【重要】サービス終了について

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1095599
審判番号 不服2002-3281  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-26 
確定日 2004-04-16 
事件の表示 平成 7年特許願第237612号「キャリッジの仮止め機構」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月 4日出願公開、特開平 9- 58096〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年8月23日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年12月8日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という)。
「キャリッジの一部に仮止め用の部材を挿通させる窓孔が設けられ、またベースフレームのキャリッジの走行方向中央部に前記仮止め用の部材の一端を係止する係止孔が設けられ、
前記仮止め用の部材が、前記窓孔と係止孔とに挿通される部材と、前記キャリッジの外縁部に沿って挿入される部材とで構成されていて、前記仮止め用部材の前記窓孔を貫通した部材の一端を前記係止孔に係止させて前記キャリッジを走行方向の中央部で係止するキャリッジの仮止め機構。」

2.引用例
これに対して、当審が通知した拒絶の理由に引用された特開昭62-83167号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている(記載中、「・・・」は中略を示す)。
a.「本発明は・・・移動自在なキャリッジを有するプリンタ等を梱包し、輸送する時等に用いられるキャリッジストッパに関するものである。」(1頁左下欄10〜13行)
b.「このようなストッパを設けた従来構造を第3図及び第4図に示す。・・・両図において、符号1で示すものはプラテンで、プリンタのフレーム2の左右の側板3,4間に回転自在に軸承されている。・・・左右の側板3,4間にはリニアパルスモータの固定子8が横架されており、この固定子8に図示を省略したスライダを介してキャリッジ9が摺動自在に取り付けられている。このキャリッジ9の一方の側面からは突片10が突設されており、この突片10には透孔10aが形成されている。」(1頁右下欄8行〜2頁左上欄5行)
c.「リニアパルスモータに通電することによりキャリッジ9をプラテン1に沿って移動させることにより、記録紙7に対してキャリッジ9上の記録ヘッドを介して記録を行なう。」(2頁左上欄7〜10行)
d.「プリンタを梱包して輸送する場合においてはキャリッジ9をフレームの一方の側板3側に押しつけ、ドライバ11を使ってねじ11aをキャリッジの突片10の透孔10a中に嵌合させ固定子8に対してねじ込んで固定する。」(2頁左上欄11〜15行)
e.「開梱時においてはユーザがドライバを使ってねじ11aをはずさなけれならず、ドライバが無い場合にはキャリッジを自由にすることはできない。」(2頁左上欄18〜20行)
f.第4図において、上記記載事項dと共にみれば、ねじ11aが、透孔10aに嵌合状に挿通・貫通して、ねじ11aの頭部と反対側の一端から固定子8にねじ込まれる様子が看取でき、ねじ11aの該一端が尖っておらず、かつ、固定子8は硬いものであるから、固定子8にねじ11aがねじ込まれる部分(以下、「ねじ込み部」という)が設けられていることは明らかである。
これらの記載を含む明細書及び図面の全記載によれば、引用例1には、従来から知られていた発明として、
「キャリッジ9の一方の側面から突設した突片10にプリンタの梱包・輸送時にキャリッジ9を固定するためのねじ11aを挿通させる透孔10aが設けられ、またプリンタのフレーム2の左右の側板3,4間に横架された固定子8のキャリッジ9の走行方向の側板3側に前記ねじ11aの一端を固定するねじ込み部が設けられ、
前記ねじ11aの前記透孔10aを貫通した一端を前記ねじ込み部に固定させて前記キャリッジ9を走行方向の側板3側で固定するキャリッジ9のキャリッジストッパ。」(以下、「引用発明」という)が記載されていることが認められる。

