• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
審判 全部申し立て 特39条先願  A01N
管理番号 1096239
異議申立番号 異議2002-71733  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-05-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-07-15 
確定日 2004-02-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3245588号「水田除草方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3245588号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 同請求項4に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3245588号は、平成2年9月5日(国内優先権主張:平成1年9月7日)に出願された特願平2-235040号の一部を新たな特許出願とした特願平11-127676号の一部を、さらに新たな特許出願とした特願平2000-313441号として出願されたものであって、平成13年10月26日にその特許権の設定登録がなされた。その後、北興化学工業株式会社より特許異議の申立てがあり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年8月25日付けで訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正事項
本件訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正の内容は次のとおりである。

〔訂正事項a〕
特許請求の範囲請求項1の、「含有することを特徴とする水田除草用錠剤」との記載を、
「含有することを特徴とする薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤」と訂正する。

〔訂正事項b〕
特許請求の範囲請求項3の、「湛水した水田に直接施用する」との記載を、
「湛水した水田に直接投込み施用する」と訂正する。

〔訂正事項c〕
特許請求の範囲請求項4の、「湛水した水田に直接施用する」との記載を、
「湛水した水田に直接投込み施用する」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲請求項1において、「水田除草用錠剤」が「薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤」であることを明らかにし、訂正事項b及びcは、訂正前の特許請求の範囲請求項3あるいは4において、「水田除草方法」が請求項1又は2に記載の「水田除草用錠剤」を「湛水した水田に直接投込み施用する」方法であることを明らかにするものであって、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、これらの訂正は、明細書段落【0001】、【0020】、及び【0043】の記載により支持されており、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について
1.本件発明
上記のとおり訂正が認められるので、本件の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された以下のとおりである。

「【請求項1】湛水下水田に直接施用される水田除草用錠剤であって、湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有することを特徴とする薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤。
【請求項2】前記除草成分がN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ-4-イソチアゾールスルホンアミド、メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-エトキシカルボニル-1-メチル-5-ピラゾールスルホンアミド、N-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-N’-(4,6-ジメトキシ-2-ピリミジニル)ウレア、3-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-[2-(2-メトキシエトキシ)-フェニルスルホニル]ウレア、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(2-プロポキシエチル)アセトアニリド、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(ブトキシメチル)アセトアニリド、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド、N-[2’-(3’-メトキシ)-チエニルメチル]-N-クロロアセト-2,6-ジメチルアニリド、2’,6’-ジエチル-N-[(2-シス-ブテノオキシ)メチル]-2-クロロアセトアニリド、エキソ-1-メチル-4-(1-メチルエチル)-2-(2-メチルフェニル)メトキシ-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、S,S-ジメチル-2-ジフルオロメチル-4-(2-メチルプロピル)-6-(トリフルオロメチル)-3,5-ピリジンジカルボチオエート及び2-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(2,2,2-トリクロロエチル)オキシランからなる群から選ばれた少なくとも一種以上のものである請求項1に記載の水田除草用錠剤。
【請求項3】請求項1又は2に記載の錠剤を湛水した水田に直接投込み施用することを特徴とする水田除草方法。
【請求項4】前記錠剤を、10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量で200〜1500gになるように湛水した水田に直接投込み施用することを特徴とする請求項3に記載の水田除草方法。」

2.異議申立て理由の概要
特許異議申立人は、証拠として本件優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である下記の甲第1号証及び甲第2号証、並びに、本件出願の原出願(特願平11-127676号)の特許公報である甲第3号証を提出し、本件発明1ないし4は、甲第1号証あるいは甲第2号証に記載された発明であるか、又は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものである旨、また、本件発明1ないし4は、甲第3号証に係る発明と同一であるから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張し、よってこれらの発明の特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであると主張している。


甲第1号証:特公昭47-27930号公報(下記「刊行物3」と同じ)
甲第2号証:特開昭53-99327号公報(下記「刊行物4」と同じ)
甲第3号証:特許第3245574号公報

3.当審における取消理由の概要
当審において通知した取消理由の趣旨は、本件発明1ないし4は、下記の刊行物1あるいは刊行物2にそれぞれ記載された発明であるか、又は下記の刊行物1ないし刊行物7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものであり、よって本件発明1ないし4の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされた、というものである。

刊行物1:特開昭57-112379号公報
刊行物2:特開昭60-42313号公報
刊行物3:特公昭47-27930号公報
(特許異議申立人の提出した甲第1号証)
刊行物4:特開昭53-99327号公報
(特許異議申立人の提出した甲第2号証)
刊行物5:特開平1-211504号公報
刊行物6:特開昭60-142901号公報
刊行物7:特公昭49-11056号公報

4.刊行物等に記載された事項
刊行物1には、「除草剤スルホンアミド類」に係る発明が記載されており、下記の事項が記載されている。
1-a:「36.保護しようとする場所に、有効量の

〔ここでR1はCl、NO2、CO2CH3、SO2CH3、又はOSO2CH3である〕
から選択された化合物を適用することからなる、イネ中の望ましくない植物の生長を抑制する方法。」(特許請求の範囲第36項)
1-b:化合物の調整について、「・・・化合物の有用な調整物は通常の方法で製造しうる。それらは、粉剤、粒剤、錠剤、懸濁剤、乳剤、水和剤、濃厚乳剤などを含む。これらの多くのものは直接施用できる。・・・概述すると調整物は、活性成分約0.1〜99重量%、及びa)表面活性剤約0.1〜20%及びb)固体又は液体希釈剤約1〜99.9%の少くとも1種を含有する。」(公報第32頁左上欄1行〜11行)
1-c:実施例として、
「実施例20
押し出し錠剤
N-〔(4-メトキシ-6-メチルピリミジン-2-イル)アミノカルボニル〕-1-(2-ニトロフェニル)メタンスルホンアミド 25%
無水硫酸ナトリウム 10%
粗リグニンスルホン酸カルシウム 5%
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 1%
カルシウム/マグネシウムベントナイト 59%
上記成分を混合し、ハンマーミルで処理し、次いで約12%の水で湿めらした。この混合物を直径約3mmの円柱として押し出し、これを切断して長さ3mmの錠剤とした。これは乾燥した後直接使用することができ、或いは乾燥した錠剤を粉砕して米国標準ふるい20号(開口0.84mm)に供することができた。」(公報第34頁左上欄3行〜右上欄2行)
1-d:化合物の使用割合について、「本発明の化合物の使用割合は、選択的又は総体的除草剤としての使用、共存する作物種、駆除すべき雑草種、天候及び気候、選択される処方物、施用法、存在する葉の量などを含む多くの因子により決定される。一般的に言って、本化合物は約0.01〜10kg/haの量で使用されるべきである。」(公報第36頁左下欄16行〜右下欄5行)
1-e:化合物の除草性試験について、
「試験E
温室中で一連の疑似イネ水田試験を行なった。本発明の範囲内から選択された化合物を調合し、そしてイネの移植後3日後に水田に直接適用した。“早期”植物反応評価(適用後1週間以内がいくつかの試験で行なわれ、“後期”植物反応評価(適用後5〜6週間)は全ての試験で行なわれた。

試験した化合物の数種は、イネに被害を与えずにイネ中の雑草の優れた抑制を与えた。」(公報第48頁左下欄1行〜第49頁1行、表E)
1-f:化合物6について、



(公報第37頁右下欄「化合物6」)

刊行物2には、下記の事項が記載されている。
2-a:「1.下記式(1)

で表わされる化合物と下記式(2)

で表わされる化合物とを併用して、ジャポニカ(Japonica)種水稲苗の移植後約1〜約15日の期間に水面施用することを特徴とする薬害の軽減されたジャポニカ種水稲用の水田雑草除草方法。」(特許請求の範囲第1項)
2-b:「1.下記式(1)

