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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61K 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 A61K |
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管理番号 | 1095965 |
審判番号 | 不服2003-23759 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-08 |
確定日 | 2004-05-15 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第129871号「外用基剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月28日出願公開、特開平 7-309710、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成6年5月20日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」、「本願発明3」という。)は、平成15年2月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものと認める 【請求項1】テプレノンからなる外用基剤。 【請求項2】テプレノンからなる肌荒れ防止・改善剤。 【請求項3】テプレノンからなる皮膚保湿剤。 2.原査定の拒絶理由の概要 [理由1]本願の請求項1〜3に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記(1)の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 [理由2]本願の請求項1〜3に係る発明は、下記(2)、(3)の刊行物に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 [理由3]本願の請求項1〜3に係る発明は、下記(3)の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (1)特願平05-288703号(特開平07-118145号) (2)特開平06-016532号公報 (3)特開昭55-020713号公報 3.引用出願、引用刊行物に記載された発明 (A)上記引用出願(1)の当初明細書及び図面には以下の事項が記載されている。 イ)「ブラウノトール、テプレノン及びゲファルナートの中から選ばれる少なくと1種の薬効物質と、・・・・・前記薬効物質の含有量が0.1〜20重量%であり、・・・である皮膚損傷治療用外用剤。」(請求項1) ロ)「本発明の外用剤は、軟膏やクリーム、ローション等の各種の形態において適用され、その製品の形態に応じて、その組成を適当に調節する。」(段落【0021】) ハ)「本発明の外用剤は、その薬効化合物の作用により、すぐれた皮膚損傷治療効果を示す。この場合の皮膚損傷には、例えば褥創、熱傷等の皮膚潰瘍;外傷性の皮膚剥離創及び皮膚欠損創;糖尿病やパージャー病等による下腿潰瘍等が包含される。」(段落【0029】) (B)上記引用刊行物(2)には、以下の事項が記載されている。 イ)「テプレノンを有効成分として成る、美白剤。」(請求項1) ロ)「美白剤が外用剤である請求項1の美白剤。」(請求項2) ハ)「テプレノンの使用量は製剤の形態により一概に言えないが、通常全重量に対し0.1〜20重量%であり、」(段落【0013】) ニ)「本発明による美白剤及び美白用組成物の形状は特に限定されず、クリーム、軟膏、ローション、乳液、貼付剤など、所望の形状とすることができる。」(段落【0015】) (C)上記引用刊行物(3)には、以下の事項が記載されている。 イ)「本発明は一般式(I)・・・・で表されるプレニルケトン系化合物を含有する外用皮膚損傷治癒促進剤に関するものである」(第1頁右欄第11行〜第2頁左上欄第9行) ロ)「本発明の目的を達成させるために用いられる一般式(I)で表されるプレニルケトン系化合物には、公知化合物および新規化合物が包含される。公知化合物としては例えば次の化合物を挙げることができる。・・・・・・6,10,14,18-テトラメチル-5,9,13,17-ノナデカテトラエン-2-オン」(第2頁右上欄第6行〜左下欄第6行) ハ)「本発明化合物(I)は外用皮膚損傷治癒促進剤として、各種創傷、火傷、急・慢性湿疹、アトピー性皮膚炎、種々の原因による皮膚潰瘍等の治癒に有効と判断される」(第7頁右下欄第5行〜第8行) ニ)「本発明化合物(I)は外用クリーム、軟膏、ローション、バスタ等の通常の外用製剤の形で投与されることが可能である。」