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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1094662
異議申立番号 異議2002-71965  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-06-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-09 
確定日 2004-01-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3256169号「純水製造装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3256169号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3256169号の請求項1ないし2に係る発明についての出願は、平成9年10月8日に特許出願され、平成13年11月30日にその発明について特許権の設定登録がなされ(公報発行平成14年2月12日)、その後、平成14年8月9日に日本練水株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成15年1月10日(発送日)に取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年3月7日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a: 本件特許明細書の特許請求の範囲【請求項1】の「(e)該連結手段によって選択的に連結され、純水中にリークしたカチオンを除去するカチオンポリシャ」を「(e)該連結手段によって選択的に連結され、純水中にリークしたアミン臭及びカチオンを除去するカチオンポリシャ」と訂正する。
イ.訂正事項b:本件特許明細書の段落【0012】の「純水中にリークしたカチオンを除去するカチオンポリシャ」を「純水中にリークしたカチオン及びアミン臭を除去するカチオンポリシャ」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正施工aは、カチオンポリシャの除去目的物を、カチオンだけでなくカチオン及びアミン臭に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、訂正事項bは、上記訂正事項aと発明の詳細な説明の記載とを整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、本件発明におけるカチオンポリシャが、カチオンだけでなくカチオン及びアミン臭を除去することは、本件特許明細書の段落【0021】に記載されているから、上記訂正事項a及びbは、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1.明細書記載不備について
本件特許明細書の段落【0019】には、「前記ラインL13に検出手段としてのカチオンセンサ(伝導度計)32が配設され、該カチオンセンサ32によって純水中のカチオンの濃度が検出されるようになっている。」との記載があり、【図1】には前記記載に則した位置にカチオンセンサ33が図示されているが、これらの構成は、単に本件発明の一実施態様にすぎない。
一方、本件特許明細書の段落【0021】の「このように、アニオン塔14から排出された純水中のカチオンの濃度が検出され、カチオンの濃度が設定値以上になると、前記純水をカチオンポリッシャ34に供給し、該カチオンポリッシャ34においてカチオンを除去することができるだけでなく、純水中に溶出したアミンを同時に除去することもできるので、水質を良くすることができる。」及び段落【0024】の「ところで、カチオンセンサ32によって検出された純水中のカチオンの濃度が設定値より低い場合は、ラインL11とラインL13とが遮断され、カチオンポリッシャ34を非作動状態に置くことができる。したがって、カチオンポリッシャ34に充填されるカチオン交換樹脂35の量を少なくすることができるので、純水製造装置を小型化することができる。その結果、純水製造装置の設置面積を小さくすることができ、コストを低くすることができる。」という記載に基づけば、当業者であれば、検出すべきカチオン濃度がアニオン塔14から排出される純水中のものであることは容易に理解することができ、係る記載に基づいて本件発明を実施することは容易である。
したがって、本件明細書は、特許法第36条各項に規定される要件を満たしている。

3-2.特許法第29条第2項違反について