で表わされる化合物と下記式(2)

で表わされる化合物とを活性成分として含有することを特徴とするジャポニカ種水稲用複合除草剤。」(特許請求の範囲第3項)
2-c:上記ジャポニカ種水稲用複合除草剤について、「本発明のジャポニカ種水稲用複合除草剤は上記式(1)化合物及び式(2)化合物のほかに、各種の助剤類、各種の農薬類などを更に含有することができ、且つ又、それ自体公知の手法に従ってたとえば粉剤、粒剤、顆粒剤、錠剤、懸濁剤、乳剤、水和剤、濃厚乳剤、エーロゾル剤、その他所望の任意の剤形にすることができる。」(公報第4頁右下欄8行〜16行)
2-d:上記助剤類について、「上記助剤類の例としては、・・・ベントナイト・・・殿粉・・・などの如き固体もしくは液体担体乃至希釈剤類;アルキルアリルスルホネート・・・ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート・・・リグニンスルホネートなどの如き乳化剤、分散剤、湿潤剤類;その他の助剤類を例示することができる。」(公報第4頁右下欄17行〜第5頁右上欄1行)
2-e:化合物の施用量について、「本発明のジャポニカ種水稲栽培用複合除草剤は、式(1)化合物約65〜約120g/ha、好ましくは約70〜約110g/ha、とくには約75〜約100g/haの如き著るしく低減された式(1)化合物施用量で、優れた除草効果を示す。」(公報第5頁右下欄10〜15行)

刊行物3には、下記の事項が記載されている。
3-a:「1 3・5-ジニトロ-2・6-ジメチル-4-ターシ ャリーブチルアセトフェノン、固体酸、アルカリ金属またはアルカリ土金属の炭酸塩(固体酸および炭酸塩のうち少なくとも一方は水溶性)、鉱物質担体および界面活性剤から成ることを特徴とする水田用殺草性粒剤、錠剤。」(特許請求の範囲)
3-b:粒剤および錠剤の作用について、「本発明に係る粒剤および錠剤(以下本製剤と称す)は、DDBP微粉末と固体酸粉末、炭酸塩粉末、鉱物質担体粉末および界面活性剤を混和し、打錠または押出し造粒法により粒状化した後水田へ施用されるが、本製剤は一旦土壌面に沈み、次いで本製剤中に存在する固体酸と炭酸塩とが水の存在下で反応して生ずる二酸化炭素のために再び水面に浮上する。浮上後本製剤は、界面活性剤による表面張力の変化により水面を激しく移動すると共に崩壊し、DDBPを分散する。」(公報第1頁左欄23行〜33行)

刊行物4には、下記の事項が記載されている。
4-a:「農薬を含浸保持した合成樹脂発泡体の細粒体を水溶性高分子フィルムによって密封してなる水面浮遊性を有する農薬製剤品。」(特許請求の範囲)
4-b:、上記農薬製剤品について、「本発明の農薬製剤品(以下、本発明品という。)は、合成樹脂発泡体の細粒体(0.1〜10mm)を担体とし、この担体に農薬を含浸保持させたものであり、これらの細粒体を水溶性高分子フィルムによって密封せしめたものである。本発明品を水面に施用すると、水溶性高分子フィルムは、すみやかに水に溶解し、内包されている細粒体が水面および水中に放出拡散し、更に細粒体に含浸保持された農薬が水中に迅速に拡散し、薬効を発揮するものである。・・・・・農薬としては、主剤(農薬の有効成分)を単独で、または高沸点の溶剤、界面活性剤、その他補助剤等と均一混合させたものであり、有効成分としては除草、殺虫、殺菌活性を有する化合物が適当である。」(公報第2頁左上欄6行〜右上欄5行)
4-c:農薬製剤品の使用量について、「本発明品を実用に供する場合、例えば湛水下水田に施用する場合10アール当り約500g以下で充分であり、本発明品1袋当りの重量を10〜100gにして、50〜5袋を水面へ投入するのが適当である。水面施用後、本発明品の各袋は約10秒間程度浮遊して後、水溶性高分子フィルムの袋が溶解により破れ、内包されている細粒体が水面および水中へ放出拡散浮遊し、細粒体に担持された農薬が水中へ均一に拡散され適確な薬効が得られる。」(公報第2頁右上欄14行〜左下欄3行)

刊行物5には、下記の事項が記載されている。
5-a:「(1)常温で水に対する溶解度が100ppm以下の固体農薬化合物と常温で固体の水溶性高分子とを有機溶媒に溶解した後、溶媒を留去して得られる残留物を有効成分として含有することを特徴とする固状農薬組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
5-b:上記固状農薬組成物の製剤について、「本発明の固状農薬組成物は、固体農薬化合物と水溶性高分子を有機溶媒に溶解した後、溶媒を留去することによって残留物を得、これに農薬製剤において通常使用される増量剤、界面活性剤、補助剤等を使用して粉剤、粒剤、水和剤に製剤して得るが、次のような方法が利用出来る。例えば粉剤は、前記の残留物と増量剤、補助剤等を均一に混合し粉砕して得る。粒剤は、前記の残留物をそのまま又は増量剤、補助剤等を加え均一に混合し粉砕し粉末としたものを天然又は人工の粒状担体に結合剤を介して被覆させて得る。」(公報第3頁右上欄4行〜12行)。
5-c:上記補助剤について、「また補助剤としては、分解防止剤、物理性改良剤、結合剤などがあり、分解防止剤としては、イソプロピルアシッドホスフェート、高級脂肪酸等を、物理性改良剤としては、高級脂肪酸の金属塩、高級アルコール、大豆油等を、結合剤としては、液体のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。」(公報第3頁右上欄23行〜左下欄4行)

刊行物6には、下記の事項が記載されている。
6-a:「(1)(a)水溶性担体の粉体または該粉体と水溶性担体の粒核との混合物、(b)該水溶性担体の水溶解速度より遅い水溶解速度を有する無機又は有機のフィルム形成物質および(c)難水溶性または非水溶性の農薬活性成分を含有することを特徴とする水面浮遊性農薬粒状組成物。」(特許請求の範囲)
6-b:その他の成分について、「この条件を満たす範囲であれば溶剤、界面活性剤、非水性或いは難水溶性担体等の補助剤を含むこともできる等のここでいう界面活性剤は主に活性成分の水中への拡散及び水面上への拡散の為に使用し、通常、農園芸用乳剤、水和剤に使用される非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を活性成分に合せて選択して使用すれば良い。」(公報第4頁右下欄3行〜11行)

刊行物7には、下記の事項が記載されている。
7-a:「クロロフェナミジンの鉱酸塩またはカルタップの鉱酸塩を配合した粒径5〜20mmの粒剤を水面に散粒して水稲害虫を防除する方法。」(特許請求の範囲参照)
7-b:他の成分について、「これら活性成分を担荷させる固体粒の材料としては、例えばベントナイト、クレー、タルク、珪藻土、カオリン、石灰石等が適用される。更に、これらに粘結剤、混連補助剤、分散剤を加えて造粒することもできる。」(公報第1頁第2欄17行〜21行)

