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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1095399
審判番号 不服2002-14313  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-29 
確定日 2004-04-07 
事件の表示 特願2000-124212「反射形プロジェクト装置」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 1月19日出願公開、特開2001- 13584]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年4月25日に出願された特願2000-124212号(パリ条約優先権主張1999年(平成11年)4月26日)であって、平成14年4月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し平成14年7月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年8月28日付で手続補正がなされた。

2.平成14年8月28日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年8月28日付の手続補正を却下する。
[理由]
特許法第17条の2第3項違反

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「光源と、
前記光源から照射された光の進行経路上に光軸に対して傾斜して配置され、入射光を偏光により透過又は反射させるシート形偏光ビームスプリッタと、
前記シート形偏光ビームスプリッタを経た一偏光の入射光から画像を生成し、これを前記シート形偏光ビームスプリッタ側へ反射させる反射形ディスプレイ素子と、
光経路上に配置されて入射光を集束及び/又は発散させることにより入射光の進行をガイドするリレーレンズユニットと、
前記反射形ディスプレイ素子で生成されて前記シート形偏光ビームスプリッタを経た光の進行経路に配置され、入射光の収差を補正する補正手段と、
前記補正手段を透過した光をスクリーン側へ拡大透過させる投射レンズユニットと、を含み、
前記補正手段は、前記シート形偏光ビームスプリッタと前記投射レンズユニットとの光路上に配置された一枚のレンズであって、該レンズの入射面及び/又は出射面の曲率中心が光軸に対してシフトされて配置されたことを特徴とする反射形プロジェクト装置。」と補正された。

この補正における、「補正手段は、前記シート形偏光ビームスプリッタと前記投射レンズユニットとの光路上に配置された一枚のレンズであって」の構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、当初明細書という。)に記載した事項の範囲内のものではない。すなわち、当初明細書には、補正板171とウェッジ形レンズ143’の組合せ(当初明細書の段落【0027】参照)、補正板171と、投射レンズユニット180とシート形偏光ビームスプリッタ150との経路上に配置される少なくとも一枚のレンズ143または前記投射レンズユニット180のうち一部のレンズを前記シート形偏光ビームスプリッタ150が傾斜するY-Z平面上で入射光軸に対して間隔d程シフトされて配置させたものの組合せ(当初明細書の段落【0028】参照)が、記載されており、補正手段が一枚のレンズからなるものが記載されているとは言えず、また、それが当初明細書の記載から自明のものとも言えない。

したがって、この補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年8月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年4月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「光源と、
前記光源から照射された光の進行経路上に光軸に対して傾斜して配置され、入射光を偏光により透過又は反射させるシート形偏光ビームスプリッタと、
前記シート形偏光ビームスプリッタを経た一偏光の入射光から画像を生成し、これを前記シート形偏光ビームスプリッタ側へ反射させる反射形ディスプレイ素子と、
光経路上に配置されて入射光を集束及び/又は発散させることにより入射光の進行をガイドするリレーレンズユニットと、
前記反射形ディスプレイ素子で生成されて前記シート形偏光ビームスプリッタを経た光の進行経路に配置され、入射光の収差を補正する補正手段と、
前記補正手段を透過した光をスクリーン側へ拡大透過させる投射レンズユニットと、
前記シート形偏光ビームスプリッタと前記投射レンズユニットとの光路上に配置された少なくとも一枚のレンズと、を含むことを特徴とする反射形プロジェクト装置。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-15074号公報(以下、引用例1という。)には、以下の点が記載されている。
ア.【0001】【発明の属する技術分野】
本発明は例えば液晶プロジェクタのような、光源からの光を画像表示素子により変調し、投影レンズによりスクリーンに拡大投影する投影型画像表示装置に関する。

イ.【0036】【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は本発明の投影型カラー画像表示装置の模式図である。本実施形態では光源1として、250W、アーク長3mmのメタルハライドランプを用いた。光源として、この他にハロゲンランプやキセノンランプを用いることができる。光源1の背面には光源からの光を略平行光として出射するための放物面鏡2が配置されている。光源1の前方には偏光選択反射板3が位置する。偏光選択反射板3は、図2に示すような小型の偏光ビームスプリッタ(以下PBSと呼ぶ)を複数個板状に配列したPBSアレイ3(a)から形成されていて、各PBSは光をP偏光とS偏光に分離する。PBSアレイ3(a)で反射されたS偏光はダイクロイックミラー4-Rおよび4-Bに入射し、赤、緑、青(以下R、G、Bと表記)の光に分離される。その後これらの光は、それぞれ対応する反射型液晶表示パネル5-R、5-G、5-Bに入射し、画像信号に合わせて偏光状態が変調されて反射される。反射型液晶表示パネル5としては1.3型S-VGA(画素ピッチは33μm×33μm)で、表示モードが液晶の複屈折性を利用し、入射光の偏光方向を制御し、画像を表示する複屈折型のものを用いた。
【0037】
パネルで反射された光はダイクロイックミラー4-R、4-Bにより再び合成され、反射型液晶表示パネルで偏光が回転され、P偏光成分となった光のみが、PBSアレイ3(a)を透過し、投影レンズ6を通ってスクリーン7上に投影される。

