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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B21G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B21G
管理番号 1095580
審判番号 不服2001-22831  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-20 
確定日 2004-04-15 
事件の表示 平成11年特許願第262222号「アジャスターピンの製造法」拒絶査定に対する審判事件[平成13年3月27日出願公開、特開2001-79629]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月16日の出願であって、平成13年11月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年12月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年1月21日付けで、明細書を補正対象書類とする手続補正がなされ、平成15年11月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成16年1月19日付けで手続補正がされたものである。

2.平成16年1月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年1月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ブレーキの調整用であって、軸部の一端に頭部を備えるとともに該頭部を横切る溝が形成されているアジャスターピンの製造にあたり、線材の一端に頭部を鍛造成形し、次いで頭部の端面に頭部を横切る溝を上記端面から圧力を加えることで鍛造成形するとともに該鍛造成形時に頭部の 周面 よりバリ部を突出させ、鍛造成形後に上記バリ部を除去することを特徴とするアジャスターピンの製造法。」から、
「ブレーキの調整用であって、軸部の一端に頭部を備えるとともに該頭部を横切る溝が形成されているアジャスターピンの製造にあたり、線材の一端に頭部を鍛造成形し、次いで頭部の端面に頭部を横切る溝を上記端面から圧力を加えることで鍛造成形するとともに該鍛造成形時に頭部の軸部側の周面で且つ溝の両側方に位置する部分よりバリ部を突出させ、鍛造成形後に上記バリ部を除去することを特徴とするアジャスターピンの製造法。」と補正された。なお、下線は、補正個所を明確化するために、当審で付したものである。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、バリ部を突出させる「頭部の周面」を、「頭部の軸部側の周面で且つ溝の両側方に位置する部分」と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例記載の発明(事項)
平成15年11月12日付けで当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実用新案登録第2592084号公報(以下、「引用例1」という。)には、「デュオサーボ式ドラムブレーキ」に関連して以下の事項が記載されている。
(イ) 段落【0001】
「【産業上の利用分野】本考案はデュオサーボ式ドラムブレーキに関するものである。」
(ロ) 段落【0009】
「図1は、本考案が適用されたデュオサーボ式ドラムブレーキの一例の要部を示す図であって、例えばドラムインディスクブレーキのパーキングブレーキ機構として用いられるものである。図1において、バッキングプレート10上には、全体として円弧状を成す一対のブレーキシュー12,14がシューホルドダウン装置16,18により互いに拡開可能に支持されている。ブレーキシュー12,14は、円弧状に曲成された帯板状のシューリム20と、そのシューリム20の内周面に突設されてバッキングプレート10と略平行に配置される板状のシューウェブ22と、シューリム20の外周面に固着されたライニング24とをそれぞれ備えており、ブレーキシュー12,14のシューウェブ22の図1において下方に位置する一端部は、アジャストホイール26を有して軸心方向長さが可変とされた連結装置28の両端部に形成された係合溝30に、両端部間に掛け渡されたシューツーシュースプリング31の付勢力に従ってそれぞれ係合させられている。」
(ハ) 段落【0011】
「また、連結装置28は、アジャストホイール26を備えた調整装置34に係合部材36が嵌合されることにより構成されて、ギャップ調整のためにその全長がアジャスタホイール26の回転操作量に応じて変化させられるようになっている。係合部材36は、例えば冷間鍛造により成形されたものであって、図3に示すように、先端部がやや先細りにされた略円柱状の頭部38とそれに続いて形成されている頭部38よりも小径の嵌合部40とから構成されており、頭部38には、シューウェブ22と係合する上記の係合溝30が溝フライス加工により形成されている。・・・」
(ニ) 【図3】
係合部材36の嵌合部40は、軸状になっており、また、その頭部38に形成される係合溝30は、頭部の端面に頭部を横切るように形成されていること。
これらの記載事項を技術常識を考慮に入れながら本願補正発明1に照らして整理すると、結局、引用例1には次の発明が記載されていると認める。
「デュオサーボ式ドラムブレーキの調整用であって、軸状の嵌合部40の一端に頭部38を備えるとともに該頭部38を横切る係合溝30が形成されている係合部材36の製造にあたり、線材の一端に頭部38を冷間鍛造で成形し、次いで頭部の端面に頭部を横切る係合溝30を溝フライス加工により形成する係合部材36の製造法。」

