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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04F |
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管理番号 | 1095522 |
審判番号 | 不服2002-22744 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-04-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-11-25 |
確定日 | 2004-04-16 |
事件の表示 | 平成11年特許願第281229号「框用手すり」拒絶査定不服審判事件〔平成13年4月10日出願公開、特開2001-98734〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年10月1日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年1月21日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】玄関の上り框の手前に置かれる手すりであって、上り框の高さの中間の高さの台部と、該台部の上面に立設される手すり本体とからなり、該手すり本体は台部上面中央に立設されており、前後一対の支柱と該一対の支柱上端間に差渡される握り部とからなり、該手すり本体の後側の支柱の下部には、該上り框の下面に当接する当接板を有する固定具が上下摺動可能に、したがって上下位置調節可能に取付けられていることを特徴とする框用手すり」 【2】刊行物記載の発明 これに対し、当審が平成15年11月14日付けで通知した拒絶の理由で引用した、実願平5-21155号(実開平7-1145号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 「本考案は、玄関ホールに用いる手摺の取付構造に関するものである。」(4頁4行) 「脚の下端部が玄関床面に接当し、上部が前記玄関床とホール床との境に介在する上がり框下面のけ込部に入り込ませて、前記上がり框下面へ食い込み勝手にした固定具を具備したものである。」(4頁23〜26行) 「図1〜3において、手摺Aは……両端で下方に向けて折り曲げ、脚1、2を形成し、その一方には、下部に固定具Bが装着されていて、その固定具Bは固定部11と下端部12とからなり、固定部11は特に図2に図示するように、手摺Aの前後方向にたいして直行する方向にひろがり、翼状を形成し、その張出し先端に下側から上方に向けて螺子込みピン13、14が係止されていて、該螺子こみピン13、14の位置は側面視(図3)で、前記脚1より外側へ突き出た位置に有り、全体として、脚1下端に固定されている。」(5頁13〜20行) 「また、21は玄関床で、該玄関床21より一段高くホール床22が位置し、このホール床22と前記玄関床21との境に上がり框Cが介在し、上がり框Cと玄関床21との間は、上がり框C下面31でホール床22側へ入り込み、け込部23が形成されている。なお、32は上がり框Cの前面である。 係るけ込部23へ、前述固定部Bの螺子こみピン13、14側が入り込み、螺子こみピン13、14の先端が上がり框Cの下面31に食い込み勝手となっている。」(5頁24行〜6頁2行) 「図5は、固定具B1の応用例で、手摺Aの脚1下端を直接玄関床21に接当せしめ、その中間に固定具B1を上下位置変更自在に軸装し、ボルト17で固定するようにし、他方の脚2の接当部5も脚2のパイプ内から出入り自在とし、これも外側からボルト9で固定するようにした。」(6頁8〜11行) そして、これらの記載、及び、図1,3,5を参照すれば、刊行物1には、特に図5に記載されたものとして、次の発明が記載されていると認められる。 「玄関床とホール床との境に介在する上がり框の手前に置かれ、前後一対の脚と、該一対の脚上端間に差渡される部分を有し、前記上がり框下面へ食い込み勝手にした固定具(B1)を具備し、 この固定具(B1)は、手摺の脚の中間に、上下位置変更自在かつボルトで固定可能に軸装された水平な翼状の固定部と、その張出し先端に下側から上方に向けて螺子込みピンとを有し、該螺子こみピンの先端が上がり框の下面に食い込み勝手とした、手摺。」 同じく、特開平11-264285号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。 「建物に存在する段差部の前側に設置される段差部用踏台であって、踏板と、該段差部の上面よりも低い位置に該踏板を支持する支持フレームと、該段差部及び/又は床に対する固定手段とを有することを特徴とする段差部用踏台。」(請求項1) 「建物の出入口等には一般的に段差があり、特に和風の建物における上がり口、勝手口、縁側等の段差部には、20cm以上の段差がある場合がある。しかしながら、例えば老人や病人にとって、かかる大きな段差を有する段差部を昇降するのは困難であり、転倒等の危険があった。従って、本発明の課題は、建物に存在する段差を小さくし、老人や病人であっても段差部を容易に昇降できるようにする手段を提供することである。」(1欄41〜49行) 「段差部用踏台1の高さhは、段差部5の高さHよりも低く設定すれば特に限定されないが、該段差部5の高さHの略半分になるように設定するのが好ましく」(4欄5〜8行) 「図8に示すように、段差部用踏台1Dの脚312Dに嵌合する嵌合孔42Dとビス孔とを有する断面クランク型のブラケット4Dを使用して、該ブラケット4Dの嵌合孔42Dに段差部用踏台1Dの脚312Dを貫通嵌合させ、該ブラケット4Dのビス孔を介してビス6Dを床に螺着することにより、該段差部用踏台1Dを該床に固定してもよい。」(4欄49行〜5欄5行) 同じく、特開平9-10130号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の記載がある。 