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし2に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明2」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 (a)カチオン交換樹脂が充填され、被処理水中のカチオンを除去するカチオン塔と、(b)アニオン交換樹脂が充填され、被処理水中のアニオンを除去するアニオン塔と、(c)前記カチオン及びアニオンが除去された後の純水が排出されるラインと、(d)該ラインに接続された連結手段と、(e)該連結手段によって選択的に連結され、純水中にリークしたアミン臭及びカチオンを除去するカチオンポリッシャとを有することを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】 (a)前記純水中のカチオンの濃度を検出する検出手段を有するとともに、(b)前記連結手段は、カチオンの濃度が設定値以上である場合に、前記カチオンポリッシャを連結する請求項1に記載の純水製造装置。」
(2)引用刊行物に記載された発明
当審が平成15年1月10日(発送日)に通知した引用文献1(特開昭64-38192号公報:甲第3号証)には、「流入管と流出管とを有するとともに、H形陽イオン交換樹脂を充填した樹脂塔の前記流入管に、純水製造装置より処理された臭気成分を含む純水を流入し、前記陽イオン交換樹脂に当該純水を通水することにより脱臭された純水を前記流入管より得ることを特徴とする純水中の臭気成分の除去装置。」(特許請求の範囲)、「第1図は本発明の実施態様の一例のフローを示す説明図であって、K塔、脱炭酸塔2、脱炭酸水ポンプ3,A塔4とからなる2床3塔式純水製造装置5の後段に、本発明の臭気成分の除去装置6を設置したものである。」(第2頁右上欄14〜18行)との記載があり、臭気成分については「純水中に含まれる臭気成分、いわゆる樹脂臭はA塔に充填される陰イオン交換樹脂から流出するアミンに起因するものが大部分であり」(第2頁右下欄7〜9行)と記載され、本件発明の従来技術に相当する純水製造装置が記載されている。
(3)本件発明1と引用文献記載の発明との対比・判断
引用文献1には、臭気成分除去装置がアミン臭を除去することしか記載がないが、純水製造装置として本件発明と同じ2床3塔式のものが採用されている以上、引用文献記載の装置においても、K塔からNaイオンなどがリークし、H形陽イオン交換樹脂を充填した脱臭塔6において除去されていることは明らかである。
したがって、本件発明1と上記引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「(a)カチオン交換樹脂が充填され、被処理水中のカチオンを除去するカチオン塔と、(b)アニオン交換樹脂が充填され、被処理水中のアニオンを除去するアニオン塔と、(c)前記カチオン及びアニオンが除去された後の純水が排出されるラインと、(e)純水中にリークしたアミン臭及びカチオンを除去するカチオンポリッシャとを有することを特徴とする純水製造装置。」の構成で一致し、以下の点で相違する。
相違点:本件発明1が、カチオン及びアニオンが除去された後の純水が排出されるラインとポリシャの間に連結手段を接続し、前記ラインとポリシャとを選択的に連結するように構成しているのに対し、引用文献1には、係る構成について記載がない点
以下、上記相違点について検討する。
当審が平成15年1月10日(発送日)に通知した引用文献2(特開昭55-27081号公報:甲第2号証)には、「1.陽イオン交換樹脂塔及び混床式イオン交換樹脂塔にボイラ復水を通して復水中の不純物を除去する復水脱塩工程において、ボイラ起動時にはH形強酸性陽イオン交換樹脂を充填した前記陽イオン交換樹脂塔へ通水し、引き続いてH形強塩基性陽イオン交換樹脂とOH形強塩基性陰イオン交換樹脂との前記混床式イオン交換樹脂塔へ直列に通水して処理し、平常時には前記陽イオン交換樹脂塔流出水の純度がボイラ給水基準値を達成した時点から前記混床式イオン交換樹脂塔への通水を停止して陽イオン交換樹脂塔単独で処理を行い、復水脱塩装置流入水水質監視計によって流入復水に陰イオンの増加が検出されたら直ちに前記陽イオン交換樹脂塔流出水を混床式イオン交換樹脂塔に通して復水を脱塩することを特徴とする復水処理方法。2.前記陽イオン交換樹脂塔の流出水水質監視計が、流出水中のカチオン導電率とナトリウム濃度を連続的に測定して制御されるものである特許請求の範囲第1項記載の復水処理方法。」(特許請求の範囲第1項及び第2項)が記載され、その効果として、「本発明の方法によると、第2塔3の混床塔は復水器漏洩時以外は、負荷となるイオン量は極めて少ないので、再生頻度は従来の混床式単独処理に比較して著しく減少し、装置の維持管理も容易となる」(第4頁右上欄末行〜左下欄4行)との記載がある。
