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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1095972
審判番号 不服2002-10606  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-13 
確定日 2004-04-30 
事件の表示 平成 5年特許願第338273号「実像式ファインダ」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 9月22日出願公開、特開平 6-265783〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年12月28日(優先権主張平成5年1月18日)の出願であって、平成14年5月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年6月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「正の対物レンズ群と;正のコンデンサレンズ群と;この対物レンズ群とコンデンサレンズ群によって形成される倒立像を正立させる正立光学系と;この正立像を観察する正の接眼レンズ群と;を備えた実像式ファインダにおいて、上記コンデンサレンズ群を、倒立像の結像面位置より対物レンズ群側に下記条件式(1)を満足する離隔量だけ離して配置したことを特徴とする実像式ファインダ。
(1)0.65<s/fow<1.2
(但し、0.69、0.72、1.05は除く)
但し、
s;結像面からコンデンサレンズ群の物体側の第1面迄の空気換算距離、
fow;対物レンズ群とコンデンサレンズ群の合成焦点距離(対物レンズ群が変倍光学の場合はその最短焦点距離状態においてのコンデンサレンズ群との合成焦点距離)。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平4-96642号(特開平5-297274号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、以下の記載がある。
ア.「上記の目的を達成するため本発明は、物体側より順に、負屈折力の第1レンズ群G1と、正屈折力の第2レンズ群G2と、正屈折力の第3レンズ群G3とからなる全体として正屈折力の対物レンズと、対物レンズの焦点像を拡大観察するための正屈折力の接眼レンズG4を有し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の空気間隔を変化させることによってファインダー倍率を変化させるケプラー式ファインダー光学系を基本構成とし、さらに以下の条件を満足するものである。
【0007】
0.44 < D/fW < 0.80 (1)
・・・
但し、
D :対物レンズ全体のバックフォーカス、
fW :広角端における対物レンズの焦点距離、」(2頁右欄37行-3頁左欄7行)

イ.「本発明のファインダーは例えば図1に示すように、物体側より順に、負屈折力の第1レンズ群G1と、少なくとも1面を非球面とした正屈折力の第2レンズ群G2と、いわゆる視野レンズの役割を果たす正屈折力の第3レンズ群G3とからなる3群構成の対物レンズと、視野枠Aと、接眼レンズである正屈折力の第4レンズ群G4を有する構成である。」(3頁左欄17-23行)

ウ.「更に本発明は、従来では対物レンズの結像面近くにあった第3レンズ群G3を、より物体側に配置し、結像面である視野枠Aから離した。」(3頁左欄27-29行)

エ.「ところが第3レンズ群G3を視野枠Aから離して物体側に配置すると、第3レンズ群G3の視野レンズとしての効果を弱めるため、対物レンズ群全体の有効径の増大と諸収差の悪化を招きかねない。そこで本発明は、第3レンズ群G3の最適な位置を条件式(1)によって設定している。条件式(1)の上限を越えると、第3レンズ群G3の視野レンズとしての効果が弱まるため好ましくない。逆に条件式(1)の下限を越えると、第3レンズ群G3の欠陥が目立ち易く、ファインダー全体の良品率を低下させてしまうため好ましくない。」(3頁左欄34-44行)

オ.「そして、視野枠A上の物体の倒立像は、第2レンズ群G2から第4レンズ群G4の間の光路上に設置された不図示の4枚の反射鏡によって正立化される。」(4頁左欄19-22行)

カ.「(表1) 第1実施例の諸元の値
・・・
(条件対応数値)
(1) D/fW = 0.780」(4頁左欄末行-5頁右欄4行)

キ.「(表2) 第2実施例の諸元の値
・・・
(条件対応数値)
(1) D/fW = 0.448」(5頁右欄10行-6頁左欄3行)

ク.「(表3) 第3実施例の諸元の値
・・・
(条件対応数値)
(1) D/fW = 0.466」(6頁左欄9行-同右欄11行)