「特に体の不自由な人の浴槽に対する出入りの容易化のために用いる、浴槽の側壁部に取り付けるボルト(ねじ)式固定具付きの手すりと浴槽の底部上に設置する脚付きの踏み台の結合体(踏み台付き手すり)」(1欄14〜18行) 「従来においては、ボルト式固定具付きの手すりと脚付きの踏み台とは、互いに独立したものとして形成され、使用されている。しかしこのように相互に独立した形態のボルト式固定具付きの手すりと脚付きの踏み台には、特に手すりを安定させるためのボルト式固定具による浴槽の側壁部の強力な押圧や締め付けによる側壁部の損傷や、踏み台の移動(変位)自在性に伴う使用上の危険性(滑り、転倒……など)、踏み台の浮動防止のための重量化の問題がある。」(1欄20〜32行) 「短縦枠11、長縦枠12及び横枠13からなる逆J字状の手すり10」(2欄25〜26行) 「長縦枠12の下部に、該下部に長さ方向に移動可能にかつ軸周りに回動可能に挿着した止めねじ(止めボルト)22付きの脚21を含む複数の脚付きの踏み台22<「20」の誤記と認める。>を取り付けた構造」(2欄33〜37行) 「この発明に係る手すり・踏み台結合体によれば、手すりの長縦枠または短縦枠に取り付けた当て板が側壁の上面部と外面部または内面部に係合するとともに、長縦枠が踏み台の脚を介して浴槽の底部に係合するので、手すりの安定性が高く、ボルト式固定具の圧接板による浴槽の側壁部に対する押圧を、浴槽の側壁部が損傷する程強固にする必要が無い。また踏み台も、手すりの長縦枠の下部に対する取り付けによる移動の拘束により、常に所定の位置に安定した状態で保持されるので、使用上の危険性がないとともに、実質上浮動防止のための付加重量が不要であるため、軽量化が可能である。」(3欄6〜17行) また、図1をみると、脚21は、踏み台20上面からの凹部を形成し、長縦枠12の下部が挿入して固定されていることが、当業者に明らかな事項である。 そして、これらの記載を参照すれば、刊行物3には、次の発明が記載されていると認められる。 「逆J字状の手すりの長縦枠の下部を踏み台の凹部に挿入固定した踏み台付き手すり。」 【3】対比・判断 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「手摺」、「脚」、及び「一対の脚上端間に差渡される部分」は、本願発明の「手すり本体」、「支柱」、及び「握り部」にそれぞれ相当するから、両者は、 「玄関の上り框の手前に置かれる手すりであって、手すり本体は、前後一対の支柱と該一対の支柱上端間に差渡される握り部とからなり、該手すり本体の後側の支柱の下部には、該上り框の下面に当接する固定具が上下摺動可能に、したがって上下位置調節可能に取付けられている、框用手すり」 である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1:本願発明は、上り框の高さの中間の高さの台部と、該台部上面中央に立設された手すり本体とからなるのに対し、刊行物1記載の発明は、台部を有していない点 相違点2:「固定具」が、本願発明は、上り框の下面に当接する当接板を有するものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、水平な翼状の固定部の張出し先端に下側から上方に向けて設けた螺子込みピンの先端が上がり框の下面に食い込むものである点 上記各相違点について検討する。 <相違点1について> 玄関などの建物の出入口の段差部の手前に、老人や病人であっても段差部を容易に昇降できるよう、段差部の高さの略半分の高さの台部を設置することは、刊行物2に示されるように公知であり、体の不自由な方等が段差部を越えることを容易にするため、手すり本体と台部とを一体化して、その安定性を増し危険を少なくすることは、引用例3に示されるように公知であり、かつ、手すり本体の前後一対の支柱をともに台部の上面に立設させた手すり付き踏み台は、本出願前に周知(実願昭61-113179号(実開昭63-19699号)のマイクロフィルム等参照)であり、その立設位置を台部上面の中央として、台部のどちら側からでも昇降し得るようにすると共に昇降時の安定性を向上させることは、当業者が使い勝手等に配慮して容易になし得る程度のことにすぎないから、刊行物1記載の発明の手すりに、刊行物2,3、及び、周知技術を適用して、上り框の高さの中間の高さの台部と、該台部上面に前後一対の支柱をともに台部の上面中央に立設させた手すり本体とを一体化したものとすることに格別困難性は認められない。 <相違点2について> 上り框に装着した際に上り框に傷が付かないよう、刊行物1記載の発明のような螺子込みピンを使用せずに面状の部材で挟み付けるようにして固定することは、従来から広く行なわれている周知技術にすぎず、本願発明がそのような周知技術を採用した点に格別な技術的意義は認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計変更にすぎない。 そして、本願発明が奏する作用効果も、当業者が予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。 【4】むすび したがって、本願請求項1に係る発明は、上記刊行物1〜3に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-04 |
結審通知日 | 2004-02-10 |
審決日 | 2004-02-24 |
出願番号 | 特願平11-281229 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(E04F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 七字 ひろみ |
特許庁審判長 |
山 田 忠 夫 |
特許庁審判官 |
鈴 木 憲 子 木 原 裕 |
発明の名称 | 框用手すり |
代理人 | 宇佐見 忠男 |