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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1094709
異議申立番号 異議2003-71823  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-05-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-15 
確定日 2004-02-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3373015号「汚水の硝化脱窒素処理装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3373015号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件請求項1、2に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次に示すとおりのものである(以下、「本件発明1、2」という)。
「【請求項1】複数の嫌気部と硝化部とを有する活性汚泥式処理装置と、該処理装置から流出する汚泥を分離する汚泥分離装置とを有する汚水の硝化脱窒素処理装置において、前記活性汚泥式処理装置は、下端に導通口を有する隔壁を介して嫌気部と硝化部とに区画され、該硝化部の上端にスクリーンを配した流出口を有する処理ユニットを、該流出口を介して複数直列に配置して構成され、該各処理ユニットの硝化部には、硝化菌を固定化した浮遊担体と、含酸素気体を導入する散気手段とが配備されると共に、前記各処理ユニットの嫌気部には、原水を分配供給する手段を有し、また、最初の処理ユニットの嫌気部には、前記汚泥分離装置からの分離汚泥を返送する手段を有することを特徴とする汚泥の硝化脱窒素処理装置。
【請求項2】前記活性汚泥式処理装置は、最後に配置した処理ユニットには隔壁の上部水面下にも開口を設けたことを特徴とする請求項1記載の汚水の硝化脱窒素処理装置。」
2.特許異議申立てについて
2-1.取消理由通知の概要
当審の取消理由通知の概要は、請求項1、2に係る発明は刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消されるべきものであるというものである。
2-2.刊行物の記載内容
(1)刊行物1:特開平2-214596号公報:特許異議申立人の甲第1号証
(a)「まず、処理すべき汚水を最初沈殿池1に導いて粗大固形分を分離したのち、分注して各段の脱窒槽13,15へ導く。第1段目の脱窒槽13には最終沈殿池5から活性汚泥が返送されるが、各段の脱窒槽13,15ではその直後に隣接されたそれぞれの硝化槽24,25から循環された硝化液が撹拌混合され、汚水中のBODを脱窒に必要な水素供与体として利用して脱窒が行われ、その混合液(活性汚泥混合液)は直後に隣接されたそれぞれの硝化槽24,26へ導かれる。各硝化槽24,26には、硝化菌を固定した担体、・・・が収容されており、この硝化菌を固定化した担体と各段の脱窒槽13,15から導かれた混合液とを好気的条件で接触させて硝化処理が行われるが、・・・・担体を上向流通水と下部からの曝気により流動化する、固液気の三相流動層方式とすることが最も好ましい。」(第3頁左下欄第4行〜右下欄第12行)
(b)「かくて、各硝化槽24,26において、直前に隣接する各脱窒槽13,15から導かれた混合液中のアンモニア性窒素は、担体上または担体中の硝化菌の働きによって、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素に硝化されて流出する。この流出する硝化液の一部は前述のように直前に隣接された各脱窒槽13,14に循環され、液中の亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素は、原水中のBODが水素供与体として利用されて脱窒菌によって窒素ガスに還元されて除去される。」(第3頁右下欄第13行〜第4頁左上欄第2行)
(c)「なお、脱窒槽と硝化槽を交互に3段以上に連設した場合には、第2段目と同様の脱窒槽と硝化槽による処理を第3段目以降で繰り返したのち、最終段目の硝化槽からの循環量を除いた残部の硝化液を最終沈殿池5で固液分離し、分離された活性汚泥の一部を第1段目の脱窒槽13に返送する。」(第4頁右上欄第16行〜左下欄第1行)
(d)「なお、硝化槽から脱窒槽に硝化液を循環する経路としては、循環用のポンプを備えた配管等を配設することができるが、前述のように硝化槽にエアリフト効果を持たせ自然流下で循環させる時には、脱窒槽と硝化槽間の仕切に溝等を設けるのみでよい。」(第4頁右下欄第12〜17行)
(e)第6頁第1図において、上流側が脱窒槽と下流側が硝化槽との間の仕切では、下端で脱窒槽から硝化槽へ、上端では硝化槽から脱窒槽へ矢印が図示されており、上流側が硝化槽と下流側が脱窒槽との間の仕切では、上端で硝化槽から脱窒槽への矢印が図示されている。また、硝化槽上部には、逆さのじょうご状の部品が配設されていることが図示されている。
(2)刊行物2:特公平5-46279号公報:特許異議申立人の甲第2号証