3.対比
本願発明(前者)と引用発明(後者)とを対比するに、後者の「キャリッジ9の一方の側面から突設した突片10」、「透孔10a」、「キャリッジストッパ」は、それぞれ、前者の「キャリッジの一部」、「窓孔」、「仮止め機構」に対応し、後者の「プリンタの梱包・輸送時にキャリッジ9を固定するためのねじ11a」はキャリッジを仮止めしておくという機能において前者の「仮止め用の部材」及び「仮止め用部材」(以下においては「仮止め用の部材」に統一して用いる)に対応する。
また、後者の「プリンタのフレーム2の左右の側板3,4間に横架された固定子8」は「本体側の固定部材」といえる点で前者の「ベースフレーム」と共通する。
さらに、後者の「走行方向の側板3側」は「走行方向の所定部」といえる点で前者の「走行方向中央部」及び「走行方向の中央部」(以下においては「走行方向の中央部」に統一して用いる)と共通する。
さらにまた、後者の「固定するねじ込み部」は「仮止めする仮止め部」といえる点で前者の「係止する係止孔」と共通する。
そうすると、両者は、「キャリッジの一部に仮止め用の部材を挿通させる窓孔が設けられ、また本体側の固定部材のキャリッジの走行方向の所定部に前記仮止め用の部材の一端を仮止めする仮止め部が設けられ、前記仮止め用の部材の前記窓孔を貫通した一端を前記仮止め部に仮止めさせて前記キャリッジを走行方向の所定部で仮止めするキャリッジの仮止め機構。」の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>前者では、「本体側の固定部材」、「仮止め部」、仮止め部への「仮止め」をそれぞれ「ベースフレーム」、「係止孔」、「係止」とし、「仮止め用の部材」を「前記窓孔と係止孔とに挿通される部材と、前記キャリッジの外縁部に沿って挿入される部材とで構成」して、窓孔を貫通した部材の一端をベースフレームに設けた係止孔に係止させているのに対して、後者では、「本体側の固定部材」、「仮止め部」、仮止め部への「仮止め」をそれぞれ「プリンタのフレーム2の左右の側板3,4間に横架された固定子8」、「ねじ込み部」、「固定」とし、「仮止め用部材」をねじで構成して、窓孔を貫通した一端を固定子8に設けたねじ込み部に固定させている点。
<相違点2>「走行方向の所定部」が、前者では「走行方向の中央部」であるのに対して、後者では「走行方向の側板3側」である点。

