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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B |
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管理番号 | 1095949 |
審判番号 | 不服2001-12268 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-12-03 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-07-13 |
確定日 | 2004-04-30 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第122122号「使い捨ておむつ」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年12月 3日出願公開、特開平 5-317364]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年5月14日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。 「液透過性の表面シートと、液不透過性の防漏シートと、これら両シート間に配置された吸収体とを有する本体を備え、該本体には着用者の背側に位置する背側部、股下部に位置する股下部、腹側に位置する腹側部とが形成され、上記背側部の両側部にはファスニングテープが配置され、上記腹側部には上記ファスニングテープが止着されるターゲットテープが配置された使い捨ておむつにおいて、 上記本体は、長手方向中央がくびれた砂時計型に形成されており、そのくびれた部分に上記股下部が形成されており、砂時計型の本体の一方の幅広部には上記背側部が形成され、該本体の他方の幅広部には上記腹側部が形成されており、該背側部及び該腹側部には、上記吸収体から上記本体の長手方向の外方に延出するウエストフラップと、該吸収体の幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップとが形成されており、 上記腹側部は上記背側部より幅狭であり、且つ、少なくとも上記ターゲットテープの外端部近傍において、上記ターゲットテープの側縁から上記腹側部の側縁までの長さが、上記ファスニングテープの止着領域の長さよりも短く、 上記背側部の幅寸法W1に対する上記腹側部の幅寸法W2の比W2/W1が0.4〜0.8であり、 上記止着領域の長さTに対する上記ターゲットテープの側縁から上記腹側部の側縁までの長さSの比S/Tが0.4〜0.9であり、 上記防漏シートは透湿性を有していることを特徴とする使い捨ておむつ。」 2.引用例 1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の前である平成2年11月26日に頒布された実願平1-47996号(実開平2-140945号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 a.「この考案の粘着テープは、・・・柔軟性が効果的に発揮され、柔らかさと腰の強さの両特性を具備させたので、この粘着テープを医療用器具の人体皮膚への固定用テープとして、あるいは紙オムツの止着固定用テープとして使用しても体の動きに追随することができ好適である。」(第5頁第12-20行)、 b.「また、第2図はこの考案の粘着テープAを止着固定用ファスナーテープとして用いたオムツBの使用例を示す説明図であり、Cはリリーステープ、Dは補強フィルムである。」(第7頁第11-14行)、 c.図面の簡単な説明の欄には、「第2図はこの考案の粘着テープを止着固定用テープとして用いたオムツの使用例を示す説明図である。」(第11頁第13-15行)とあり、両側に粘着テープAが付着した幅広の部分である背側部、補強フィルムDのついた幅の狭い方の幅広部である腹側部と、その間の股下部があって、長手方向中央がくびれた砂時計型をなし、背側部の幅寸法が腹側部の幅寸法より長いおむつが示されている。 2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の前である昭和58年6月6日に頒布された実願昭57-177311号(実開昭58-83405号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 a.「本考案は湿気を通さないプラスチック製の外被をなす裏張りシート材と好ましくは吸湿性の当て布を囲繞し湿気を通す内張材とを備えた幼児又は身体障害者用の使い捨ておしめに関する。」(第3頁第9-12行)、 b.「第4図はこのようにして幼児に装着され得るおしめの状態を示す。補強用の帯テープ8が設けられているので、裏張りシート材1を引き裂いたり損傷することなく適確に摘まみ部11を引き剥がすことができる。これは特に、帯テープ8の外面を完全に平滑になすことにより達成される。」(第14頁第4-9行)、 c.図面の簡単な説明の欄には、「第1図は本考案による使い捨ておしめの平面図」(第16頁第10行)とあり、同図面第1図(FIG.1)には以下の点が開示されている。 イ)長手方向中央がくびれた砂時計型の使い捨ておむつ、 ロ)背面部3と正面部2には、当て布5から本体の長手方向の外方に延出するウエストフラップと当て布5の幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップとが形成されている点。 3.対比・判断 本願発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比する。 まず、本願発明は「使い捨ておむつ」、引用発明1は「紙おむつ」に関するものであるが、紙おむつが使い捨ておむつであることは技術常識であるから、本願発明と引用発明1とはいずれも、使い捨ておむつに関するものである点で同じである。 