(a)「有機性汚水を生物学的に処理する汚水の硝化処理装置において、生物反応槽と、硝化細菌を担持した担体を収納し、担体の硝化細菌に酸素を供給するための散気装置が設けられ、被処理液の流入口と前記担体の流出を防止する被処理液の流出口とこれに連なる水路とを有する硝化槽ユニットと、から成り、前記生物反応槽には前記硝化ユニットが単数あるいは複数配置され、前記散気装置により発生するエアーリフト効果により、生物反応槽内の被処理液を、硝化槽ユニット内に循環流通させ、硝化処理することを特徴とする汚水の硝化処理装置。」(請求項1)
(b)「硝化槽1は四角容器状の硝化槽本体2の側面下部側にスクリーンやウエッジワイヤ等からなる流入口3が設けられ、この側面上部には、硝化槽本体2と傾斜板4を介して区画された上部空間部5を備えている。この上部空間部5はスクリーンやウエッジワイヤ等からなる流出口6が設けられ、上部空間部5の側面部には所定の間隔をおいて配置された2つの堰7が設けられている。・・・硝化槽本体2内には、硝化細菌を担持したペレット10が流動可能な状態で収納されている。・・・硝化槽本体2の底部には散気装置11が設置されている。・・・第2図に示すように活性汚泥処理槽12の一側面に配置されて活性汚泥処理槽12内の硝化槽1を除く内部は嫌気槽13を構成するようになっている。」(第2頁第4欄第35行〜第3頁第5欄第12行)
(3)刊行物3:特開昭54-125864号公報:特許異議申立人の甲第3号証
(a)「第2図は、第1硝化槽2a、第1脱窒槽1a、第2硝化槽2b、第1脱窒槽1bと交互に複数の槽を直結し、第1硝化槽2aと最終の脱窒槽3を除く脱窒槽1a、1b、1cに原水Wを分割して注入しながら処理するものである。沈殿槽4から汚泥を第1硝化槽へ返送するとともに、その返送汚泥Sの一部を最終脱窒槽3にも返送する。この方法では、第1硝化槽2aでNH4+をNO2-とNO3-に酸化し、第1脱窒槽1aで原水中の有機物を利用して脱窒を行い、原水中のNH4+は次の第2硝化槽2bでNO2-とNO3-に酸化され、これを順次に繰返す方式であり、残留したNO3-はメタノールMを添加した最終の脱窒槽3で除去するものである。このように最終脱窒槽3以外の脱窒槽1a、1b、1cでは脱窒反応に原水中の有機物が有効に利用されているのでメタノールは不要となり、また脱窒反応で生成した混合液がすべて硝化槽へ流入するので、脱窒反応で生成したアルカリは硝化槽で有効に利用でき、中和用アルカリの使用量を大巾に減少することができる。」(第3頁右上欄第8行〜左下欄第8行)
(b)「また第1硝化槽2aを省略して返送汚泥Sを第1脱窒槽1aへ導入してもよい。」(第3頁左下欄第20行〜右下欄第1行)
2-3.対比・判断
(1)本件発明1について
刊行物1の上記(1)(a)には、「処理すべき汚水を分注して各段の脱窒槽へ導き、第1段目の脱窒槽には最終沈殿池から活性汚泥が返送され、各段の脱窒槽ではその直後に隣接されたそれぞれの硝化槽から循環された硝化液が撹拌混合され、次いで直後に隣接されたそれぞれの硝化槽へ導かれ、各硝化槽には、下部からの曝気により流動化する硝化菌を固定した担体が収容されている汚水から窒素を除去する装置」が記載されていると云える。
ここで上記(1)(c)には、脱窒槽と硝化槽を交互に3段以上に連設した場合には、最終沈殿池で固液分離し、分離された活性汚泥の一部を第1段目の脱窒槽に返送することが記載されている。
また、上記(1)(e)では、上流側から脱窒槽、硝化槽、脱窒槽という配列において、液は脱窒槽と硝化槽の仕切の下端から硝化槽へ流れ、脱窒槽と硝化槽の仕切の上端で液の一部は硝化槽から脱窒槽へ戻り、他部は硝化槽の上端から下流側の脱窒槽へ流れていくことが記載されている。そして、上記(1)(d)の「仕切に溝等を設ける」の記載からみて、仕切の上端には溝が設けられていると解されるから、上流側が脱窒槽、下流側が硝化槽の間の仕切の下端には導通口、上端には溝が設けられ、硝化槽には逆さじょうご状の部品(上記(1)(e))が設けられ、上流側が硝化槽、下流側が脱窒槽との間の仕切の上端には溝が設けられていると云える。
これら記載を本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1の脱窒槽、硝化槽、脱窒槽と連設された装置は活性汚泥式処理装置と云え、また連設された上流側が脱窒槽、下流側が硝化槽の組合わせは処理ユニットと云えるから、刊行物1には「複数の脱窒槽と硝化槽とを有する活性汚泥式処理装置と、該処理装置から流出する汚泥を分離する最終沈殿池とを有する汚水から窒素を除去する装置において、活性汚泥式処理装置は、上端に溝、下端に導通口を有する仕切によって脱窒槽と硝化槽とに区画され、該硝化槽の上部には逆さじょうご状の部品を配設し、仕切の上端に溝を設けた処理ユニットを、該溝を介して複数直列に配置して構成され、該各処理ユニットの硝化槽には、流動化する硝化菌を固定した担体と、曝気装置とが配備されると共に、前記各処理ユニットの脱窒槽には汚水を分注する手段を有し、また最初の処理ユニットの脱窒槽には、最終沈殿池からの分離汚泥を返送する手段を有することを特徴とする汚水から窒素を除去する装置」という発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されていると云える。