これらの記載によれば、引用文献2には、イオン交換樹脂塔からの流出水の水質を監視して、水質が所定値以上に悪化した場合のみ、後段のポリシャへの通水を選択的に切換制御する技術が開示されていると云えるが、その処理対象は、ボイラ起動時に水質が悪化し平常時には水質が安定するボイラ復水であり、これらの組み合わせにより、混床塔は、ボイラ起動時以外の水質が設定値以下となった場合は復水がバイパスするので、負荷となるイオン量を少なくでき、再生頻度が従来の混床式単独処理に比較して著しく減少し、装置の維持管理も容易となるという上記の効果を奏するものと認められる。
一方、引用文献1には、2床3塔式純水製造装置から流出する臭気を後段のポリシャで除去するものであるが、該臭気の濃度が経時的に変化することは記載も示唆もされておらず、引用文献1には引用文献2記載の技術を組み合わせる動機付け、すなわち水質が所定値以上に悪化した場合のみ後段のポリシャへの通水を選択的に切換制御することにより、該ポリシャの負荷を軽減させるという要請がそもそも存在しないと云うべきである。
さらに、特許異議申立人が提出した甲第1号証(特公昭54-18983号公報)にも、純水製造装置として4床5塔式を採用し、第1カチオン塔及び第1アニオン塔からリークするカチオン及びアニオンを後段の第2カチオン塔及び第2アニオン塔で除去する技術が記載されているにすぎない。
したがって、本件発明1は、引用文献1、引用文献2及び甲第1号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとは云えない。
(4)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1が引用文献1、引用文献2及び甲第1号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとは云えない以上、本件発明2も同様な理由で、引用文献1、引用文献2及び甲第1号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとは云えない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1ないし2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
純水製造装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)カチオン交換樹脂が充填され、被処理水中のカチオンを除去するカチオン塔と、(b)アニオン交換樹脂が充填され、被処理水中のアニオンを除去するアニオン塔と、(c)前記カチオン及びアニオンが除去された後の純水が排出されるラインと、(d)該ラインに接続された連結手段と、(e)該連結手段によって選択的に連結され、純水中にリークしたカチオン及びアミン臭を除去するカチオンポリッシャとを有することを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】(a)前記純水中のカチオンの濃度を検出する検出手段を有するとともに、(b)前記連結手段は、カチオンの濃度が設定値以上である場合に、前記カチオンポリッシャを連結する請求項1に記載の純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、純水製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、清涼飲料水等を製造するに当たって、各種の濃縮液を希釈したり、茶の葉から茶の成分を抽出したりするために純水が使用されることがあるが、該純水を製造するためにイオン交換処理を利用した純水製造装置が提供されている。
【0003】図2は従来の二床三塔式の純水製造装置の概念図である。図において、11はカチオン交換樹脂12が充填(てん)されたカチオン塔、13は脱炭酸塔、14はアニオン交換樹脂15が充填されたアニオン塔であり、前記カチオン交換樹脂12は交換基としてH+のイオンを、前記アニオン交換樹脂15は交換基としてOH-のイオンをそれぞれ有する。
【0004】前記カチオン塔11において、上端に形成された入口16からNaCl、MgSO4、Ca(HCO3)2等が溶けた原水が被処理水として供給され、カチオン塔11内において被処理水中のNa+、Mg2+、Ca2+等のカチオンと前記カチオン交換樹脂12のH+のイオンとが交換され、前記カチオンが除去される。そして、該カチオンが除去された後の被処理水は、前記カチオン塔11の下端に形成された出口17から排出され、ラインL1を介して脱炭酸塔13に供給される。
【0005】該脱炭酸塔13において、上端に形成された入口21から前記被処理水が供給されるとともに、供給口22から空気が供給されると、被処理水中に含有されるHCO3-のアニオンは、CO2ガスとなって空気と共に出口23から排出される。その結果、HCO3-のアニオンが含有されない被処理水を得ることができ、該被処理水は、前記脱炭酸塔13の下端に形成された出口24から排出され、ラインL2を介してアニオン塔14に供給される。