甲第3号証に示される本件出願の原出願(特願平11-127676号、特許第3245574号)の請求項1ないし5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】湛水下水田に直接施用される水田除草用カプセルであって、湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分、界面活性剤並びに結合剤を、粉砕物又は顆粒としてカプセルに充填させて含有することを特徴とする水田除草用カプセル。
【請求項2】カプセルが、(1)前記除草成分、界面活性剤及び結合剤の混合粉砕物又は(2)混合粉砕物を造粒した顆粒のいずれかを水溶性フィルムにより包んだものである請求項1に記載の水田除草用カプセル。
【請求項3】カプセルが発泡剤を含有するものである請求項1又は2に記載の水田除草用カプセル。
【請求項4】前記除草成分がN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ-4-イソチアゾールスルホンアミド、メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-エトキシカルボニル-1-メチル-5-ピラゾールスルホンアミド、N-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-N’-(4,6-ジメトキシ-2-ピリミジニル)ウレア、3-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-[2-(2-メトキシエトキシ)-フェニルスルホニル]ウレア、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(2-プロポキシエチル)アセトアニリド、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(ブトキシメチル)アセトアニリド、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド、N-[2’-(3’-メトキシ)-チエニルメチル]-N-クロロアセト-2,6-ジメチルアニリド、2’,6’-ジエチル-N-[(2-シス-ブテノオキシ)メチル]-2-クロロアセトアニリド、エキソ-1-メチル-4-(1-メチルエチル)-2-(2-メチルフェニル)メトキシ-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、S,S-ジメチル-2-ジフルオロメチル-4-(2-メチルプロピル)-6-(トリフルオロメチル)-3,5-ピリジンジカルボチオエート及び2-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(2,2,2-トリクロロエチル)オキシランからなる群から選ばれた少なくとも一種以上のものである請求項1〜3のいずれか一に記載の水田除草用カプセル。
【請求項5】カプセルが、10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量で200〜1500gになるように湛水した水田に直接施用するものである前記請求項1〜4のいずれか一に記載の水田除草用カプセル。」

5.対比・判断
(1)本件発明1について
(刊行物1との対比)
刊行物1の「試験E」には、化合物6を調合したものを水田に直接適用したことが記載され、その結果イネ中の雑草に優れた抑制効果を与えたことが記載されている(上記記載1-e参照)。ここで上記「化合物6」は、その構造式(上記記載1-f参照)からみて、本件明細書段落【0011】に例示される(A-2)の化合物「メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート」と同じものであり、この化合物(A-2)は本件明細書段落【0012】の記載によれば「湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分」であることから、刊行物1に記載された「化合物6」は、本件発明1における「湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分」に相当するものである。
そこで、本件発明1と、上記刊行物1の「試験E」に記載された「化合物6」を調合したものとを比較すると、刊行物1記載のものが湛水下水田に直接施用されるものであることは明らかであるから、両者は、「湛水下水田に直接施用される水田除草用剤であって、湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分を含有することを特徴とする水田除草用剤」である点で一致しており、一方、下記(イ)、(ロ)の点で相違している。
(イ)本件発明1においてはさらに「界面活性剤並びに結合剤」を含有しているのに対して、刊行物1記載のものは「化合物6」を調合したものではあるが、具体的に何を含有するのかについては記載がない点。
(ロ)本件発明1が「薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤」であるのに対して、刊行物1記載のものは剤形については記載がない点。
まず上記相違点(イ)について検討すると、刊行物1には化合物の調整について「a)表面活性剤約0.1〜20%及びb)固体又は液体希釈剤約1〜99.9%の少くとも1種を含有する」と記載されており(上記記載1-b参照)、実施例においても本件明細書において界面活性剤として例示されている「アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム」を含有させることが記載されている(上記記載1-c参照)。また、水面に施用する除草剤や農薬に係る発明が記載されている刊行物2ないし7にも、有効成分の他に界面活性剤や結合剤を含有させることが記載されていることからみて(上記記載2-d、3-b、4-b、5-c、6-b、7-b参照)、界面活性剤及び結合剤を含有させることはごく普通に行われているものと認められる。したがって、上記相違点(イ)にあげられた構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得ることにすぎない。
次に、上記相違点(ロ)について検討すると、刊行物1には調整物の形態として粉剤、粒剤、乳剤、水和剤などとともに錠剤が挙げられている(上記記載1-b参照)。また、刊行物2には除草剤が錠剤をも含むさまざまな形態をとり得ることが記載され(上記記載2-c参照)、刊行物3には錠剤形態の水田用除草剤が記載されている(上記記載3-a参照)ことから、水田用除草剤を製剤するにあたり、錠剤は、粉剤、粒剤、乳剤、水和剤などと同じようにその実施形態に応じて適宜選択し得る剤形として一般に広く知られているものと認められる。なお、本件発明1においては「薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用」という限定が付されているが、これは散布機や散粒器を必要としないという、錠剤の形態をとることに伴う必然の施用形態の一つである「投込み」を付記しただけのものであり、このような限定を付することによって従来から存在する錠剤形態の水田除草剤と差異があるものとは認められない。したがって、上記相違点(ロ)にあげられた構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得ることにすぎない。
また、上記相違点(イ)、(ロ)にあげられた構成を採用したことによる効果についても、上記刊行物1ないし7の記載から予測し得る範囲内のものであって格別のものではない。
よって、本件発明1は、刊行物1ないし刊行物7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(刊行物2との対比)
刊行物2の特許請求の範囲第3項には、式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物とを活性成分として含有するジャポニカ種水稲用複合除草剤が記載されている(上記記載2-b参照)。ここで上記「式(1)で示される化合物」は、その構造式からみて、本件明細書段落【0011】に例示される(A-2)の化合物「メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート」と同じものであり、この化合物(A-2)は本件明細書段落【0012】の記載によれば「湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分」であることから、刊行物2に記載された「式(1)で示される化合物」は、本件発明1における「湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分」に相当するものである。
そこで、本件発明1と、上記刊行物2の特許請求の範囲第3項に記載された「ジャポニカ種水稲用複合除草剤」とを比較すると、刊行物2記載の除草剤が湛水下水田に直接施用されるものであることは明らかであるから(上記記載2-a参照)、両者は、「湛水下水田に直接施用される水田除草用剤であって、湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分を含有することを特徴とする水田除草用剤」である点で一致しており、一方、下記(イ’)、(ロ’)の点で相違している。
(イ’)本件発明1においてはさらに「界面活性剤並びに結合剤」を含有しているのに対して、刊行物2記載の除草剤は、その他の含有成分については記載がない点。
(ロ’)本件発明1が「薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤」であるのに対して、刊行物2記載の除草剤は剤形については特定されていない点。 まず上記相違点(イ’)について検討すると、刊行物2には「上記式(1)化合物及び式(2)化合物のほかに、各種の助剤類、各種の農薬類を更に含有することができ」と記載され(上記記載2-c参照)、助剤類の例としてベントナイトや澱粉等の固体もしくは液体担体乃至希釈剤類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、リグニンスルホネート等の乳化剤、分散剤、湿潤剤類が記載されている(上記記載2-d参照)。また、水面に施用する除草剤や農薬に係る発明が記載されている刊行物1、3ないし7にも、有効成分の他に界面活性剤や結合剤を含有させることが記載されていることからみて(上記記載1-b、3-b、4-b、5-c、6-b、7-b参照)、界面活性剤及び結合剤を含有させることはごく普通に行われているものと認められる。したがって、上記相違点(イ’)にあげられた構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得ることにすぎない。
次に、上記相違点(ロ’)について検討すると、刊行物2には剤形の例として粉剤、粒剤、乳剤、水和剤などとともに錠剤が挙げられている(上記記載2-c参照)。また、刊行物1には調整物が錠剤をも含むさまざまな形態をとり得ることが記載され(上記記載1-b参照)、刊行物3には錠剤形態の水田用除草剤が記載されている(上記記載3-a参照)ことから、水田用除草剤を製剤するにあたり、錠剤は粉剤、粒剤、乳剤、水和剤などと同じようにその実施形態に応じて適宜選択し得る剤形として一般に広く知られているものと認められる。なお、本件発明1においては「薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用」という限定が付されているが、これは散布機や散粒器を必要としないという、錠剤の形態をとることに伴う必然の施用形態の一つである「投込み」を付記しただけのものであり、このような限定を付することによって従来から存在する錠剤形態の水田除草剤と差異があるものとは認められない。したがって、上記相違点(ロ’)にあげられた構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得ることにすぎない。
また、上記相違点(イ’)、(ロ’)にあげられた構成を採用したことによる効果についても、上記刊行物1ないし7の記載から予測し得る範囲内のものであって格別のものではない。
よって、本件発明1は、刊行物1ないし刊行物7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(特許権者の主張について)
特許権者は特許異議意見書において、本件発明の水田除草用錠剤は省力化のため主に畦畔より水田内に足を踏み入れることなく手作業で該製剤を水田内に投げ入れるものであり、1ケで広い除草対象面積を処理でき、且つ手投げでかなり遠方まで薬剤処理することもできるようにする必要があることから、その1ケのサイズ及び重量で明確に従来型製剤と区別可能である旨主張している。
しかし、本件発明1の錠剤は、サイズ及び重量について特定されているわけではなく、また、1ケで広い除草対象面積を処理することや手投げでかなり遠方まで薬剤処理することが特定されているわけではないから、本件発明1の錠剤は、サイズや重量に関わらず「錠剤」という一般的概念で表されるものをすべて含むものであると理解される。そして、従来型製剤も「錠剤」という一般的概念で表されるものであることに変わりはないから、実質的に両者を区別することはできない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における「除草成分」を具体的な化合物群から選び特定するものであるが、具体的な化合物群の中の一つとして示されている「メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート」は、刊行物1あるいは2に記載されている除草剤の活性成分と同じものである。
そこで、本件発明2の水田除草用錠剤と上記刊行物1あるいは2に記載された除草剤とを比較すると、本件発明1と同様に上記(1)項で述べた(イ)、(ロ)あるいは(イ’)、(ロ’)の相違点を有するものである。したがって、上記(1)項の本件発明1についての判断において述べたのと同じ理由により、本件発明2は刊行物1ないし刊行物7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1あるいは2の水田除草用錠剤を湛水下水田に直接投げ込み施用することを特徴とする水田除草方法に係るものである。一方、刊行物1及び2には、特定の化合物を調合した除草剤を湛水下水田に直接使用する方法についての記載がある(上記記載1-e、2-a参照)。
そこで、本件発明3の水田除草方法と上記刊行物1あるいは2に記載された方法とを比較すると、上記(1)項で述べた(イ)、(ロ)あるいは(イ’)、(ロ’)の相違点に加えて、下記(ハ)の点において両者は形式上相違するものである。
(ハ)本件発明3が「湛水下水田に直接投込み施用する」のに対して、刊行物1あるいは2記載の方法においては「投げ込み」について記載されていない点。
しかしながら、「投げ込み」という行為は、「錠剤」という形態の除草剤を直接施用する場合においてなかば必然的になされるものであるから、上記相違点(ハ)は実質的な相違点ではない。よって本件発明3と刊行物1あるいは2記載の方法との比較においては、本件発明1と同様の相違点(イ)、(ロ)、あるいは相違点(イ’)、(ロ’)においてのみ相違するものである。
したがって、上記(1)項の本件発明1についての判断において述べたのと同じ理由により、本件発明3は刊行物1ないし刊行物7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)本件発明4について
(特許法第29条第1項について)
本件発明4は、本件発明1あるいは2の水田除草用錠剤を10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量で200〜1500gになるように湛水した水田に直接投込み施用することを特徴とする水田除草方法係るものである。一方、刊行物1及び2には、特定の化合物を調合した除草剤を湛水下水田に直接使用する方法についての記載がある(上記記載1-e、2-a参照)。
そこで、本件発明4と刊行物1あるいは2に記載された方法とを比較すると、本件発明4においては、除草成分に加えてさらに「界面活性剤並びに結合剤」を含有する「薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤」を、「10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量で200〜1500gになるように湛水した水田に直接投込み施用する」方法であるのに対して、刊行物1あるいは2記載の方法は、除草剤である化合物を調合する旨の記載はあるものの、他の配合成分や剤形については特定されておらず、かつ錠剤としての使用個数や総重量についての記載もないので、本件発明4は、除草成分に加え「界面活性剤並びに結合剤を含有する薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤を10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量で200〜1500gになるように湛水した水田に直接投込み施用する」点において上記刊行物1あるいは2に記載の方法とは明確に相違するものである。
したがって、本件発明4は刊行物1あるいは2に記載された発明ではない。

