板より広くし、一対の誘電体の略周囲全体でその縁部より外側へ突出させたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項5】前記薄板の縁部より外側の少なくとも一部分で、一対の誘電体を接合したことを特徴とする請求項4に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項6】接合部を内側の薄板から離したことを特徴とする請求項5に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項7】前記薄板の縁部の一部を、一対の誘電体の間からその外へ帯状に引き出して端子部を形成したことを特徴とする請求項1、2,3,4,5又は6に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項8】前記端子部に放熱促進部材を取り付けたことを特徴とする請求項7に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項9】前記端子部の長手方向の一部に、その幅を小さくしてヒューズ部を形成したことを特徴とする請求項7又は8に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項10】前記薄板の両側の側縁部を、一対の誘電体の両側の側縁部より2〜70mm内側に侵入させたことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8又は9に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項11】前記薄板の前縁部及び後縁部を、一対の誘電体の前縁部及び後縁部より2〜70mm内側に侵入させたことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9又は10に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項12】前記薄板の前縁部及び後縁部を、一対の第1電極の前縁部及び後縁部より2〜20mm前方及び後方へ突出させたことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9、10又は11に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項13】前記薄板の両方の側方部分で、一対の誘電体を接合したことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10、11又は12に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項14】接合部を内側の薄板から1mm以上離したことを特徴とする請求項13に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項15】前記薄板の前縁部及び/又は後縁部を、横幅方向の一部で、一対の誘電体の間から前方及び/又は後方へ帯状に引き出して端子部を形成したことを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13又は14に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項16】前記導電性の薄板は、圧延により製造され、圧延後の熱処理を受けない圧延ままの金属板であることを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13、14又は15に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項17】前記導電性の薄板はステンレス鋼板であることを特徴とする請求項1、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15又は16に記載のオゾン発生装置用放電セル。
3-2.取消理由
本件訂正前の請求項1〜18に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3-3.刊行物に記載された事項
(1)刊行物1:特開平8-12304号公報(申立人が提出した甲第1号証)
(イ)「【実施例】実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。・・・図1において、11はヒューズ12を介して電源1に接続された給電板、31は給電板11に電気接触された導電層(電極)である。この導電層31は図47の従来例の高圧電極3に相当する。4は誘電体であり、アルミナセラミックス板により形成されている。このセラミックス板4と導電層31の大きさの関係を図2に示す。図2中、32はガス通路のためにセラミックス板4の中央部に設けられた穴(ガス供給機構)である。この導電層31はセラミックス板4の片面に厚み40ミクロンの銀メタライズ層で形成されている。〜セラミックス板4の全面に導電層31を形成せず、外周部と内周部に導電層31の形成されていない領域を設けている。沿面放電を防止するための導電層31と接地電極2との距離は、印加電圧にもよるが、通常十分な2mm以上に設定してある。」(段落【0146】)
(ロ)「61は金属製のスペーサであり、接地電極2とセラミックス板4との間に挿入されている。該スペーサ61を介してセラミックス板4と接地電極2により、放電の発生する放電空間5が形成され、・・・該放電空間5へのガス供給口(ガス供給機構)7から供給された酸素を含むガスの一部が放電空間5内でオゾン化される。用いるガスは〜有効に吸収される。」(段落【0147】)
