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審決分類 審判 一部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  C04B
管理番号 1096241
異議申立番号 異議2003-72054  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-11 
確定日 2004-03-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3376468号「セラミックス材料粉末の製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許3376468号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成8年11月28日に特許出願され、平成14年12月6日にその特許権の設定登録がなされ、その後、稲葉佳子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年1月27日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
(a)訂正事項a
特許請求の範囲の
「【請求項1】 セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法。
【請求項2】 セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なわない工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法。
【請求項3】 セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は液中において主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の表面イオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程と、この工程で得られた粉末に液中において他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物のイオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法。
【請求項4】 セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物を主成分と副成分の粒子に対する機械的な力に基づいて起こる両者の化学反応であるメカノケミカル反応により付着させる工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物を該メカノケミカル反応により付着させ、順次これを繰り返す工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法。」を
「【請求項1】 セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物を主成分と副成分の粒子に対する機械的な力に基づいて起こる両者の化学反応であるメカノケミカル反応により付着させる工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物を該メカノケミカル反応により付着させ、順次これを繰り返す工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法。」
と訂正する。

(b)訂正事項b
段落【0006】の
「【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、(1)、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、(2)、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なわない工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法、(3)、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は液中において主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の表面イオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程と、この工程で得られた粉末に液中において他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物のイオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法、(4)、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物を主成分と副成分の粒子に対する機械的な力に基づいて起こる両者の化学反応であるメカノケミカル反応により付着させる工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物を該メカノケミカル反応により付着させ、順次これを繰り返す工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法を提供するものである。
