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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F |
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管理番号 | 1096140 |
審判番号 | 不服2000-17563 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-12-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-11-02 |
確定日 | 2004-05-06 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 8034号「樹脂粒子およびその用途」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月 8日出願公開、特開平10-324704〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
(1)手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年5月27日に出願された特願平6-115124号(以下、「原出願」という。)の一部を新たな出願としてなされたものであって、その請求項1〜3に係る発明は、平成12年12月1日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】次の構造式(I)を有する芳香族化合物 【化1】 の存在下に、重合性単量体100重量部中にスチレン単量体80重量部以上を含む重合性単量体を、水性媒体中で懸濁重合して得られる、水溶性メルカプタンを含有せず、かつ重金属を含有しない粒子径0.5〜30μmの樹脂粒子。」 (2)引用例 これに対して、原審の拒絶理由において引用された、本願の出願前に頒布されたことの明らかな特開平3-243628号公報(引用文献2、以下、単に「引用例」という。)には、次の記載が認められる。 「(1)重合性単量体を着色剤および/または磁性粉の存在下に懸濁溶媒体中に懸濁させ、粒子径の規制を行ないながら懸濁重合を行ない、得られる3〜50μmの平均粒子径を有する着色球状微粒子の懸濁液を50〜98℃の温度で加熱処理することにより重合熟成を行なうとともに該粒子同士を融着させてブロック状にし、ついで該ブロック状粒子を実質的に融着前の着色球状粒子の平均粒子径に解砕することを特徴とする着色微粒子の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1) 「(4)着色球状微粒子が着色剤としてカーボンブラックグラフトポリマーを用いて懸濁重合により得られたものである請求項1ないし3のいずれか一つに記載の着色微粒子の製造方法。」(同請求項4) 「(6)均粒子径が3〜50μmである請求項1ないし5のいずれか一つに記載の着色微粒子の製造方法。」(同請求項6) 「実施例2 実施例1で用いたのと同様の反応釜にポリビニルアルコール(PVA205,クラレ株式会社製)30部を溶解した脱イオン水8,970部を仕込んだ。そこへ予め調整しておいたスチレン800部およびアクリル酸n-ブチル200部からなる重合性単量体成分に、着色剤としてブリリアントカーミン6B(野間化学株式会社製)50部、アゾビスイソブチロニトリル30部および2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)30部を配合した混合物を仕込み、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)により6,000rpmで5分間撹拌して均一な懸濁液とした。 次いで、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱し、この温度で5時間撹拌を続けた。懸濁重合反応を行ったあと、さらに75℃に1時間加熱した結果、重合率98.0%、平均粒径が6.42μm、粒子径の変動係数が21.3%の着色球状微粒子の懸濁液を得た。75℃に保たれた着色球状微粒子の懸濁液に有効成分35%の水性ペースト電荷制御剤(Bontron S-34オリエント化学工業株式会社製)13部を添加後95℃で1時間加熱処理を行なったところ、粒子同士が融着してなるブロック状物を形成した。これを濾過し、減圧乾燥機を用い50℃で8時間乾燥し、粒界を残した融着状態で嵩密度が0.28g/cm3の粟おこしの形状を呈したブロック状物1110部を得た。このブロック状物を超音速ジェット粉砕機IDS2型(日本ニューマチック工業株式会社製)を用い12kg/hrのフィード量で解砕し、着色微粒子(2)を得た。 得られた着色微粒子(2)をコールターカウンター(アパーチャ100μm)で測定した結果、平均粒子径が6.15μmで粒子径の変動係数が23.0%であった。この着色微粒子(2)をそのまま電子写真用トナー(2)として用いて静電複写機(タイプ4060株式会社リコー製)により画像出しを行なった結果は第1表に示した通りであった。」(第8頁左下欄19行〜第9頁左上欄18行) (3)対比・判断 本願発明1と引用例に記載された発明を対比する。 引用例の実施例2では、スチレン800部とアクリル酸n-ブチル200部を懸濁重合により、最終的に平均粒子径6.15μmの着色微粒子が得られている。また、水溶性メルカプタン及び重金属を含むことも記載されていない。 したがって、両者は、重合性単量体100重量部中にスチレン80重量部以上を含む重合性単量体を、水性媒体中で懸濁重合して得られる、水溶性メルカプタンを含有せず、かつ重金属を含有しない粒子径0.5〜30μmの樹脂粒子である点で一致し、本願発明1においては、懸濁重合に際して、特定の式で表わされる芳香族化合物の存在下で行うとするのに対し、引用例には、そういったことの記載がない点で一応相違するものと認められる。 しかしながら、本願発明1は、製造方法の発明ではなく、「樹脂粒子」という物の発明であることは明らかであり、「特定の式で表わされる芳香族化合物の存在下に懸濁重合して得られる」という製造方法(以下、「製造要件」という。)による特定は、製造方法の発明の要件として規定されたものではなく、樹脂粒子という物の構成を特定するために規定されたものと認められる。 そうであるならば、上記製造要件は、本願発明1の対象である物の構成を特定した要件としてどのような意味を有するかを検討する必要性はあるものの、物の製造方法自体としての特許性を検討する必要がないというべきである。(なお、原出願に係る「乳化重合防止剤およびこれを用いた懸濁重合方法」の発明は、特許第2761188号として登録された。) そこで、上記製造要件が、樹脂粒子に対してどのような意味を有するかについて検討するに、上記製造要件は、懸濁重合に際して、特定の芳香族化合物の存在下にて行うというに過ぎず、特定の芳香族化合物が樹脂粒子内にどの程度の量で含まれるかということを何ら特定するものでもなく、また、樹脂粒子に対する特定の芳香族化合物自体の作用効果についても何ら記載されていない。 そうであるならば、上記製造要件は、樹脂粒子にとって、その構造ないしは性質、性状その他の構成自体を特定するための要件としての特段の意味を有するものとすることはできない。 よって、本願発明1は、引用例に記載された発明であると言わざるを得ないものである。 (4)むすび したがって、本願発明1は引用例に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、同条第29条第1項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-03-02 |
結審通知日 | 2004-03-09 |
審決日 | 2004-03-23 |
出願番号 | 特願平10-8034 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C08F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 油科 壮一 |
特許庁審判長 |
谷口 浩行 |
特許庁審判官 |
中島 次一 佐野 整博 |
発明の名称 | 樹脂粒子およびその用途 |
代理人 | 野上 敦 |
代理人 | 奈良 泰男 |
代理人 | 宇谷 勝幸 |
代理人 | 齋藤 悦子 |
代理人 | 八田 幹雄 |