(ハ)「図1に示す実施例1では、2組のオゾン発生ユニットが対向して設けられており、該2組のオゾン発生ユニットの間に、オゾン耐性のあるエチレンプロピレンゴム(以下「EPゴム」と略記する)で構成されたストレス緩衝板(弾性体)100を挿入して、上部の設置電極2を矢印Aの方向から図示しない加圧機構により押圧することにより装置を組み立てている。すなわち、・・・・防止される。」(段落【0148】)
(ニ)「実施例2.上記実施例1では〜図13に示すように、設置電極2に電源1から高電圧を印加し、導電層31をヒューズ12を介して接地して接地電極として、両電極間に高電圧電界を生じさせるようにしてもよい。」(段落【0163】)
(ホ)第1図には、上記(イ)〜(ハ)の技術事項が図示されている。(【図1】第24頁)
(2)刊行物2:特開昭55-3334号公報(申立人が提出した甲第2号証)
(イ)「第1図は、従来の平板型オゾン発生装置の要部を示す断面図で・・・(5)は主としてガラスからなる誘電体板、(6)は放電被膜または金属板によって構成された高圧電極で、2枚の誘電体板(5)(5)の間に挟み封入されており、電気的絶縁されている。・・・(12)は放電空隙維持用スペーサ、(13)はオゾン発生機装置の本体であるところの缶体である。」(第1頁左欄20行〜同頁右欄12行)
(3)刊行物3:特開昭55-162410号公報(申立人が提出した甲第3号証)
(イ)「一方、高圧電極となる金属箔14は誘電体15内に埋設されると共に、その一部より高圧電極の口出導体16が外部に引出され、さらに誘電体15の上下には、放電空隙17を保持するため、誘電体15と同一材質からなる帯状スペーサ18が設けられている。」(特許請求の範囲請求項1)
4.取消理由についての判断
4-1.本件発明1について
(1)一致点・相違点
刊行物1には、上記(1)(イ)〜(ホ)の記載事項から、2組のオゾン発生ユニットが対向された構成をみて本件発明1の記載振りに沿って表すと、「一対の接地電極の間に、一対の放電空間が形成されるように隙間をあけて配置されたセラミックス板により形成された一対の誘電体と、一対の誘電体の間に銀メタライズ層で形成される導電層と、一対の誘電体間にストレス緩衝板とを備え、接地電極と誘電体の間にはスペーサを挿入して放電空隙を形成しているオゾン発生装置」の発明(以下「引用1発明」という)が記載されている。
そこで、本件発明1と刊行1発明とを対比すると、両者は、「一対の第1電極と、一対の第1電極の間に、各第1電極との間に一対の放電空隙が形成されるように隙間をあけて配置された、一対の誘電体と、一対の誘電体の間に、各誘電体と接触して配置された第2電極とを備えており、一対の第1電極の間に空間を形成するべく、一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置した」点で一致するものの、次の点で相違している。
相違点a:本件発明1は「ガラス板からなる一対の誘電体」であるのに対し、刊行1発明では「セラミックス板により形成された一対の誘電体」である点。
相違点b:本件発明1は「第2電極を導電性の金属の薄板により形成して一対の誘電体の間に挟んで保持すると共に、一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し」ているのに対し、刊行1発明は「一対の誘電体の間に銀メタライズ層で形成される導電層と、一対の誘電体間にストレス緩衝板とを備え」である点。
相違点c:本件発明1は「該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し」ているのに対し、刊行1発明は「一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置」しているが、スペーサが両側に位置していない点。
(2)相違点の判断
上記相違点a、bについてみてみると、刊行物2には、刊行物2の上記(イ)からみて「ガラスからなる誘電体板の間に金属板によって構成された高圧電極が挟み封入されている」ことが記載されており、相違点aの構成が開示される。また相違点bの「金属の薄板」に関しても刊行物2に「金属の板」がどの程度の厚さを有するものか明確ではないが、「導電被膜」も開示されていることから、該「金属の板」には「金属の薄板」を含むとみれる。しかしながら、相違点bの他の構成、すなわち「第2電極を一対の誘電体の間に挟んで保持すると共に、一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し」た構成、特に「一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し」た構成については、刊行物2,3に記載されていない。そして、異議申立人が回答書で周知技術として例示した文献:特公昭62-7121号公報には、電極を挟んで2枚のセラミック板を密着させ一体成形することが記載されるものの、これは本件発明1のように誘電体がガラスではないことから、ガラス板からなる一対の誘電体の間に金属の薄板を挟時させるものにあって、上記構成が周知とまでは云えない。
そして、本件発明1は、上記相違点bの構成を採ることにより、放電空隙での安定な放電を維持しつつ、製作コストを安価に抑制できるなど本件特許明細書に記載の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、相違点cを検討するまでもなく、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。
