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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1094698
異議申立番号 異議2002-72700  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-13 
確定日 2004-03-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第3281026号「放射線硬化型熱時感圧接着剤及びその接着テープ」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3281026号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 (I)手続きの経緯
本件特許第3281026号の請求項1、2に係る発明は、平成4年3月3日に特許出願され、平成14年2月22日に特許権の設定登録がなされたところ、前記請求項1、2に係る発明の特許について、石原 庸男(以下、「申立人」という。)から、特許異議の申立てがなされたものである。

(II)特許異議申立について
(II-1)本件発明
本件の請求項1、2に係る発明(以下、本件発明1、2という。)は、特許権設定時の明細書の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】一般式:CH2=C(R1)COOR2(ただし、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数が2〜14のアルキル基である。)で表されるアクリル系モノマー単位を50重量%以上含有するアクリル系重合体100重量部と、融点が70〜200℃の熱溶融性樹脂50〜150重量部と、分子中に放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマー1〜30重量部を含有して、放射線照射で硬化して接着力を示しその接着力が加熱処理でより大きくなる特性を示すことを特徴とする無溶剤塗工型の放射線硬化型熱時感圧接着剤。
【請求項2】支持体の片面、又は両面に請求項1に記載の放射線硬化型熱時感圧接着剤からなる塗工層を放射線照射により硬化処理してなる層を有することを特徴とする接着テープ。

(II-2)特許異議申立ての理由
申立人は、以下の刊行物を提示し、本件発明1、2は、甲第1、2号証に記載された発明、甲第1号証の2、3および甲第2号証の2、3にも記載される甲第1号証および甲第2号証に記載の技術、または、さらに、甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、旨を主張する。
提示刊行物:
甲第1号証:特公昭63-56274号公報
甲第1号証の2:特開昭56-50981号公報
甲第1号証の3:特公昭56-13040号公報
甲第2号証:特開昭62-167378号公報
甲第2号証の2:特開昭63-20381号公報
甲第2号証の3:特公昭58-17555号公報
甲第3号証:特開昭60-69180号公報

(II-3)各刊行物の記載
甲第1号証(特公昭63-56274号公報):
「1.アクリレート重合体および室温で固体の粘着性化樹脂を含む熱活性化接着剤であって、アクリレート重合体が少くとも100g/cm幅の室温感圧接着の能力があるものであり、粘着性化樹脂が接着剤の室温感圧初期接着を粘着性化樹脂の添加前のアクリレート重合体の感圧接着よりも小さくするのに十分な、アクリレート重合体100部当り20部以上の量で含まれることを特徴とする熱活性化接着剤。2.・・・。3.粘着性化樹脂が天然産ロジンまたはそのようなロジンの変性した形のものを含む前記第1または2項に記載の接着剤。」(特許請求の範囲参照)、
「本発明によく適する感圧接着性アクリレート重合体の一群は、・・・主単量体成分として炭素原子1〜14個を有する一般に第三級アルキルアルコールのアクリル酸エステル、およびそのアクリル酸エステルと共重合性の少くとも1種の単量体を含む。」(3頁5欄8〜14行参照)、
溶剤混合物を塗布乾燥して接着剤組成物とすること(4頁7欄34行〜5頁10欄9行参照)。

甲第1号証の2(特開昭56-50981号公報):
「感圧性の接着力を有するアクリル酸エステル系共重合物に適量の熱溶融性樹脂を加えてなる感熱性接着剤組成物の該アクリル酸エステル系共重合物100重量部に対し塩化ビニル/酢酸ビニル/カルボン酸共重合物を5〜50重量部を添加することを特徴とする感熱性接着剤組成物。」(特許請求の範囲)、
溶剤混合物を塗布乾燥して接着剤組成物とすること(3頁上欄参照)

甲第1号証の3(特公昭56-13040号公報):
電子部品に用いる接着テープとして、感圧性接着組成物の固形分100重量部に対して、融点70〜200℃の熱溶融性樹脂を50〜200重量部を配合した熱感圧性接着剤を用いること、及び、溶剤混合物を塗布乾燥して接着剤組成物とすることが示されている(特許請求の範囲、3頁6欄5〜14行参照)。

甲第2号証(特開昭62-167378号公報):
「重量平均分子量が5万〜20万のアクリル系重合体100重量部、・・・(メタ)アクリルモノマー10〜100重量部、および(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能モノマー3〜50重量部からなる電子線硬化型感圧接着剤組成物。」(特許請求の範囲参照)。

甲第2号証の2(特開昭63-20381号公報):
「アクリル系重合体、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能単量体、および光重合開始剤からなる放射線硬化性粘着剤組成物」(特許請求の範囲第2項参照)。

甲第2号証の3(特公昭58-17555号公報):
「アクリル系重合体10〜75重量%、(メタ)アクリル系単量体23〜88重量%および1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する架橋性単量体0〜30重量%からなる活性エネルギー線硬化型粘着剤用組成物。」(特許請求の範囲参照)。