上記において「各区分ごとに層状に担持」は、「各区分ごとに積層して層状に担持」としてもよい。また、「1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物」、「他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物」とは、その区分の元素が単数の場合と複数の場合があることを意味し、その元素を構成成分とする化合物が一般的であるが、単体であっても良いことを示す。
上記(1)その他のこれを引用する発明において、「各区分毎に層状に担持させ」は「各区分毎に層状に少なくとも2層担持させ」とするこが好ましい。
なお、上記(1)〜(4)において、「複数の元素を各区分ごとに層状に担持させた構成は副成分の複数の元素の各区分の元素が主成分となる無機化合物粉末粒子に対して拡散速度の小さい元素から大きい元素の順に内側から外側に順次担持されている構成であるセラミックス材料粉末の製造方法」、「副成分の複数の元素の各区分の元素は主成分としての無機化合物粉末粒子の粒径の1/5より大きくない粒径で担持されているセラミックス材料粉末の製造方法」の少なくとも一つの限定を設けてもよい。」を
「【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、(1)、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物を主成分と副成分の粒子に対する機械的な力に基づいて起こる両者の化学反応であるメカノケミカル反応により付着させる工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物を該メカノケミカル反応により付着させ、順次これを繰り返す工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法を提供するものである。
上記において「各区分ごとに層状に担持」は、「各区分ごとに積層して層状に担持」としてもよい。また、「1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物」、「他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物」とは、その区分の元素が単数の場合と複数の場合があることを意味し、その元素を構成成分とする化合物が一般的であるが、単体であっても良いことを示す。
上記(1)その他のこれを引用する発明において、「各区分毎に層状に担持させ」は「各区分毎に層状に少なくとも2層担持させ」とするこが好ましい。
なお、上記(1)、下記〔1〕〜〔3〕において、「複数の元素を各区分ごとに層状に担持させた構成は副成分の複数の元素の各区分の元素が主成分となる無機化合物粉末粒子に対して拡散速度の小さい元素から大きい元素の順に内側から外側に順次担持されている構成であるセラミックス材料粉末の製造方法」、「副成分の複数の元素の各区分の元素は主成分としての無機化合物粉末粒子の粒径の1/5より大きくない粒径で担持されているセラミックス材料粉末の製造方法」の少なくとも一つの限定を設けてもよい。」
と訂正する。

(c)訂正事項c
段落【0008】の
「本発明において、副成分の複数の元素の各区分の元素を主成分の無機化合物粉末粒子に担持させるには、固相法、液相法、気相法及びメカノケミカル法があり、これらを複数併用してもよい。
固相法は、主成分の無機化合物粉末に副成分の複数の元素の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末、例えば上記金属の酸化物粉末等を水等の媒体とボールミル等で攪拌し、粉末同志を湿式混合し、熱処理を行うことによりその副成分を無機化合物粉末粒子に付着させて担持させ、ついでこの副成分を担持した粉末粒子に副成分の複数の元素の他の1の区分の元素の例えば上記と同様な化合物の粉末を同様にボールミル等で攪拌し、粉末同志を湿式混合し、熱処理を行うことによりその副成分を第1の副成分の元素の成分の層上に担持させ、以下各元素を順次同様にして担持させ、セラミックス材料粉末を得る方法である。最後の区分の元素の例えば上記と同様な化合物の粉末については熱処理を行わず、湿式混合した後乾燥させてセラミックス材料粉末とすることができる。
このとき適性な熱処理温度を選定する必要があり、例えば900〜1100℃、1〜60分を挙げることができ、これは仮焼とも言える。このようにすると、副成分の元素の成分は主成分の無機化合物粉末粒子表面に拡散するのでその担持は容易である。」を
「本発明において、副成分の複数の元素の各区分の元素を主成分の無機化合物粉末粒子に担持させるには、固相法、液相法、気相法及びメカノケミカル法のうちのメカノケミカル法があるが、固相法、液相法及び気相法のこれらを複数併用してもよい。
なお、〔1〕、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法、〔2〕、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なわない工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法、〔3〕、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は液中において主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の表面イオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程と、この工程で得られた粉末に液中において他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物のイオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法を挙げることができる。
