ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
---|---|
管理番号 | 1095934 |
審判番号 | 不服2000-15924 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-10-05 |
確定日 | 2004-04-30 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第316645号「活性化プロテインCを有効成分とするプロテインC欠損症治療剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月27日出願公開、特開平 7-165605〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年12月16日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年11月6日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「活性化プロテインCを有効成分として含有するプロテインC欠損症治療剤。」(以下、「本願発明」という。) 2.刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-193229号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「プロテインC又は活性化プロテインCとヘパリンとを含有する抗血液凝固剤。」(特許請求の範囲第1項) (2)「プロテインCは・・・活性化され、活性化プロテインCとなり、血液凝固系の因子である血液凝固第VIII因子及び血液凝固第V因子を不活性化することはBiochemistry 19, 401-410(1980), Proc. Natl. Acad. Sci USA 79, 7200-7204(1982), J. Biol Chem 258, 1914-1920(1983)に示されている。」(第1頁右下欄第4〜12行) (3)「本発明者は・・・活性化プロテインC単独、あるいは、ATIII・ヘパリンでは得られないような非常に強い抗凝固作用を見出した。すなわち、本発明はヒトプロテインC又は活性化プロテインCとヘパリン、あるいはヒトプロテインC又は活性化プロテインCとヘパリン及びATIIIを有効成分とする抗血液凝固剤である。」(第3頁左上欄第6〜14行) (4)「試験例1 プロテインC欠乏血漿でのプロトロンビン時間の延長 プロテインCは、・・・。 プロテインC欠乏血漿にヘパリン及び活性化プロテインCを加え、37℃でインキュベートした後、通常のプロトロンビン時間の測定・・・に従い、・・・凝固時間を測定した。・・・。第1図よりヘパリン非添加活性化プロテインCでは凝固時間はほとんど延長しない(□-□)にもかかわらず、ヘパリンと活性化プロテインCの存在により、凝固時間の延長が認められる(○-○)ことが明らかである。」(第3頁左下欄)及び第1図(第4頁) 3.対比・判断 (1)特許法第29条第1項第3号について 本願発明と引用刊行物に記載の発明(上記摘示事項2.(1)参照。)を対比すると、両者は活性化プロテインCを有効成分として含有する医薬品である点で一致し、本願発明のものはプロテインC欠損症治療剤であるのに対し、引用刊行物に記載の発明は抗血液凝固剤である点で一応相違する。 そこで、上記相違点について検討すると、プロテインC欠損症の患者の多くが重い血栓塞栓症を患うことは当業者に周知のところである。(日経バイオテク編「日経バイオテクノロジー最新用語辞典91」、日経BP社、19991年4月25日、第577頁参照。) 一方、上記摘示事項2.(4)に記載されているように、引用刊行物に記載の発明にあっては、その抗血液凝固効果の検討に際し、プロテインC欠乏血漿を用いた試験を行っているところからみて、プロテインC欠損症の患者の血液の凝固に関連する疾患、例えば、血栓塞栓症の治療をも対象としていることは明らかである。したがって、引用刊行物に記載の発明においても、プロテインC欠損症の治療を対象としているといえる。 したがって、上記相違点は表現上の差異であって、実質的な差異があるとはいえない。 (2)特許法第29条第2項について 本願発明と引用刊行物に記載の発明との間の一致点、相違点については、上記(1)に記載したとおりである。 そこで、上記相違点について検討すると、上記摘示事項2.(4)に記載されているように、活性化プロテインCを含有する医薬品が、プロテインC欠乏血漿における血液凝固時間の延長効果があることは本願出願日前に公知である。 他方、プロテインC欠損症の患者の多くが重い血栓塞栓症を患うことは周知のところであり、これが当該患者の血液中のプロテインCの欠乏に起因していることは当業者に自明のことである。そうすると、活性化プロテインCを有効成分として含有する医薬品が、プロテインC欠乏血漿における血液凝固時間の延長効果を有することを知った当業者が、当該医薬品をプロテインC欠損症患者の血栓塞栓症の治療に使用してみることに格別の技術的困難性が存するとは認められない。 請求人は、引用刊行物に記載のものは「試験管内の実験であるのみならず、そもそも血液凝固時間を延長する効果自体が認められないのであるから、この記述のなかから『活性化プロテインCを有効成分として含有するプロテインC欠損症治療剤』なる発明を観念できる余地は全くない。」と主張する。(平成12年12月28日付手続補正書(方式)4.(4)丸1) しかるに、医薬品の発明においては、通常、動物実験を行うことにより医薬品としての効果が示される例が多いものの、必ずしも、動物実験によりその効果が確認されなければ発明として完成しないというものでもない。特に、抗血液凝固剤の効果の測定(例えば、プロトロンビン時間の測定)は、臨床の現場においてもin vitro下に行われており、単に、試験管内実験のみが行われているだけであるから、引用刊行物に抗血液凝固剤の発明が記載されていないとする請求人の主張は採用できない。 また、引用刊行物には、活性化プロテインC単独では血液凝固時間を延長できない、と記載されているとの主張については、確かに、引用刊行物には活性化プロテインC単独では凝固時間をほとんど延長しないと記載されているが、ヘパリンとの組合せにおいて、凝固時間を有意に延長することが記載されている。ところで、そもそも、本願発明は、その請求項1の記載から明らかなとおり、活性化プロテインC単独を有効成分とするプロテインC欠損症治療剤ではなく、活性化プロテインCを有効成分(の一成分)として含有するものであり、他の成分、例えば、ヘパリンとの併用を排除するものではない。しかも、本願発明の唯一の実施例である実施例4において、ヘパリンでDIC(汎発性血管内凝固症候群)をコントロールしているプロテインC欠損症の患者に対して活性化プロテインCを投与しており、本願発明においても活性化プロテインC単独でプロテインC欠損症の患者を治療している例は示されていないから、この点についての請求人の主張は理由がない。 4.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-17 |
結審通知日 | 2004-02-24 |
審決日 | 2004-03-15 |
出願番号 | 特願平5-316645 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬下 浩一 |
特許庁審判長 |
眞壽田 順啓 |
特許庁審判官 |
深津 弘 小柳 正之 |
発明の名称 | 活性化プロテインCを有効成分とするプロテインC欠損症治療剤 |
代理人 | 三原 秀子 |
代理人 | 三原 秀子 |