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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1095977
審判番号 不服2002-7728  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-02 
確定日 2004-04-30 
事件の表示 平成 5年特許願第248475号「カラー画像処理方法および装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 3月31日出願公開、特開平 7- 87346]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年9月10日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成12年12月4日付け、及び平成14年6月3日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 カラー画像入力装置で読み込まれた色信号を知覚的に等歩的な均等色空間上の3変数色信号に変換し、
彩度信号C*とUCR(Under Color Removal)率αの関係を規定するUCR率関数を用いて、均等色空間上の彩度信号からUCR率αを決定し、
UCR率αと均等色空間上の3変数色信号から墨を含んだ4色の画像出力信号を決定するカラー画像処理方法であって、
彩度信号C*とUCR率αの関係を調整可能としたことを特徴とするカラー画像処理方法。」
2 引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶理由で引用した特開昭63ー114467号公報(昭和63年5月19日出願公開。以下「引用例」という。)には、「カラー画像処理装置」の発明に関し、
ア 産業上の利用分野について、「本発明は、例えばデジタルカラー複写機等のカラー画像処理装置の改良に関し、特に下色除去(UCR)の改良に関するものである」(2頁右上欄3行〜5行)こと、
イ 発明の目的について、「本発明は、---UCR処理におけるUCR量を最適化することにより、カラー中間調画像及び黒文字画像を高品位に出力再現することのできるカラー画像処理装置を提案することを目的としている」(3頁右上欄7行〜11行)こと、
ウ 発明の実施例について、「カラー原稿はカラー画像入力センサ20から読み取られ、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色信号として出力される」(3頁右下欄5行〜7行)こと、
エ 同じく発明の実施例について、「R2,G2,B2信号は色抽出回路24に入り、YIQ系に変換され、そのうちのI,Q成分から「有彩色の程度」を演算する。---UCR量決定回路26では、色抽出回路24で求められた「有彩色の程度」を「非線形変換」して、非線形変換して得た勾配係数αの値(0〜1)と前記K1の値からシフト係数βが決定され、更に此等の係数α,βとK1とから下記式:UCR量=α(K1-β)に従ってUCR量が決定される」(3頁右下欄15行〜左上欄15行)こと、
オ 同じく発明の実施例について、「UCR除去回路27a,27b、27cでは色信号Cy1,M1,Ye1からそれぞれUCR量の値を減算し、色信号Cy2,M2,Ye2を得る。また、黒調整回路28では、K2=αK1-βに応じた出力濃度調整を行った信号K2を得る。色信号Cy2,M2,Ye2,K2は出力プリンタ29に送られ、出力としてカラー画像が得られる」(4頁左上欄16行〜右上欄7行)こと、
カ 同じく発明の実施例について、「勾配係数αを「有彩色の程度」に応じて可変とすれば、従来例の項で述べた、より中間調性の強い画像に発生した「黒づみ」の問題や、線画のエッジ部分で発生した「インクのとびちり」等の問題は解消することになる。つまり、「有彩色の程度」に応じてUCR処理の係数を変えていく、換言すれば、無彩色に近いほど勾配係数を大きくし、逆に有彩色では係数を小さくしていくのである。これが前述したUCR量決定回路で行われる「非線形変換」の意味である。---この「有彩色の程度」の値に応じて勾配係数αを変えた例を第4図に示す。第4図では、---「有彩色の程度」が大きい程、つまり有彩色である程、勾配係数αを“0”に近くとり、反対に無彩色である程、勾配係数αを“1”に近くとるような非線形変換を行っている」(4頁右下欄10行〜5頁右上欄8行)こと、
キ 同じく発明の実施例(変形例)について、「上記実施例ではYIQ系を用いたが、他の表色系、例えば輝度信号,色差信号による(Y,R-Y,B-Y)系、又は、明度,色相,彩度による(Y,H,C)系であっても同じである。(Y,R-Y,B-Y)系、もしくは(Y,H,C)系」から「有彩色の程度」を求めることは彩度をCを求めることに相当する」(6頁右上欄9行〜15行)ことが、図面と共に記載されている。
3 対比・判断
そこで、本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、
ア 引用例に記載された発明は、カラー画像処理装置に関し(上記2ア参照)、カラー原稿をカラー画像入力センサ20で読み取り、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色信号を出力するものである(上記2ウ参照)から、読み込まれた色信号を「知覚的に等歩的な均等色空間上の3変数色信号に変換」する点を除き、「カラー画像入力装置で色信号を読み込」む点、及び「画像処理方法」である点で、本願発明と差異がない。