固相法は、主成分の無機化合物粉末に副成分の複数の元素の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末、例えば上記金属の酸化物粉末等を水等の媒体とボールミル等で攪拌し、粉末同志を湿式混合し、熱処理を行うことによりその副成分を無機化合物粉末粒子に付着させて担持させ、ついでこの副成分を担持した粉末粒子に副成分の複数の元素の他の1の区分の元素の例えば上記と同様な化合物の粉末を同様にボールミル等で攪拌し、粉末同志を湿式混合し、熱処理を行うことによりその副成分を第1の副成分の元素の成分の層上に担持させ、以下各元素を順次同様にして担持させ、セラミックス材料粉末を得る方法である。最後の区分の元素の例えば上記と同様な化合物の粉末については熱処理を行わず、湿式混合した後乾燥させてセラミックス材料粉末とすることができる。
このとき適性な熱処理温度を選定する必要があり、例えば900〜1100℃、1〜60分を挙げることができ、これは仮焼とも言える。このようにすると、副成分の元素の成分は主成分の無機化合物粉末粒子表面に拡散するのでその担持は容易である。」
と訂正する。

(d)訂正事項d
段落【0018】の
「【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。
実施例1(液相法の例)」を
「【実施例】
次に本発明の実施例を参考例とともに説明する。
参考例1(液相法の例)」
と訂正する。

(e)訂正事項e
段落【0019】の
「参考例1(気相法の例)」を
「参考例2(気相法の例)」
と訂正する。

(f)訂正事項f
段落【0020】の
「実施例3(メカノケミカル反応を利用する例)」を
「実施例1(メカノケミカル反応を利用する例)」
と訂正する。

(g)訂正事項g
段落【0021】の
「実施例4(固相法の例)」を
「参考例3(固相法の例)」
と訂正する。

2-2.訂正の適否の判断
(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、拡張・変更の存否)
2-2-1.訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1〜3を削除し、請求項4を新たな請求項1とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。また、上記訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
2-2-2.訂正事項b〜gは、上記訂正事項aの訂正に伴うものであり、訂正された特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるためにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。また、上記訂正事項b〜gは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.訂正の適否のむすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てに関する当審の判断
訂正前の請求項1〜3に係る発明は、訂正の結果削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないので、この特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。
したがって、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
セラミック材料粉末の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物を主成分と副成分の粒子に対する機械的な力に基づいて起こる両者の化学反応であるメカノケミカル反応により付着させる工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物を該メカノケミカル反応により付着させ、順次これを繰り返す工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス材料粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、セラミックスは電子部品に幅広く用いられている。例えば、セラミック基板、セラミックコンデンサー、インダクターのコア、セラミックフィルター、セラミック発振子、各種センサー、高周波部品等が挙げられる。これら部品に用いられるセラミックス誘電体材料、セラミックス磁性体材料は、その組成のほとんどが金属酸化物により占められている。
例えばセラミックス誘電体材料は、例えば炭酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の誘電体原料粉末を所定の比率で混合粉砕し、ついでこれを仮焼し、Ba(Ti、Zr)O3の組成の金属酸化物の材料粉末を得る。この材料粉末に有機バインダーを加えて造粒し、この造粒物を例えば板状に圧縮成形するいわゆる乾式成形を行ってその成形物を焼成し、この焼成体に電極を形成してセラミックコンデンサを作成したり、あるいはその材料粉末に有機バインダ等を含有させて得たスラリーを用いてシート状体を作成するいわゆる湿式成形を行って多数のグリーンシートを形成し、それぞれのグリーンシートに内部電極材料ペースト膜を形成して積層し、焼成することにより積層セラミックコンデンサを作成している。
