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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
管理番号 1095927
審判番号 不服2000-4483  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-02-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-30 
確定日 2004-04-30 
事件の表示 平成 3年特許願第199163号「生分解性ポリマー組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 2月19日出願公開、特開平 5- 39381〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.本願発明
本願は、平成3年8月8日の出願であって、請求項1〜4に係る発明は、平成14年9月13日付け及び平成14年10月4日付け手続補正書により補正された明細書の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されたとおりのもと認められ、請求項1には次のとおり記載されている。
「【請求項1】 ポリ乳酸または乳酸とヒドロキシカルボン酸のコポリマーを主成分とする熱可塑性ポリマーに、加工澱粉を、または、澱粉および/または加工澱粉と相溶化剤を混合したことを特徴とする生分解性ポリマー組成物。」(以下、本願発明という)
II.引用例に記載の事項
原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である特開昭62-280220号公報(以下、引用例1という。)には、以下の記載がされている。
「低分子量のポリラクチド、ポリグリコリド又はそれらの共重縮合体を、・・・からなる高分子量ポリラクチド、ポリグリコリド又はそれらの共重縮合体の製造法。」(特許請求の範囲)
「ポリラクチド、・・・徐放性重合体として、縫合糸等の生体分解性医用材料、除草剤、土壌殺菌剤等の土壌処理用農薬組成物、マイクロカプセルとしての基剤等として近年多方面に利用されている。」(1頁右下欄1〜5行)
「本発明に使用するモノマーは、乳酸、グリコール酸であって、乳酸に関してはD型またはL型のいずれであっても、あるいはラセミ体であってもよい。」(2頁左下欄2〜5行)
「因って、徐放性基剤として例えば生体吸収材料、医薬、農薬等の薬剤徐放性マトリックス、マイクロカプセル基剤、土壌改良剤への利用のみならず、崩壊性農業用フイルム・・・等、幅広い利用用途を有する。
更に本発明品は、ある一定期間までの分解性が著しく低く、その後急速に分解が進行するという従来の直接脱水重縮合法で得られなかった分解特性を有することにより・・・長所を有する。」(4頁左上欄6〜17行)
同じく、引用された刊行物である特開平3-129341号公報(以下、引用例2という。)には、以下の記載がされている。
「(1)樹脂成形に際して、微生物分解性を有し、・・・合成ポリマーの組成をもって成形してなることを特徴とする・・・包装部材」(特許請求の範囲第1項)
「本発明の目的は、・・・包装部材に用いる合成ポリマーとして使用目的をはたした後廃棄された場合は天然に存在する微生物及び/又は光により強度が低下又は分解し、ひいては土壌に実質的に還元される合成ポリマーを用いた写真感光材料用の包装部材を提供することである。」(2頁左下欄11行〜16行)
「本発明に用いる分解性合成ポリマーは大別すると下記のように微生物分解性合成ポリマー・・・になる。
(1)微生物分解性合成ポリマー
(a)デンプン配合合成ポリマー
(b)変性デンプン配合合成ポリマー」(2頁右下欄14〜19行)
「本発明による微生物分解性合成ポリマーとは自然廃棄されたとき微生物により分解される(本質的生分解性を含む)合成ポリマーをいう。」(3頁左上欄12〜14行)
「本発明に用いられる微生物分解性合成ポリマーは、・・・主鎖に脂肪族エステル結合をもつポリマー・・・などの樹脂が好ましい。
さらに、微生物分解性が確実であり・・・醗酵生産による微生物分解合成ポリマーがある。
代表例を以下に記載する。
(1)ポリエステル類(・・・)
Poly(3・hydroxybutyrate);略号P(3HB)」(3頁右下欄18行〜4頁左上欄13行)
「さらに、微生物分解の促進剤としては安価で・・・好ましいデンプン(スターチともいう。変性デンプンも含む。・・・)を合成ポリマーに高濃度にブレンドしたマスターバッチがあり、」(4頁左下欄9〜14行)
III.対比・判断
引用例1には、ポリラクチドについて記載され、これはポリ乳酸に該当する。また、引用例1に記載の徐放性基剤としての生体吸収材料や崩壊性農業用フイルムは生分解性ポリマーからなる製品といえるものである。
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「ポリ乳酸を主成分とする熱可塑性ポリマーからなる生分解性ポリマー」の点で一致し、次の点で相違している。
本願発明が、「熱可塑性ポリマーに、加工澱粉を混合した生分解性ポリマー組成物」としているのに対し、引用例1に記載の発明においては、そのような記載をしていない点
そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、生分解性ポリマーに分解性の促進剤として変性デンプンが配合されることが示されている。そして、変性デンプンが加工デンプンに含まれることは技術常識(例えば、特開昭63-219696号公報、特開昭60-139480号公報参照)である。
そうすると、生分解性ポリマーの分解性を促進するために加工デンプンを配合する技術が引用例2に示されているのであるから、生分解性の性質を有するポリマーである引用例1に記載のポリ乳酸の分解性の促進を図ろうとする場合には、当業者であれば引用例2に記載の技術を適用して、分解性促進付与を試みることは容易に想到し得ることといえる。また、ポリマーに各種配合剤を配合したものを一般にポリマー組成物として取り扱うことは技術常識であり、そして、引用例1に記載されているポリ乳酸からなる生分解性ポリマーに加工デンプンを配合すれば当然生分解性ポリマー組成物になるのである。
したがって、この相違点は、当業者が容易に成し得たものである。
そして、明細書の記載によっては、本願発明が格別予想外の効果を奏したものともいえない。
IV.むすび
したがって、本願発明は、引用例1〜2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-02 
結審通知日 2004-03-03 
審決日 2004-03-18 
出願番号 特願平3-199163
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野寺 務木村 順子  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 佐藤 健史
石井 あき子
発明の名称 生分解性ポリマー組成物  
代理人 金田 暢之  
代理人 石橋 政幸  
代理人 伊藤 克博  

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