同じく、当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭53-3959号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平6-330921号公報(以下、「引用例3」という。)及び特開昭53-137858号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ホ)引用例2の第1頁左下欄5行〜7行
「素材を圧造成形してネジ用穴と溝とを備えた粗形ナットを形成し、次いで圧造成形時に生じたバリを除去する」
(ヘ)引用例2の第1頁左下欄11行〜20行
「従来、溝付きナットを得るには、ナットの外形を成形した後、数次に亘る切削加工を施すことによりナット上面に数条の溝を形成しているが、この方法では溝の加工にかなりの工数と時間を要するため、生産効率が悪く且つ製造原価も高くつくという欠点があった。そこで本発明は上記の欠点を除去した溝付きナットの製造法を提供するもので、圧造成形によって数条の溝をナット上面に一挙に形成することを特徴とする。」
(ト)引用例3の段落【0013】〜【0014】
「(c)に示す第3工程では、成形ポンチ26により頭部原形部14´が圧造されて頭部14が形成される。ここで、成形ポンチ26は、頭部14の外径状を形成するための凹部26a内にすり割り17を形成するための直線状突部26bおよび十字溝18を形成するための十字状突部26cを有している。そして、この直線状突部26bおよび十字状突部26cにより頭部14にすり割り17および十字溝18が形成される。・・・このとき、すり割り17の底部の両端からは、押し潰された材料が横方向に流れ出ることにより、図2に示すようなバリ27が張り出る。・・・。」
(チ)引用例3の【図2】
バリ27は、十字溝18の両側方に位置する部分より突出していること。
(リ)引用例4の第2頁右下欄12行〜第3頁左上欄13行
「第5の歯形形成工程(E)は、第5図に示すように、下方のダイス(31)に素材(1)の案内部(3)と略同径の直線案内孔(32)と、その上面外周に空気抜穴(33)を有する歯形成形用の雌型(34)とを、上方のパンチ(35)に素材(1)の軸部(2)と略同径の直線案内孔(36)と、その下面外周に環状の突条部(37)とをそれぞれ形成したもので、前記第4の整形工程(D)より送られてきた素材(1)はパンチ(35)の下降により軸部(2)が直線案内孔(36)に挿入された状態で下降し、さらに下降することにより歯車部(5)は雌型(34)へ押し込まれその外周に歯形(6)が圧造される。このとき、このパンチ(35)の下死点において、歯車部(5)の径大部端のテーパー部(5a)にパンチ(35)の突条部(37)が喰い込むことによりその肉代を径方向へ膨出させて径大部端の歯形成形を精密加工する。同時にダイス(31)とパンチ(35)との隙間にばり(7)が生じる。」
(ヌ)引用例4の第3頁左下欄4行〜6行
「パンチ(45)の下降により雌型(47)の先端テーパー孔(46)で歯車部(5)の外周に突出したばり(7)が除去される。」

(3)対比
本願補正発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、後者の「デュオサーボ式ドラムブレーキ」が前者の「ブレーキ」に、後者の「軸状の嵌合部40」が前者の「軸部」に、後者の「頭部38」が前者の「頭部」に、後者の「頭部38を横切る係合溝30」が前者の「頭部を横切る溝」に、後者の「係合部材36」が前者の「アジャスターピン」に、後者の「頭部38を冷間鍛造で成形し」は前者の「頭部を鍛造成形し」に、それぞれ相当することは明らかである。
したがって、本願補正発明1と引用例1記載の発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
〈一致点〉
ブレーキの調整用であって、軸部の一端に頭部を備えるとともに該頭部を横切る溝が形成されているアジャスターピンの製造にあたり、線材の一端に頭部を鍛造成形し、次いで頭部の端面に頭部を横切る溝を形成するアジャスターピンの製造法、である点。
〈相違点〉
線材の一端に頭部を鍛造成形した後、前者は、頭部の端面に頭部を横切る溝を上記端面から圧力を加えることで鍛造成形するとともに該鍛造成形時に頭部の軸部側の周面で且つ溝の両側方に位置する部分よりバリ部を突出させ、鍛造成形後に上記バリ部を除去するのに対して、後者は、頭部の端面に頭部を横切る溝を溝フライス加工により形成している点。