(特許法第29条第2項について)
本件発明4は、本件発明1あるいは2の水田除草用錠剤を10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量で200〜1500gになるように湛水した水田に直接投込み施用することを特徴とする水田除草方法係るものである。一方、刊行物1及び2には、特定の化合物を調合した除草剤を湛水下水田に直接使用する方法についての記載がある(上記記載1-e、2-a参照)。
そこで、本件発明4の水田除草方法と上記刊行物1あるいは2に記載された方法とを比較すると、上記(1)項で述べた(イ)、(ロ)、(ハ)あるいは(イ’)、(ロ’)、(ハ)の相違点に加えて、下記(ニ)の点においてこれらは相違するものである。
(ニ)本件発明4が水田除草用錠剤を「10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量で200〜1500gになるように施用する」のに対して、刊行物1あるいは2記載の方法においては使用する除草剤の個数や総重量について記載されていない点。
上記相違点(ニ)について検討するに、刊行物1あるいは2には、除草剤の使用量についての示唆はなされているものの(上記記載1-d、1-e、2-e参照)、これらの記載だけでは界面活性剤と結合剤を加えて錠剤とした場合の使用量や個数までも導き出すことはできない。また刊行物4には、製剤品を湛水下水田へ使用する場合の使用量についての記載があるが(上記記載4-c参照)、この製剤品は水溶性高分子フィルムで密封されたもので錠剤ではなく、かつその内容物も異なることから、このような記載を参照しても錠剤の使用量や個数を導き出すことはできない。そして、その他の刊行物には除草剤の使用量に係る記載はなく、したがって刊行物1ないし7の記載をどのように組み合わせても、上記相違点(ニ)にあげられた構成を導き出すことはできない。
そして本件発明4は、上記の構成を採用することによって、湛水した水田で速やかな除草成分の溶解化、分散化、拡散化を図ることができ、かつ作業効率が大幅に向上して安定した除草効果を得るという明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、上記相違点(ニ)以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、上記刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(特許法第39条第2項について)
本件発明1と、原出願の請求項1に係る発明とを比較すると、両者は、「湛水下水田に直接施用される水田除草剤であって、湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有する」という構成を有する点で一致するものである。
しかしながら、本件発明1は、上記除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有する「錠剤」の発明であるのに対して、原出願の請求項1に係る発明は上記除草成分、界面活性剤並びに結合剤を「粉砕物又は顆粒としてカプセルに充填させて含有する水田除草用カプセル」の発明であり、水田除草剤としての形態が異なるものである。そして「カプセル」と「錠剤」が実質的に等しいものであるとする根拠も見出せないことから、両者は同一のものとは認められない。
したがって、本件発明1と原出願の請求項1に係る発明は同一ではない。 また、本件発明2についても同様であって、「カプセル」と「錠剤」とは同一のものとは認められないので、原出願の請求項4に係る発明とは同一ではない。
さらに、本件発明3及び4は「水田除草方法」に係る発明であるのに対し、原出願の請求項1ないし5に係る発明は「カプセル」に係る発明であって、本件発明3及び4とは発明のカテゴリーが異なるものであるから、本件発明3及び4は、原出願の請求項1ないし5に係るいずれの発明とも同一ではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって本件発明1ないし3の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
また、本件発明4の特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によってはこれを取り消すことはできず、また他に本件発明4の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水田除草方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 湛水下水田に直接施用される水田除草用錠剤であって、湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有することを特徴とする薬剤施用の簡便なる投込み水田除草用錠剤。
【請求項2】 前記除草成分がN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ-4-イソチアゾールスルホンアミド、メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-エトキシカルボニル-1-メチル-5-ピラゾールスルホンアミド、N-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-N’-(4,6-ジメトキシ-2-ピリミジニル)ウレア、3-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-[2-(2-メトキシエトキシ)-フェニルスルホニル]ウレア、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(2-プロポキシエチル)アセトアニリド、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(ブトキシメチル)アセトアニリド、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド、N-[2’-(3’-メトキシ)-チエニルメチル]-N-クロロアセト-2,6-ジメチルアニリド、2’,6’-ジエチル-N-[(2-シス-ブテノオキシ)メチル]-2-クロロアセトアニリド、エキソ-1-メチル-4-(1-メチルエチル)-2-(2-メチルフェニル)メトキシ-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、S,S-ジメチル-2-ジフルオロメチル-4-(2-メチルプロピル)-6-(トリフルオロメチル)-3,5-ピリジンジカルボチオエート及び2-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(2,2,2-トリクロロエチル)オキシランからなる群から選ばれた少なくとも一種以上のものである請求項1に記載の水田除草用錠剤。
【請求項3】 前記請求項1又は2に記載の錠剤を湛水した水田に直接投込み施用することを特徴とする水田除草方法。
【請求項4】 前記錠剤を、10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量が200〜1500gになるように湛水した水田に直接投込み施用することを特徴とする請求項3に記載の水田除草方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水田除草において薬剤施用の簡便なる投込み用錠剤又はカプセルを提供し、またそれにより簡易な薬剤処理方法を提供することにある。
【0002】
【従来の技術】
従来、水田の除草方法特に水稲作初期〜中期の除草方法としては除草成分を微粉末固型担体、他の補助剤と共に製剤した微粒剤、粒剤をそのまま散布する方法、水和剤を多量の水に希釈してから散布する方法が挙げられるが、その他微粉末固型担体を使用しない方法としては除草成分を有機溶剤に溶解した乳剤をそのまま散布する方法、微粉砕した除草成分を水に分散・懸濁したフロワブル剤をそのまま散布する方法が挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら微粒剤、粒剤、水和剤の施用に当っては、薬剤を入れた重量のある散布器又は散粒器を持ち乍ら、例えば通常は10アール当り3〜4kgの粒剤を散布するために水田を歩き廻ることによるか、或は畦畔から大型のナイアガラホースを用いることにより、薬剤を万遍なく均一に散布しなければならない。従って薬剤の運搬、散布作業は過酷な労力を必要とするだけでなく、水稲苗もしばしば損傷するためその生育上望ましくない。乳剤、フロワブル剤の施用に当っても、薬剤重量は或程度軽減され大型の散布器を必要としないものの一定薬量を吐出する容器を使用する必要があり、更に均一な薬剤散布には依然として水田を歩き廻る必要がある。本発明は従来方法の前述の欠点を解決し、特別の薬剤散布器を用いずに簡易な方法により、水田の除草を行なうことにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水田に施用した薬量の全量が実質的に田水に溶解する除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有することを特徴とする水田除草用錠剤又はカプセルであり、また当該錠剤又はカプセルを10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつ錠剤又はカプセルの総重量が200〜1,500gになるように、湛水した水田に施用し、実質的に除草成分の全量を田水中に溶解、分散せしめることを特徴とする水田除草方法である。
【0005】
本発明は、
〔1〕 水田に施用した薬量の全量が実質的に田水に溶解する除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有することを特徴とする水田除草用錠剤又はカプセル;
〔2〕 カプセルが、(1)前記除草成分、界面活性剤及び結合剤の混合粉砕物又は(2)混合粉砕物を造粒した顆粒のいずれかを水溶性フィルムにより包んだものである前記〔1〕に記載の水田除草用錠剤又はカプセル。
〔3〕 除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有する錠剤又はカプセルを、10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつ錠剤又はカプセルの総重量が 200〜1,500gになるように、湛水した水田に施用し、実質的に除草成分の全量を田水中に溶解、分散せしめることを特徴とする水田除草方法;
〔4〕 前記錠剤又はカプセルが発泡剤を含有するものである前記〔1〕または〔2〕に記載の水田除草用錠剤或はカプセル又は前記〔3〕に記載の水田除草方法;及び
【0006】
〔5〕 前記除草成分がN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ-4-イソチアゾールスルホンアミド、メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-エトキシカルボニル-1-メチル-5-ピラゾールスルホンアミド、N-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-N’-(4,6-ジメトキシ-2-ピリミジニル)ウレア、3-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-[2-(2-メトキシエトキシ)-フェニルスルホニル]ウレア、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(2-プロポキシエチル)アセトアニリド、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(ブトキシメチル)アセトアニリド、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド、N-[2’-(3’-メトキシ)-チエニルメチル]-N-クロロアセト-2,6-ジメチルアニリド、2’,6’-ジエチル-N-[(2-シス-ブテノオキシ)メチル]-2-クロロアセトアニリド、エキソ-1-メチル-4-(1-メチルエチル)-2-(2-メチルフェニル)メトキシ-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、S,S-ジメチル-2-ジフルオロメチル-4-(2-メチルプロピル)-6-(トリフルオロメチル)-3,5-ピリジンジカルボチオエート及び2-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(2,2,2-トリクロロエチル)オキシランからなる群から選ばれた少くとも一種以上のものである前記〔1〕、〔2〕及び〔4〕のいずれか一に記載の水田除草用錠剤或はカプセル又は前記〔3〕又は〔4〕に記載の水田除草方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、
