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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1094734
異議申立番号 異議2002-72820  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-27 
確定日 2004-04-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第3285166号「光ファイバ機能部品およびその製造方法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3285166号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3285166号の請求項1〜7に係る発明についての出願は、平成5年6月23日(国内優先権主張:平成4年6月24日、同年9月14日)に特許出願され、平成14年3月8日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人村戸良至より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年4月8日に意見書が提出されたものである。

2.特許異議申立てについて
ア.本件発明
特許第3285166号の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明7」という)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に各々記載されたとおりの次のものである。
「【請求項1】 対向する光ファイバ間の光ビーム処理のために設けられる光ファイバ機能部品において、
前記光ビーム処理にかかわるシングルモード型光ファイバの対向する面の各々に、該シングルモード型光ファイバの外径より大きく該外径の2倍以下の外径を有するグレーデッドインデックス型光ファイバによる所定長さの集束型ロッドレンズを同心に融着接続してなることを特徴とする光ファイバ機能部品。
【請求項2】 前記シングルモード型光ファイバおよび前記グレーデッドインデックス型光ファイバは、中心軸が一致するように、深さの異なるV溝上に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ機能部品。
【請求項3】 前記グレーデッドインデックス型光ファイバは比屈折率差が0.2%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ機能部品。
【請求項4】 前記グレーデッドインデックス型光ファイバの屈折率分布が1.7乗から2.5乗型の関数で示されることを特徴とする請求項1,2または3に記載の光ファイバ機能部品。
【請求項5】 シングルモード型光ファイバの端面に、該シングルモード型光ファイバの外径より大きく該外径の2倍以下の外径を有するグレーデットインデックス型光ファイバによる所定長さの集束型ロッドレンズを同心に融着接続した状態で深さの異なるV溝上に設置したV溝部品同士を、前記集束型ロッドレンズ同士を所定の長さをおいて相対向させて配置してなることを特徴とする光ファイバ機能部品。
【請求項6】 前記V溝部品同士が前記所定の長さのスペーサを介してかつガイドピンで位置合わせした状態で固定されていることを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ機能部品。
【請求項7】 光ビーム処理にかかわるシングルモード型光ファイバの端面に、該シングルモード型光ファイバの外径より大きく該外径の2倍以下の径を有するグレーデッドインデックス型光ファイバを同心に融着接続し、該グレーデッドインデックス型光ファイバを所定長さに仕上げ代を含めて切断した上、前記同心に融着接続した双方の光ファイバをフェルールによって固定保持し、前記グレーデッドインデックス型光ファイバの前記フェルールによって保持される切断面を光学研磨して所定の寸法に仕上げることを特徴とする光ファイバ機能部品の製造方法。」
イ.申立ての理由の概要
特許異議申立人村戸良至は、甲第1〜3号証を提出して、本件発明1〜7は、いずれも甲第1〜3号証刊行物に各々記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきものである旨主張する。
ウ.刊行物の記載事項
特許異議申立人村戸良至が提出した甲第1〜3号証の各刊行物には、次のように記載されている。
刊行物1:特開昭54-158241号公報(申立人提出の甲第1号証)
