• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  F28F
審判 全部申し立て 2項進歩性  F28F
管理番号 1094748
異議申立番号 異議2003-73171  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2004-03-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第3420893号「熱交換器用コネクタ装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3420893号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.出願手続の経緯
本件特許第3420893号に係る特許出願(以下、「本件出願」という。)は、平成8年7月26日に出願されたものであり、平成14年12月11日付けで拒絶査定がなされたが、これに対して、平成15年1月16日に審判請求がなされ、その後、特許法第162条の規定による前置審査を経て、同年4月18日に特許権の設定登録がなされたものである(特許掲載公報発行日:同年6月30日)。

2.本件発明
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件特許明細書の請求項1及び請求項2に記載された以下のとおりのものと認められる(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2に係る発明を「本件発明2」という。)。

「【請求項1】 熱交換器を構成する金属製のヘッダの側面に、このヘッダの内部との間で熱交換すべき流体の授受を行なう配管の端部を結合する為の金属製のコネクタを固定して成り、このコネクタは、上記ヘッダの側面に突き合わせ自在な突き合わせ面と、この突き合わせ面と反対側に存在し、上記配管の端部を連通させるべきポートを開口させた接合面と、この接合面の両端縁と上記突き合わせ面の両端縁とを互いに連続させる1対の側面とを備えたものである熱交換器用コネクタ装置に於いて、上記コネクタの1対の側面の中間部にそれぞれ凹部を形成する事により、上記コネクタの一部で上記突き合わせ面寄り部分の両端縁部に薄肉部を形成しており、この薄肉部の厚さ寸法を、上記ヘッダを構成する板材の厚さ寸法と同程度とした事を特徴とする熱交換器用コネクタ装置。

【請求項2】 熱交換器を構成する金属製のヘッダの側面に、このヘッダの内部との間で熱交換すべき流体の授受を行なう配管の端部を結合する為の金属製のコネクタを固定して成り、このコネクタは、上記ヘッダの側面に突き合わせ自在な突き合わせ面と、この突き合わせ面と反対側に存在し、上記配管の端部を連通させるべきポートを開口させた接合面と、この接合面の両端縁と上記突き合わせ面の両端縁とを互いに連続させる1対の側面とを備えたものである熱交換器用コネクタ装置に於いて、上記コネクタの1対の側面の中間部にそれぞれ凹部を形成する事により、上記コネクタの一部で上記突き合わせ面寄り部分の両端縁部に薄肉部を形成しており、このコネクタを上記ヘッダに仮止めする場合に、この薄肉部の端縁とこのヘッダの外周面との間に点付け溶接を施した事を特徴とする熱交換器用コネクタ装置。」

3.特許異議申立の概要
平成15年12月22日付けで北後良一から、また、平成15年12月25日付けで古澤邦子から特許異議申立がなされた。その概要は以下のとおりである(以下、北後良一からの特許異議申立を「異議申立A」、また、古澤邦子からの特許異議申立を「異議申立B」という。)。

(1)異議申立Aについて
本件発明1は、本件出願前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、また、本件発明2は、同甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。したがつて、本件発明1及び本件発明2に係る特許は、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)異議申立Bについて
本件発明1及び本件発明2は、本件出願前に頒布された甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。したがって、本件発明1及び本件発明2に係る特許は、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである。

また、本件発明1及び本件発明2は、本件出願の日前の特許出願であって、本件出願後に出願公開された特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面である甲第2号証に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、上記両出願に係る発明の発明者は同一でなく、また、両出願の出願人も本件出願の時において同一でないので、本件発明1及び本件発明2は、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものである。したがつて、本件発明1及び本件発明2に係る特許は、同法第113条第1項第2号に該当し取り消されるべきものである。

4.異議申立Aについての当審の判断
(1-1)本件発明1と甲第1号証に記載の発明との対比
本件発明1と甲第1号証に記載の発明とを比較すると、次の点で一致し、かつ相違する。