【0006】該アニオン塔14において、上端に形成された入口25から前記被処理水が供給されると、アニオン塔14内において、Cl-、SO42-等のアニオンと前記アニオン交換樹脂15のOH-のイオンとが交換され、前記アニオンが除去される。そして、該アニオンが除去された後の被処理水は、純水として前記アニオン塔14の下端に形成された出口26からラインL3を介して系外に排出される。
【0007】ところで、アニオン交換樹脂15を製造する工程において、臭気成分、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン等のアミンが生成される。したがって、新しいアニオン交換樹脂15をアニオン塔14に充填すると、アニオン交換樹脂15からアミンが純水中に溶出し、純水がアミン臭を帯びてしまう。そこで、前記アニオン交換樹脂15をアニオン塔14に充填する前に十分に洗浄し、アミンを除去するようにしている。また、前記アニオン交換樹脂15をアニオン塔14に充填した後に、ラインL3に排出された純水を系外に相当量ブローし、アミンが純水中に溶出しなくなるのを待機するようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の純水製造装置においては、アニオン交換樹脂15を洗浄したり、純水を系外に相当量ブローしたりしても、純水製造装置を使用している間にアニオン交換樹脂15からアミンが純水中に溶出することがある。そこで、アミンの溶出量を低減するために特殊な洗浄処理を施した樹脂をアニオン交換樹脂15として使用することも考えられるが、特殊な洗浄処理を施した樹脂を使用すると、純水製造装置のコストが高くなってしまう。
【0009】また、Na+のような一価のカチオンの場合、カチオン交換樹脂12との結合力が弱いので、純水中にリークすることがある。その結果、pHが高くなり、水質が悪くなってしまう。そこで、前記アニオン塔14に臭気除去用のカチオン塔を更に接続し、アニオン塔14から排出された純水を臭気除去用のカチオン塔に供給し、純水中に溶出したアミンを臭気除去用のカチオン塔によって除去するようにした純水製造装置が提供されている(特許第2607534号参照)。ところが、該純水製造装置においては、臭気除去用のカチオン塔を配設する必要があるので、設置面積がその分大きくなるだけでなく、コストが高くなってしまう。
【0010】また、前記臭気除去用のカチオン塔に純水が常時通されることになるので、臭気除去用のカチオン塔によるアミンの除去作用が短時間で低下してしまう。したがって、臭気除去用のカチオン塔のカチオン交換樹脂を頻繁に再生しなければならず、そのたびに、純水製造装置の運転を中断させなければならない。その結果、純水を連続的に製造するのが困難になってしまう。
【0011】本発明は、前記従来の純水製造装置の問題点を解決して、純水中に溶出した臭気成分及び純水中にリークしたカチオンを除去することができ、水質を良くすることができるとともに、設置面積を小さくすることができ、コストを低くすることができ、かつ、純水を連続的に製造することができる純水製造装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明の純水製造装置においては、カチオン交換樹脂が充填され、被処理水中のカチオンを除去するカチオン塔と、アニオン交換樹脂が充填され、被処理水中のアニオンを除去するアニオン塔と、前記カチオン及びアニオンが除去された後の純水が排出されるラインと、該ラインに接続された連結手段と、該連結手段によって選択的に連結され、純水中にリークしたカチオン及びアミン臭を除去するカチオンポリッシャとを有する。
【0013】本発明の他の純水製造装置においては、さらに、前記純水中のカチオンの濃度を検出する検出手段を有する。そして、前記連結手段は、カチオンの濃度が設定値以上である場合に、前記カチオンポリッシャを連結する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態における純水製造装置の概念図である。図において、11はカチオン交換樹脂12が充填されたカチオン塔、13は脱炭酸塔、14はアニオン交換樹脂15が充填されたアニオン塔であり、前記カチオン交換樹脂12は交換基としてH+のイオンを、前記アニオン交換樹脂15は交換基としてOH-のイオンをそれぞれ有する。
【0015】前記カチオン塔11において、上端に形成された入口16からNaCl、MgSO4、Ca(HCO3)2等が溶けた原水が被処理水として供給され、カチオン塔11内において被処理水中のNa+、Mg2+、Ca2+等のカチオンと前記カチオン交換樹脂12のH+のイオンとが交換され、前記カチオンが除去される。そして、該カチオンが除去された後の被処理水は、前記カチオン塔11の下端に形成された出口17から排出され、ラインL1を介して脱炭酸塔13に供給される。
