• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1095593
審判番号 不服2001-10391  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-20 
確定日 2004-04-15 
事件の表示 平成 7年特許願第133169号「空気流量測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-327423〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年5月31日の出願であって、平成13年5月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月19日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成13年7月19日付けの手続補正についての補正却下
「補正却下の決定の結論」
平成13年7月19日付けの手続補正を却下する。
「理由」
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、以下のとおり補正するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱抵抗体及び感温抵抗体の出力信号を基に前記空気流量に関係した信号を出力する電子回路と、前記電子回路を内装保護するハウジングとを一体化した回路モジュール部と、
内燃機関の吸気通路である主通路を流れる空気の一部が流入し、内部に発熱抵抗体及び感温抵抗体を備えた空気副通路を構成し、前記回路モジュール部に接着あるいは溶着により結合された副通路構成部材と、
前記主通路を構成するボディの前記副通路構成部材が挿入される挿入孔に設けられ、前記副通路構成部材の前記主通路内への落下防止用ストッパと、を備え、
前記空気副通路の入口面が前記主通路内に位置するように、前記ハウジング或いは前記空気副通路の構成部材を、前記主通路を構成するボディに取り付けてなる空気流量測定装置において、
前記副通路構成部材と前記ストッパとの間に、前記副通路構成部材が前記挿入孔に挿入された際には前記ストッパと前記副通路構成部材とが干渉しないような間隙を設けたことを特徴とする空気流量測定装置。(以下、「本願補正発明」という。)

なお、当該補正前(拒絶査定時)の特許請求の範囲の請求項1については、以下のとおりである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱抵抗体及び感温抵抗体の出力信号を基に前記空気流量に関係した信号を出力する電子回路と、前記電子回路を内装保護するハウジングとを一体化した回路モジュール部と、
内燃機関の吸気通路である主通路を流れる空気の一部が流入し、内部に発熱抵抗体及び感温抵抗体を備えた空気副通路を構成し、前記回路モジュール部に接着あるいは溶着により結合された副通路構成部材と、
前記主通路を構成するボディの前記副通路構成部材が挿入される挿入孔に設けられ、前記副通路構成部材の前記主通路内への落下防止用ストッパと、を備え、
前記空気副通路の入口面が前記主通路内に位置するように、前記ハウジング或いは前記空気副通路の構成部材を、前記主通路を構成するボディに取り付けてなる空気流量測定装置において、
前記副通路構成部材と前記ストッパとの間には、間隙が設けられていることを特徴とする空気流量測定装置。

(2)当審の判断
(2)-1〈補正の目的の適否について〉
この補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「間隙」を「前記副通路構成部材が前記挿入孔に挿入された際には前記ストッパと前記副通路構成部材とが干渉しないような間隙」との限定を付加して補正後の請求項1とするものであって、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)-2〈独立特許要件について〉
ア.引用刊行物及び該刊行物に記載された発明
刊行物1:特開昭64-10127号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1)
上記刊行物1には、以下の事項が第1ないし4図とともに記載されている。
a.本発明は内燃機関の吸入空気流量を検出する熱線式空気流量計・・・に関するものである。(公報第1頁右欄第3〜5行)
b.第1の実施例は、第1図に示すように合成樹脂材の筒状のハウジング10の両端に、それぞれ被測定吸入空気5の収入口11及び流出口12が形成され・・・ている。
このハウジング10の上面に挿通孔18が形成され、壁体13の挿通孔18に対向する位置に凹部19が形成され、これらの挿通孔18及び凹部19にわたつて、後述するように発熱抵抗器としてのホットワイヤ1、コールドワイヤ2及びこれらの支持ピン9を覆つて配設される導電性ケース6が、固定可能な構成となっている。
即ち、第2図及び第3図に示すように、導電性ケース6は筒状に形成され、この導電性ケース6の下方には前述のバイパス空気流路15に位置して配される貫通孔16が形成されている。
そして、貫通孔16部分を除いて導電性ケース6には、合成樹脂材の支持部材8が充填され、この支持部材8には導電材の支持ピン9が固定保持されている。
また、支持ピン9の先端は支持部材8の端面から貫通孔16内に突出配設され、一方の支持ピン9間に、白金線を巻回し表面にガラス材をコーテイングしたホットワイヤ1が溶接固定されている。
さらに他方の支持ピン9間に、被測定吸入空気5の温度を検出するホットワイヤ1と同一構造のコールドワイヤ2が、溶接固定されている。
