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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1096164 |
審判番号 | 不服2002-4795 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-04-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-03-20 |
確定日 | 2004-05-06 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第261477号「3-5族化合物半導体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月22日出願公開、特開平 9-107124〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年10月9日の特許出願であって、原審において、平成12年12月25日付で拒絶理由が通知され、これに対し、平成13年3月9日に手続補正がなされたところ、平成14年2月8日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものであって、その請求項に係る発明は、上記手続補正がなされた明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のものである。 「【請求項1】 有機金属気相成長法による積層構造を有する3-5族化合物半導体の製造方法において、該積層構造として、一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1)で表される発光層を、該発光層よりバンドギャップの大きなそれぞれ同一又は異なる一般式Inu Gav Alw N(ただし、u+v+w=1、0≦u≦1、0≦v≦1、0≦w≦1)で表される2つの層により挟んで配置し、かつ該発光層を、0.001気圧以上0.5気圧以下の圧力下で5Å以上500Å以下の膜厚に成長せしめる(但し、0.1気圧下で200Åの発光層を成長せしめる場合を除く)ことを特徴とする発光素子用3-5族化合物半導体の製造方法。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-326416号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、 「【0010】 本発明の目的は、高品質のGax Aly In1-x-y Nを成長することにより、高性能の化合物半導体素子を提供することにある。」、 「【0020】 ・・・このようなエピ層を用いてダブルヘテロ接合型の発光素子を作成する場合、・・・クラッド層は発光層にキャリアを閉じこめる役目もはたしており、窒化物系ではヘテロ界面での障壁高さが低いため、発光層に電子と正孔を更に効率よく閉じこめるためには少なくとも1μmの膜厚が必要である。これに対し、3C-SiC基板の(111)面上にGaNからなる素子を作成することにより、キャリアの閉じこめに十分なクラッド層厚を実現することが可能である。GaNとAl,Inとの混晶も、GaNと同様の窒化物系の材料であり、熱膨張係数はほとんど変わらないので、同様に厚い膜厚の高品質の層の成長が可能である。」、 「【0042】 図4は、本発明の一実施例に係る半導体レーザの概略構成図である。3C-SiC基板1上に、1μmの厚さのGaNバッファ層(アンドープ)2、1μmの厚さのp-GaAlInNからなるクラッド層3(Mgドープ、1×1016〜1×1019cm-3たとえば1×1017cm-3)、0.1μmの厚さのアンドープGaAlInNからなる発光層4、及び1μmの厚さのn-GaAlInNからなるクラッド層5(アンドープあるいはSiドープ、1×1016〜1×1019cm-3たとえば1×1017cm-3)が順次形成されており、それによって半導体レーザが構成される。・・・」、 「【0045】 次に、図4に示す半導体レーザを製造するために採用される結晶成長方法について説明する。図5は、図4に示す半導体レーザを製造するために使用した成長装置を示す概略構成図である。図5に示す成長装置において、反応管11内にはガス導入口12から原料混合ガスが導入される。そして、反応管11内のガスはガス排気口13から排気される。反応管11内には、カーボン製のサセプタ14が配置されており、試料基板15はこのサセプタ14上に載置される。また、サセプタ14は高周波コイル16により誘導加熱される。 【0046】 まず、(111)面の出たSiC基板を試料基板15としてサセプタ14上に載置する。ガス導入管12から高純度水素を毎分1リットルの流量で導入し、反応管11内の大気を置換する。次いで、ガス排気口13をロータリーポンプに接続して、反応管11内を排気して減圧にし、内部の圧力を20-300torrの範囲に設定する。 【0047】 次いで、基板温度を450-900℃に設定した後、N原料としてのNH3ガスとともに、有機金属Al化合物、有機金属Ga化合物、及び有機金属In化合物を導入し、結晶成長を行なう。