ウ.【0056】
(実施形態3)
図8(a)および(b)は、本発明の第3の実施形態における投影型カラー画像表示装置の模式図である。
【0057】
本実施形態では、実施形態1および2において、偏光選択反射板3として用いていたPBSアレイ3(a)の代わりに、光の入射方向に関わらず一方向の直線偏光成分を透過し、それに直交する成分の直線偏光を反射する光学的な透過軸および反射軸を有した偏光選択反射フィルム3(b)を用いた。

上記の各記載事項、及び図8(b)も参照すれば、引用例1には、「光源1と、前記光源1から照射された光の進行経路上に光軸に対して傾斜して配置され、一方向の直線偏光成分を透過し、それに直交する成分の直線偏光を反射する光学的な透過軸および反射軸を有した偏光選択反射フィルム3(b)と、
前記偏光選択反射フィルム3(b)を経た一偏光の入射光を画像信号に合わせて偏光状態が変調されて、これを前記偏光選択反射フィルム3(b)側へ反射させる反射型液晶表示パネルと、
前記偏光選択反射フィルム3(b)を透過した光をスクリーン7上へ拡大投影させる投射レンズ6と、
を含むことを特徴とする反射型投影型画像表示装置。」(以下、引用発明という。)が記載されている。

(3)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「光源1」、「偏光選択反射フィルム3(b)」、「反射型液晶表示パネル」、「投射レンズ6」、「反射型投影型画像表示装置」は、それぞれ、本願発明の「光源」、「シート形偏光ビームスプリッタ」、「反射形ディスプレイ素子」、「投射レンズユニット」、「反射形プロジェクト装置」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、「光源と、
前記光源から照射された光の進行経路上に光軸に対して傾斜して配置され、入射光を偏光により透過又は反射させるシート形偏光ビームスプリッタと、
前記シート形偏光ビームスプリッタを経た一偏光の入射光から画像を生成し、これを前記シート形偏光ビームスプリッタ側へ反射させる反射形ディスプレイ素子と、
前記シート形偏光ビームスプリッタを透過した光をスクリーン側へ拡大透過させる投射レンズユニットと、
を含むことを特徴とする反射形プロジェクト装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1
本願発明は、光経路上に配置されて入射光を集束及び/又は発散させることにより入射光の進行をガイドするリレーレンズユニットを有しているのに対して、引用発明は、その点の記載がない点。

相違点2
本願発明は、反射形ディスプレイ素子で生成されてシート形偏光ビームスプリッタを経た光の進行経路に配置され、入射光の収差を補正する補正手段を有しているのに対して、引用発明は、その点の記載がない点。

相違点3
本願発明は、シート形偏光ビームスプリッタと投射レンズユニットとの光路上に配置された少なくとも一枚のレンズを有しているのに対して、引用発明は、その点の記載がない点。

(4)判断
相違点1について
本願発明と同様の投影型表示装置において、リレーレンズユニットを有することは、従来周知(例えば、特開平2-163729号公報、特開平11-2780号公報、WO94/22042号パンフレット、特開平8-234205号公報等参照)であり、引用発明においても、相違点1にかかる構成とすることは、当業者にとって容易なことである。

相違点2について
本願発明と同様の投影型表示装置において、収差を補正する補正手段を有することは、従来周知(例えば、特開平4-80740号公報、特開平5-100187号公報、特開平7-146452号公報等参照)であり、引用発明においても、相違点2にかかる構成とすることは、当業者にとって容易なことである。

相違点3について
相違点3におけるレンズは、本願明細書の記載(段落【0027】、【0028】等)からみて、収差を補正するためのものであるが、本願発明と同様の投影型表示装置において、収差補正のためにレンズを光路上に配置することは、従来周知(例えば、特開平3-170925号公報、特開平4-149426号公報、特開平5-100187号公報等参照)であり、引用発明においても、相違点3にかかる構成とすることは、当業者にとって容易なことである。

また、本願発明の効果も引用例1の記載、及び従来周知の技術事項から予測される程度のものにすぎない。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-05 
結審通知日 2003-11-11 
審決日 2003-11-27 
出願番号 特願2000-124212(P2000-124212)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 谷山 稔男
辻 徹二
発明の名称 反射形プロジェクト装置  
代理人 伊東 忠彦  

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