[一致点]熱交換器を構成する金属製のヘッダの側面に、このヘッダの内部との間で熱交換すべき流体の授受を行なう配管の端部を結合する為の金属製のコネクタ(管継手)を固定して成り、このコネクタ(管継手)は、上記ヘッダの側面に突き合わせ自在な突き合わせ面と、この突き合わせ面と反対側に存在し、上記配管の端部を連通させるべきポートを開口させた接合面と、この接合面の両端縁と上記突き合わせ面の両端縁とを互いに連続させる1対の側面とを備えたものである熱交換器用コネクタ装置

[相違点]本件発明1では、「上記コネクタの1対の側面の中間部にそれぞれ凹部を形成する事により、上記コネクタの一部で上記突き合わせ面寄り部分の両端縁部に薄肉部を形成しており、この薄肉部の厚さ寸法を、上記ヘッダを構成する板材の厚さ寸法と同程度とした」のに対して、甲第1号証に記載の発明では、管継手の一対の側面の中間部から突き合わせ面の両端縁にかけてL形の切欠部を形成しているが、薄肉部は形成していない点。

(1-2)上記相違点についての判断
甲第2号証には、本件発明1の熱交換器用コネクタ装置に相当する開口部カバー部材が肉厚接続部と帯板状カバー部とから構成される点が記載され、また、該帯板状カバー部の厚さがヘッダを構成する板材の厚さと同程度である点が図3に示されている。

しかし、甲第2号証の帯板状カバー部は、ヘッダに設けた周方向スリット状の開口部を覆うためのものである。

したがって、このような開口部が設けられていないヘッダに取り付けられる甲第1号証の管継手に該帯板状カバー部を適用する理由がなく、該管継手に「薄肉部」を形成することはできない。

すなわち、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2-1)本件発明2と甲第1号証に記載の発明との対比
本件発明2と甲第1号証に記載の発明とを比較すると、本件発明1と甲第1号証に記載の発明との上記一致点で一致し、かつ次の点で相違する。

[相違点]本件発明1では、「上記コネクタの1対の側面の中間部にそれぞれ凹部を形成する事により、上記コネクタの一部で上記突き合わせ面寄り部分の両端縁部に薄肉部を形成しており、このコネクタを上記ヘッダに仮止めする場合に、この薄肉部の端縁とこのヘッダの外周面との間に点付け溶接を施した」のに対して、甲第1号証に記載の発明では、コネクタの一対の側面の中間部から突き合わせ面の両端縁にかけてL形の切欠部を形成しているが、薄肉部は形成しておらず、また、点付け溶接による仮止めの限定もない点。

(2-2)上記相違点についての判断
甲第3号証には、熱交換器の管継手に設けられた略Y字形補強部をヘッダにろう付けするに際して、該略Y字形補強部を溶接によりヘッダに仮止めする点が記載されている。

しかし、甲第3号証には、略Y字形補強部の厚さとヘッダを構成する板材の厚さとを同程度として両者の熱容量を同程度とし、これにより、溶接時における両者の温度上昇を同程度として、溶接の作業性の向上及び溶接部の品質の向上を図るという技術思想は記載されていない。

一方、甲第1号証の管継手は、一対の側面の中間部から突き合わせ面の両端縁にかけてL形の切欠部を形成した略直方体形状をしており、該突き合わせ面をヘッダにろう付けするものである。

したがつて、仮に、甲第1号証の管継手の突き合わせ面をヘッダにろう付けするに際して、該突き合わせ面を点付け溶接によりヘッダに仮止めするとしても、この仮止めは、突き合わせ面の周囲とヘッダとの間で行えばよいものであるから、甲第3号証の略Y字形補強部を甲第1号証の管継手に適用する理由がなく、該管継手に「薄肉部」を形成することはできない。