そして、引用発明1の「粘着テープA」、「補強フィルムD」、「オムツB」、「両端に粘着テープAが付着した幅広部(図面第2図、図番なし)」、「中央に補強フィルムDが付着した幅広部(図面第2図、図番なし)」、「背側部と腹側部の間に位置する部分(図面第2図、図番なし)」、は、それぞれ本願発明の「ファスニングテープ9」、「ターゲットテープ10」、「本体5」、「背側部6」、「腹側部8」、「股下部7」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、 「本体には着用者の背側に位置する背側部、股下部に位置する股下部、腹側に位置する腹側部とが形成され、上記背側部の両側部にはファスニングテープが配置され、上記腹側部には上記ファスニングテープが止着されるターゲットテープが配置された使い捨ておむつにおいて、 上記本体は、長手方向中央がくびれた砂時計型に形成されており、そのくびれた部分に上記股下部が形成されており、砂時計型の本体の一方の幅広部には上記背側部が形成され、該本体の他方の幅広部には上記腹側部が形成されており、 上記腹側部は上記背側部より幅狭である使い捨ておむつ」 である点で一致し、 本願発明は、下記の(a)〜(e)の構成を有するのに対し、引用発明1にはこれらの構成が明かでない点で相違する。 (a)液透過性の表面シートと、液不透過性の防漏シートと、これら両シート間に配置された吸収体とを有する本体を備えた点。 (b)背側部及び腹側部には、吸収体から本体の長手方向の外方に延出するウエストフラップと、該吸収体の幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップとが形成されている点。 (c)少なくともターゲットテープの外端部近傍において、上記ターゲットテープの側縁から上記腹側部の側縁までの長さSが、ファスニングテープの止着領域の長さTよりも短く、止着領域の長さTに対するターゲットテープの側縁から腹側部の側縁までの長さSの比S/Tが0.4〜0.9である点、。 (d)背側部の幅寸法W1に対する腹側部の幅寸法W2の比W2/W1が0.4〜0.8である点。 (e)防漏シートは透湿性を有している点。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点(a)について 使い捨ておむつにおいて、本体が液透過性の表面シートと、液不透過性の防漏シートと、これら両シート間に配置された吸収体とを有することは、引用例2に記載されているとおり、本願出願前公知の事項である(上記の2の2)a欄)。 してみれば、この相違点(a)における本願発明の構成は、引用発明1に記載されたオムツに、引用例2に記載された技術手段を単に付加した程度にすぎず、当業者が容易になし得たことである。 相違点(b)について 使い捨ておむつにおいて、背側部及び腹側部には、吸収体から本体の長手方向の外方に延出するウエストフラップと、該吸収体の幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップとが形成されている点は、引用例2に記載されているとおり、本願出願前公知の事項である(上記の2の2)cロ)欄)。 してみれば、この相違点(b)にける本願発明の構成は、引用発明1に記載されたオムツに、引用例2に記載された技術手段を単に付加した程度にすぎず、当業者が容易になし得たことである。 相違点(c)について 本願明細書には、「このように、非貼着領域12の幅Sを止着領域9cの長さTより短い寸法にすることにより、ファスニングテープ9をターゲットテープ10に貼着する際には、ファスニングテープ9はターゲットテープ10に確実に貼着できる。即ち、腹側サイドフラップ8A、8Aにおけるターゲットテープ10の非貼着領域12、12のみにファスニングテープ9の止着領域9cが止着されることがなく、非貼着部分12、12に止着された場合には、必ずターゲットテープ10に貼着される。従って、ファスニングテープ9を誤って非貼着部分12、12に貼着した場合であっても、腹側領域8を破損することがない。」(【0021】)と記載されている。 上記記載によれば、相違点(c)の構成として、非貼着領域12の幅Sと止着領域9cの長さTとの関係を、S<TとしS/Tの比を0.4〜0.9としたのは、ファスニングテープ9をターゲットテープ10に確実に貼着できるようにするためであると解される。 しかしながら、このために、ターゲットテープの側縁から上記腹側部の側縁までの長さSを、ファスニングテープの止着領域の長さTよりも短くすることは、当業者が当然考慮すべき事項であり、さらに比T/Sが0.4〜0.9となるように設定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得た程度の技術手段にすぎないものであって、格別の創意工夫があるものとはいえない。 相違点(d)について 本願発明のように、背側部の幅寸法W1に対する腹側部の幅寸法W2の比W2/W1を0.4〜0.8とした点は、着用時の操作性等を考慮して、当業者が必要に応じて適宜なし得た程度の事項にすぎないものであって、格別の創意工夫があるものとはいえない。 相違点(e)について 使い捨ておむつに、透湿性を有する防漏シートを用いることは、本願出願前において、周知の技術的事項(例えば、特開平2-251953号公報の発明の名称の欄、特開平1-266150号公報の特許請求の範囲の欄の記載を参照)であり、この周知技術を引用発明1に適用することに格別の困難性はない。 4.むすび したがって、本願の請求項1に記載された発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それゆえ、本願は他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-24 |
結審通知日 | 2004-03-02 |
審決日 | 2004-03-15 |
出願番号 | 特願平4-122122 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A41B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水野 治彦、植前 津子 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
山崎 豊 松縄 正登 |
発明の名称 | 使い捨ておむつ |
代理人 | 羽鳥 修 |