甲第3号証(特開昭60-69180号公報):
「エチレン性二重結合を有する単量体と官能基を有する単量体との共重合物100重量部に対し、融点が50℃以上の熱溶融性樹脂30〜200重量部、光反応性ビニル化合物5〜300重量部および光増感剤0.05〜30重量部を配合した熱賦活性と光硬化性を備えた接着剤組成物からなる接着剤層を有する接着テープ」(特許請求の範囲第1項参照)、
「被着体に対して加熱圧着した際に十分な濡れ性を発揮して密着し、ついで光照射を行なえばもはや初期の熱溶融性ないし熱軟化性が喪失され、常温下ではもちろんのこと高温下においても大きな接着強度を保持することを見い出し、この発明をなすに至った。」(2頁右上欄5〜10行参照)。

(II-4)対比・判断
(II-4-1)本件発明1について
甲第1号証、甲第1号証の2および甲第1号証の3には、前記したように、溶剤混合物を塗布乾燥する熱活性化接着剤であり、アクリレート重合体と室温で固体の粘着性化樹脂を含む接着剤に係る発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
本件発明1と甲1発明とを比較すると、後者の「アクリレート重合体」、「室温で固体の粘着性化樹脂」および「熱活性化接着剤」は、前者の「一般式:CH2=C(R1)COOR2(ただし、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数が2〜14のアルキル基である。)で表されるアクリル系モノマー単位を50重量%以上含有するアクリル系重合体」、「融点が70〜200℃の熱溶融性樹脂」および「熱時感圧接着剤」に相当するから、
両者は、「一般式:CH2=C(R1)COOR2(ただし、R1は水素又はメチル基、R2は炭素数が2〜14のアルキル基である。)で表されるアクリル系モノマー単位を50重量%以上含有するアクリル系重合体と、融点が70〜200℃の熱溶融性樹脂、とを含む熱時感圧接着剤」であることを構成とする発明である点で同一であるものの、少くとも、次の点を構成とする点で相違している。
すなわち、本件発明1は、「分子中に放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマー含有して、無溶剤塗工型の放射線硬化型熱時感圧接着剤」(以下、構成Aという。)であり、かつ、「放射線照射で硬化して接着力を示しその接着力が加熱処理でより大きくなる特性を示す」(以下、構成Bという。)を構成とするのに対し、甲1発明は、前記多官能モノマーを含有せず、溶剤を使用して塗工乾燥する熱時感圧接着剤であるから、前記構成A及び構成Bのいずれをも構成とするものでない点で相違する。
そこで、前記相違点について検討するに、甲第2号証、甲第2号証の2および甲第2号証の3には、アクリル系重合体と(メタ)アクリルモノマーと(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能モノマーとから、電子線硬化型の感圧接着剤組成物をうることが記載されており、「分子中に放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーを含有し、無溶剤塗工型で放射線硬化型である感圧接着剤に係る発明(以下、甲2発明という。)が記載されているといえるものの、熱溶融性樹脂を添加することについて示すところはなく、かつ、アクリレート重合体と溶融性樹脂とから形成される接着剤と反応性不飽和結合を有するモノマーをさらに配合してえられる接着剤とが接着性において同様の挙動を示すとされているわけでもないから、甲2発明が、熱溶融性樹脂を含む甲1発明においてさらに前記多官能モノマーを添加使用することや、その結果、放射線照射で硬化して接着力を示しその接着力が加熱処理でより大きくなる特性を示すようになることを示唆しているとすることはできない。
また、甲1発明における溶剤は、接着剤には残留しないものであるのに対し、多官能性モノマーは残留するものであり、接着剤の特性にも影響すると解されるものであることから、甲1発明における溶剤を甲2発明の多官能性モノマーに代えることが甲2発明に基いて当業者にとって容易に想到できることであるとすることはできない。
甲第3号証には、アクリル系重合体と、熱溶融性樹脂と、分子中に放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとを含有する接着剤組成物が記載されているものの、加熱圧着の後に光照射を行なって接着強度を保持するという接着剤組成物であるから、前記組成物が、「放射線照射で硬化して接着力を示しその接着力が加熱処理でより大きくなる特性を示す」という本件発明1の前記構成Bを示唆しているとすることはできない。
したがって、甲2発明および甲第3号証に記載された技術を参照しても、本件発明1の前記構成Bに想到することが当業者に容易であるとすることはできない。
そして、本件発明1は、前記構成Aおよび構成Bを採用することにより、明細書に記載されたとおりの、前記刊行物からは予期されない効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲第1、2号証に記載された発明、甲第1、2号証の2、3にも記載される甲第1、2号証に記載の技術、または、さらに、甲第3号証に記載された技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(II-4-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、前記構成Aおよび構成Bをその構成として含むものであるところ、当該構成が引用刊行物より容易に想到できないものであり、格別の効果をもたらすものであることは、(II-4-1)において前記したとおりである。
したがって、本件発明2は、本件発明1についてと同じ理由で、当業者が容易に発明をすることができたとすることができない。

(II-5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由および証拠によっては、本件発明1、2に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
また、他に本件発明1、2に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-04 
出願番号 特願平4-81535
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 佐藤 修
井上 彌一
登録日 2002-02-22 
登録番号 特許第3281026号(P3281026)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 放射線硬化型熱時感圧接着剤及びその接着テープ  

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