「2.単一モードフアイバの出口の端面に、外径が前記単一モードフアイバとほぼ等しい集束形フアイバを、その中心軸が一致するように、前記両フアイバの外形と融点が等しいことを利用して、融着法により両者の軸合わせをしたものと、これと対称に、前記単一モードフアイバの入口の端面に、前記単一モードと外径が等しい集束形フアイバを、その中心軸が一致するように、前記両フアイバの外形と融点が等しいことを利用して、融着法により両者の軸合わせをしたものとを、つき合わせたことを特徴とする単一モードフアイバコネクタ装置。」(特許請求の範囲第2項)
「第1図(a),(b)は従来のレンズ系を使用したコネクタ装置の断面を示し、・・・・第1図(b)も同じ原理であるが、レンズ2,3の代わりにレンズ効果を有するセルフオツクレンズ6,7を使用した例を示す。・・・・
従つて以上の方法はフアイバ1とレンズ2またはフアイバ1とセルフオツクレンズ6を一体化するとき、およびフアイバ4とレンズ3またはフアイバ4とセルフオツクレンズ7を一体化するとき、各レンズの中心線上の焦点の位置と各フアイバのコアの中心とを合致させなければならない。現状のレンズ2,3,6,7では、外径が1mm以上あるので、単一モードフアイバ1,4の外径150μmより約10倍も大きい。このためレンズの焦点をさがして、そこに一体化するには微動装置を使つて、しかも光を通して最大に光結合が生じる位置を調整しつつ、単一モード光フアイバとレンズを固定しなければならないという難点がある。」(第2頁左上欄第5行〜右上欄第11行)
「第2図は本発明の原理の説明であつて、1,4は単一モードフアイバ、8,9は集束形フアイバである。単一モードフアイバは光を導波するコア部分10と、コアより屈折率が0.01程小さなクラツド部分11から構成される。・・・・集束形フアイバはクラツド部分12とコア部分13から成り、コアの屈折率はコアの中心からの距離をrとすると、n(r)=n0(1-2r2/b2)、(ただしaをコア半径として、r≦aである。)で表されるような2乗屈折率分布を有している。通常の集束形フアイバのコア直径2aは70〜80μm、比屈折率差(n0-nc)/n0(ただしn0はクラツドの屈折率である。)は0.7〜1.0%程度であり、集束パラメータbは0.6〜0.8程度となる。・・・・」(第2頁右上欄第20行〜左下欄第16行)
「第3図は本発明の一実施例の断面図で、15,16は単一モードフアイバコネクタのプラグとリセプタクルである。17は内径がフアイバ外径と等しいノズル形の中子で、材質はガラス、セラミツク、金属のいずれでもよいが、単一モードフアイバと集束形フアイバが“ガタつき”がないように入るものが望ましい。」(第3頁右下欄第16行〜第4頁左上欄第2行)
「第4図は本発明の他の実施例の構成を示す斜視図で、18はV溝を施したSi等の基板である。この場合は一つのV溝上に単一モードフアイバ1,4と集束形フアイバ8,9を図の順序に一列に並べ、単一モードフアイバ1と集束形フアイバ8および集束形フアイバ9と単一モードフアイバ4を接着剤または融着により固定したものを、そのままつき合わせた例を示している。」(第4頁左上欄第12〜19行)
「・・・・本発明の単一モードフアイバコネクタ装置は、単一モードフアイバと外径の等しい集束形フアイバレンズ系を使つたコネクタであるから、レンズ系の欠点である単一モード光フアイバの中心軸とレンズの中心軸上の焦点との位置合わせの難点を、単一モードフアイバと集束形フアイバレンズの外形合わせで回避できる利点がある。しかも単一モードフアイバのビーム径は、集束形フアイバレンズにより約10倍に拡大されるので、単一モードフアイバ同志のつき合わせで問題となっていた位置ずれを約10倍ゆるくとれる利点がある。・・・・」(第4頁右上欄第7〜18行)
刊行物2:米国特許第4962988号明細書(申立人提出の甲第2号証)
「本発明の目的は、過度の熱を光学ファイバに与えることなく、またGRINロッドレンズに与える熱を不足させることなく前記ファイバを前記レンズの端面の中央部へ融着させる方法を提供することであり、またこれにより接着剤による問題点を回避しつつ光学ファイバにおける低伝送損失のコリメート/フォーカス端部を提供することである。
簡単に言えば、必要な平行化のために好適な長さを有する筒状のGRINロッドレンズは、光ファイバが融着される端部がテーパ状に形成され、該テーパは、軸対称であり、少なくとも前記ロッドレンズの断面半径の3分の1に及び、かつ少なくとも該テーパが及ぶ断面半径の部分と等しい長さに形成されていて、ファイバが融着される前記中央部を中心の横断方向平端面としている。電気アークはロッドレンズの筒状縁部に邪魔されないし、前記ファイバをレンズ端部へ融着するアークの熱がより効果的にレンズ端部を加熱し、光ファイバの端部が過熱されないので、融着突合せ接合部を形成することができる。これにより形成された融着突合せ接合部は、機械的に安定しており、光ファイバとレンズ間での伝送損失を低減できる。