次に本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「脱窒槽」、「硝化槽」、「最終沈殿池」、「汚水から窒素を除去する装置」、「仕切」、「曝気装置」、「汚水を分注する手段」は、本件発明1の「嫌気部」、「硝化部」、「汚泥分離装置」、「汚水の硝化脱窒素処理装置」、「隔壁」、「酸素気体を導入する散気手段」、「原水を分配供給する手段」にそれぞれ相当し、また刊行物1発明の上流側が硝化槽、下流側が脱窒槽との間の仕切の上端の溝からは硝化液が流出する出口という点で本件発明1の流出口と共通しているから、両者は「複数の嫌気部と硝化部とを有する活性汚泥式処理装置と、該処理装置から流出する汚泥を分離する汚泥分離装置とを有する汚水の硝化脱窒素処理装置において、前記活性汚泥式処理装置は、隔壁を介して嫌気部と硝化部とに区画された処理ユニットを、出口を介して複数直列に配置して構成され、該各処理ユニットの硝化部には、硝化菌を固定化した浮遊担体と、含酸素気体を導入する散気手段とが配備されると共に、前記各処理ユニットの嫌気部には、原水を分配供給する手段を有し、また、最初の処理ユニットの嫌気部には、前記汚泥分離装置からの分離汚泥を返送する手段を有することを特徴とする汚泥の硝化脱窒素処理装置」という点で一致し、次の点で相違している。
相違点:本件発明1では、嫌気部と硝化部とを区画する隔壁の下端に導通口を有し、また出口として硝化部の上端にスクリーンを配した流出口を有するのに対して、刊行物1発明では、脱窒槽と硝化槽とを区画する仕切の上端に溝、下端に導通口を有し、硝化槽の上部には逆さじょうご状の部品を配設し、かつ出口として仕切の上端に溝を設けている点
先ず、上記相違点のうち、本件発明1では、硝化部の上端にスクリーンを配した流出口を有するのに対して、刊行物1発明では、硝化槽の上部には逆さじょうご状の部品を配設し、かつ出口として仕切の上端に溝を設けている点を検討すると、刊行物1発明の逆さじょうご状の部品によって、刊行物1発明においても、出口の溝から硝化液が流出しても担体が硝化槽外に出ないようにしていることは明らかである。
そして、刊行物2に明らかなように、浮遊担体を使用する汚水処理において、流出口にスクリーンを配設して、浮遊担体が硝化槽外に流出しないようにすることは普通に知られていることであるから、刊行物1発明において、逆さじょうご状の部品と溝の代わりに、硝化部の上端にスクリーンを配した流出口を有するようにすることは格別の創意を要することとは認められない。
次に、上記相違点のうち、本件発明1では、嫌気部と硝化部とを区画する隔壁の下端に導通口を有するのに対して、刊行物1発明では、脱窒槽と硝化槽とを区画する仕切の上端に溝、下端に導通口を有している点を検討する。
刊行物3、上記(3)(a)の「脱窒反応で生成した混合液がすべて硝化槽へ流入する」の記載からみて、刊行物3の第2図において脱窒槽、硝化槽、脱窒槽と、上流側から下流側へ液をすべて流入させているものと認められる。
してみると、上流側から脱窒槽、硝化槽、脱窒槽と交互に配設し、上流側から下流側へ液をすべて流入させること、すなわち下流側の硝化槽から上流側の脱窒槽へ硝化液の一部を循環させないことは知られていたのであるから、刊行物1発明において、脱窒槽と硝化槽とを区画する仕切の上端に溝を設けず、硝化液のすべてを下流側に流入させることは当業者が容易に想到し得ることであり、その効果も予測される範囲を出ないものと認められる。
(2)本件発明2について
本件発明2は、請求項1を引用しさらに、「活性汚泥式処理装置は、最後に配置した処理ユニットには隔壁の上部水面下にも開口を設けた」点を限定したものである。
しかしながら、活性汚泥式処理装置において、最後に配置した処理ユニットとそれまでの処理ユニットとで隔壁に開口を設けたり、設けなかったり、開口の有無という差異を設けることは、刊行物1〜3には記載も示唆もされていないから、本件発明2は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたことであるとすることはできない。
3.むすび
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
次に特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項2に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項2に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-01-05 
出願番号 特願平5-291555
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (C02F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 西村 和美
野田 直人
登録日 2002-11-22 
登録番号 特許第3373015号(P3373015)
権利者 株式会社荏原総合研究所 株式会社荏原製作所
発明の名称 汚水の硝化脱窒素処理装置  
代理人 松田 大  
代理人 松田 大  

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