〔6〕 水田に施用した薬量の全量が実質的に田水に溶解する除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有することを特徴とする水田除草用錠剤を湛水した水田に施用し、実質的に除草成分の全量を田水中に溶解、分散せしめることを特徴とする水田除草方法;
〔7〕 除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有する錠剤を、10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつ錠剤の総重量が 200〜1,500gになるように、湛水した水田に施用し、実質的に除草成分の全量を田水中に溶解、分散せしめることを特徴とする前記〔6〕に記載の方法;
〔8〕 前記錠剤が発泡剤を含有するものである前記〔6〕又は〔7〕に記載の方法;及び
【0008】
〔9〕 前記除草成分がN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ-4-イソチアゾールスルホンアミド、メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-エトキシカルボニル-1-メチル-5-ピラゾールスルホンアミド、N-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-N’-(4,6-ジメトキシ-2-ピリミジニル)ウレア、3-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-[2-(2-メトキシエトキシ)-フェニルスルホニル]ウレア、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(2-プロポキシエチル)アセトアニリド、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(ブトキシメチル)アセトアニリド、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド、N-[2’-(3’-メトキシ)-チエニルメチル]-N-クロロアセト-2,6-ジメチルアニリド、2’,6’-ジエチル-N-[(2-シス-ブテノオキシ)メチル]-2-クロロアセトアニリド、エキソ-1-メチル-4-(1-メチルエチル)-2-(2-メチルフェニル)メトキシ-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、S,S-ジメチル-2-ジフルオロメチル-4-(2-メチルプロピル)-6-(トリフルオロメチル)-3,5-ピリジンジカルボチオエート及び2-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(2,2,2-トリクロロエチル)オキシランからなる群から選ばれた少くとも一種以上のものである前記〔6〕〜〔8〕のいずれか一に記載の方法を提供する。
【0009】
別の態様では、特に、本発明は、
〔10〕 湛水下水田に直接施用される水田除草用錠剤であって、湛水下水田への施用時に薬量の全量が田水に溶解すると仮定したとき、除草成分の田水濃度が該除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分、界面活性剤並びに結合剤を含有することを特徴とする水田除草用錠剤;
〔11〕 前記除草成分がN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ-4-イソチアゾールスルホンアミド、メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-エトキシカルボニル-1-メチル-5-ピラゾールスルホンアミド、N-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-N’-(4,6-ジメトキシ-2-ピリミジニル)ウレア、3-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-[2-(2-メトキシエトキシ)-フェニルスルホニル]ウレア、2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジン、3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(2-プロポキシエチル)アセトアニリド、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(ブトキシメチル)アセトアニリド、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド、N-[2’-(3’-メトキシ)-チエニルメチル]-N-クロロアセト-2,6-ジメチルアニリド、2’,6’-ジエチル-N-[(2-シス-ブテノオキシ)メチル]-2-クロロアセトアニリド、エキソ-1-メチル-4-(1-メチルエチル)-2-(2-メチルフェニル)メトキシ-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、S,S-ジメチル-2-ジフルオロメチル-4-(2-メチルプロピル)-6-(トリフルオロメチル)-3,5-ピリジンジカルボチオエート及び2-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(2,2,2-トリクロロエチル)オキシランからなる群から選ばれた少なくとも一種以上のものである上記〔10〕に記載の水田除草用錠剤;
〔12〕 上記〔10〕又は〔11〕に記載の錠剤を湛水した水田に直接施用することを特徴とする水田除草方法;及び
〔13〕 前記錠剤を、10アール当り10ヶ〜200ヶ、かつその総重量が200〜1500gになるように湛水した水田に直接施用することを特徴とする上記〔12〕に記載の水田除草方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、水田に施用した薬量の全量が実質的に田水に溶解すると規定した除草成分とは次のことを意味する。即ち実質的に水稲苗に薬害を与えないが除草効果を奏するに十分な薬量つまり実用薬量の除草成分を水田に施用し、その全量が田水に溶解すると仮定したとき、当該除草成分の田水濃度が除草成分の水に対する溶解度(25℃)以下である除草成分を意味する。
【0011】
当該除草成分の具体例としては例えばN-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ-4-イソチアゾールスルホンアミド(A-1)、メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート(A-2)、N-[(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル]-4-エトキシカルボニル-1-メチル-5-ピラゾールスルホンアミド、N-(2-クロロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルスルホニル)-N’-(4,6-ジメトキシ-2-ピリミジニル)ウレア、3-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-[2-(2-メトキシエトキシ)-フェニルスルホニル〕ウレアなどのスルホンアミド類;2-メチルチオ-4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン(A-5)、2-メチルチオ-4-エチルアミノ-6-(1,2-ジメチルプロピルアミノ)-s-トリアジンなどのトリアジン類;3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸(A-3)のようなキノリンカルボン酸類;2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(2-プロポキシエチル)アセトアニリド、2-クロロ-2’,6’-ジエチル-N-(ブトキシメチル)アセトアニリド、2-ベンゾチアゾール-2-イルオキシ-N-メチルアセトアニリド、N-[2’-(3’-メトキシ)-チエニルメチル]-N-クロロアセト-2,6-ジメチルアニリド、2’,6’-ジエチル-N-[(2-シス-ブテノオキシ)メチル]-2-クロロアセトアニリドなどのアニリド類;エキソ-1-メチル-4-(1-メチルエチル)-2-[(2-メチルフェニル)メトキシ-7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、S,S-ジメチル-2-ジフルオロメチル-4-(2-メチルプロピル)-6-(トリフルオロメチル)-3,5-ピリジンジカルボチオエート、2-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(2,2,2-トリクロロエチル)オキシランなどが挙げられるが、水への溶解性、水稲、雑草への作用効果などを考慮すると、スルホンアミド類、トリアジン類、キノリンカルボン酸類が望ましい。
【0012】
前記除草成分に関しては、例えば除草成分A-2は水稲作初期〜中期除草剤の実用薬量として普通10アール当り5〜7.5g施用されるが、その場合湛水深5cmと仮定したとき田水濃度は0.1〜0.15ppmになり、一方A-2の溶解度(25℃)は8ppmであるので、A-2は本発明の除草成分に該当する。しかしながら、除草成分4-(2,4-ジクロロベンゾイル)-1,3-ジメチル-5-フェナシルオキシピラゾール(A-4)は水稲作初期から中期除草剤の実用薬量として普通10アール当り180〜300g施用され、湛水深5cmの田水濃度は3.6〜6ppmになるがA-4の溶解度(25℃)は0.9ppmであるのでA-4は本発明の除草成分に該当しない。このことに関しては、前記除草成分A-2はA-4に比し錠剤又はカプセルへの含有量が少ないために製剤し易いだけでなく、製剤品を水田に施用した場合でも、A-2は田水中に速やかに溶解し広く拡散して均一に分散するのに対し、A-4は固型物の状態で水底に沈降、余り溶解せず分散し難いためである。
【0013】
本発明で用いられる界面活性剤は除草成分、結合剤などに親水性を与えるものであり、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホサクシネート、ラウリル硫酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート、β-ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ジナフタレンメタンスルホネート、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン系界面活性剤:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルなどの非イオン系界面活性剤が挙げられる。界面活性剤はこれらのものを1種或は2種以上の混合物として使用してもよく、また陰イオン系及び非イオン系のものの混合物として使用してもよい。
【0014】
また本発明で用いられる結合剤は除草成分の粒子を結合するものであって望ましくは水溶性のものであり、例えばカルボキシメチルセルロース、その塩、ステアリン酸、その塩、デキストリン、ポリエチレングリコール、澱粉類などが挙げられる。界面活性剤及び結合剤の使用は必須であるが、それらの選択に当っては除草成分の種類、製剤全体の配合割合により異なるため、実際には試行錯誤的な実験によって適当なものを選抜されねばならない。
【0015】
本発明の水田除草用錠剤又はカプセルは前記除草成分、界面活性剤及び結合剤を含有するものであり、例えば前記除草成分を1重量部に対し、界面活性剤を0.1〜20重量部並びに結合剤を0.1〜20重量部の比率で含有するものであるが、勿論前述の範囲外のものでも所期の効果を示す限り、本発明に含まれる。また、本発明の錠剤又はカプセルは前述の3成分以外に酸性物質、発泡剤、固型担体、他の農薬助剤を含有することができる。更に本発明の前記除草成分の水に対する溶解性、分散性を大きく損なわない限り本発明の前記除草成分以外の除草成分、殺菌成分、殺虫成分、植物生育調整成分、肥料成分なども適宜含有することもできる。
【0016】