4-2.本件発明2〜17について
本件発明2〜17は、本件発明1を引用するものであるから、4-1と同じ理由により、本件発明2〜17は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
5.結論
以上のとおりであるから、取消理由及び異議申立の証拠によっては、本件訂正後の請求項1〜17に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件訂正後の請求項1〜17に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オゾン発生装置用放電セル
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の第1電極と、一対の第1電極の間に、各第1電極との間に一対の放電空隙が形成されるように隙間をあけて配置された、ガラス板からなる一対の誘電体と、一対の誘電体の間に、各誘電体と接触して配置された第2電極とを備えており、第2電極を導電性の金属の薄板により形成して一対の誘電体の間に挟んで保持すると共に、一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し、且つ、一対の第1電極の間に空間を形成するべく、該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、前記薄板を挟んだ一対の誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置したことを特徴とするオゾン発生装置用放電セル。
【請求項2】 前記薄板の厚みを200μm以下としたことを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生用装置放電セル。
【請求項3】 前記ガラス板は、SiO:40〜70%,Al2O3:5〜30%,B2O3:0〜20%,MgO:0〜5%,CaO:0〜10%,SrO:0〜8%,BaO:0〜20%,ZnO:0〜1%から実質的になる成分構成である請求項1又は2に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項4】 一対の誘電体を前記薄板より広くし、一対の誘電体の略周囲全体でその縁部を薄板の縁部より外側へ突出させたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のオゾン発生用装置放電セル。
【請求項5】 前記薄板の縁部より外側の少なくとも一部分で、一対の誘電体を接合したことを特徴とする請求項4に記載のオゾン発生用装置放電セル。
【請求項6】 接合部を内側の薄板から離したことを特徴とする請求項5に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項7】 前記薄板の縁部の部を、一対の誘電体の間からその外へ帯状に引き出して端子部を形成したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項8】 前記端子部に放熱促進部材を取り付けたことを特徴とする請求項7に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項9】 前記端子部の長手方向の一部に、その幅を小さくしてヒューズ部を形成したことを特徴とする請求項7又は8に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項10】 前記薄板の両側の側縁部を、一対の誘電体の両側の側縁部より2〜70mm内側に侵入させたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項11】 前記薄板の前縁部及び後縁部を、一対の誘電体の前縁部及び後縁部より2〜70mm内側に侵入させたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項12】 前記薄板の前縁部及び後縁部を、一対の第1電極の前縁部及び後縁部より2〜20mm前方及び後方へ突出させたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項13】 前記薄板の両方の側方部分で、一対の誘電体を接合したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12に記載のオゾン発生用装置放電セル。
【請求項14】 接合部を内側の薄板から1mm以上離したことを特徴とする請求項13に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項15】 前記薄板の前縁部及び/又は後縁部を、横幅方向の一部で、一対の誘電体の間から前方及び/又は後方へ帯状に引き出して端子部を形成したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項16】 前記導電性の薄板は、圧延により製造され、圧延後の熱処理を受けない圧延ままの金属板であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【請求項17】 前記導電性の薄板はステンレス鋼板であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16に記載のオゾン発生装置用放電セル。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレート型オゾン発生装置に使用される放電セルに関する。