【0016】該脱炭酸塔13において、上端に形成された入口21から前記被処理水が供給されるとともに、供給口22から空気が供給されると、被処理水中に含有されるHCO3-のアニオンは、CO2ガスとなって空気と共に出口23から排出される。その結果、HCO3-のアニオンが含有されない被処理水を得ることができ、該被処理水は、前記脱炭酸塔13の下端に形成された出口24から排出され、ラインL2を介してアニオン塔14に供給される。
【0017】該アニオン塔14において、上端に形成された入口25から前記被処理水が供給されると、アニオン塔14内において、Cl-、SO42-等のアニオンと前記アニオン交換樹脂15のOH-のイオンとが交換され、前記アニオンが除去される。そして、該アニオンが除去された後の被処理水は、純水として前記アニオン塔14の下端に形成された出口26からラインL11に排出される。
【0018】ところで、アニオン交換樹脂15を製造する工程において、臭気成分、例えば、ジメチルアミン、トリメチルアミン等のアミンが生成される。したがって、新しいアニオン交換樹脂15をアニオン塔14に充填し、通水を開始すると、アニオン交換樹脂15からアミンが純水中に溶出し、純水がアミン臭を帯びてしまう。
【0019】また、Na+のような一価のカチオンの場合、OH-のイオンとの結合力が弱いので、純水中にリークすることがある。その結果、pHが高くなり、水質が悪くなってしまう。そこで、前記ラインL11に連結手段としての切換弁31が接続され、該切換弁31によって純水をラインL12、L13に選択的に供給することができるようになっている。また、前記ラインL13に検出手段としてのカチオンセンサ(伝導度計)32が配設され、該カチオンセンサ32によって純水中のカチオンの濃度が検出されるようになっている。そして、制御装置33は、前記カチオンの濃度が設定値より低い場合、前記切換弁31を切り換えることによって、ラインL11、L12間を接続して純水をラインL12を介して系外に排出し、カチオンの濃度が設定値以上になると、ラインL11、L13間を接続してアニオン塔14とカチオンポリッシャ34とを連結し、純水をカチオンポリッシャ34に供給する。
【0020】該カチオンポリッシャ34には、カチオン交換樹脂35が充填され、該カチオン交換樹脂35は交換基としてH+のイオンを有する。前記カチオンポリッシャ34において、上端に形成された入口36からアミン、Na+のカチオン等を含有する純水が供給され、アミン、Na+のカチオン等とH+のイオンとが交換され、前記アミン、Na+のカチオン等が除去される。そして、前記アミン、Na+のカチオン等が除去された後の純水は、前記カチオンポリッシャ34の下端に形成された出口37からラインL14を介して系外に排出される。
【0021】このように、アニオン塔14から排出された純水中のカチオンの濃度が検出され、カチオンの濃度が設定値以上になると、前記純水をカチオンポリッシャ34に供給し、該カチオンポリッシャ34においてカチオンを除去することができるだけでなく、純水中に溶出したアミンを同時に除去することもできるので、水質を良くすることができる。
【0022】ところで、純水中にアミンが溶出したかどうかの判断は容易ではなく、通常は、官能試験によって判断を行うようにしている。ところが、官能試験は試験者による個人差が大きく、正確な判断を行うことができない。これに対して、純水中のカチオンの濃度は前記カチオンセンサ32によって正確に、かつ、容易に検出することができる。
【0023】したがって、カチオン及びアミンを確実に除去することができる。また、アニオン交換樹脂15を洗浄したり、純水を系外にブローしたり、アミンの溶出量を低減するために特殊な洗浄処理を施した樹脂をアニオン交換樹脂15として使用したりする必要がないので、純水製造装置のコストを低くすることができる。
【0024】ところで、カチオンセンサ32によって検出された純水中のカチオンの濃度が設定値より低い場合は、ラインL11とラインL13とが遮断され、カチオンポリッシャ34を非作動状態に置くことができる。したがって、カチオンポリッシャ34に充填されるカチオン交換樹脂35の量を少なくすることができるので、純水製造装置を小型化することができる。その結果、純水製造装置の設置面積を小さくすることができ、コストを低くすることができる。