酸性物質としてはクエン酸、酒石酸、蓚酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、アジピン酸などの有機酸;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸水素カリウムなど水素塩が挙げられ、発泡剤としては水又は酸と反応してガスを発生するものであって、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどの重炭酸塩;過炭酸ナトリウムのような過炭酸塩;カルシウムカーバイド、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。また固型担体としてはカオリン、タルク、クレー、ベントナイト、微粉末シリカ、ジークライトなどの鉱物性微粉末;無水硫酸ナトリウム、尿素などが挙げられ、他の農薬助剤としては通常使用される溶剤、分解防止剤、薬害軽減剤、分散安定剤、崩壊剤、乾燥剤などが挙げられる。それらの使用量は一概に規定することはできないが、一般に錠剤又はカプセル全体に占める比率として酸性物質は10〜50重量部、発泡剤は10〜90重量部、固型担体は0.1〜90重量部並びに他の農薬助剤は0.1〜20重量部である。酸性物質及び発泡剤を使用した場合、水に対する除草成分の溶解性及び分散性が向上するのでそれらの使用は好ましい。
【0017】
本発明の錠剤又はカプセルは通常、医薬分野で実施される方法或はそれに準じた方法により容易に製造される。一般に、前記除草成分が固体の場合、水への溶解性及び分散性を高めるために予め粉砕することにより、粒径が1〜200μ、望ましくは1〜100μの微細粒子として使用する。錠剤の製造方法としては、例えば、除草成分と界面活性剤と結合剤とを3成分同時に混合するか或は予め混合した2成分に他の1成分を混ぜることにより3成分を均一に混合し、粒径1〜200μに粉砕し、これを打錠機を用いて通常の方法に従い圧縮成型することにより錠剤化する。ここで酸性物質又は発泡剤を使用する場合、これらを予め結合剤と均一に混合し粉砕してから除草成分及び界面活性剤と混合する方法、また固体担体又は他の農薬助剤を使用する場合、これを予め除草成分、界面活性剤と均一に混合し粉砕して水和剤を形成してから結合剤と混合する方法などが挙げられる。前述の錠剤の製造方法は勿論、薬効、製剤性などを考慮し適宜変更され、適当なものが実施される。錠剤はその製造方法、打錠機などの相異により、円形板状、長円形板状、角形板状、棒状、楕円球状など種々の形状、大きさのものとして製造される。錠剤の形状によって薬効が大きく影響されるものでないので、いずれの形状、大きさ、重さのものであってもよいが、形状がタブレット状で大きさが直径1〜5cm厚さ0.2〜3cm、重さ1〜150gのものが製剤上、薬剤施用上好ましい。
【0018】
本発明のカプセルの製造方法としては、例えば除草成分、界面活性剤及び結合剤を均一に混合し、必要ならば酸性物質、固体担体又は他の農薬助剤を加えてそれらを均一に混合し、粉砕した粉砕物を粒径1μ〜1.5mmに造粒し、この顆粒をポリビニルアルコール、水溶性セルロース、ゼラチンなどで作製したカプセルに充填するか或は造粒せずに前記粉砕物、水和剤をそのままカプセルに充填する。このカプセルも錠剤の場合と同様形状、大きさ、重さがいずれのものでもよいが、形状が楕円球状で大きさが直径1〜10cm長さ1〜10cm、重さ1〜150gのものが好ましい。また本発明のカプセルについては前述のごとく製剤したものの外に、前記粉砕物又は水和剤をカプセル容器に充填せず、そのままポリビニルアルコール、水溶性セルロース、ゼラチンなどの水溶性フィルムにより包んだものも含む。
【0019】
本発明の錠剤又はカプセルは、湛水した水田に施用すると、普通一旦水底に沈降するが、水との接触により除草成分が田水中に速やかに溶出、水中を拡散して均一に分散する。酸性物質及び発泡剤を使用した錠剤又はカプセルは水底に沈降後ガスの発生により水中乃至水面に浮遊し、その崩壊が速まり、除草成分の溶解性、分散性も一層促進される。また水田においては昼夜の気温差、水深の違いなどにより田水に対流が生じるので、それによっても除草成分の分散は促進される。かくして本発明では薬剤投与後速やかに実質的に除草成分の全量を田水中に溶解、分散させることができ、例えば数時間〜数日間後に田水中に除草成分を均一に分布させることができるので、水稲に薬害を与えず雑草を万遍なく防除することができる。
【0020】
本発明においては錠剤又はカプセルを10アール当り10ケ〜200ヶ、かつ錠剤又はカプセルの総重量が200〜1,500gになるように施用するが、この範囲を大きく逸脱すると薬効、薬害上望ましくなく、或は散布作業に多大の労力を要する。望ましい施用方法については錠剤又はカプセルの製造方法、大きさ、除草成分、界面活性剤、結合剤及びその他の添加物の種類、配合割合などの相違により一概に規定できないが、10アール当り除草成分5〜150gを錠剤又はカプセル1ケに0.05〜15g宛分割し、これを10ヶ〜 100ヶ施用する。かくして錠剤又はカプセルは10〜100m2に1ヶ宛施用すればよく、従って水田に入らず畦畔から当該面積の水田に投込めばよいので、散布作業は簡単であり、従来の薬剤施用方法に比して有利である。
本発明は、一般に移植水稲の場合稚苗移植5日〜15日後、直播水稲の場合播種10日〜20日後の水稲作初期〜中期に適用したときに最も好ましい効果が得られるが、前記錠剤又はカプセルを施用しても薬効、薬害上特に支障を来さない限りその他の時期に適用することもできる。また本発明の前記錠剤又はカプセルは一旦適量の水に溶解乃至分散させ、これを水田の局所に施用しても薬効、薬害面で望ましい効果が得られる。
【0021】
【実施例】
本発明に関する実施例を記載するが、この記載によって本発明が何ら限定されるものではない。
例1(製剤例)
各製剤例で用いられた成分とその略名を下記する。各成分の使用量は重量基準で表わす。
除草成分(A)
A-1:N-〔(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イル)アミノカルボニル〕-3-メチル-5-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ)-4-イソチアゾールスルホンアミド
A-2:メチル-α-(4,6-ジメトキシピリミジン-2-イルカルバモイルスルファモイル)-o-トルイレート
A-3:3,7-ジクロロ-8-キノリンカルボン酸
A-4:4-(2,4-ジクロロベンゾイル)-1,3-ジメチル-5-フェナシルオキシピラゾール
A-5:2-メチルチオ4,6-ビス(エチルアミノ)-s-トリアジン界面活性剤(B)
B-1:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル50%及び微粉末シリカ50%混合物(商品名、デイクスゾール:第一工業製薬製造)
B-2:ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルサルフェート(商品名、ソルポール5039:東邦化学工業製造)
B-3:ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(商品名、ラベリンFAN:第一工業製薬製造)
酸性物質(C)
C-1:コハク酸
発泡剤(D)
D-1:重炭酸ソーダ
D-2:炭酸ソーダ
結合剤(E)
E-1:カルボキシメチルセルロースナトリウム(商品名、セロゲン-PR:第一工業製薬製造)
固型担体(F)
F-1:微粉末シリカ(商品名、カープレックス:塩野義製薬製造)
F-2:ジークライト
その他(G)
G-1:色素(商品名、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF):試薬使用(東京化成))
【0022】
製剤例イ-a-(A)
C-1 42.4部、E-1 5.2部、D-1 31.4部及びD-2 21.0部を均一に混合し粉砕して配合物を得た。予め乳鉢で粒径5〜10μ程度に摩り潰したA-1 0.46%及びA-3 3.34%とB-1 3.8%と前記配合物92.4%とを混合し、マイクロサンプルミル(AP-S型、細川工業製造)で微粉化して粉砕物を得た。この粉砕物48.2gを、打錠機を用いて圧力150〜160kg/cm2で2分間圧縮成型して直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(48.0g)を得た。
【0023】
製剤例イ-a-(B)
前記製剤例イ-a-(A)の粉砕前の混合物に色素G-1を全重量の2%程度加えた以外は前記製剤例イ-a-(A)の場合と同様にして、粉砕物38.6gを打錠機を用いて直径5cm厚さ1.3cmの錠剤1ヶ(38.4g)を得た。
製剤例イ-b
前記配合物としてE-1 5.2部、D-1 73.8部及びD-2 21.0部の組成を有するものを用いる以外は前記製剤例イ-a-(B)の場合と同様にして、打錠機を用いて粉砕物38.6gを圧縮成型して直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(38.4g)を得た。
【0024】
製剤例イ-c
前記製剤例イ-a-(A)の配合物と同じ組成を有する配合物38.08%、A-4 30.96%及びB-1 30.96%を混合し粉砕する以外は前記製剤例イ-a-(B)の場合と同様にして、打錠機を用いて粉砕物38.6gを圧縮成型して直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(38.4g)を得た。
【0025】
製剤例イ-d
前記製剤例イ-a-(A)の場合と同様にして実施し、打錠機を用いて粉砕物10.7gを圧縮成型して直径2.5cm、厚さ0.8cmの錠剤1ヶ(10.5g)を得た。
【0026】
製剤例イ-e
前記製剤例イ-a-(A)において、A-1 1.2部、A-3 8.8部、B-2 3.0部、B-3 2.0部、F-1 6部及びF-2 79.0部からなる水和剤37.9%と前記配合物62.1%とを用い前記製剤例イ-a-(A)の場合と同様にして実施し、打錠機を用いて粉砕したもの10.7gを圧縮成型して直径2.5cm、厚さ0.8cmの錠剤1ヶ(10.5g)を得た。
【0027】
製剤例イ-f
前記製剤例イ-eの場合と同様にして実施し、粉砕したもの48.2gから直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(48.0g)を得た。
【0028】
製剤例イ-g
前記製剤例イ-a-(A)においてA-2 0.52%、A-3 3.33%、B-1 3.85%及び前記配合物92.3%を用い、前記製剤例イ-a-(A)の場合と同様にして実施し、粉砕物48.2gから直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(48.0g)を得た
【0029】
製剤例イ-h
前記製剤例イ-a-(A)においてA-2 1.35部、A-3 8.65部、B-2 3.0部、B-3 2.0部、F-1 6.0部及びF-2 79.0部からなる水和剤38.53%と前記配合物61.47%を用い、前記製剤例イ-a-(A)の場合と同様にして実施し、粉砕物48.2gから直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(48.0g)を得た。
【0030】
製剤例イ-i
前記製剤例イ-a-(A)においてA-1 0.455%、A-3 3.34%、A-5 1.53%、B-1 5.33%及び前記配合物89.36%を用い、前記製剤例イ-a-(A)の場合と同様にして実施し、粉砕物48.2gから直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(48.0g)を得た。
【0031】
製剤例イ-j
前記製剤例イ-a-(A)においてA-1 0.85部、A-3 6.27部、A-5 2.87部、B-2 3.0部、B-3 2.0部、F-1 6.0部及びF-2 79.0部からなる水和剤53.19%と前記配合物46.81%を用い、前記製剤例イ-a-(A)の場合と同様にして実施し、粉砕物48.2gから直径5cm、厚さ1.6cmの錠剤1ヶ(48.0g)を得た。
【0032】
例ロ(分散性試験-I)
障害物として、円心部に半径0.5mの円柱を有した半径3.5mのコンクリート製円形プール(図1)に水深約5cmで水を入れた。図1に示したとおり、円心から0.75m離れたW-1点に前記製剤例で作製した錠剤を投入し、所定時間経過後に円心から0.75m、1.75m又は2.75m離れた各点で水を採取して除草成分の分散状況を調査した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
(ii)投与19時間後W-1の点において錠剤の沈澱物は認められなかった。
【0036】
例ハ(分散性試験-II)
後記例ホ(除草試験-II)の試験区と同一の試験区を用いた。
代掻きした水田圃場に横8m縦6mの試験区を一区画として試験区を設け、水深3〜6cmに水を入れた。代掻きの9日後に前記製剤例で作製した錠剤を1試験区当り1ヶ(図2のW-1地点)又は2ヶ(図2のW-2及びW-3地点)投入した。2ヶ施用の各錠剤は1ヶ施用のそれに比し同様の製剤方法を経由するが厚さは1/2である。24時間後にW-1、X及びYの各地点で、田水を採取して除草成分の分散状況を調べた。なお水田にはワラ屑、雑草片などの多くの障害物が認められた。
【0037】
【表3】