4.当審の判断
<相違点1について>
相違点1について検討するに、引用発明におけるキャリッジはプリンタの梱包・輸送時に固定されていればよいものであるから、キャリッジの固定先としては、プリンタ本体に固定されていてキャリッジの走行方向に沿うものであれば適宜選択でき、かつ、そのようなものとしてベースフレームは例示するまでもなく周知のものであって、引用発明に係るプリンタにおいても左右の側板3,4間に当然に存するものであるから、固定先を固定子8からベースフレームとすることは容易に想起できることである。
さらに言えば、本願発明においては、キャリッジが何のためのものであり、ベースフレームがどのようなものであるのかについての規定がなく、また、本願出願時の特許請求の範囲の各請求項においてはプリンタに係るものであることが明確に規定されていたところ、その後の補正によりその規定が意図的に削除された経緯を勘案すれば、どのような装置・機器・機械等において用いられるものであれ、ベースフレームは、キャリッジと称し得るものをその走行方向の中央部で仮止めできるようなものであって、かつ、ベースフレームと称し得るようなものであればどのようなものでもよいといえるから、例えば、引用発明において固定子8とは別にキャリッジの仮固定専用のフレームを新たに設けてベースフレームと称してもよいのであり、その程度のことは容易なことといえるから、この点でもキャリッジの固定先をベースフレームとしたことに格別のものは認められない。
次に、本願発明において係止孔がどのようなものでありどのように係止するのかの規定がないことと、本願図面の図1の記載とを勘案すると、係止孔は単なる孔であってもよく、係止方法は係止と称することができれば単なる挿通によるものであってもよいものであり、そのような係止手段は日常的にも普通にみられる周知・慣用の手段であるし、引用例の記載(記載事項e等)を参酌すれば、ねじ以外の手段を考慮することが示唆されているともいえるから、引用発明においてもそのような係止手段を採用することは必要に応じて適宜なし得ることにすぎない。
請求人は、平成15年12月8日付け意見書において、引用発明におけるねじのようにドライバーなどの工具を要することなく、引き抜きにより簡単に取り外しができる旨主張しているが、上記周知・慣用の手段においてそのような効果は当業者にとって自明ともいえるものであり、かつ、そのような効果によって上記周知・慣用の手段すなわち単なる孔に単に挿通する係止手段を想起することが発明力を要することであったなどとはいえないから、この主張は採用できない。
次に、本願発明における仮止め用の部材は、窓孔と係止孔とに挿通される部材(以下においては「第1部材」という)と、キャリッジの外縁部に沿って挿入される部材(以下においては「第2部材」という)とで構成されており、第1部材は、引用発明においては上述したようにねじによる手段にかえて上記周知・慣用の手段を採用したことに伴う部材ということができるが、第2部材は上記周知・慣用の手段を採用したことに伴う部材とまではいえない。
しかし、本願発明においては、第1部材と第2部材とがどのような材料で作られているのか、棒状のものであるのか板状のものであるのかそれ以外のものであるのか、両部材がどのように連接されているのか、などについて何ら規定がなく、さらに、上述したようにキャリッジがどのようなものかの規定もなく、その外縁部がどのようなものか規定されているとはいえず、そのような外縁部に「沿って挿入される」ことについても何らの規定もないことなどを勘案すると、両部材は例えばピンのような棒状のものでもよく、両部材間は単に一体的につながっていればどのようになっていてもよく、そのうち第2部材は、第1部材が係止孔に挿通されることに伴いキャリッジと称し得るものにおいて外縁部と称し得る部位に単に沿って移動するものでもよいものであり、その機能も、第1部材が窓孔と係止孔を挿通してもキャリッジと称し得るものに単に引っ掛かっていられるような機能などであってもよいものであるから、その程度のことは当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることであるし、さらには、係止孔に挿通される部材に係止孔を設けた部材の外縁部に沿う部材を連接することは、例えば係止用のピンなどにおいても普通に採用されていること(実願昭61-195491号(実開昭63-99014号)のマイクロフイルム(第4図)、実公昭37-29326号公報(第4図)等参照)でもあるから、仮止め用の部材を上記第1部材と第2部材とで構成したことは少なくとも当業者であれば容易になし得たことといえる。
請求人は、上記意見書において、上記第1部材と第2部材とから成る本願発明の仮止め用の部材にはその位置を見つけ易いという効果がある旨主張しているが、本願発明においては、一部上述したことでもあるが、キャリッジがどのような装置・機器・機械等にどのように設けられ、キャリッジがどのようなものであり、窓孔が設けられるキャリッジの一部がどのような部位であり、その周囲はどのようになっており、第1部材や第2部材がどのような材料・形状・大きさからなるものであるのか等々について何ら規定のないものであり、仮止め用の部材の位置を格別に見つけ易いとはいえないから、この主張も採用できない。
以上のことから、相違点1は当業者が容易になし得た設計の変更といわざるを得ない。
<相違点2について>
本願発明は、上述したように、キャリッジがどのような装置・機器・機械等にどのように設けられているどのようなものであるのか等についての規定をしていないものであると共に、実施例に示されるようなフレキシブルケーブルを設けていなくてもよいものであるから、キャリッジを走行方向の中央部に仮止めしたことに特に意味があるとはいえず、かつ、当審が通知した拒絶の理由に引用例1と共に引用された実願昭60-155040号(実開昭62-63162号)のマイクロフイルム(以下、「引用例2」という)には、プリンタのキャリッジを走行方向の中央部付近に仮止めすることが記載されていることに加え、引用発明のキャリッジを走行方向の中央部に仮止めしてはならないとする理由もないから、相違点2も当業者が容易になし得た設計の変更といえる。

そして、相違点1,2に係る構成を含む本願発明の作用効果も予測できるものにすぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知・慣用の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-17 
結審通知日 2004-02-18 
審決日 2004-03-02 
出願番号 特願平7-237612
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 湯本 照基  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 中村 圭伸
番場 得造
発明の名称 キャリッジの仮止め機構  
代理人 西川 慶治  
代理人 木村 勝彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