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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H05B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05B
管理番号 1096231
異議申立番号 異議2002-72446  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-04 
確定日 2004-03-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3284332号「EL素子」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3284332号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3284332号の請求項1及び2係る発明の出願は、平成8年10月4日に特許出願され、平成14年3月8日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1及び2の特許について、異議申立人関西日本電気株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年11月6日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の、「上記透明電極には、・・・溝状の切欠部が形成されている」を、
「上記透明電極には、・・・溝状の切欠部が形成されており、上記発光層が上記透明電極の上に積層形成され上記切欠部に流入して隙間を塞いでいる」と訂正する。
イ.訂正事項b
本件明細書の段落番号【0004】末尾の、「及ぼすことはない。」を
「及ぼすことはない。なお、発光層が透明電極の上に積層形成され切欠部に流入して隙間を塞いでいる。」
ウ.訂正事項c
本件明細書の段落番号【0005】に記載の、「透明電極には、・・・溝状の切欠部が形成されている」を、
「透明電極には、・・・溝状の切欠部が形成されており、発光層が透明電極の上に積層形成され切欠部に流入して隙間を塞いでいる」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記ア.に係る訂正事項aは、訂正前の請求項1に係る切欠部について、「発光層が上記透明電極の上に積層形成され上記切欠部に流入して隙間を塞いでいる」との構成を付加するもので、特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
また、上記イ.及びウ.に係る訂正事項b及びcは、上記訂正事項aとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記いずれの訂正も新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むずび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項および同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)本件の請求項1及び2の発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項に特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】透明ベースフィルム上に形成された透明電極と背面電極との間に発光層が存在するEL素子において、
上記透明電極には、当該透明電極が他の導電性部品と当接し得る外周部に、上記発光層側の面から上記透明ベースフィルムに至るまで切り込みを入れて当該外周部と残りの部分とを電気的に分断する溝状の切欠部が形成されており、上記発光層が上記透明電極の上に積層形成され上記切欠部に流入して隙間を塞いでいることを特徴とするEL素子。
【請求項2】上記背面電極の外側は保護膜にて被われていることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。」

(2)引用刊行物に記載された発明
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(特開平7-130473号公報)には、以下の(a1)及び(a2)の事項が記載されている。
(a1)「【0004】しかし、上下外皮フィルムを無くすと図8のように電界発光素子27の背面電極26および透明電極22の周辺端部の導電部が露出し、機器への実装時あるいは点灯時に短絡や感電の危険を生じる。」(段落番号【0004】)
(a2)「【0010】本発明の電界発光灯10は、図1に示すように、透明フィルム1上に蒸着、スパッタ、印刷等で透明電極2が形成された透明導電フィルム3、発光層4、反射絶縁層5、背面電極6、背面電極絶縁層8の積層構造になっている。
【0011】背面電極6および透明電極2の絶縁のために背面電極6側の最外層の背面電極絶縁層8が、背面電極6および透明電極2を覆う形で設けてある。さらに、背面電極絶縁層8の周縁部は透明導電フィルム3の周縁部と接着されている。
【0012】特に図1の電界発光灯10は、透明フィルム1に形成された透明電極2の周辺端部が電気的に露出していないこと、および図2の平面図に示すように背面電極6が透明電極2の外形より僅かに小さくなっていることにより、背面電極絶縁層8によって容易に被覆され、周辺に露出していないことが特徴である。
【0013】次に、透明電極の周辺端部が電気的に露出しないように絶縁処理する方法について説明する。