このようにして、ホットワイヤ1、コールドワイヤ2及びこれらの支持ピン9を覆って配設される導電性ケース6が、金属材のバース4(当審注;ベース4の誤記)に導電性接着剤7により、或は溶接の手段によって固定されている。
また、ベース4上に熱線式空気流量計の回路部17が組み込まれ、この回路部17を被ってべース4にはモールドケース3が固定されている。
そして、このように導電性ケース6が固定されたべース4が、第1図に示すようにハウジング10の上面に例えば接着剤を用いて固定されている。(公報第2頁右下欄第14行〜同第3頁右上欄第12行)
c. 第4図に第1図と同一部分に同一符号を付して構成を示すのは、本発明の第2の実施例であり、この第2の実施例においてはハウジング10には、メイン空気流路14のみが存在する。
そして、貫通孔16の中心をハウジング10の軸心にほぼ一致させて、導電性ケース6がハウジング10の挿通孔18に取り付けられている。
この第2の実施例の他の部分の構成は、前述の第1の実施例と同一である。(公報第3頁左下欄第4〜12行)

なお、上記摘記事項及び第1ないし4図を参照すると、刊行物1には次の事項が記載されていることは明らかである。
モールドケース3は回路部17を内装保護しており、該回路部17とモールドケース3とは一体化された回路モジュール部といえる。また、導電性ケース6(副通路構成部材)は、挿入孔18に設けられた突部(第4図参照)と係合するようにハウジング10の挿入孔18に挿入されている。

したがって、上記刊行物には次の発明が記載されている。
「ホットワイヤ1及びコールドワイヤ2の出力信号を基に空気流量に関係した信号を出力する回路部17と、前記回路部17を内装保護するモールドケース3とを一体化した回路モジュール部と、
内燃機関の吸気通路であるメイン空気流路14を流れる空気の一部が流入し、内部にホットワイヤ1及びコールドワイヤ2を備えた貫通孔16を構成し、前記回路モジュール部に接着あるいは溶着により結合された導電性ケース6と、
前記メイン空気流路14を構成するハウジング10の前記導電性ケース6が挿入される挿入孔18に設けられた突部とを備え、
前記貫通孔16の入口面が前記メイン空気流路14内に位置するように、前記モールドケース3或いは前記導電性ケース6を、前記メイン空気流路14を構成するハウジング10に取り付けてなる空気流量計。」(以下、「引用発明」という。)
イ.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明のものにおける「ホットワイヤ1」、「コールドワイヤ2」、「回路部17」、「モールドケース3」、「回路モジュール」、「メイン空気流路14」、「貫通孔16」、「導電性ケース6」、「ハウジング10」、「挿入孔18」、「突部」及び「空気流量計」は、それぞれ、本願補正発明のものにおける「発熱抵抗体」、「感温抵抗体」、「電子回路」、「ハウジング」、「回路モジュール」、「主通路」、「空気副通路」、「副通路構成部材」、「ボディ」、「挿入孔」、「ストッパ」及び「空気流量測定装置」に相当する。したがって、両者は、次の一致点及び相違点を有している。
【一致点】
発熱抵抗体及び感温抵抗体の出力信号を基に前記空気流量に関係した信号を出力する電子回路と、前記電子回路を内装保護するハウジングとを一体化した回路モジュール部と、
内燃機関の吸気通路である主通路を流れる空気の一部が流入し、内部に発熱抵抗体及び感温抵抗体を備えた空気副通路を構成し、前記回路モジュール部に接着あるいは溶着により結合された副通路構成部材と、
前記主通路を構成するボディの前記副通路構成部材が挿入される挿入孔に設けられたストッパとを備え、
前記空気副通路の入口面が前記主通路内に位置するように、前記ハウジング或いは前記空気副通路の構成部材を、前記主通路を構成するボディに取り付けてなる空気流量測定装置。
【相違点】
i.本願補正発明のものでは、ストッパは副通路構成部材が主通路へ落下しないようにする落下防止用として設けられているのに対し、引用発明のものでは、ストッパ(突部)は副通路構成部材(導電性ケース)が主通路(メイン空気通路)へ落下しないようにする落下防止用として設けられているかどうかが明記されていない点
ii.本願補正発明のものでは、副通路構成部材と落下防止用ストッパとの間に、前記副通路構成部材が挿入孔に挿入された際には前記ストッパと前記副通路構成部材とが干渉しないような間隙を設けているのに対し、引用発明のものでは、当該間隙が設けられていない点
ウ.判断
相違点iについて;
引用刊行物の第4図に示される挿入状態において、導電性ケース6(副通路構成部材)の接着あるいは溶着による不具合が生じても導電性ケース6は突部に阻止されてメイン空気通路14(主通路)内へ落下しないことは明らかであるから、当該突部が落下防止用のストッパとして機能していることは自明である。
してみれば、相違点iは実質的な相違点ではない。
相違点iiについて;
「副通路構成部材が挿入孔に挿入された際には前記ストッパと前記副通路構成部材とが干渉しないような間隙」(以下、「構成A」という。)の意味内容を検討すると、本願明細書中には「干渉」について、「ボディ1に設置される挿入孔19の一部に、副通路構成部材7を挿入するに際には干渉せず、副通路構成部材7が落下した場合、副通路構成部材7と回路モジュール部18の接触面が抜け落ちないような、副通路構成部材落下防止用ストッパ11を設置する」(段落0009)と記載されている。また、「干渉」は通常「立ち入って無理に関係する」ことを意味するから、構成Aは「副通路構成部材が挿入孔に挿入された際にはストッパが副通路構成部材の挿入を妨げない、或いは、触れ合わないような間隙」を意味するものと解される。ところで、構成要素甲を構成要素乙に挿入するに際し、挿入の円滑化を図るために挿入孔に挿入された状態で両者間に適宜の間隙が形成されるように両者の寸法関係を定めることは機械設計上普通に行い得る技術手段にすぎず、また、「間隙」を鉛直方向(落下方向)に設けると限定的に解する理由も見当たらない以上、引用発明のものに当該技術手段を適用して、導電性ケース6(副通路構成部材)と突部(ストッパ)との間に構成Aのような間隙を構成することは容易に想到し得る設計的事項である。
なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において「副通路構成部材とストッパとの間に間隙が設けられているため、通常時(副通路構成部材が回路モジュール部にきちんと接着あるいは溶着されている場合)には、これらは接触しないため、内燃機関の運転などによる振動を受けても、ストッパが副通路構成部材との接触によって事前(接着あるいは溶着不良が発生し、副通路構成部材が回路モジュールから剥れて、主通路内へ落下を始める時よりも前)に破壊されてしまうことが防止できます。これにより、接着あるいは溶着不良という不測の事態が起きてしまった場合でも、健在するストッパにより、副通路構成部材の主通路への落下を着実に防止するという作用効果を奏することができます。
これに対して引用文献1では、間隙が設けられていないので、振動等により、事前にストッパが破壊する可能性があり、上述した作用効果を奏することはできません。
尚、内燃機関の吸気通路である主通路内は、通路外に対して圧力差が生じる為、引用文献1の挿通孔(18)付近で、ハウジング(10)と導電性ケース(6)との間に空隙を設けることは漏れ防止の点から通常考えられることではありません。従って、本願請求項1の「前記副通路構成部材と前記ストッパとの間に、前記副通路構成部材が前記挿入孔に挿入された際には前記ストッパと前記副通路構成部材とが干渉しないような間隙を設けたこと」は実施の過程において適宜なし得る程度の事項ではありません。」と述べており、当該間隙は、内燃機関の運転などによる振動をストッパに伝達しない程度の間隙と主張しているが、当該振動を考慮した間隙については、当初明細書等に明示的に記載されていないだけでなく、当初明細書等の記載から自明でもないことは明らかであるから、審判請求人の主張は明細書の記載に基づくものではない。また、構成Aについての意味内容は前記したとおりであるから、審判請求人の主張は採用できない。
よって、本願補正発明は、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
エ.むすび
以上のとおり、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、上記補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成13年7月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明2」・・・「本願発明5」などという。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、本願発明1は、次のとおりのものである。
「 発熱抵抗体及び感温抵抗体の出力信号を基に前記空気流量に関係した信号を出力する電子回路と、前記電子回路を内装保護するハウジングとを一体化した回路モジュール部と、
内燃機関の吸気通路である主通路を流れる空気の一部が流入し、内部に発熱抵抗体及び感温抵抗体を備えた空気副通路を構成し、前記回路モジュール部に接着あるいは溶着により結合された副通路構成部材と、
前記主通路を構成するボディの前記副通路構成部材が挿入される挿入孔に設けられ、前記副通路構成部材の前記主通路内への落下防止用ストッパと、を備え、
前記空気副通路の入口面が前記主通路内に位置するように、前記ハウジング或いは前記空気副通路の構成部材を、前記主通路を構成するボディに取り付けてなる空気流量測定装置において、
前記副通路構成部材と前記ストッパとの間には、間隙が設けられていることを特徴とする空気流量測定装置。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記項目「(2)-2 ア.引用刊行物及び該刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明1は、前記項目「(2)-2〈独立特許要件について〉」で検討した本願補正発明の構成において、「間隙」に関し「前記副通路構成部材が挿入孔に挿入された際には前記ストッパと前記副通路構成部材とが干渉しないような」の事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記項目「(2)-2〈独立特許要件について〉」に記載したとおり引用刊行物(引用例)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
上記のとおり、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-16 
結審通知日 2004-02-17 
審決日 2004-03-01 
出願番号 特願平7-133169
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯野 茂  
特許庁審判長 西川 一
特許庁審判官 樋口 信宏
三輪 学
発明の名称 空気流量測定装置  
代理人 春日 讓  
代理人 春日 讓  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