【0002】
【従来の技術】
プレート型オゾン発生装置に使用される放電セルの一つとして図6に示すものが知られている。
【0003】
図6に示された放電セルは、ヒートシンクを兼ねる一対の低圧電極1,1と、一対の低圧電極1,1の間に配置される誘電体ユニット2と、誘電体ユニット2の両面側に放電空隙3を形成するためのスペーサ4,4・・とを備えている。誘電体ユニット2は、誘電体としての2枚のガラス板2a,2aの間に高圧電極2bを介在させた3層構造である。スペーサ4,4・・は金属、セラミック、ガラス或いは樹脂等からなり、放電空隙3でのガス流通方向に直角な方向に所定の間隔で配列されている。
【0004】
オゾンを発生させるときは、誘電体ユニット2の両面側に形成された放電空隙3,3に酸素ガス又は酸素ガスを含む混合ガスからなる原料ガスを流通させながら、誘電体ユニット2内の高圧電極2bに所定の高電圧を印加する。高電圧の印加により放電空隙3,3では無声放電が発生し、原料ガス中の酸素ガスがオゾン化される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなオゾン発生装置用放電セルでは、低圧電極1,1及び誘電体ユニット2を1モジュールとし、隣接するモジュール間で低圧電極1,1を共用する形で、そのモジュールが厚み方向に積層される。
【0006】
モジュールの積層数は例えば30と多い。このため、各モジュールの製作コストを低減することがゾン発生装置用放電セルの価格低減に大きく影響する。誘電体ユニット2において2枚のガラス板2a,2aの間に介在する高圧電極2bについては、薄型化により冷却が不要になることが知られており、この観点から、ガラス板2a,2aの両方の表面に導電性材料をメタライズやメッキ、溶射等で一体的に被覆することにより形成されていた。
【0007】
これにより、ガラス板2aと高圧電極2bの間から空隙が排除され、放電空隙3ではオゾンの発生に必要な放電が安定して生じる。しかし、その一方では、電極形成のための被覆コストが嵩み、各モジュールの製作コストを高める大きな要因となっていた。また、被覆の過程でガラス板2aが加熱されることによる機械的、物性的な二次弊害や端子部の引き出しが困難になることも問題であった。
【0008】
また、この高圧電極2bは、従来はガラス板2a,2aの実質全面に被覆形成されており、その前後方向の奥行きは、ガラス板2a,2aの奥行きと共に、低圧電極1,1の奥行きと実質同一であった。しかし、最近の傾向として放電セルの小型化等のために、ガラス板2aの厚みが薄くされたり、放電セルの構成部材間の距離が短くされ、高圧電極2bと低圧電極1,1との間に十分な絶縁距離が確保できなくなった。このため、高圧電極2bと低圧電極1,1との間で異常放電が多発し、放電セルの信頼性の低下が問題になってきた。
【0009】
本発明の第1の目的は、モジュールの製作コスト、特に電極形成コストを低減できる経済的なオゾン発生装置用放電セルを提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、異常放電を起こさない信頼性の高いオゾン発生装置用放電セルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のオゾン発生装置用放電セルは、一対の第1電極と、一対の第1電極の間に、各第1電極との間に一対の放電空隙が形成されるように隙間をあけて配置された、ガラス板からなる一対の誘電体と、一対の誘電体の間に、各誘電体と接触して配置された第2電極とを備えており、第2電極を導電性の金属の薄板により形成して一対の誘電体の間に挟んで保持すると共に、一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除し、且つ、一対の第1電極の間に空間を形成するべく、該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、前記薄板を挟んだ一対の誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置したものである。
【0012】
本発明のオゾン発生装置用放電セルでは、一対の誘電体の間に介在する第2電極が導電性の金属薄板によって形成されるため、誘電体ユニットの製作コストが非常に安価となる。また、その薄板はガラス板からなる剛性の高い一対の誘電体の間に保持されるため、高い平面度を有し、材質によっては(例えばステンレス鋼等では)自らも高い平面度を保有し、放電空隙での安定な放電を可能にする。更に、その縁部の一部分を一対の誘電体の間からその外へ帯状に引き出することにより、可撓性の扱い易い端子部が簡単に形成される。
【0013】
薄板の厚みは200μm以下が好ましい。200μmを超えると、薄板の剛性が高くなり、組立作業等で誘電体に割れなどの機械的な損傷を発生させることがある。その下限については組立時の作業性の低下などの点から10μm以上が好ましい。
【0014】
金属薄板の材質としてはステンレス鋼、ニッケル合金、アルミ合金、鋼合金等が適当であり、なかでもステンレス鋼が耐食性や材料の入手性の点から好ましい。金属薄板は通常、圧延により製造され、その圧延材が平坦度や加工硬化による剛性を期待できる点から好ましく、なかでも圧延後の焼なまし処理を省略された圧延ままの材料が、加工硬化による剛性、及びこれによる平坦度の維持をそのまま活用できる点から好ましい。特に好ましいのは圧延ままのステンレス鋼薄板である。