【0038】
例ニ(除草試験-I)
6月7日にトラクターで水田圃場を耕起後、基肥として粒状化成肥料(N-P2O5-K:14- 10-13)を10a当り20kg施した。6月12日に入水し、2日後にトラクターで代掻を行い6月16日に箱育苗した2葉期の苗(品種:ニホンバレ)を機械移植した。
6月20日にプラスチック畦畔シートを用い 3.5m×3mの試験区を2連制で設けた。翌日試験区の端に催芽したミズガヤツリの塊茎を1区当り3ヶ植え込んだ。他の雑草は自然に発生させたが何れも多く発生した。
湛水深を5〜7cmに調整し、6月26日に前記製剤例で作製した錠剤1ヶを試験区の中央に投げ込んだ。比較区には前記錠剤に対応し、従来の製剤法による粒剤を均一に散布した。薬剤は除草成分A-1が0.45g/a、A-3が3g/aである。薬剤処理時の各雑草の葉令はノビエが1.5〜1.8葉期、ホタルイ、アゼナ及びミズガヤツリが1.5〜2葉期であった。薬剤処理後45日目に水稲及び雑草の生育状況を肉眼観察し、生育抑制程度を下記の基準で表わして表4の結果を得た。
【0039】
生育抑制程度
5:100%
t:96〜99%
5-4:91〜95%
5-4:85〜90%
4-5:81〜84%
4:70〜80%
【0040】
【表4】