【0014】本発明の第1の実施例では、透明電極2の周辺露出端部の絶縁処理のために、透明電極2の外形より僅かに内側を、トムソン刃やカッティングプロッタ等で導電面側から透明フィルム側に向けて透明導電フィルム3をハーフカットすることにより導電面に非導通部9を形成し、周辺端部への導通を遮断することにより、透明電極の電圧印加部分が露出しない電界発光灯を得ることが出来る。」(段落番号【0010】〜【0014】)
上記記載事項から、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「透明フィルム1上の透明電極2の上に、透明電極2よりも小さい範囲に発光層4、反射絶縁層5及び背面電極6を形成し、背面電極絶縁層8で積層体7を覆うと共に、透明電極2の外形より僅かに内側を、トムソン刃やカッティングプロッタ等で導電面側から透明フィルム側に向けて透明導電フィルム3をハーフカットすることにより非導通部9を形成することにより、導電面側周辺端部に露出する透明電極2に絶縁処理を施すした電界発光灯。」

(3)対比及び当審の判断
ア.本件発明1について
[対比]
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを比較すると、刊行物1に記載された発明においても、透明電極の外周部に透明電極を電気的に分断する溝状の切欠部を透明フィルムに至るまで形成しているのは明らかであり、また、刊行物1に記載の発明に係る「透明フィルム」、「電界発光灯」は、それぞれ本件発明1に係る「透明ベースフィルム」、「EL素子」に相当するから、刊行物1には、本件発明に係る「透明ベースフィルム上に形成された透明電極と背面電極との間に発光層が存在するEL素子において、上記透明電極には、当該透明電極が他の導電性部品と当接し得る外周部に、上記発光層側の面から上記透明ベースフィルムに至るまで切り込みを入れて当該外周部と残りの部分とを電気的に分断する溝状の切欠部が形成されているEL素子」が開示されているが、「発光層が上記透明電極の上に積層形成され上記切欠部に流入して隙間を塞ぐ」点については、刊行物1に記載されてないばかりか、それを示唆する記載もない。本件発明1は、この「発光層が上記透明電極の上に積層形成され上記切欠部に流入して隙間を塞ぐ」構成により、外力を受けたりフィルムが湾曲したりしても切欠の隙間がつぶれる虞がなく、不測の短絡が防ぐことができ、絶縁が確実に保たれるという効果を奏するものである(平成15年11月16日付け訂正請求書第4頁8行-13行)。
してみると、本件発明1は、刊行物1に記載された発明でないばかりか、同発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。

イ.本件発明2について
[対比]及び[当審の判断]
本件発明2は、本件発明1にさらに保護膜に関する構成を付加したものであるから、本件発明1が刊行物1に記載された発明とも、同発明に基づいて当業者が容易になし得たものともすることができない以上、本件発明2についても、刊行物1に記載された発明とも、当業者が同発明に基づいて容易になし得たものともすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
EL素子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明ベースフィルム上に形成された透明電極と背面電極との間に発光層が存在するEL素子において、
上記透明電極には、当該透明電極が他の導電性部品と当接し得る外周部に、上記発光層側の面から上記透明ベースフィルムに至るまで切り込みを入れて当該外周部と残りの部分とを電気的に分断する溝状の切欠部が形成されており、上記発光層が上記透明電極の上に積層形成され上記切欠部に流入して隙間を塞いでいる
ことを特徴とするEL素子。
【請求項2】 上記背面電極の外側は保護膜にて被われていることを特徴とする請求項1に記載のEL素子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はEL素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3に示すように、EL素子(無機EL素子)20は、透明ベースフィルム21上に形成された透明電極22上に、発光層23、絶縁層24、背面電極25、保護膜27が順次積層されており、図示しないが両電極22,25に引き出し電極を介して駆動回路から電圧が加えられることにより発光層が発光するものである。従来、実用に際してはこのEL素子20は金属製ケース26などに収納して用いられている。
【0003】
【解決しようとする課題】
上記従来の構成では、EL素子20端面に透明電極22が露出し金属製ケース26に接触するため、金属製ケース26全体が透明電極22を介して駆動回路と導通することになる。従来、駆動回路はこの金属製ケース26に接地されることがあるが、金属製ケース26と透明電極22とが短絡すると、誤動作や動作不良が発生することになる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
他の金属等の導電性部品と当接し得る透明電極の外周部に、透明電極の発光層側の面から透明ベースフィルムに至るまで切り込みを入れて溝状の切欠部を形成して、外周部と残りの部分とを電気的に分断しているので、透明電極の端面が金属製ケースなど導電製物質と接触しても、透明電極の切欠部の内側及び駆動回路とEL素子外周部の導電製物質の電気的導通はない。したがって、EL発光動作に悪影響を及ぼすことはない。なお、発光層は透明電極の上に積層形成され切欠部に流入して隙間を塞いでいる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、透明ベースフィルム上に形成された透明電極と背面電極との間に発光層が存在するEL素子において、透明電極には、当該透明電極が他の導電性部品と当接し得る外周部に、発光層側の面から透明ベースフィルムに至るまで切り込みを入れて当該外周部と残りの部分とを電気的に分断する溝状の切欠部が形成されており、発光層が透明電極の上に積層形成され切欠部に流入して隙間を塞いでいるものである。