【0015】
誘電体としては低コスト、耐電圧特性、寸法精度、表面が研磨工程なしで鏡面となることなどからガラス板を用い、特に下記の成分構成のガラス板が好ましいが、アルミナ等のセラミック板、サファイア等の結晶板、アルミナ等の溶射によるセラミックコート板、ほうろう板などの使用も可能である。
【0016】
ガラス板の好ましい成分構成は、SiO:40〜70%,Al2O3:5〜30%,B2O3:0〜20%,MgO:0〜5%,CaO:0〜10%,SrO:0〜8%,BaO:0〜20%,ZnO:0〜1%から実質的になる。この成分構成のガラス板は液晶用ガラス基板に主に使用されており、平坦度が高く、気泡などの内部欠陥が少ないという、オゾン発生装置用誘電体として優れた利点があり、入手も容易である。この成分構成のガラス板は、放電セルの構造に関係なく有効である。
【0017】
ガラス板の厚みは0.3〜1.5mmが好ましい。ガラス板が厚いとガラス板での電圧降下が大きくなり、放電セルへの供給電圧が高くなる。薄い場合は組立時の作業性が低下したり、機械強度不足による破損等が起こる。
【0018】
一対の誘電体は、第2電極を介して接合することができる。この接合により、誘電体と電極を完全に密着でき、誘電体と電極の間の隙間で発生する不要な放電を防止できる。接合法としては、ポリイミド、PFA、FEPによる熱溶着やシリコン樹脂、エポキシ樹脂による接着が好ましく、オゾン濃度が高い場合は、ポリイミド、PFA、FEPによる熱溶着が好ましい。
【0019】
薄板の縁部の一部を一対の誘電体の間からその外へ帯状に引き出して形成した端子部は、形成が容易であるだけでなく、板厚方向での柔軟性に富み、板圧方向にモジュールを積層する場合に、各モジュール間で端子部を簡単に重ね合わせることができる。また、端子部の長手方向の一部で、その幅を小さくすることにより、簡単にヒューズ部を一体形成できる。
【0020】
端子部の横幅は、薄板の横幅の範囲内で適宜選択すればよい。
【0021】
なお、この端子部は薄板であり、熱拡散が小さいため、万一、端子部に異常放電が発生した場合にはその熱で溶断が発生するおそれがある。このため、端子部には放熱促進部材を取り付けるのが良い。
【0022】
また、本発明のオゾン発生装置用放電セルでは、一対の誘電体を第2電極より広くし、一対の誘電体の略周囲全体でその縁部を第2電極の縁部より外側へ突出させることができる。
【0023】
このオゾン発生装置用放電セルでは、一対の誘電体が第2電極より広く、一対の誘電体の略周囲全体でその縁部が第2電極の縁部より外側へ突出するため、第2電極の縁部を起点とする異常放電が効果的に抑制される。
【0024】
誘電体の縁部の突出量は2〜70mmが好ましい。この突出量が2mm未満では、異常放電を抑制する効果が小さい。70mmを超えると誘電体が大きくなり、放電セルのサイズアップとコストアップが発生する。特に好ましい突出量は5〜50mmである。
【0025】
一対の誘電体は、第2電極を挟んで接合することができる。その接合方法としては、例えばポリイミド、PFA、FEPによる熱溶着や、シリコン樹脂、エポキシ樹脂による接着を用いることができ、オゾン濃度が高い場合は、ポリイミド、PFA、FEPによる熱溶着が好ましいが、誘電体のストレス軽減のために、第2電極の縁部より外側の少なくとも一部分で、一対の誘電体を接合するのが好ましい。この場合は、誘電体と膨張係数が近いガラス封着材などの無機系接合材の使用が可能となる。
【0026】
第2電極の縁部より外側で一対の誘電体を接合する場合、その接合部を内側の第2電極から離すのが好ましい。これにより、第2電極の周囲における絶縁性が向上し、異常放電が抑制される。ここにおける離間距離は1〜10mmが好ましい。1mm未満の場合は、絶縁性の向上効果が小さく、また、電極と接合部の干渉の問題が発生する。10mmを超えると、誘電体に割れが発生することがある。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係るプレート型オゾン発生装置用放電セルの正面図、図2は同放電セルに使用されているのセルモジュールの分解斜視図、図3は同セルモジュールに使用されている第1電極の分解斜視図、図4は同セルモジュールに使用されている誘電体ユニットの斜視図、図5は同誘電体ユニットの縦断正面図である。
【0028】
本実施形態に係る放電セルは、図1に示すように、平板状の剛性体からなる複数の第1電極10,10・・を、両側一対の剛性体スペーサ20,20を挟んで板厚方向に重ね合わせることにより、セルモジュールの積層体を構成している。セルモジュールの積層体は、図示されない上下一対のエンドプレート間に、両側部を積層方向に貫通する複数本のボルトにより固定されている。この積層体では、上下のセルモジュールは第1電極10を共用する。
【0029】
各セルモジュールは、図2に示すように、上下一対の第1電極10,10と、第1電極10,10間に挟まれた両側一対の剛性体スペーサ20,20と、剛性体スペーサ20,20の内側に位置して第1電極10,10間に配置された誘電体ユニット30と、誘電体ユニット30の両面側に放電空隙50,50を形成するために第1電極10,10との間に設けられた複数の弾性体スペーサ40,40・・とを備えている。
【0030】
