• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F
管理番号 1095793
審判番号 不服2002-9283  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-23 
確定日 2004-04-21 
事件の表示 平成 7年特許願第172007号「コンデンサ用冷媒流通管およびこれを用いたカー・クーラ用コンデンサ」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 1月28日出願公開、特開平 9- 26278]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年7月7日の出願であって、その請求項1〜5に係る発明は、平成14年3月14日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりのものと認めるところ、その請求項1に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 平らな上下壁と、上下壁にまたがるとともに長さ方向にのびかつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備え、内部に並列状の冷媒通路を有する偏平管よりなり、補強壁には、並列状の冷媒通路どうしを通じさせる複数の連通孔があけられているコンデンサ用冷媒流通管において、
各補強壁におけるすべての連通孔の占める割合である開口率が10〜40%の範囲内にあるコンデンサ用冷媒流通管。」

2.引用文献に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶理由に引用した、本願の出願前国内において頒布された刊行物である、特開平6-281373号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下のような記載がある。

・特許請求の範囲の請求項1に、
「平らな上下壁と、上下壁にまたがるとともに長さ方向にのびかつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備え、内部に並列状の冷媒通路を有する偏平状アルミニウム管よりなり、補強壁には、並列状の冷媒通路どうしを通じさせる複数の連通孔があけられており、偏平状アルミニウム管がアルミニウム板より形成せられたものであり、補強壁が鍛造せられた突条よりなる熱交換器用冷媒流通管。」

・第2頁第2欄4〜6行に、
「本発明は、熱交換器用冷媒流通管、とくにカー・クーラに使用せられるコンデンサ用冷媒流通管に関する。」

・第3頁第4欄36行〜第4頁12行に、
「また、管高さは、0.8〜3.5mmの範囲、とくに1.4〜2.3mmの範囲内にするのが好ましい。管高さが0.8mm未満では、冷媒通路が低くなるため、冷媒の圧力損失を招き、3.5mmを超えると、熱交換器をコンパクト化し難いばかりか、通過空気の抵抗が増大して熱交換効率が悪くなる。
・・・・・
また、補強壁の高さは、管高さと同じ理由により、0.5〜2.5mmの範囲、とくに0.8〜1.5mmの範囲内にするのが好ましい。
また、連通孔の断面積は、0.07〜5.0mm2の範囲、特に0.2〜1.25mm2の範囲内にするのが好ましい。連通孔の断面積が0.07mm2未満では、冷媒の交流が十分に行なわれないばかりか、ろう接時に流れたろうで孔が塞がるおそれがあり、5.0mm2を超えると、冷媒流通管の耐圧性が悪くなる。
さらに、連通孔のピッチは、4.0〜100mmの範囲、とくに10〜50mmの範囲内にするのが好ましい。連通孔のピッチが4.0mm未満では、冷媒流通管の耐圧性が悪くなり、100mmを超えると、冷媒の交流が十分に行なわれない。」

上記記載及び図面を参照すると、引用文献には、以下の発明が記載されている。

「平らな上下壁と、上下壁にまたがるとともに長さ方向にのびかつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備え、内部に並列状の冷媒通路を有する偏平管よりなり、補強壁には、並列状の冷媒通路どうしを通じさせる複数の連通孔があけられているコンデンサ用冷媒流通管。」

3.対比・判断
本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、
両者は、
「平らな上下壁と、上下壁にまたがるとともに長さ方向にのびかつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備え、内部に並列状の冷媒通路を有する偏平管よりなり、補強壁には、並列状の冷媒通路どうしを通じさせる複数の連通孔があけられているコンデンサ用冷媒流通管。」
の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点]本願発明では、各補強壁におけるすべての連通孔の占める割合である開口率が10〜40%の範囲内にあるのに対して、引用文献には、前記開口率について明記されていない点。

上記相違点について検討すると、補強壁の高さをH、連通孔の断面積をA、連通孔のピッチをPとした場合、引用文献には、H:0.8〜1.5mm、A:0.2〜1.25mm2、P:10〜50mmの範囲にするのがとくに好ましいと記載されており、補強壁の高さ、連通孔の断面積、連通孔のピッチをこの範囲とした場合、開口率は0.26〜15.6%の範囲となり、10〜15.6%の部分で本願発明と開口率が一致する。コンデンサ用冷媒流通管の設計に際して、設計者は、熱交換効率、熱交換器のコンパクト化、冷媒流通管の耐圧性等を考慮してそれらの数値を定めるところ、引用文献の記載から、補強壁の高さが所定値を超えれば、通過空気の抵抗が増大して熱交換効率が悪くなり、連通孔の断面積が所定値未満、あるいは連通孔のピッチが所定値を超えれば冷媒の交流が十分に行われず熱交換効率が悪くなることが把握できるから、引用文献に記載された発明において、熱交換効率の向上を最優先して、補強壁の高さ及び連通孔のピッチとして前記範囲内の小さな値を、また連通孔の断面積として前記範囲内の大きな値を採用することにより開口率を大きくして本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
そして、図15、図16をみても、本願発明の「開口率が10〜40%の範囲内」の数値限定について臨界的意義を有すると認めることはできず、本願発明の効果は、引用文献に記載された発明から予測し得る程度であって、格別のものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願の出願前に国内において頒布された引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-06 
結審通知日 2004-02-17 
審決日 2004-03-01 
出願番号 特願平7-172007
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐野 遵  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 原 慧
櫻井 康平
発明の名称 コンデンサ用冷媒流通管およびこれを用いたカー・クーラ用コンデンサ  
代理人 清末 康子  
代理人 渡邊 彰  
代理人 日比 紀彦  
代理人 岸本 瑛之助  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