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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1095856
審判番号 不服2000-15130  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-21 
確定日 2004-04-26 
事件の表示 平成 8年特許願第 36964号「マルチプロセッサシステムおよびマルチプロセッサシステムにおいてタスクを実行する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月 5日出願公開、特開平 8-292932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年2月24日に出願された特願平7-36836号を基礎として優先権を主張する平成8年2月23日の出願であって、その請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年10月23日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項9に記載された次のとおりのものと認める。
「複数のタスクを並列に実行する複数のプロセッサと、該複数のプロセッサの状態を管理し、該複数のプロセッサのそれぞれからの問い合わせに応じて「空き状態」のプロセッサの識別子を返す状態管理手段とを備えたマルチプロセッサシステムであって、
該複数のプロセッサのうち第1タスクを実行中の第1プロセッサが新たな第2タスクを生成した場合には、該第1プロセッサが、該第2タスクの実行を依頼するために、該状態管理手段に対して「空き状態」のプロセッサがあるか否かを問い合わせ、
該問い合わせの結果、「空き状態」のプロセッサがない場合には、該第1プロセッサによる該第1タスクの実行を中断し、該第1プロセッサによる該新たな第2タスクの実行を開始する、マルチプロセッサシステム。」
2.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開昭63-163566号公報(昭和63年7月7日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、並列計算機の負荷分散方式に関して、次の事項が記載されている。
(a)それぞれプログラムを実行する複数の要素プロセッサで構成される並列処理計算機システムにおいて、各要素プロセッサに対して設けられ、各PEがアイドル状態になった場合に、そのことを示すフラグが各PEによりセットされる複数のレジスタと、該複数のレジスタ内の少なくとも一つに該フラグがセットされているときにそのことを示す信号を該複数の要素プロセッサに通知する手段と、
該複数のプロセッサの一つからの読み出し要求に応答してアイドル状態フラグがセットされた複数のレジスタの中で最も優先度が高い要素プロセッサに対する一つのレジスタを検出し、その番号を、次に負荷を配分すべきプロセッサの番号として該一つのプロセッサに通知する手段とを設けたことを特徴とする並列計算機。(特許請求の範囲)
(b)第1図は、本発明の装置構成図である。装置は、ホストプロセッサ101、PE群102、Idle状態登録・制御ブロック103、PE群、ホストプロセッサ、Idle状態登録・制御ブロックを結合するネットワーク104、及びidle PEが発生したことをPE群に知らせるidle 信号線105により構成される。第2図は、PE即ち要素プロセッサ102の構成図である。PEは、・・・ローカルメモリ202、データ転送制御203、処理実行部204・・・により構成される。・・・処理実行部204は、ローカルメモリ202からプログラム実行に必要な情報(パラメータなど)を取り込み、プログラムを実行し、実行結果を再びローカルメモリに書き込む。プログラム実行の結果、負荷の分配が可能になった場合、信号線105をチェックし、idlePEがある場合には、そのPEに向けてデータ転送制御部203から負荷分配のためのパケットを送出する。(第2頁右下欄第10行〜第3頁左上欄第17行)
(c)第4図にidle PE検出処理フローを示す。PEは、分配可能な処理が発生すると、idle PEがあるか否かをidle信号105を読んでチェックする。idlePEがある場合には更にidlePE番号をチェックする。idlePE番号がわかった場合は、処理を分配する為のパケットを生成し、前記のidlePEに対しパケットを送出する。」(第3頁左下欄第3行〜第9行)
上記記載事項から、引用例1には、
「それぞれプログラムを実行する複数の要素プロセッサと、各要素プロセッサがアイドル状態になったことを示すフラグがセットされる複数のレジスタを有し、前記フラグがセットされていることを示すidle信号を前記複数の要素プロセッサに通知すると共に、要素プロセッサの一つからの読み出し要求に応答して、前記フラグがセットされたレジスタの番号を、次に処理を分配すべきアイドル状態の要素プロセッサの番号として当該要素プロセッサに通知するIdle状態登録・制御ブロックとを備えた並列計算機であって、ある要素プロセッサがプログラム実行の結果、分配可能な処理が発生すると、当該要素プロセッサが、処理を分配するために、前記Idle状態登録・制御ブロックが通知するidle信号を読んでアイドル状態である要素プロセッサがあるか否かをチェックする、並列計算機。」(以下、引用例1に記載された発明という。)が記載されていると認められる。