なお、図面はいずれも上下方向の寸法を誇張したものになっており、実際の厚さは例えば第1電極10で3mm以下、剛性体スペーサ20で3mm以下というように非常に薄く設計されている。
【0031】
上下一対の第1電極10,10は、ヒートシンクを兼ねる低圧電極である。各第1電極10は、ステンレス鋼板等からなる2枚の導電板15,15を接合して板間に冷媒流通路を形成した薄板状の導電性剛体である。
【0032】
第1電極10の方の側部には、冷媒としての冷却水を冷媒流通路に導入するための冷媒導入孔11と、その冷却水を上記流通路から取り出すための冷媒導出孔12とが、2枚の導電板15,15を板厚方向に貫通して設けられている。また、当該セルモジュールで発生したオゾンガスを取り出すために、第1電極10には、両側一対のガス導出孔13,13と、ガス導出孔13,13を繋ぐスリット状のガス導出路14とが、2枚の導電板15,15を板厚方向に貫通して設けられている。第1電極10の両側部に設けられている複数の小さな丸孔は、ボルトの通し孔である。
【0033】
第1電極10を構成する2枚の導電板15,15の両方の対向面には、図3に示すように、ガス導出孔13,13及びガス導出路14を包囲するようにU字状の浅く広い溝が形成されている。両方の対向面に形成されたこの溝は合体して、導電板15,15間に冷媒流通路16を形成する。浅く広いこの溝は、例えばエッチング等により簡単に形成される。
【0034】
冷媒流通路16の一端部は冷媒導入孔11に接続され、他端部は冷媒導出孔12に接続されている。冷媒流通路16には、流通方向に延びる複数のリブ17,17・・が、流通方向に直角な方向に所定の間隔で設けられている。リブ17,17・・は冷却水の均一な流れと、第1電極10の剛性確保に寄与する。
【0035】
両側一対の剛性体スペーサ20,20は、ステンレス鋼板等の導電性板材からなる薄板状の導電性剛体で、第1電極10,10間の両側部に介在することにより、この間に、スペーサ厚に等しいギャップ量G′の空間を形成する。また、第1電極10,10の電気的な接続部材として機能する。
【0036】
一方の剛性体スペーサ20には、第1電極10の冷媒導入孔11及び冷媒導出孔12にそれぞれ連通する冷媒導入孔21及び冷媒導出孔22が、板厚方向に貫通して設けられている。両方の剛性体スペーサ20,20の各内側縁部には、第1電極10のガス導出孔13に連通する切り込み状のガス導出孔23が、板厚方向に貫通して設けられている。またボルトの通し孔も第1電極10と同様に設けられている。
【0037】
上下一対の第1電極10,10と両側一対の剛性体スペーサ20,20で囲まれた空間に配置される誘電体ユニット30は、図4に示すように、誘電体としての上下一対のガラス板31,31の間に第2電極32を挟んだサンドイッチ構造の薄板状剛性体である。誘電体ユニット30の厚みTは、上記空間のギャップ量G′より僅かに小さく、より具体的には放電空隙50,50の各ギャップ量をGとして、G′-2Gとされる。
【0038】
第2電極32は高圧電極で、ステンレス鋼板等の導電性薄板からなり、その厚みは200μm以下が適当である。第2電極32の横幅W2は、ガラス板31,31の横幅W1より狭く設定されており、これにより、第2電極32の両側の縁部は、ガラス板31,31の両側の縁部から内側へΔW,ΔWずつ入り込むことになる。ΔWは2〜70mmが適当である。第2電極32の奥行きL2は、ガラス板31,31の奥行きL1より短く設定されており、これにより、第2電極32の前後の縁部は、ガラス板31,31の前後の縁部から内側へΔL,ΔLずつ入り込むことになる。ΔLも2〜70mmが適当である。
【0039】
第2電極32の奥行きL2は又、上下一対の第1電極10,10の奥行きより大きく設定されており、これにより、第2電極32の前後の縁部は、ガラス板31,31の前後の縁部から前後へ突出することになる。この突出量は2〜20mmが適当である。
【0040】
つまり、セルモジュールにおける各部材の奥行きは、第1電極10,10、第2電極32、ガラス板31,31の順に大きくなっており、剛性体スペーサ20,20の奥行きは第1電極10,10の奥行きと同じである。
【0041】
第2電極32の前縁部の一部分は、端子部32′としてガラス板31,31の間からその前方へ帯状に突出している。端子部32′には、アルミ箔を巻いて形成した放熱促進部34が取り付けられると共に、放熱促進部34の前方に位置しヒューズ部32″が一体的に形成されている。ヒューズ部32″は、端子部32′の長手方向の一部分でその幅を小さくすることにより形成されている。
【0042】
ガラス板31,31は、図5(a)に示すように、第2電極32及びその両側に配置された絶縁性スペーサ体33,33を挟んで、上下の接着層35,35により接合一体化されている。絶縁性スペーサ体33,33は、第2電極32と同じ厚みである。接着層35,35は、耐オゾン性を有する例えばポリイミド、PFA、FEP等の熱溶着層である。つまり、ガラス板31,31は、ポリイミド、PFA、FEP等の耐オゾン樹脂を用いた熱溶着により、内側の第2電極32及び絶縁性スペーサ33,33と一体化されている。
【0043】
誘電体ユニット30の両面側に放電空隙50,50を形成するために第1電極10,10との間に設けられる弾性体スペーサ40,40・・は、耐オゾン性及び弾力性を有する、断面が円形の細い樹脂線材であり、放電空隙50の幅方向(ガス流通方向に直角な方向)に所定の間隔で配置されている。各弾性体スペーサ40の厚み(線材の外径D)は、圧縮のない状態で放電空隙50,50の各ギャップ量Gより5〜50%程度大きく設定されている。
【0044】