前記ファイバが融着される前記平端面は、光学ファイバの過熱とレンズの端面から熱不足とが所望範囲外に及ぶことなく直径を光ファイバの直径の最大で50%にすることができる。
レンズのテーパ部分の形状は、円錐台形、凸又は凹形にできる。
通常、光ファイバに融着される面と反対側のレンズ面は、レンズの軸線と直角な平面であるが、レンズはレンズ長の変化を犠牲にして光を平行化し、又は何らかの光学装置を接続するに必要な効果を加えて小さな凹又は凸形とすることが考えられる。換言すると、本発明は、光ファイバが融着される方のレンズ端部に関するものであり、他方の端部は、通常は平行ビームが入出射する平面状の端部が望まれていたが、光ファイバの特定の種類の端部に適用させるために変更してもよい。」(第2欄第3〜47行)
「第2図は2本の光ファイバーの端面同士を融着させるのに用いられるような電気アークが光ファイバーをGRINレンズに融着させるのに用いられる際に生ずることについての概略図である。矩形(直角)の円筒縁部20のために電極22と23との間で電気アーク21が変位して、ファイバーが過熱され、レンズ26は加熱不足になる。図ではアークの変位が若干誇張されているが、図示のような作用は面倒なことである。
図3は本発明の方法によりなされる光ファイバー30のGRINレンズ31との端部接合を示している。ここでも電極32及び33はそれらを結ぶ直線が接合部を通過するように配置されているが、レンズ31の端面が斜面35となっているので、アークが逸れることはなく、フアイバー30は過熱されず、レンズ31の端部は適切な接合部を形成するのに十分に過熱される。」(第3欄第34〜50行)
「1.実質的に円形断面を有するGRINガラスロッドレンズであって、光ファイバから送出された光を平行にし、かつ平行な光を光ファイバへ集束させるに好適な長さを有し、直径が少なくとも光ファイバの直径の500%であり、実質的に平面もしくは小さな曲率で軸線方向に対称で前記ロッドレンズの周面と交差する第1の端面と、軸線方向へ対称なテーパに形成され、少なくとも前記ロッドレンズの断面半径の3分の1に及び、かつ少なくとも該テーパが及ぶ断面半径の部分と等しい長さに形成されている第2の端面とを有し、該テーパが光ファイバと接続するために第2の端面の中心を横断端面としている筒状のGRINガラスロッドレンズと、
光ファイバの端部を該ロッドレンズの前記横断端面へ接続する融着突合せ接合部と
を具備する光ファイバーをコリメートされた光ビームに適合させる光ファイバの端部接続構造。
2.前記横断端面が前記光ファイバの直径より大きな直径を有し、前記融着突合せ接合部が横断端面の中間部までだけに及んでいる請求の範囲1記載の端部接続構造。
3.前記第2の端面の横断端面の半径が前記ロッドレンズの20〜66%の範囲である請求の範囲2記載の端部接続構造。
4.前記第2の端面のテーパ部の軸線方向の長さが前記レンズの筒状部の長さの33%以下である請求の範囲3記載の端部接続構造。
5.前記第2の端面が円錐台形のテーパに形成されている請求の範囲2記載の端部接続構造。」(第4欄第16〜55行)
刊行物3:特開平4-25805号公報 (申立人提出の甲第3号証)
「本発明は、小形・簡易構造で低損失なコリメート光結合回路並びにそれに用いるファイバ結合用パイプ及びその製造方法に関する。」(第2頁右上欄第7〜9行)
「・・・・本発明に係る光結合回路の他の例として、多芯状単一モードファイバ間接続用光コネクタを実現した例を第4図を参照しながら説明する。
同図に示すように、各々の単一モードファイバ101とGI型多モードファイバ片102とは、切り欠け部107aを有するファイバ結合用パイプ107内で紫外線硬化樹脂により接続固定されており、この多モードファイバ片付き単一モードファイバは光コネクタハウジング131A,131Bの図示しないファイバ挿入用細孔へ固定されている。・・・・両光コネクタハウジング131A,131Bを接続する際の各ファイバの光軸整合は、光コネクタハウジング131A,131Bの対向面の両端に配置されているガイドピン用孔132とガイドピン133との嵌合によって行われる。このとき、多モードファイバ片102の端面同志は所定の間隙をおいて対向するようになっており、該多モードファイバ片102によるビーム拡大効果によって、対向ファイバ間の光軸ずれ(垂直・水平方向)に対する接続損失の増加は緩和され、これによって、多芯ファイバ各接続部における損失不揃いも格段に改善される。・・・・」(第8頁右上欄第3行〜左下欄第13行)
エ.対比、判断
本件発明1と刊行物1に記載のものとを対比すると、両者は、「シングルモード型光ファイバの対向する面の各々にグレーデッドインデックス型光フアイバによる所定長さの集束型ロッドレンズを同心に融着接続したもの」である点において一致するが、次の点において相違する。