【0003】
このようなセラミックス材料粉末を用いて得られる焼成体の誘電体特性、磁気特性等の電気特性は、その材料の例えば金属成分の組成に大きく依存し、その金属成分の組成は焼成体の微細構造にも大きく影響を及ぼすので、セラミックス材料粉末に副成分として微量の例えば金属成分、例えば原子価制御剤、焼結助剤等を添加し、焼成体の電気特性、微細構造を制御することが重要なこととして行われているが、その添加する個々の金属成分の元素の種類によって、上記の電気特性に及ぼす影響は異なる。例えば、セラミックスの主成分に固溶することによりその特徴を発揮する金属成分元素と、その固溶をせず、焼成体の結晶粒界や三重点に存在し特徴を発揮する金属成分元素がある。いずれにせよ、微量の金属成分はセラミックス焼成体中に均一に存在することが電気特性のバラツキを少なくし、安定のためのみならず、微細構造を得るためにも必要である。
セラミックス材料粉末に副成分として例えば金属成分を添加する方法としては、▲1▼ セラミック材料の金属酸化物粉末に副成分の金属粉末あるいはその金属の炭酸塩や酸化物を加えてボールミル等で湿式混合し、その乾燥粉末を仮焼後あるいはそのまま用いて作成した成形体を焼成する方法、▲2▼ セラミック材料の金属酸化物粉末のスラリーに副成分の金属イオンを含む水溶液を添加し、この金属イオンをソーダ塩やアンモニウム塩のような沈澱剤により沈澱させ、金属酸化物粉末とその沈澱物の混合物を仮焼する方法、▲3▼ セラミック材料の金属酸化物粉末に副成分の金属化合物とバインダを加えて得たスラリーを噴霧乾燥し、造粒した後、仮焼する方法が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼〜▲3▼のいずれの方法も、主成分のセラミック材料粉末に必要な副成分を一度に添加して仮焼して得られるセラミック材料粉末を用い、あるいは上記▲1▼の方法によるセラミック材料粉末に副成分を添加したセラミック材料粉末を用い、成形を行い、焼成したものは、上述した主成分に固溶することによりその特徴を発揮する金属成分元素や焼成体の結晶粒界や三重点に存在し特徴を発揮する金属成分元素の複数成分を用いると、それぞれの元素の拡散速度が異なることにより焼成体の結晶粒子毎に固溶状態が異なり、また、複数の元素が混在することによりその粒界の状態が不均一になり易く、このように微量の副成分が焼成体中に不均一に存在すると上述したように電気特性の安定性が得られず、そのバラツキも小さくし難い。
特に、近年の電子部品の小型化、高性能化の進展はめざましいものがあり、部品の小型化に対しては、セラミック焼成体の微細構造、電気特性の一層高度な制御が必要になっており、そのためには上記したように副成分の微量の例えば金属成分はセラミック焼成体中に均一に存在することが必要である。
【0005】
本発明の第1の目的は、主成分に副成分が均一に固溶し、その均一性をより高めることができる焼成体のセラミックス、これが得られるセラミックス材料粉末及びこれらの製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、副成分による主成分の粒界が均一になる焼成体のセラミックス、これが得られるセラミックス材料粉末及びこれらの製造方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、誘電率の温度特性等の電気特性の安定性が良く、そのバチツキが小さい焼成体のセラミックス、これが得られるセラミックス材料粉末及びこれらの製造方法を提供することにある。
本発明の第4の目的は、最近の小型化、高性能化の電子部品の製造を可能にする焼成体のセラミックス、これが得られるセラミックス材料粉末及びこれらの製造方法を提供することにある。
本発明の第5の目的は、特別に新たな設備を必要とすることなく、生産性が良く、コスト的に有利なセラミック材料粉末の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、(1)、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物を主成分と副成分の粒子に対する機械的な力に基づいて起こる両者の化学反応であるメカノケミカル反応により付着させる工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物を該メカノケミカル反応により付着させ、順次これを繰り返す工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法を提供するものである。
上記において「各区分ごとに層状に担持」は、「各区分ごとに積層して層状に担持」としてもよい。また、「1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物」、「他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物」とは、その区分の元素が単数の場合と複数の場合があることを意味し、その元素を構成成分とする化合物が一般的であるが、単体であっても良いことを示す。
上記(1)その他のこれを引用する発明において、「各区分毎に層状に担持させ」は「各区分毎に層状に少なくとも2層担持させ」とするこが好ましい。