【0041】
例ホ(除草試験-II)
7月17日にトラクターで水田圃場を耕起し7月21日に入水した。翌日トラクターで代掻後プラスチック畦畔シートを用い8m×6mの試験区を設けた。7月24日に催芽したミズガヤツリの塊茎を1区当り24ヶ 図3の×地点に示す位置に植え込んだ。ヒエ及びコナギは自然に発生させた。7月31日に湛水深を3〜6cmに調整し、前記製剤例で作製した錠剤を1区当り1ヶ又は2ヶを図3のW-1又はW-2、W-3の各位置に投げ込んだ。薬剤処理時の雑草はヒエやコナギが 1.5〜2葉期、ミズガヤツリが2葉期であった。薬剤処理後30日目に前記例ニの場合と同様にして生育抑制程度を求めて表-5の結果を得た。
【0042】
【表5】

【0043】
【発明の効果】
本発明の配合物を錠剤又はカプセルとして湛水した水田に適用することで、その湛水した水田で速やかな除草成分の溶解化を得ると同時に、分散化あるいは拡散化を図ることができる。本願発明の錠剤及びカプセルは畦畔から水田にそれを投げ入れるだけで除草作用を得ることができ、労働における負担が大幅に軽減され、さらに施用に要する時間も短縮できて作業効率が大幅に向上でき、加えて輸送や保管も簡便となる。また、薬剤投入部での局所残留や薬害を回避しつつ、水田全体などの広範囲に活性成分を分散あるいは拡散せしめて、安定した除草効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図-1はコンクリート製の円形プールを示し、円心の半径0.5mは水面上に突起した円柱であり、W-1地点は錠剤の投入点であり、W-1〜3、X-1〜3、Y-1〜3及びZ-1〜3の地点は水の採取点である。
【図2】
図-2は水田圃場を示し、W-1〜3は錠剤の投入点であり、W-1、X及びYは田水の採取点である。
【図3】
図-3は水田圃場を示し、W-1、W-2及びW-3は錠剤の投入点であり、×地点はミズガヤツリの植込み点である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-12-16 
出願番号 特願2000-313441(P2000-313441)
審決分類 P 1 651・ 4- ZD (A01N)
P 1 651・ 113- ZD (A01N)
P 1 651・ 121- ZD (A01N)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 唐木 以知良星野 紹英  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 西川 和子
鈴木 紀子
登録日 2001-10-26 
登録番号 特許第3245588号(P3245588)
権利者 石原産業株式会社
発明の名称 水田除草方法  
代理人 牧村 浩次  
代理人 高畑 ちより  
代理人 鈴木 亨  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 川上 宣男  
代理人 水野 昭宣  
代理人 川上 宣男  
代理人 水野 昭宣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