・・・」、 「【0049】 具体的には、図4に示す半導体レーザの製造には、原料としてNH3を1×10-3mol/min、Ga(C2H5)3を1×10-5mol/min、In(CH3)3を1×10-6mol/min、Al(CH3)3 を1×10-6mol/minの流量で導入して成長を行った。基板温度は700℃、圧力は75torr、原料ガスの総流量は1リットル/minとした。ドーパントとしては、n型ドーパントにSi、p型ドーパントにMgを用いた。Siはシラン(SiH4)を、Mgはシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)をそれぞれ原料ガスに混入することによりドープした。 【0050】 このようにして得られた半導体レーザウエハをへき開して共振器長300μmのレーザ素子を構成したところ、液体窒素温度でパルス幅100μsecのパルス動作で青色光レーザ発振が確認された。 【0051】 本実施例においては、バッファ層としてGaNを用いたが、p型GaAlN、又はp型GaAlInNを成長させてもよい。」 との記載が認められ、 また、上記記載事項のうち、下線を付した厚みをÅに換算すると、0.1μmは、1000Åに、下線を付した圧力を気圧に換算すると、20-300torr及び75torrは、それぞれ0.0026〜0.3948気圧、0.0987気圧に相当するから、 これらの記載によれば、引用例1には、 「有機金属気相成長法による積層構造を有する3-5族化合物半導体の製造方法において、該積層構造として、アンドープGaAlInNからなる発光層を、該発光層よりバンドギャップの大きな、p-GaAlInNからなるクラッド層と、n-GaAlInNからなるクラッド層の2つの層により挟んで配置し、かつ該発光層を、0.0026〜0.3948気圧の圧力下で1000Åの膜厚に成長せしめることを特徴とする発光素子用3-5族化合物半導体の製造方法。」 との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。 3.対比 そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「アンドープGaAlInNからなる発光層」は、本願発明の「一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1)で表される発光層」に相当し、以下同様に、「p-GaAlInNからなるクラッド層と、n-GaAlInNからなるクラッド層の2つの層」は、「それぞれ同一又は異なる一般式Inu Gav Alw N(ただし、u+v+w=1、0≦u≦1、0≦v≦1、0≦w≦1)で表される2つの層」に相当するから、 両者は、 「有機金属気相成長法による積層構造を有する3-5族化合物半導体の製造方法において、該積層構造として、一般式Inx Gay Alz N(ただし、x+y+z=1、0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1)で表される発光層を、該発光層よりバンドギャップの大きなそれぞれ同一又は異なる一般式Inu Gav Alw N(ただし、u+v+w=1、0≦u≦1、0≦v≦1、0≦w≦1)で表される2つの層により挟んで配置し、かつ該発光層を、0.0026気圧以上0.3948気圧以下の圧力下で成長せしめることを特徴とする発光素子用3-5族化合物半導体の製造方法。」 である点で一致し、次の点で相違している。 [相違点]本願発明は、発光層の膜厚を「5Å以上500Å以下の膜厚に成長せしめる(但し、0.1気圧下で200Åの発光層を成長せしめる場合を除く)」のに対して、引用例1発明の発光層の膜厚は1000Åであって、本願発明とは異なる点。 4.判断 有機金属気相成長法により、InGaN層などの発光層の膜厚を10Å〜5000Å程度に成長せしめることは従来周知の技術事項である(例えば、特開平6-209120号公報、特開平6-268259号公報、特開平6-260682号公報等参照)。 また、本願明細書の記載を参酌しても、発光層の膜厚を「5Å以上500Å以下」に調整する製造方法自体に特段の技術的特徴ないしは困難性があるとは、首肯し得ないから、上記相違点は、引用例1発明に基づき、上記周知技術を参酌することにより、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1に記載された発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-03-04 |
結審通知日 | 2004-03-09 |
審決日 | 2004-03-22 |
出願番号 | 特願平7-261477 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛、杉山 輝和 |
特許庁審判長 |
向後 晋一 |
特許庁審判官 |
町田 光信 稲積 義登 |
発明の名称 | 3-5族化合物半導体の製造方法 |
代理人 | 榎本 雅之 |
代理人 | 久保山 隆 |
代理人 | 中山 亨 |