なお、上記(1)、下記〔1〕〜〔3〕において、「複数の元素を各区分ごとに層状に担持させた構成は副成分の複数の元素の各区分の元素が主成分となる無機化合物粉末粒子に対して拡散速度の小さい元素から大きい元素の順に内側から外側に順次担持されている構成であるセラミックス材料粉末」、「副成分の複数の元素の各区分の元素は主成分としての無機化合物粉末粒子の粒径の1/5より大きくない粒径で担持されているセラミックス材料粉末」の少なくとも一つの限定を設けてもよい。
【0007】
本発明において、「セラミック原料粉末から得られる無機化合物粉末粒子」とは、例えばセラミック誘電体材料粉末粒子を得る場合には、例えば炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸塩、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の酸化物等の誘電体原料粉末をそれぞれの材料の組成に応じて選択し、所定の比率で混合粉砕し、ついでこれを仮焼して得られる、Ba(Ti、Zr)O3、SrTiO3等の組成の金属酸化物粉末粒子が挙げられる。
また、「主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させ」の元素としては、Co、Nb、Al、Si、Mn、希土類金属、アルカリ土類金属等が挙げられ、これらは1種のみならず複数でも良い。一般には原子価制御剤、焼結助剤等として用いられる。「複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させ」とは、主成分の粒子に同心円的に1又は複数の元素を区分して担持させることをいうが、その元素としては主成分の粒子に拡散速度が大きいものほど外側にし、拡散速度の小さいものほど内側にすることが好ましく、例えばBa(Ti、Zr)O3の粒子に対しては内側から外側に順に、例えばNb、Co、Siを担持させる。このようにすると、焼成を行うときに中心の粒子に対して副成分の各成分の拡散量を均すことができ、それだけ副成分の固溶状態を均一にでき好ましいが、このような構造は核に複数の層からなる殻を形成した、いわゆるコアシェル構造の粒子と呼ばれ、その効果を大きく発現することができる。なお、複数の元素の各元素を区分して各元素ごとに層状に担持させる場合のみならず、複数の元素の内の複数の元素を1区分とし、その区分された複数の元素を1つの層状に担持させる場合も含まれ、さらにこれらの場合を組み合わせた場合も含まれる。
【0008】
本発明において、副成分の複数の元素の各区分の元素を主成分の無機化合物粉末粒子に担持させるには、固相法、液相法、気相法及びメカノケミカル法のうちメカノケミカル法があるが、固相法、液相法及び気相法のこれらを複数併用してもよい。
なお、〔1〕、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法、〔2〕、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なう工程と、この工程で得られた粉末に他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末を湿式混合した後仮焼を行なわない工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法、〔3〕、セラミックス原料粉末から得られる主成分としての無機化合物粉末粒子表面に副成分として複数の元素を区分して各区分ごとに層状に担持させたセラミックス材料粉末を製造する方法において、副成分の複数の元素の各区分の元素の担持は液中において主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の表面イオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程と、この工程で得られた粉末に液中において他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物のイオン交換反応及び/又は沈殿反応を用いて付着させる工程を有するセラミックス材料粉末の製造方法を挙げることができる。
固相法は、主成分の無機化合物粉末に副成分の複数の元素の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末、例えば上記金属の酸化物粉末等を水等の媒体とボールミル等で攪拌し、粉末同志を湿式混合し、熱処理を行うことによりその副成分を無機化合物粉末粒子に付着させて担持させ、ついでこの副成分を担持した粉末粒子に副成分の複数の元素の他の1の区分の元素の例えば上記と同様な化合物の粉末を同様にボールミル等で攪拌し、粉末同志を湿式混合し、熱処理を行うことによりその副成分を第1の副成分の元素の成分の層上に担持させ、以下各元素を順次同様にして担持させ、セラミックス材料粉末を得る方法である。最後の区分の元素の例えば上記と同様な化合物の粉末については熱処理を行わず、湿式混合した後乾燥させてセラミックス材料粉末とすることができる。
このとき適性な熱処理温度を選定する必要があり、例えば900〜1100℃、1〜60分を挙げることができ、これは仮焼とも言える。このようにすると、副成分の元素の成分は主成分の無機化合物粉末粒子表面に拡散するのでその担持は容易である。
【0009】