【0025】また、前記カチオンポリッシャ34に純水を常時通す必要がないので、カチオンポリッシャ34による臭気成分の除去作用を長時間持続させることができる。したがって、カチオン交換樹脂35を頻繁に再生する必要がなくなる。そして、切換弁31を切り換えることによってラインL11、L13間を遮断し、その状態でカチオンポリッシャ34に充填されたカチオン交換樹脂35を再生することができる。したがって、カチオン交換樹脂35を再生している間に純水製造装置の運転を中断する必要がなくなるので、純水を連続的に製造することができる。
【0026】ところで、前記カチオンポリッシャ34に充填されるカチオン交換樹脂35として弱酸性のものを使用すると、カチオン交換樹脂35の再生は容易であるが、カチオンがカチオンポリッシャ34によって十分に除去されず、純水中にリークしてしまうことがある。これに対して、前記カチオンポリッシャ34に充填されるカチオン交換樹脂35として強酸性のものを使用すると、カチオン交換樹脂35の再生は困難であるが、カチオンポリッシャ34によってカチオンを十分に除去することができ、純水中にカチオンがリークするのを防止することができる。
【0027】本実施の形態においては、カチオン交換樹脂35を頻繁に再生する必要がないので、前記カチオンポリッシャ34に充填されるカチオン交換樹脂35として強酸性のものを使用することができる。したがって、カチオンポリッシャ34によってカチオンを十分に除去することができ、純水中にカチオンがリークするのを防止することができる。
【0028】なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0029】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、純水製造装置においては、カチオン交換樹脂が充填され、被処理水中のカチオンを除去するカチオン塔と、アニオン交換樹脂が充填され、被処理水中のアニオンを除去するアニオン塔と、前記カチオン及びアニオンが除去された後の純水が排出されるラインと、該ラインに接続された連結手段と、該連結手段によって選択的に連結され、純水中にリークしたカチオンを除去するカチオンポリッシャとを有する。
【0030】この場合、純水中にリークしたカチオンを、カチオンポリッシャによって除去することができるだけでなく、純水中に溶出した臭気成分を同時に除去することもできるので、水質を良くすることができる。また、カチオン交換樹脂を洗浄したり、純水を系外にブローしたり、臭気成分の溶出量を低減するために特殊な洗浄処理を施した樹脂をカチオン交換樹脂として使用したりする必要がないので、純水製造装置のコストを低くすることができる。
【0031】そして、カチオンポリッシャは選択的に連結されるので、カチオンポリッシャに充填されるカチオン交換樹脂の量を少なくすることができる。したがって、純水製造装置の設置面積を小さくすることができ、コストを低くすることができる。また、前記カチオンポリッシャに純水を常時通す必要がないので、カチオンポリッシャによる臭気成分の除去作用を長時間持続させることができる。したがって、カチオンポリッシャに充填されたカチオン交換樹脂を頻繁に再生する必要がなくなる。
【0032】そして、連結手段による連結を解除し、その状態でカチオンポリッシャに充填されたカチオン交換樹脂を再生することができる。したがって、該カチオン交換樹脂を再生している間に純水製造装置の運転を中断する必要がなくなるので、純水を連続的に製造することができる。さらに、前記カチオン交換樹脂を頻繁に再生する必要がないので、カチオンポリッシャに充填されるカチオン交換樹脂として強酸性のものを使用することができる。したがって、カチオンポリッシャによってカチオンを十分に除去することができ、純水中にカチオンがリークするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における純水製造装置の概念図である。
【図2】従来の二床三塔式の純水製造装置の概念図である。
【符号の説明】
11 カチオン塔
12 カチオン交換樹脂
14 アニオン塔
15 アニオン交換樹脂
31 切換弁
32 カチオンセンサ
34 カチオンポリッシャ
L11 ライン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-07 
出願番号 特願平9-276120
審決分類 P 1 651・ 536- YA (C02F)
P 1 651・ 121- YA (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 山田 充
岡田 和加子
登録日 2001-11-30 
登録番号 特許第3256169号(P3256169)
権利者 住友重機械工業株式会社
発明の名称 純水製造装置  
代理人 松田 寿美子  
代理人 南野 雅明  
代理人 羽片 和夫  
代理人 近藤 久美  
代理人 長谷川 一  
代理人 羽片 和夫  

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