同じく引用された、特開平5-53779号公報(平成5年3月5日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、通信媒体を介して複数接続された計算機ネットワークにおけるプログラム自動生成処理の分散方式に関して、以前に自計算機が受け取り負荷が高いために他の計算機に依頼したプログラム自動生成処理依頼が、他の計算機で受け付けられることなく再び自計算機に戻ってきた場合、自計算機がその処理を受け付けることが記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「要素プロセッサ」及び「それぞれプログラムを実行する複数の要素プロセッサを備えた並列計算機」は、本願発明の「プロセッサ」及び「複数のタスクを並列に実行する複数のプロセッサを備えたマルチプロセッサシステム」に相当し、引用例1に記載された発明の「各要素プロセッサがアイドル状態になったことを示すフラグがセットされる複数のレジスタを有し、前記フラグがセットされていることを示すidle信号を前記複数の要素プロセッサに通知すると共に、要素プロセッサの一つからの読み出し要求に応答して、前記フラグがセットされたレジスタの番号を、次に処理を分配すべきアイドル状態の要素プロセッサの番号として当該要素プロセッサに通知するIdle状態登録・制御ブロック」は、複数のレジスタにより各要素プロセッサがアイドル状態か否か管理しており、要素プロセッサの一つからの読み出し要求に応答して、前記フラグがセットされたレジスタの番号を、次に処理を分配すべきアイドル状態の要素プロセッサの番号として当該要素プロセッサに通知することから、本願発明の「複数のプロセッサの状態を管理し、該複数のプロセッサのそれぞれからの問い合わせに応じて「空き状態」のプロセッサの識別子を返す状態管理手段」に包摂される。
そして、引用例1に記載された発明において、「ある要素プロセッサがプログラム実行の結果、分配可能な処理が発生すると、当該要素プロセッサが、処理を分配するために、前記Idle状態登録・制御ブロックが通知するidle信号を読んでアイドル状態である要素プロセッサがあるか否かをチェックする」ことは、本願発明において「該複数のプロセッサのうち第1タスクを実行中の第1プロセッサが新たな第2タスクを生成した場合には、該第1プロセッサが、該第2タスクの実行を依頼するために、該状態管理手段に対して「空き状態」のプロセッサがあるか否かを問い合わせ」ることに相当する。
したがって、両者は、
「複数のタスクを並列に実行する複数のプロセッサと、該複数のプロセッサの状態を管理し、該複数のプロセッサのそれぞれからの問い合わせに応じて「空き状態」のプロセッサの識別子を返す状態管理手段とを備えたマルチプロセッサシステムであって、
該複数のプロセッサのうち第1タスクを実行中の第1プロセッサが新たな第2タスクを生成した場合には、該第1プロセッサが、該第2タスクの実行を依頼するために、該状態管理手段に対して「空き状態」のプロセッサがあるか否かを問い合わせる、マルチプロセッサシステム。」であることで一致し、本願発明が「該問い合わせの結果、「空き状態」のプロセッサがない場合には、該第1プロセッサによる該第1タスクの実行を中断し、該第1プロセッサによる該新たな第2タスクの実行を開始する」ようにしているのに対して、引用例1に記載された発明では、アイドル状態の要素プロセッサがない場合、どのような処理を行うのか明記されていない点で相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討すると、引用例2に、「以前に自計算機が受け取り負荷が高いために他の計算機に依頼したプログラム自動生成処理依頼が、他の計算機で受け付けられることなく再び自計算機に戻ってきた場合、自計算機がその処理を受け付けること」が記載されているように、他に分配可能な処理であっても、他のプロセッサが受け取れない、あるいは受け取らない場合、自プロセッサがその処理を行うようにすることはごく当たり前のことであり、引用例1に記載された発明においても、他に空きのプロセッサがないのであれば、分配可能な処理を自要素プロセッサで処理するようにすることは自然ななりゆきであり、何ら阻害要因のないことである。
そして、プログラム実行の結果、分配可能な処理が発生し、自要素プロセッサでその分配可能な処理を実行する場合に、当該分配可能な処理を発生させたプログラムが処理の途中であって、当該分配可能な処理の結果を必要とする場合には、当該プログラムの処理を中断することは必然であり、本願発明も、第1のタスクが第2のタスクの結果を必要とするものを排除するものではないから、結局、上記相違点を格別のものと認めることはできない。

なお、請求人は、当審の通知した拒絶の理由に対して、平成15年10月23日付の意見書において、「引用例2に記載の発明では自計算機(プロセッサ)の状態を処理受付判定に用いるが、他計算機(プロセッサ)の状態を処理受付判定に用いることがないので、引用例1に記載された発明である「分配可能な処理が発生するとその処理を配分するためにアイドル状態にある他のプロセッサの有無を通知」により通知された情報を引用例2に記載の発明で使用することはありえず、したがって、引用例2に記載の発明に引用例1に記載の発明を組み合わせることはできない。」旨主張しているが、この主張は、基本引用例を引用例1とする当審の拒絶の理由の論理とは別個のものであり、審理の結論に影響を及ぼすものではない。

5.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-03 
結審通知日 2004-03-04 
審決日 2004-03-16 
出願番号 特願平8-36964
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和  
特許庁審判長 徳永 民雄
特許庁審判官 須原 宏光
平井 誠
発明の名称 マルチプロセッサシステムおよびマルチプロセッサシステムにおいてタスクを実行する方法  
代理人 山本 秀策  

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