また、液相法は、副成分の複数の元素の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物を構成成分に有する塩及びアルコキシド、キレート化合物その他の金属の有機化合物等の少なくとも1種を溶媒に溶解し、その溶液を主成分の無機化合物粉末を含有する有機溶媒等の液に加え、その無機化合物粉末粒子表面に表面イオン交換反応及び沈殿反応の少なくとも1種を起こさせてその元素又はそれぞれの元素(前者は単数の場合、後者は複数の場合、以下同様)を担持させ、ついでこの副成分を担持した粉末粒子を含有する液に副成分の複数の元素の他の1の区分の元素又は該他の1の区分の化合物を構成成分に有する塩及びアルコキシド、キレート化合物その他の金属の有機化合物等の少なくとも1種を溶媒に溶解した溶液を加えて第1の副成分の元素の成分の層上に表面イオン交換反応及び沈殿反応の少なくともも1種を起こさせてその元素又はそれぞれの元素の成分を担持させ、以下各元素を順次同様にして担持させる方法である。溶解の代わりに分散でもよい。
なお、表面イオン交換反応は、粒子表面のOH基のプロトンを金属イオンが置換する反応をいい、沈殿反応は、沈殿剤により金属イオンを水酸化物として表面に吸着させる反応をいう。
いずれにせよ、副成分の元素の成分を所望の組成にて担持させるには反応条件の適性化が必要となるが、その適性化を行なえば副成分の元素の成分の析出は主成分の無機化合物粉末粒子表面やこれに担持された他の副成分の元素の成分の析出膜上で起こるので各元素又は複数の元素の成分の均一な被膜が形成できる。
その適性化としては、例えば上記反応を起こさせる液のpH、加水分解剤の使用の有無、その濃度、反応温度等の条件の選択が挙げられる。例えば沈殿反応において、加水分解剤を使用する場合には、その反応を起こさせる溶媒は中性からアルカリ性の領域内の水性液が好ましく、例えばアンモニア水が好ましく、これに限らないが、アルカリ金属等の後のセラミック材料を得る際、あるいはその材料を用いた成形体の焼成の際残留するようなものよりは、揮発又は分解し残留しないものが好ましい。水性液とは溶媒が水のみの場合のみならず、水とこれに混ざる有機溶媒の混合液でも良い。
上記加水分解剤として水のみでも良いことがあるが、アンモニア水を用いる場合には、上記無機化合物粉末を含有する有機溶媒等の液中におけるアンモニア水(NH4OH)の濃度としては、0.01〜10mol/lが好ましく、より好ましくは0.1〜5mol/lである。0.01mol/lより小さければアンモニア水の量が増加し、生産性が悪化し易く、また、10mol/lより大きければアンミン錯体が生成し易く、所望の組成の無機化合物の被覆が不可能となり易い。
また、加えるNH4OHの量は、金属の有機化合物に対して、1〜2当量であることが生産性、被覆する無機化合物の組成制御の点から好ましく、この範囲外では生産性の悪化を起こし易い。より好ましくは1当量である。
【0010】
有機溶媒としては、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、エタノールアミン等の上記加水分解剤を溶解できる溶媒、すなわち極性溶媒が好ましいが、この極性溶媒を他の有機溶媒、例えばベンゼン、トルエン等の少なくとも1種を0〜40%を混合したある程度極性を持った有機溶媒でも、上記加水分解剤を溶解できるものであれば良い。
上記無機化合物粉末を有機溶媒に分散させる際には、界面活性剤を使用し、有機溶剤に無機化合物粉末が分散し易くしても良く、陰イオンの界面活性剤を使用すれば、無機化合物粉末に吸着されたその陰イオンに加水分解剤やこれによる金属の有機化合物の加水分解物の陽イオンが吸着され易いようにすることもでき、界面活性剤に有機物を使用すれば後のセラミック材料を得る際、あるいはその材料を用いた成形体の焼成の際、分解除去できるので好ましい。
【0011】
上記において、元素又は元素の化合物を構成成分に有する塩及びアルコキシド、キレート化合物その他の金属の有機化合物等の少なくとも1種とは、塩の1種、金属の有機化合物の少なくとも1種、塩及び金属の有機化合物のそれぞれ少なくとも1種が挙げられる。金属の有機化合物の少なくとも1種は、上記例示した金属の例えば加水分解可能なアルコキシド類及びキレート化合物類の少なくとも1つの類に属する少なくとも1種、すなわちアルコキシド類の少なくとも1種、キレート化合物類の少なくとも1種、両者のそれぞれの少なくとも1種が挙げられるが、具体的にはアルコキシドとしてはエトキシド、プロポキシド等の低級アルコキシド、ジケトン系、また、キレート化合物としてはアセチルアセトナート、DPM等が好ましいものとして例示される。塩としては具体的には上記例示した金属の塩化物、硝酸塩等が挙げられる。
これらの例えば金属の有機化合物は、金属イオンが親水性の無機化合物粉末粒子の表面の吸着水に配位するため、その金属の有機化合物の加水分解剤による加水分解はその表面で選択的に行われ、その析出した水酸化物あるいは酸化物も親水的であるので分解析出及び吸着によりその成長が行われ、金属酸化物粉末粒子に対する被膜が形成される。
上記金属の有機化合物の上記有機溶媒中の濃度は、0.001〜0.1mol/lが好ましく、低過ぎると生産性が悪くなり易く、多過ぎると溶解でき難くなる。
これらの塩や金属の有機化合物の主成分である無機化合物粉末に対する添加量は塩としては0.01〜5mol%が好ましい。
【0012】
上記無機化合物粉末粒子に対して担持した被膜の成長と結晶性の向上には、有機溶媒中に金属の有機化合物を溶解し、その溶液と無機化合物粉末を分散させた分散液に、さらに加水分解剤を加えて得たスラリーの熱処理を行うことが、金属の有機化合物を良く溶解することによりその分子レベルの吸着を可能にし、その状態で加水分解剤により加水分解されるので、その加水分解物である水酸化物あるいは酸化物の析出反応が促進され、効果的である。