また、甲第1号証の管継手に甲第2号証の帯板状カバー部を適用して、「薄肉部」を形成することができないことは、上記(1-2)で述べたとおりである。

さらに、甲第4号証には、熱交換器において、スポット溶接により取付ブラケットをタンク(ヘッダ)に仮止めする点が記載されているのみである。

これらのことから、本件発明2は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.異議申立Bについての当審の判断
(1-1)本件発明1及び本件発明2と、甲第1号証に記載の発明との対比
異議申立Bにおける甲第1号証は、異議申立Aにおける甲第1号証と同一の刊行物であり、本件発明1及び本件発明2と、異議申立Bにおける甲第1号証に記載の発明との一致点及び相違点は、上記4.(1-1)で述べた本件発明1と異議申立Aにおける甲第1号証に記載の発明との一致点及び相違点、及び、上記4.(2-1)で述べた本件発明2と異議申立Aにおける甲第1号証に記載の発明との一致点及び相違点と同一である。

(1-2)相違点についての判断
甲第3号証には、ブラケットを熱交換器のヘッダにろう付けするに際して、該ブラケットを点付け溶接によりヘッダに仮止めする点が記載され、また、該ブラケットの厚さがヘッダを構成する板材の厚さと同程度である点が図7に示されている。

しかし、甲第3号証のブラケットは、全長に亘って同一厚さのものであり、単に、その一端部をヘッダに仮止めしただけのものであつて、該ブラケットの厚さとヘッダを構成する板材の厚さとを同程度として両者の熱容量を同程度とし、これにより、溶接時における両者の温度上昇を同程度として、溶接の作業性の向上及び溶接部の品質の向上を図るという技術思想は甲第3号証に記載されていない。

一方、甲第1号証の管継手は、異議申立Aについて上記4.(2-2)で述べたように、一対の側面の中間部から突き合わせ面の両端縁にかけてL形の切欠部を形成した略直方体形状をしており、該突き合わせ面をヘッダにろう付けするものである。

したがつて、仮に、甲第1号証の管継手の突き合わせ面をヘッダにろう付けするに際して、該突き合わせ面を点付け溶接によりヘッダに仮止めするとしても、この仮止めは、突き合わせ面の周囲とヘッダとの間で行えばよいものであるから、ブラケットを点付け溶接によりヘッダに仮止めする甲第3号証に記載された点を甲第1号証の管継手に適用する理由がなく、該管継手に「薄肉部」を形成することはできない。

すなわち、本件発明1及び本件発明2は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2-1)本件発明1及び本件発明2と、甲第2号証に記載された発明との対比
甲第2号証のコネクタは、基本的な構成において、甲第1号証の管継手と同一であり、したがって、本件発明1及び本件発明2と、甲第2号証に記載の発明との一致点及び相違点は、本件発明1及び本件発明2と、甲第1号証に記載の発明との一致点及び相違点と同一である。

(2-2)相違点についての判断
甲第3号証ないし甲第5号証から、コネクタやブラケットを熱交換器のヘッダにろう付けするに際して、該コネクタやブラケットを点付け溶接によりヘッダに仮止めすること、また、ブラケットの厚さをヘッダを構成する板材の厚さと同程度とすることが従来周知の技術であるとしても、該ブラケットは、全長に亘って同一厚さのものであり、単に、その一端部をヘッダに仮止めしただけのものであつて、ブラケットの厚さとヘッダを構成する板材の厚さとを同程度として両者の熱容量を同程度とし、これにより、溶接時における両者の温度上昇を同程度として、溶接の作業性の向上及び溶接部の品質の向上を図るという技術思想までが従来周知とはいえない。

一方、甲第2号証のコネクタは、基本的な構成において、甲第1号証の管継手と同一である。

したがつて、上記(1-2)で述べたように、上記従来周知の技術を甲第2号証のコネクタに適用する理由がなく、該コネクタに「薄肉部」を形成することはできない。

すなわち、本件発明1及び本件発明2は、甲第2号証に記載された発明と同一の発明とすることはできない。

6.まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、異議申立A及び異議申立Bの理由および証拠から取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

したがって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-15 
出願番号 特願平8-197724
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F28F)
P 1 651・ 16- Y (F28F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐野 遵丸山 英行  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
登録日 2003-04-18 
登録番号 特許第3420893号(P3420893)
権利者 カルソニックカンセイ株式会社
発明の名称 熱交換器用コネクタ装置  
代理人 小山 欽造  
代理人 小泉 雅裕  
代理人 小山 武男  
代理人 中井 俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