a.本件発明1は、対向する光ファイバ間の光ビーム処理のために設けられる光ファイバ機能部品であるのに対して、刊行物1に記載のものは、2本の光フアイバを光学的に結合させるためのフアイバコネクタであって、光フアイバ間の光ビーム処理を特に意図したものではない点。
b.本件発明1におけるグレーデッドインデックス型光ファイバは、シングルモード型光ファイバの外径より大きく該外径の2倍以下の外径を有するものであるのに対して、刊行物1に記載のものにおける集束形フアイバは、単一モードフアイバの外径とほぼ等しい外径を有するものである点。
そこで、相違点bについて検討すると、刊行物1において従来技術として説明されている図1(b)に示されるものでは、セルフオツクレンズ6,7の外径が単一モードフアイバの外径より大きいが、これは、現状のセルフオツクレンズでは外径が単一モードフアイバの約10倍大きくなっているという状況を示すのみであり、それに対して刊行物1に記載される発明として、集束形フアイバの外径を単一モードフアイバの外径とほぼ等しくすることが提案されているのであるから、集束ファイバの外径を単一モードフアイバの外径より大きく2倍以下にすることについては示唆するところがないものである。
また、刊行物2に記載のものにおいては、光ファイバの端部接続構造において、GRINガラスロッドレンズの直径が少なくとも光ファイバの直径の500%であり(請求項1)、その上でロッドレンズの第2の端面の横断端面の半径がロッドレンズの半径の20〜66%である(請求項3)ことが記載されているが、この場合、GRINガラスロッドレンズの直径はあくまで光ファイバの少なくとも500%、すなわち5倍以上であり、そのまま光ファイバ端部と融着させると過熱、熱不足の不都合があるので、ロッドレンズの融着側端部をテーパ状にし、そのテーパ部の小径部の半径をロッドレンズの半径の20〜66%とするのであって、ロッドレンズの外径を光ファイバの外径より大きく2倍以下とすることを示唆するものではない。さらに、この点は、刊行物3においても示唆するところはない。
また、上記相違点aについては、文献が何ら提示されていない。
しかるに、本件発明1は、上記相違点を含む構成により、明細書に記載の格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、刊行物1〜3に各々記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
次に、本件発明2〜4は、いずれも直接的または間接的に本件発明1を引用するものであり、本件発明1の構成を備えているから、本件発明1の場合と同様の理由により、刊行物1〜3に各々記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
次に、本件発明5と刊行物1に記載のものとを対比すると、両者は、本件発明1と刊行物1との対比における上記相違点bを少なくとも有するから、本件発明1の場合と同様の理由により、刊行物1〜3に各々記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
次に、本件発明6は、本件発明5を引用するものであり、本件発明5の構成を備えているから、本件発明1の場合と同様の理由により、刊行物1〜3に各々記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
さらに、本件発明7は、光ファイバ機能部品の製造方法の発明であるが、刊行物1に記載のものと対比すると、本件発明1と刊行物1との対比における上記相違点bを少なくとも有するものである。それゆえ、本件発明7は、本件発明1の場合と同様の理由により、刊行物1〜3に各々記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明1〜7についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜7についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-16 
出願番号 特願平5-152143
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 町田 光信
山下 崇
登録日 2002-03-08 
登録番号 特許第3285166号(P3285166)
権利者 住友電気工業株式会社
発明の名称 光ファイバ機能部品およびその製造方法  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  

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