その加熱温度はその金属化合物の被膜を強固にする点から80℃が好ましいが、その結晶化が促進されるためには60℃以上に加熱することが好ましい。最も適当な熟成温度は60〜80℃である。
また、その被覆膜の均一性を向上させるには、加水分解剤による加水分解をスラリー中で均一に行わせることが重要であり、そのためには上記スラリーを撹拌することが有効である。
その速度は100〜1000rpm(毎分の回転数)が好ましく、100rpmより遅いと得られる被覆膜の均一性は十分ではなく、1000rpmより大きくすると生産設備のコスト増になり易い。
【0013】
このようにして金属の水酸化物あるいは酸化物を担持したセラミック材料粉末が得られるが、これをその含有液から分離するには、フィルタープレス等の濾過を行うことで十分であるが、この含有液を噴霧する噴霧乾燥によっても陰イオンの残留はなく、生産設備等を考慮して使用できる。噴霧乾燥の場合陰イオンの残留をなくすため400℃以上の温度で加熱することが好ましいが、生産設備を考慮すると600℃以下が好ましい。その最も適当な加熱温度は400〜600℃である。
【0014】
また、気相法は、副成分の複数の元素の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物として比較的蒸気圧の高い物質を用い、これを気化させてその気化物を主成分の無機化合物粉末粒子表面に析出させて担持させ、ついでこの副成分を担持した粉末粒子表面に副成分の複数の元素の他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物として比較的蒸気圧の高い物質を用い、これを気化させてその気化物を第1の副成分の元素の成分の層上に析出させて担持させ、以下各元素を順次同様にして担持させる方法である。
この場合、副成分の元素の化合物は2000℃以下、すなわち2000℃より高くない温度で気化する物質が製造設備の経済性の点で好ましい。この場合、減圧下の場合も含まれる。
【0015】
また、メカノケミカル反応を用いる方法は、主成分の無機化合物粉末と副成分の複数の元素の1の区分の元素又は該1の区分の元素の化合物の粉末とを乾式で混合し、両者の粉末の粒子表面でメカノケミカル反応、すなわち粒子表面に例えばライカイ機を用いた場合のように機械的力を加えることにより両者の間に化学反応を起こさせて(剪断力により粒子を摩擦しその新たな表面が化学的に活性であり、化学反応を起こさせることができる)副成分の元素の成分を担持させ、ついでこの副成分を担持した粉末と副成分の複数の元素の他の1の区分の元素又は該他の1の区分の元素の化合物の粉末とを乾式で混合し、両者の粉末の粒子表面でメカノケミカル反応させ上記と同様にその元素の成分を担持させ、以下副成分の元素を順次同様にして担持させる方法である。
【0016】
このように固相法等の方法により主成分としての無機化合物粉末粒子に副成分の複数の元素を担持させて得られるセラミック材料粉末は、そのまま成形し、あるいは仮焼した後その仮焼粉体を成形し、それぞれの成形品を焼成することにより上記各種電子部品のセラミック焼成体とすることができ、その電気特性を向上し、その安定性を向上させ、そのバラツキを少なくすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
詳細は以下の実施例により説明するが、主成分の無機質化合物粉末粒子に副成分の複数の元素を区分して各区分ごとの元素を層状に担持させると、各元素の主成分に対する作用をその性質に応じて制御することができ、例えば拡散速度の相違に応じてその速度の大きいものほど外側に担持させ、外側の層を形成するようにすると、このようにして得られるセラミックス材料粉末を用いた焼成体の主成分の結晶粒子に拡散する各元素の量を均すことができ、副成分のように微量添加する添加剤のその添加の効果を最大限に発揮させることができる。
【0018】
【実施例】
次に本発明の実施例をその参考例とともに説明する。
参考例1(液相法の例)
BaTiO3粉末100gと純水200mlのスラリーに、1.5atom%のNbCl5を溶解したエチレングリコール50mlを加え、80℃、3時間加熱した。
その後、その一部を濾過し、その粉末をICP発光分析装置(Inductively Coupled Plasma)で確認したところ、BaTiO3粉末粒子表面にNbが担持されていることが確認された。なお、濾液からはNbは検出されなかった。
ついで、Co(NO3)2を0.5atom%上記加熱処理したスラリーに加えて溶解し、さらに1.5Nアンモニア水50mlを加えた。
その一部を濾過し、その濾液を調べたところCoは検出されず、この元素の成分は上記のBaTiO3粉末粒子表面に担持されたNbの被膜の上に担持されていることが確認された。
さらに、エタノール25mlと純水50mlを混合し、Si(OC2H5)4を1.5mol%溶解した溶液を、上記のアンモニア水を加えたスラリーを攪拌しながら滴下した。その後、そのスラリーを80℃、5時間加熱した。
その一部を濾過し、その濾液を調べたところSiは検出されず、この元素の成分は上記BaTiO3粉末粒子表面に担持されたNbの被膜の上に形成されたCoの被膜の上に担持されていることが確認された。
得られたスラリーを乾燥した。このようにして得られたセラミックス誘電体材料粉末を用いて成形し、その成形体を1200℃で焼成した。
その焼成体の誘電率の温度特性をインピーダンスアナライザーで測定したところ、EIA規格のX7R特性を満足し、そのバラツキが小さく、その性能が安定していることが分かった。
この実施例は、主成分のBaTiO3粉末に、副成分として3つの元素を区分して第1区分をNb、第2区分をCo、第3区分をSiとし、各区分ごと、すなわち各元素ごとに層状に担持させた場合である。