先願明細書の第1-3実施例によると、負屈折力の第1レンズ群G1と、正屈折力の第2レンズ群G2との合成焦点距離は正であるから、上記ア.〜ク.の記載によれば、先願明細書には、
「物体側より順に、負屈折力の第1レンズ群G1と、正屈折力の第2レンズ群G2と、視野レンズの役割を果たす正屈折力の第3レンズ群G3とからなる全体として正屈折力の対物レンズと、4枚の反射鏡による正立化光学系と、対物レンズの焦点像を拡大観察するための正屈折力の接眼レンズG4を有し、負屈折力の第1レンズ群G1と、正屈折力の第2レンズ群G2との合成焦点距離が正であり、
D :対物レンズ全体のバックフォーカス、
fW :広角端における対物レンズの焦点距離
としたとき、
0.44 < D/fW < 0.80
を満足する実像式ファインダ。」
の発明(以下「先願発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願発明と先願発明とを比較すると、先願発明の「視野レンズの役割を果たす正屈折力の第3レンズ群G3」は本願発明の「正のコンデンサレンズ群」に相当し、また、先願発明の「負屈折力の第1レンズ群G1と、正屈折力の第2レンズ群G2(合成焦点距離は正)」が本願発明の「正の対物レンズ群」に相当する。さらに、先願発明の「4枚の反射鏡による正立化光学系」は本願発明の「正立させる正立光学系」に、以下同様に、「焦点像」は「倒立像」に、「接眼レンズG4」は「接眼レンズ群」にそれぞれ相当するから、両者は、
「正の対物レンズ群と;正のコンデンサレンズ群と;この対物レンズ群とコンデンサレンズ群によって形成される倒立像を正立させる正立光学系と;この正立像を観察する正の接眼レンズ群と;を備えた実像式ファインダにおいて、上記コンデンサレンズ群を、倒立像の結像面位置より対物レンズ群側に所定の離隔量だけ離して配置した実像式ファインダ。」
である点で一致し、以下の点で一応相違している。

[相違点1]本願発明が、コンデンサレンズ群を、倒立像の結像面位置より対物レンズ群側に0.65<s/fow<1.2((但し、0.69、0.72、1.05は除く)但し、s;結像面からコンデンサレンズ群の物体側の第1面迄の空気換算距離、fow;対物レンズ群とコンデンサレンズ群の合成焦点距離(対物レンズ群が変倍光学の場合はその最短焦点距離状態においてのコンデンサレンズ群との合成焦点距離))を満足する離隔量だけ離して配置したのに対し、先願発明が、D:対物レンズ全体のバックフォーカス、fW :広角端における対物レンズの焦点距離としたとき、0.44 < D/fW < 0.80を満足するようにした点。

(4)判断
[相違点1]について
先願発明には、数値実施例として、D/fWの値がそれぞれ、0.448、0.466、0.780となるものが開示されているが、第3レンズ群G3を、0.44 < D/fW < 0.80(但し、D :対物レンズ全体のバックフォーカス、fW :広角端における対物レンズの焦点距離)を満たす範囲内で結像面位置から対物レンズ側に隔離して配置できることについても開示されている(2.(2)の記載事項ア.エ.参照)。
してみれば、先願発明には、第3レンズ群G3の位置として、数値実施例の値をとるもののみが開示されているわけではなく、その他の値もとりうることが開示されているというべきである。言い換えれば、先願発明の各数値実施例のs/fowの値はそれぞれ、0.69、0.72、1.05となっているが、先願発明には、第3レンズ群G3の位置として、s/fowの値がそれぞれ、0.69、0.72、1.05のもののみが開示されているわけではなく、それ以外の値もとりうることが開示されているということができる。
したがって、本願発明の、コンデンサレンズ群の倒立像の結像面位置から対物レンズ側への離隔量を、先願発明の3つの実施例における0.69、0.72、1.05という値を除いただけの、0.65<s/fow<1.2の範囲内とする点は、先願発明との実質的な差異ではない。

(5)むすび
したがって、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-24 
結審通知日 2004-03-02 
審決日 2004-03-15 
出願番号 特願平5-338273
審決分類 P 1 8・ 16- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江塚 政弘吉川 陽吾  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 瀬川 勝久
辻 徹二
発明の名称 実像式ファインダ  
代理人 三浦 邦夫  

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