イ 引用例に記載された発明におけるUCR量決定回路26は、R2,G2,B2信号を、(Y,H,C)系、あるいは(Y,R-Y,B-Y)系の表色系(色空間)に変換し、これらの表色系から「彩度C」を求め、この「彩度C」を「非線形変換」して勾配係数α(本願のUCR率αに相当)とシフト係数βを決定し、これらの係数α、βとブラック量K1とからUCR量を決定するものであり(上記2エ、キ参照)、前記「非線形変換」は、第4図に示されるように、有彩色の程度(彩度C)と勾配係数(UCR率)αとの関係を規定するものである(上記2カ参照)から、彩度信号を決定するための色空間が「均等色空間」である点を除き、「彩度信号とUCR率αの関係を規定するUCR率関数を用いて、色空間上の彩度信号からUCR率αを決定する」点で、本願発明と差異がない。
ウ 引用例に記載された発明における黒抽出回路25、UCR除去回路27a〜27c、及び黒調整回路28は、補色変換回路23により変換されたCMY色空間上の色信号Cy1,M1,Ye1と、UCR量決定回路26から出力されるUCR量とに基づいて、Cy2、M2、Ye2、及びK2からなる4色の画像出力信号を決定し(上記2エ、オ参照)、UCR量決定回路26は、前記したように、勾配係数α(UCR率α)とシフト係数β、及びブラック量K1とからUCR量を決定する。即ち、前記各回路25〜28は、UCR率αと、色空間上の3変数色信号(Cy1,M1,Ye1)から墨(K2)を含んだ4色の画像出力信号(Cy2,M2,Ye2、及びK2)を決定するものであるから、色空間が「均等色空間」である点を除き、「UCR率αと色空間上の3変数色信号から墨を含んだ4色の画像出力信号を決定する」点で、本願発明と差異がない。
したがって、両者は、
「カラー画像入力装置で色信号を読み込み、
彩度信号とUCR(Under Color Removal)率αの関係を規定するUCR率関数を用いて、色空間上の彩度信号からUCR率αを決定し、
UCR率αと色空間上の3変数色信号を用いて墨を含んだ4色の画像出力信号を決定するカラー画像処理方法」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は、カラー画像入力装置で読み込まれた色信号を「知覚的に等歩的な均等色空間上の3変数色信号に変換し」、UCR率αをこの「均等色空間上の彩度信号」から決定すると共に、墨を含んだ4色の画像出力信号を「UCR率αと均等色空間上の3変数色信号から」決定するのに対して、
引用例に記載された発明は、カラー画像入力装置で読み込まれた色信号R、G、BをCy1,M1,Ye1信号に変換し、UCR率αを前記R、G、B(R2,G2,B2)色空間上の彩度信号から決定すると共に、墨を含んだ4色の画像出力信号Cy2,M2,Ye2、K2を、「UCR率αと、シフト係数βと、C,M,Y色空間上の3変数色信号Cy1,M1,Ye1、及びこれらの3変数色信号から抽出したK1信号とにより決定するようにしている点。
(相違点2)
本願発明は、「彩度信号C*とUCR率αとの関係を調整可能」としているのに対して、引用例に記載された発明は、調整可能とはされていない点。
そこで、まず相違点1について検討すると、
引用例に記載された発明では、カラー画像入力装置で読み込まれた色信号R、G、BをCy1,M1,Ye1信号に変換し、この3変数色信号とUCR率α、シフト係数β等を用いて墨を含んだ4色の画像出力信号を決定しているが、4色の画像出力信号における墨の量は、色空間がCMY色空間、均等色空間のいずれであるかにかかわらず、その3変数色信号とUCR率αによって決定し得ることが当業者に明かであり、そして、均等色空間上において、墨を含んだ4色の出力画像信号を決定することは、当業者に周知である(必要であれば、特開平4-277978号公報、特開平4-70163号公報、特開平4-104575号公報、特開昭63-35075号公報参照)から、墨を含んだ4色の画像出力信号を、均等色空間上における3変数色信号とUCR率αから決定することに困難性はない。
また、均等色空間上の彩度(有彩色の程度)信号からUCR率(UCR処理係数)αを決定することも周知である(必要であれば、特開昭63-183460号公報5頁左上欄14行〜19行参照)。
したがって、これらの周知技術を勘案すれば、カラー画像入力装置で読み込まれた色信号を「知覚的に等歩的な均等色空間上の3変数色信号に変換し」、UCR率αをこの「均等色空間上の彩度信号」から決定すると共に、墨を含んだ4色の画像出力信号を「UCR率αと均等色空間上の3変数色信号から」決定することは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
次に、相違点2について検討すると、
UCR率を固定しておくと、入力画像の種類によっては、荒れが生じたり、質感が不足したりすることが予想されるから、入力画像の種類にかかわらず画像を良好に再現するために、UCR率の決定関数を調整可能とすることは、当業者が設計上容易になし得ることである。また、このような調整は周知でもある(前記した周知文献、特開昭63-183460号公報5頁左上欄4行〜13行参照)。
したがって、「彩度信号C*とUCR率αとの関係を調整可能」とすることは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易になし得ることである。
そして、本願発明の構成によりもたらされる効果も引用例に記載された発明、及び周知技術から当業者が容易に予測し得る程度のものであり格別のものではない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-01 
結審通知日 2004-03-02 
審決日 2004-03-17 
出願番号 特願平5-248475
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 恵一鶴谷 裕二  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 関川 正志
江頭 信彦
発明の名称 カラー画像処理方法および装置  
代理人 岩上 昇一  

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