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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許 無効としない C09K
管理番号 1096015
審判番号 無効2002-35061  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1975-12-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-02-20 
確定日 2004-04-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第0925546号発明「艶出し撥水剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第925546号に係る発明(昭和49年2月9日出願、特公昭53-3992号公報、昭和53年9月22日設定登録、以下、「本件発明」という。)は、特許公報の記載からみて、その特許請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものである。
「1 粘度(250℃)30cs、比重(25℃)0.88、屈折率(25℃)1.399、アミン当量360のアミノ変性シリコーンオイルをイソプロピルアルコールに溶解したシリコーン分50%の溶剤溶液1重量部と、粘度(25℃)1000±50cs、比重(25℃)0.965〜0.975、屈折率(25℃)1.403〜1.404のジメチルシリコーンオイルをキシレンに溶解した溶剤溶液に水を界面活性剤と共に混和して得たエマルジョン0.5〜1重量部とを主溶媒の水に溶解してなる艶出し撥水剤。」
2.請求人の主張
これに対して、請求人は、昭和52年6月21日付けで実用新案登録出願(甲第2号証:実用新案登録1501677号、実願昭52-82155号、実開昭54-9438号公報、実公昭57-58027号公報)をしており、その実用新案公報の第1頁第2欄第5行には、「油膜」と記載されている。
請求人は、これを根拠として、本件発明(出願日:昭和49年2月9日)は、本件出願後に出願された請求人の出願に係る甲2号証の考案を冒認して特許出願して、その特許権の設定登録(昭和53年9月22日)がされたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第123条第1項第6号の規定により無効にすべき旨主張している。
[証拠方法]
甲第1号証:特許第1441167号
甲第2号証:実用新案登録1501677号(実願昭52-82155号、実開昭54-9438号公報、実公昭57-58027号公報)
甲第3号証:特許第2566512号
甲第5号証:特許第925546号(特願昭49-16487号、特開昭50-157288号公報、特公昭53-3992号公報)
甲第8号証:実開昭49-71943号公報(実用新案登録第1126997号)
甲第9号証:特許第687165号の特許原簿
甲第10号証:実開昭50-65142号公報とその登録原簿
甲第11号証:実用新案登録第1501677号の年金領収書
甲第14号証:商品スーパーロングのラベル
なお、甲第4、6、7、12、13号証は、証拠方法として提出されていない。
3.甲号各証の記載事項
甲第1号証は、別件の特許である。
甲第2号証は請求人に係る実用新案であって、実公昭57-58027号公報には、
「実用新案登録請求の範囲
車輌1の前面ウインドガラス5の前方側にエアーカーテン33を形成する車輌のエアーワイパであって、前面ウインドガラス5に略平行に、かつ略全面に沿った後面エアーカーテン32を形成する上向きエアーノズル31を前面ウインドガラス5の下縁部26aに沿って複数個並設し、前記後面エアーカーテン32の前方側で前面エアーカーテン30を形成する上向きエアーノズル24を前面ウインドガラス5の下縁部26aに左右に首振り自在に備えて、該エアーノズル24を首振り振動させる手段23を備え、上記前面エアーカーテン30を形成するエアーノズル24を前傾上方にエアーを噴出すべく設け、各ノズル24,31へのエアー供給用パイプ18,19に夫々エアー流量調整用絞り弁21を設けたことを特徴とする車輌のエアーワイパ。」(実用新案登録請求の範囲)、「油膜」(第1頁第2欄第5行)と記載されている。
甲第3号証は、請求人に係る平成4年11月24日を出願日とする特許である。
甲第5号証は、本件発明に係る特許である。
特許請求の範囲は前記のとおりであり、さらに、「本発明は主として自動車の車体に使用するシリコーンオイルを配合した艶出し撥水剤に関するものである。」(特許公報第1頁左欄26〜28行)、「油」(第2頁左欄25行)、「水中油型」(第2頁右欄15行)と記載されている。
甲第8号証は、別件の実用新案である。
甲第9号証は、特許第687165号の特許原簿である。
甲第10号証は、別件の実用新案である。