【0019】
参考例2(気相法の例)
BaTiO3粉末100gを反応容器に入れ、真空状態にし、初めにNbのアルコキシドを気化させ、その気化物を反応容器に導入し、ついでCoのアルコキシドを気化させ、その気化物を反応容器に導入した。
得られた粉末をICPで組成分析したところ、BaTiO3に対しNbが0.5mol%、Coが1.5mol%含まれていることが分かり、BaTiO3粉末粒子の表面にNbが担持され、その被膜の上にCoが担持されてその被膜が形成され、積層被膜が形成されていることが分かった。
このようにして得られたセラミックス誘電体材料粉末を用いて成形し、その成形体を1200℃で焼成した。
その焼成体の誘電率の温度特性をインピーダンスアナライザーで測定したところ、EIA規格のX7R特性を満足し、そのバラツキが小さく、その性能が安定していることが分かった。
この実施例は、主成分のBaTiO3粉末に、副成分として2つの元素を区分して第1区分をNb、第2区分をCoとし、各区分ごと、すなわち各元素ごとに層状に担持させた場合である。
【0020】
実施例1(メカノケミカル反応を利用する例)
BaTiO3粉末と0.75mol%のNb2O5微粉末をライカイ機で10時間混合し、この後0.5mol%のCoO微粉末を加え、さらに24時間混合した。
得られた粉末をTEM-EDS分析したところ、BaTiO3に対しNbが1.5mol%、Coが0.5mol%含まれていることが分かり、BaTiO3粉末粒子の表面にNbが担持され、その被膜の上にCoが担持されてその被膜が形成され、積層被膜が形成されていることが分かり、これらはメタノケミカル反応の結果であることが確認された。
このようにして得られたセラミックス誘電体材料粉末を用いて成形し、その成形体を1200℃で焼成した。
その焼成体の誘電率の温度特性をインピーダンスアナライザーで測定したところ、EIA規格のX7R特性を満足し、そのバラツキが小さく、その性能が安定していることが分かった。
この実施例は、主成分のBaTiO3粉末に、副成分として2つの元素を区分して第1区分をNb、第2区分をCoとし、各区分ごと、すなわち各元素ごとに層状に担持させた場合である。
【0021】
参考例3(固相法の例)
BaTiO3粉末100gに0.75mol%のNb2O5粉末を加えて、純水200ml、直径1.5mmのZrO2ビーズ300gを用いたボールミルで湿式混合した。その混合分散体を濾過し、得られた粉末を1000℃で1時間熱処理(仮焼)した。
この熱処理した粉末に対して0.5mol%のCoOと1.5mol%のSiO2を加え、上記と同様にボールミルで解砕・分散させた後、濾過し、乾燥した。
このようにして得られたセラミックス誘電体材料粉末を用いて成形し、その成形体を1300℃、2時間焼成した。
その焼成体の誘電率の温度特性をインピーダンスアナライザーで測定したところ、EIA規格のX7R特性を満足し、そのバラツキが小さく、その性能が安定していることが分かった。
この実施例は、主成分のBaTiO3粉末に、副成分として3つの元素を区分して第1区分をNb、第2区分をCo、Siの2つとし、各区分ごと、すなわち第1区分については1つの元素、第2の区分については複数の元素を層状に担持させた場合である。
【0022】
比較例1
BaTiO3粉末100gと0.75mol%のNb2O5粉末と0.5mol%CoO粉末と1.5mol%SiO2を、純水200ml、直径1.5mmのZrO2ビーズ300gを用いたボールミルで湿式混合し、乾燥してセラミックス誘電体材料粉末を得た。
このようにして得られたセラミックス誘電体材料粉末を用いて成形し、その成形体を1300℃、2時間焼成した。
その焼成体の誘電率の温度特性をインピーダンスアナライザーで測定したところ、EIA規格のX7R特性を満足しなかった。
この比較例は、主成分のBaTiO3粉末に副成分として3つの元素を区分せず3者を一緒に担持させた場合である。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミックス原料粉末から得られる主成分に副成分を均一に固溶し、さらにその均一性をより高めることができ、また、副成分による主成分の粒界が均一になる焼成体のセラミックス、これが得られるセラミックス材料粉末及びこれらの製造方法を提供することができ、これにより、電子部品用セラミックスについて誘電率の温度特性等の電気特性の安定性を向上し、そのバラツキを小さくし、最近の小型化、高性能化の電子部品の製造を可能にし、しかも特別に新たな設備を必要とすることなく、生産性が良く、コスト的に有利に提供することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-02-17 
出願番号 特願平8-331397
審決分類 P 1 652・ 832- XA (C04B)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 武重 竜男  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 山田 充
米田 健志
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3376468号(P3376468)
権利者 太陽誘電株式会社
発明の名称 セラミックス材料粉末の製造方法  
代理人 佐野 忠  
代理人 佐野 忠  

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