【0006】
好ましくは、背面電極の外側は保護膜にて被われている。
【0007】
【実施例】
図1に本発明の一実施例を示している。完成状態のEL素子Aの構成を簡単に説明すると、透明ベースフィルム1上に形成された透明電極2上に、さらに、発光層3、絶縁層4、背面電極5が順次積層形成され、背面電極5の外側は絶縁性の保護膜6により被われている。そして、図示しないが、透明電極2及び背面電極5にはそれぞれ引き出し電極が接合され、各引き出し電極は駆動回路に接続されている。そして、駆動回路から引き出し電極を介して、透明電極2及び背面電極5に交番電界が加わると、発光層3が発光するものである。
【0008】
このEL素子Aの具体的な構成を、その製造方法とともに説明すると、まずポリエチレンテレフタレート(PET)の透明ベースフィルム1上に真空蒸着などにより酸化インジウム・スズ(ITO)からなる透明電極2を形成してシート状にする。そして、この透明電極2側から透明ベースフィルム1に至るまでカッティングプロッターなどの機械を用いて切り込みを入れ、溝状の切欠部7を形成する。この切欠部7は、この実施例では完成状態のEL素子の外周に沿うように全周にわたって形成されている。従って、透明電極2のうち、切欠部7の内側2aと外側2bとは分離され電気的に遮断されている。なお、図示しない引き出し電極は透明電極2の内側2aに接合され、外側2bとは導通しないようにしてある。
【0009】
この透明電極2の上に、硫化亜鉛に銅をドープした発光体とフッ素樹脂バインダーとを混合・攪拌したインクを印刷して発光層3を形成し、その上に、高誘電体であるチタン酸バリウムとフッ素樹脂バインダーとを混合・攪拌したインクを印刷して絶縁層4を形成している。そしてその上にカーボンペーストを印刷して背面電極5を形成している。背面電極5の外側には、ポリイミドなどの絶縁性の保護膜6がコーティングされている。切欠部7には発光層3が流入して隙間を塞いでいる。
【0010】
このEL素子Aを金属製ケースBなどに収納した場合、透明電極2の端面がケースB内面に接触するが、透明電極2の外側2bは切欠部7によって内側2aに対し絶縁されているので、引き出し電極及び駆動回路との電気的導通はない。したがって、金属製ケースが透明電極端面と接することにより駆動回路と導通してEL駆動に悪影響を及ぼすという従来の問題点は、本発明の構成を採用することにより解消される。
【0011】
また、このようなEL素子を大量生産する場合、図2に示すように、大面積の透明ベースフィルム8上に透明電極9を形成し、完成時のEL素子外形(1点鎖線にて図示)に実質的に沿うように切欠部10を多数形成し、その後発光層、絶縁層、背面電極を積層形成してから、上記EL素子外形(1点鎖線)通りに切断・分離する。
【0012】
本発明は、金属ケース内に挿入する場合に限られず、透明電極端面が導電性の物質に接触する可能性がある場合に広く有効である。また、溝状の切欠部の形状は、EL素子外形に沿うのでなく発光形状の外形に沿うのでもよい。上記実施例のように、発光形状の外側かつEL素子外形の内側において1周するように切欠部が形成してあると、4辺が全て金属製ケースなどの導電性部品と接触してもこれらが透明電極を介して駆動回路と導通するおそれがないので、様々なケースに装着する場合に対応可能であるが、これに限られるものではない。例えば、1辺に挿入口を有するポケット状のケースに挿入する場合には、この挿入口に対応する部分では透明電極に切欠部が設けられず他の3辺にのみ切欠部が設けられていても、本発明の効果を発揮し得る。このように、導電性の部品と接する可能性のある部分のみに切欠部を設け他の部分と分断すればよい。切欠部は、透明電極のうち、導電性の部品と接する可能性のある部分を、それ以外の部分に対し電気的に遮断するように分断し得れば、その形状などは特に問わない。
【0013】
【発明の効果】
本発明によると、透明電極端面が金属製ケースなどの導電性物質と接触しても導通することがないので、EL駆動に悪影響を及ぼすことがない。したがって、EL素子と接触するケースなどの部材の材質の選択に制限がなく、絶縁塗装などの加工も不要となるなど、このEL素子を用いると発光装置の設計上の自由度が増すとともに製造が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るEL素子の要部拡大断面図
【図2】
本発明に係るEL素子大量生産工程を示す説明図
【図3】
従来のEL素子の要部拡大断面図
【符号の簡単な説明】
2 透明電極
3 発光層
5 背面電極
6 保護膜
7 切欠部
A EL素子
B 金属製ケース
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-02-13 
出願番号 特願平8-264151
審決分類 P 1 651・ 113- YA (H05B)
P 1 651・ 121- YA (H05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 寺澤 忠司  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 瀬川 勝久
辻 徹二
登録日 2002-03-08 
登録番号 特許第3284332号(P3284332)
権利者 セイコープレシジョン株式会社
発明の名称 EL素子  
代理人 治部 卓  
代理人 治部 卓  
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