(第7頁右下欄第8行〜第10行) 4.当審の判断 [理由1:特許法第29条の2について] 引用された出願(1)の明細書には、テプレノンを薬効物質とする皮膚損傷治療用外用剤が記載され、当該外用剤中のテプレノンの配合量は本願発明1〜3の用途で使用するテプレノンの配合量と重複している。しかし、上記明細書にはテプレノンが外用基剤として使用感に優れることや肌荒れ防止・改善、皮膚保湿の作用を有する点についての記載はない。また、テプレノンは本願発明1〜3の用途に使用するに当たり出願(1)記載の発明と同様、外用剤の形態をとるものであるが、皮膚損傷治療用外用剤は、皮膚損傷の治療を必要とする使用者を適用対象とするのに対し、外用基剤として使用感の良い基剤を選択する場合や、肌荒れ改善・防止あるいは保湿を目的とする使用者がその目的のために上記治療用外用剤を使用することはなく、この点においても本願発明1〜3は出願(1)記載の発明とも明確に区別されるものである。 従って本願発明1〜3は、引用出願(1)に記載された発明と同一とすることはできない。 [理由2:特許法第29条第1項第3号について] 引用刊行物(2)にはテプレノンがチロシナーゼ阻害作用を有することを見出し、これを美白外用剤として使用することの記載があり、当該外用剤中のテプレノンの配合量は本願発明1〜3の用途で使用するテプレノンの配合量と重複している。しかしながら、美白外用剤は専ら皮膚を色白にすることを目的とする使用者を適用対象とするのに対し、外用基剤として使用感の良い基剤を選択する場合や、肌荒れ改善・防止あるいは保湿を目的とする使用者がその目的のために美白外用剤を使用することはないのであるから、その用途への適用が同じ皮膚外用剤という形態においてなされるとはいえ、その適用対象は明確に区別され、本願発明1〜3の発明は刊行物(2)記載の発明とは別異の用途発明を構成しるものである。 また、引用刊行物(3)には、テプレノンの皮膚損傷部位の治療促進効果を見出し、これを外用製剤として使用することが記載され、当該外用剤中のテプレノンの配合量は本願発明1〜3の用途で使用するテプレノンの配合量と重複している。しかし、上記と同様、皮膚損傷部位治療促進外用剤は、皮膚損傷の治療を目的とする使用者を適用対象とするのに対し、外用基剤として使用感の良い基剤を選択する場合や、肌荒れ改善・防止あるいは保湿を目的とする使用者がその目的のために上記治療用外用剤を使用することはないのであるから、本願発明1〜3の発明は刊行物(3)記載の発明とも明確に区別されるものである。 よって、本願発明1〜3はいずれも刊行物(2)(3)に記載された発明と同一であるとすることはできない。 [理由3:特許法29条第2項について] 引用刊行物(3)には、テプレノンの皮膚損傷部位の治療促進効果を有し、クリーム、軟膏、ローションなどの外用製剤として投与されることが記載されているが、テプレノンが外用基剤として好ましい性質を有していること、あるいは肌荒れ防止・改善や皮膚保湿作用を有することについては何ら記載がない。そして、引用刊行物(3)の外用皮膚損傷治療促進剤が公知であっても、通常、かかる外用剤は薬効成分であるテプレノンを各種外用基剤とともに用いるから、この外用剤に皮膚損傷部位の治療促進効果以外に使用感のよさ、皮膚保湿や肌荒れ改善効果等が現れたとしても、これが直ちに他の外用基剤成分によらずテプレノン自体の外用基剤として好ましい性質や肌荒れ防止・改善や皮膚保湿作用に由来するものであるとするのは当業者にとって容易なこととはいえない。 従って、本願発明1〜3は刊行物(3)に記載された発明から当業者が容易に発明することができたものとすることはできない。 5.まとめ 以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由によっては拒絶すべきものとすることができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2004-04-22 |
出願番号 | 特願平6-129871 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(A61K)
P 1 8・ 161- WY (A61K) P 1 8・ 121- WY (A61K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 上條 のぶよ |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
亀田 宏之 横尾 俊一 |
発明の名称 | 外用基剤 |
代理人 | 松田 奈緒子 |
代理人 | 流 良広 |
代理人 | 廣田 浩一 |