この設定により、弾性体スペーサ40,40・・は第1電極10と誘電体ユニット30により上下から圧縮され、この圧縮により、誘電体ユニット30は上下から均等な圧力で弾性的に押圧され、上記空間内の上下方向中央部に保持される。その結果、誘電体ユニット30の両面側には、均等なギャップ量Gの放電空隙50,50が形成される。
【0045】
なお、各放電空隙50の両側部には、弾性体スペーサ及びシール部材を兼ねて弾性体からなるテープ状の絶縁部材41,41が設けられている。
【0046】
次に、本実施形態に係る放電セルの組立方法、使用方法及び機能について説明する。
【0047】
放電セルの組立では、図示されない上下のエンドプレート間に複数枚の第1電極10,10・・が、各間に剛性体スペーサ20,20、誘電体ユニット30及び弾性体スペーサ40,40・・を挟んで重ね合わされ、両側部が図示されない複数本のボルトにより重合方向に締め付けられる。
【0048】
これにより、各セルモジュールでは、誘電体ユニット30の両面側に放電空隙50,50が形成される。ここで、上下の第1電極10,10、両側の剛性体スペーサ20,20及び誘電体ユニット30は圧縮を生じない剛性体であり、一方、弾性体スペーサ40,40・・は圧縮を生じるので、各放電空隙50のギャップ量Gは(G′-T)/2の一定値となる。従って、0.2mm以下というような微小のギャップ量Gも安定的に実現される。
【0049】
また、締め付けは、剛性体スペーサ20,20が配置されている両側部に行われ、放電セル全体を均等に加圧する必要がないので、締め付け機構が簡略化される。更に、締め付けによる弾性体スペーサ40,40・・の破損も誘電体ユニット30内のガラス板31,31の破損も生じない。
【0050】
組立を終えた放電セルは、各セルモジュールの放電空隙50,50内に前後から原料ガスを導入するために、図示されないタンク内に収容される。
【0051】
その放電セルでは、第1電極10の冷媒導入孔11と剛性体スペーサ20の冷媒導入孔21が合体することにより、積層方向に連続する冷媒導入路が形成されている。また、第1電極10の冷媒導出孔12と剛性体スペーサ20の冷媒導出孔22が合体することにより、積層方向に連続する冷媒導出路が形成されている。更に、第1電極10のガス導出孔13,13と剛性体20,20のガス導出孔23,23が合体することにより、積層方向に連続する両側一対のガス導出路が形成されている。
【0052】
これらの冷媒導入路、冷媒導出路及びガス導出路は、上段のエンドプレートに設けられた開口部及び各開口部に接続された管によりタンク外に連通している。一方、下段のエンドプレートは、これらの路を閉じる蓋板として機能する。
【0053】
オゾンを発生させるときは、放電セルを収容するタンク内に原料ガスを供給する。また、冷媒導入路に冷却水を供給する。この状態で、各セルモジュールの誘電体ユニット30に設けられた第2電極32に高電圧を印加し、放電空隙50,50で無声放電を発生させる。
【0054】
タンク内に供給された原料ガスは、各セルモジュール内の上下の放電空隙50,50に前後から流入し、前後方向の中央部に向かって流れる過程で放電に晒されてオゾンガスとなる。放電空隙50,50で発生したオゾンガスは、上下の第1電極10,10に設けられたガス導出路14,14を通って両側のガス導出孔13,13に至り、放電セルの両側部に形成された両側一対のガス導出路を通って放電セルの上方に取り出され、更にタンク外に取り出される。
【0055】
冷媒導入路に供給された冷却水は、各セルモジュールの上下の第1電極10,10に設けられた冷媒導入孔11,11から冷媒流通路16に入り、放電空隙50,50を低圧電極側から水冷する。第1電極10,10の冷媒導出孔12,12から出た冷却水は、放電セルの一方の側部に形成された冷媒導出路を通って放電セルの上方に取り出され、更にタンク外に取り出される。
【0056】
ここで、各セルモジュール内の誘電体ユニット30は、その製作で第2電極32の形成に溶射やメッキを必要とせず、ガラス板31,31の接合も熱溶着により簡単に行い得るため、製作が簡単で、放電セルのコスト低減に寄与する。
【0057】
各誘電体ユニット30では、第2電極32の前後の縁部が、上下の第1電極10,10の前後の縁部より前後に突出している。このため、それぞれの縁部間における電界集中が緩和され、誘電体の絶縁破壊が防止できる。また、上下のガラス板31,31の前後の縁部は、第2電極32の前後の縁部よりも更に前後に突出している。このため、第1電極10,10と第2電極32の間で絶縁破壊が生じない距離を確保できる。
【0058】
誘電体ユニット30の横幅方向では、第2電極32と両側の剛性体スペーサ20,20との間に隙間が確保され、各隙間に絶縁性スペーサ33,33が配置されている。このため、第2電極32と第1電極10,10或いは剛性体スペーサ20,20との間で電気絶縁性が得られる。
【0059】
第2電極32の端子部32′は、その板厚方向、即ちモジュールの積層方向で自由に曲がる。このため、積層された複数のモジュール間で各端子部32′を簡単に重ね合わせ結合することができる。
【0060】
各端子部32′では、放熱促進部34が取り付けられているので、熱拡散性が良くなり、端子部32′への異常放電により発生する熱での溶断を防止できる。また、ヒューズ部32″が一体的に形成されているので、ヒューズ管が不要になる。
【0061】