(4)相違点についての検討
機械部品の端面に溝を形成するにあたって、
(i)上記端面から圧力を加えることで鍛造成形するとともに該鍛造成形時に溝形成部分の周面よりバリ部を突出させること、及び、
(ii)鍛造成形後に、鍛造成形で生じたバリ部を除去すること
は、いずれも従来周知の事項である(例えば、(i)の事項については、引用例2の摘記事項(ホ)、引用例3の摘記事項(ト)、引用例4の摘記事項(リ)を、(ii)の事項については、引用例2の摘記事項(ホ)、引用例4の摘記事項(ヌ)を、それぞれ参照。)。
ところで、溝を切削加工で形成すると製造コストが高くなるとの課題があり、その課題を解消するために、溝を鍛造成形で形成することが、引用例2に記載されている(上記摘記事項(ヘ)を参照。)。
そうすると、引用例1記載の発明における溝の形成に際して、フライス加工という切削加工に換え上記周知の事項を適用し、頭部の端面に上記端面から圧力を加えることで鍛造成形するとともに該鍛造成形時に溝形成部分である頭部の周面よりバリ部を突出させ、鍛造成形後に、上記鍛造成形で生じたバリ部を除去することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、溝を頭部の軸部側近くまで深く形成する場合に、当該溝形成のための鍛造成形でパンチを頭部の軸部側近くまで打込むので、バリ部が頭部の軸部側の周面より突出することは当業者にとって明らかであること、鍛造成形で生じたバリ部が溝の両側方に位置する部分より突出していることが引用例3に示されていること(上記摘記事項(チ)を参照。)、また、本願明細書をみても、バリ部を頭部の軸部側の周面で且つ溝の両側方に位置する部分より突出させることに格別の技術的意義を見出せないことを勘案すると、上述した引用例1記載の発明に従来周知の事項を組み合わせるに際して、バリ部を頭部の軸部側の周面で且つ溝の両側方に位置する部分より突出させるようにすることも、また当業者が容易になし得ることであると云わざるを得ない。
さらに、本願補正発明1の作用効果は、引用例1記載の発明及び従来周知の事項から予期できる程度のものであって格別のものではない。
したがって、本件補正発明1は、引用例1記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.平成14年1月21日付けの、明細書を補正対象書類とする手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年1月21日付けの、明細書を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ブレーキの調整用であって、軸部の一端に頭部を備えるとともに該頭部を横切る溝が形成されているアジャスターピンの製造にあたり、線材の一端に頭部を鍛造成形し、次いで頭部 に 溝を 鍛造成形するとともに該鍛造成形時に頭部の周面よりバリ部を突出させ、鍛造成形後に上記バリ部を除去することを特徴とするアジャスターピンの製造法。」から、
「ブレーキの調整用であって、軸部の一端に頭部を備えるとともに該頭部を横切る溝が形成されているアジャスターピンの製造にあたり、線材の一端に頭部を鍛造成形し、次いで頭部の端面に頭部を横切る溝を上記端面から圧力を加えることで鍛造成形するとともに該鍛造成形時に頭部の周面よりバリ部を突出させ、鍛造成形後に上記バリ部を除去することを特徴とするアジャスターピンの製造法。」と補正された。なお、下線は、補正個所を明確化するために、当審で付したものである。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、溝を形成する部位である「頭部」を「頭部の端面」に、「溝」を「頭部を横切る溝」に、鍛造成形を「上記端面から圧力を加えることで」行うものに、それぞれ限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)当審の判断
本願補正発明2は、前記2.で検討した本願補正発明1から「頭部の周面」の限定事項である頭部の「軸部側の」ものであって「且つ溝の両側方に位置する部分」との構成を省いたものである。
そうすると、本願補正発明2の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明2も、同様の理由により、引用例1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
る。

4.本願発明について
(1)本願発明
平成14年1月21日付けの、明細書を補正対象書類とする手続補正、及び、平成16年1月19日付けの手続補正は、ともに上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年6月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ブレーキの調整用であって、軸部の一端に頭部を備えるとともに該頭部を横切る溝が形成されているアジャスターピンの製造にあたり、線材の一端に頭部を鍛造成形し、次いで頭部に溝を鍛造成形するとともに該鍛造成形時に頭部の周面よりバリ部を突出させ、鍛造成形後に上記バリ部を除去することを特徴とするアジャスターピンの製造法。」

(2)引用例記載の発明(事項)
当審の拒絶の理由に引用された引用例記載の発明(事項)は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記3.で検討した本願補正発明2から、「頭部」を限定する頭部「の端面」との構成、「溝」の形状を限定する「頭部を横切る」との構成、及び、鍛造成形を限定する「上記端面から圧力を加えることで」行うものとの構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本願補正発明2が、前記「3.(2)」に記載したとおり、引用例1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-10 
結審通知日 2004-02-17 
審決日 2004-03-01 
出願番号 特願平11-262222
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (B21G)
P 1 8・ 121- WZ (B21G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 和幸  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 平田 信勝
上原 徹
発明の名称 アジャスターピンの製造法  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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