甲第11号証は、甲第2号証に係る実用新案の年金領収書である。
甲第14号証は、商品スーパーロングのラベルである。
4.対比・判断
(請求人の冒認についての主張)
請求人は、本件発明の「艶出し撥水剤」は請求人が本件発明の出願前に請求人が発明をしていたものであるとし、理由として、甲第2号証に「油膜」と記載されていることから、本件発明の「艶出し撥水剤」が含まれていることは明らかであるとしている。
請求人は、それ故、本件発明の「艶出し撥水剤」は、請求人がした考案(発明)を冒認して特許出願をしたものである旨主張している。
(請求人が本件発明より先に考案(発明)したと主張する「油膜」を形成する艶出し撥水剤の発明)
甲第2号証の記載を基に検討する。
甲第2号証の実用新案公報には、
「実用新案登録請求の範囲
車輌1の前面ウインドガラス5の前方側にエアーカーテン33を形成する車輌のエアーワイパであって、前面ウインドガラス5に略平行に、かつ略全面に沿った後面エアーカーテン32を形成する上向きエアーノズル31を前面ウインドガラス5の下縁部26aに沿って複数個並設し、前記後面エアーカーテン32の前方側で前面エアーカーテン30を形成する上向きエアーノズル24を前面ウインドガラス5の下縁部26aに左右に首振り自在に備えて、該エアーノズル24を首振り振動させる手段23を備え、上記前面エアーカーテン30を形成するエアーノズル24を前傾上方にエアーを噴出すべく設け、各ノズル24,31へのエアー供給用パイプ18,19に夫々エアー流量調整用絞り弁21を設けたことを特徴とする車輌のエアーワイパ。」(実用新案登録請求の範囲)、「油膜」(第1頁第2欄第5行)と記載されている。
そして、請求人は、審判請求書の第1頁の6.請求の理由において、本件発明について、「アミノ変性シリコンオイル、水中油型、油と記載されており、明らかに請求人の発明をまねて、シリコン油と他のイソプロピルアルコール(「イソプロビルアルコール」は誤記。)を溶解して不純物を取り除き採集した油を固体として艶出し撥水剤とし、水滴を吹き飛ばす」と記載されており、その記載を参酌すると、請求人が甲第2号証の考案をした際に、有効成分として「油を固体とした艶出し剤」の発明(考案)をしたと主張するものである。
(本件発明の艶出し撥水剤)
一方、本件発明の「艶出し撥水剤」は、特許公報の記載からみて、
「1 粘度(250℃)30cs、比重(25℃)0.88、屈折率(25℃)1.399、アミン当量360のアミノ変性シリコーンオイルをイソプロピルアルコールに溶解したシリコーン分50%の溶剤溶液1重量部と、粘度(25℃)1000±50cs、比重(25℃)0.965〜0.975、屈折率(25℃)1.403〜1.404のジメチルシリコーンオイルをキシレンに溶解した溶剤溶液に水を界面活性剤と共に混和して得たエマルジョン0.5〜1重量部とを主溶媒の水に溶解してなる艶出し撥水剤。」であって、「ジメチルシリコーンオイルをキシレンに溶解した溶剤溶液に水を界面活性剤と共に混和して得たエマルジョン0.5〜1重量部とを主溶媒の水に溶解してなる」ものであって、「油を固体とした」ものではなく、主溶媒である水に0.5〜1重量部のエマルジョンを溶解させた水溶液である。
(本件発明が冒認であるかどうかの検討)
請求人が、本件発明より先に発明(考案)したとする「艶出し撥水剤」は、「油を固体とした」ものであるのに対し、本件発明の「艶出し撥水剤」は、「油を固体とした」ものではなく、主溶媒である水に0.5〜1重量部のエマルジョンを溶解させた「水溶液」である。
してみれば、請求人がした発明と本件発明とは、「油を固体とした」ものと「水溶液」のものとで、油と水ほど異なるものであるから、両者は、別個の発明というほかはない。
そして、請求人が提出した他の主張および甲号各証をみても、本件発明より先に発明(考案)したとする「艶出し撥水剤」が、本件発明であるとはいえない。
したがって、請求人が発明(考案)をしたと主張する「艶出し撥水剤」の発明(考案)は、本件発明と同じであるとはいえないから、それを前提とした請求人の冒認の主張には根拠がない。
5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明に係る特許を無効にすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-03-25 
結審通知日 2003-03-28 
審決日 2003-04-24 
出願番号 特願昭49-16487
審決分類 P 1 112・ 152- Y (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹内 浩二  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 鈴木 紀子
佐藤 修
登録日 1978-09-22 
登録番号 特許第925546号(P925546)
発明の名称 艶出し撥水剤  

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