ガラス板31,31の接合については、図5(b)に示すように、ガラス板31,31を第2電極32の両側のみで熱溶着により部分的に接合することができる。この場合、接合部である接着層35,35が第2電極32の側方に排除されるため、誘電体ユニット30の厚みが低減すると共に、両側の絶縁性スペーサとして機能する。両側の接着層35,35についは、図5(c)に示すように、第2電極32と接着層35,35の間に隙間36,36を設けるのがよい。これにより、絶縁された空間が接着層35,35との間にできるため、接着層35,35内に発生するツリー放電による絶縁破壊を防止できる。
【0062】
また、放電空隙50でのガス流れついては、従来は、このガス流れが、放電空隙50の前端から後端に向かう一方通行であった。この場合、オゾンガスを取り出すためには、放電セルの積層方向に直角な後面にヘッダを取り付ける必要がある。しかし、放電セルの積層方向に直角な後面は、積層された各部材の端面が現れるため平坦ではない。このため、ヘッダと後面間のシールが難しくなる。
【0063】
これに対し、本実施形態に係る放電セルでは、第1電極10の放電空隙50に接する部分に、放電空隙50でのガス流通方向中央部に位置してガス導出路14が設けられ、第1電極10の剛性体スペーサ20,20に接する部分に、ガス導出路14に繋がるガス導出孔13,13が設けられいる。また、剛性体スペーサ20,20には、ガス導出孔13,13に対応してガス導出孔23,23が設けられている。
【0064】
その結果、原料ガスは放電空隙50の一端と他端の両方から流入する。両方の流入ガスは放電空隙50でオゾン化され、放電空隙50の中央部で第1電極10のガス導出路14に入り、両側のガス導出孔13,13から積層方向に流れて放電セルの外に取り出される。このため、オゾンガスの取り出しは、第1電極10の表面、或いはエンドプレートの表面から2本の管により行われる。これらの表面は上記端面と異なり平坦で、シールが容易であり、ヘッダも不要になる。また、冷却水の流通方向とオゾンガスの取り出し方向が同じになるため、配管構造が簡単になり、装置の小型化が図られる。
【0065】
このガス取り出し構造は、一対の第1電極間にスペーサで空間を形成し、この空間に誘電体ユニットを配置してその両面側に放電空隙を形成する構造であれば、本発明の放電セル以外の放電セルにも適用可能である。
【0066】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明のオゾン発生装置用放電セルは、第2電極を導電性の金属薄板により形成してガラス板からなる一対の誘電体の間に挟んで保持したことにより、電極形成コストを著しく低減できるので、その製作コストを安価に抑制でき、しかも放電空隙での安定な放電を可能にする。一対の誘電体を第2電極の両側のみで部分的に接合して、接合部を第2電極の側方に排除したことにより、誘電体ユニットの厚みを低減できる。一対の第1電極の間に空間を形成するべく、該空間の両側に位置して一対の第1電極の間に一対のスペーサを配置し、前記薄板を挟んだ一対の誘電体を、一対の第1電極との間に放電空隙が形成されるように前記空間に配置したことにより、放電空隙のギャップ量を安定的に微小化でき、且つ、スペーサが配置されている両側部に締め付けを行い、放電セル全体を均等に加圧する必要がないので、締め付け機構を簡略化できると共に、締め付けによる誘電体の破損を防止できる。
【0067】
また、一対の誘電体を第2電極より広くし、一対の誘電体の略周囲全体でその縁部を第2電極の縁部より外側へ突出させたことにより、第1電極或いは第1電極と同電位の部材への電気絶縁距離を十分に確保できるので、異常放電等が発生しない高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施形態に係るプレート型オゾン発生装置用放電セルの正面図である。
【図2】
同放電セルに使用されたセルモジュールの分解斜視図である。
【図3】
同セルモジュールに使用された第1電極の分解斜視図である。
【図4】
同セルモジュールに使用された誘電体ユニットの斜視図である。
【図5】
同誘電体ユニットの縦断正面図である。
【図6】
従来のプレート型オゾン発生装置用放電セルの模式構成図である。
【符号の説明】
10 第1電極(低圧電極)
11 冷媒導入孔
12 冷媒導出孔
13 ガス導出孔
14 ガス導出路
15 導電板
16 冷媒流通路
17 リブ
20 剛性体スペーサ
21 冷媒導入孔
22 冷媒導出孔
30 誘電体ユニット
31 ガラス板(誘電体)
32 第2電極(高圧電極)
32′ 端子部
32″ ヒューズ部
33 絶縁性スペーサ
34 接着層(接合部)
35 隙間
40 弾性体スペーサ
50 放電空隙
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-14 
出願番号 特願2000-22707(P2000-22707)
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安齋 美佐子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 米田 健志
岡田 和加子
登録日 2002-02-22 
登録番号 特許第3278662号(P3278662)
権利者 住友精密工業株式会社
発明の名称 オゾン発生装置用放電セル  
代理人 宮田 金雄  
代理人 吉田 正二  
代理人 吉田 正二  
代理人 生形 元重  
代理人 生形 元重  
代理人 高瀬 彌平  

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