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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1096246
異議申立番号 異議2001-72976  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-25 
確定日 2004-01-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3161545号「接着剤組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3161545号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3161545号は、平成3年9月13日に出願され、平成13年2月23日にその特許の設定登録がなされ、その後、旭硝子株式会社より特許異議の申立てがあり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年6月21日付けで訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正事項
〔訂正事項a〕
特許請求の範囲請求項1の、
「接着剤組成物。」との記載を、
「接着剤組成物であって、エポキシ基含有化合物を含まない接着剤組成物。」と訂正する。

〔訂正事項b〕
明細書段落【0004】の、
「接着組成物により達成される。」との記載を、
「接着組成物であって、エポキシ基含有化合物を含まない接着剤組成物により達成される。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲請求項1において「接着剤組成物」を「エポキシ基含有化合物を含まない接着剤組成物」に限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。またこの訂正は、先願発明と重複する部分を実質的に除くものであるから、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正によって生じた明細書の記載中の不整合部分を、訂正後の特許請求の範囲の記載に合わせて訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。またこの訂正は、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について
1.本件発明
本件請求項1に係る発明は、訂正後の明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された以下のとおりである(以下、「本件発明」という)。
「【請求項1】(1)分子量分布が1.5以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(但し、それぞれ分子量1,500〜10,000の2種のアリル出発モノオールを互にハロゲン化メタン、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びカーボネートより成る群から選択されるカップリング反応物でカップリングさせ、次いで該カップリングしたポリエーテルをアルコキシシランでヒドロシリル化することにより得られるものを除く)と、(2)分子中に少くとも、1個の窒素原子を含有する加水分解性シリコン化合物を必須成分とする、接着剤組成物。」
(※丸数字を括弧付き数字で表示、以下同じ)

2.申立の理由の概要
特許異議申立人 旭硝子株式会社は、証拠として甲第1号証(特願平3-87542号(特開平4-298525号公報参照))、甲第2号証(特開昭57-182350公報)、甲第3号証(特開平3-72527号公報)、及び甲第4号証(旭硝子ウレタン株式会社 田中英明による平成13年10月24日付け実験報告書)を提出し、訂正前の本件発明は、本願出願日前の出願であって、本願出願後に公開された上記甲第1号証の出願当初の明細書に記載された発明と同一であるか、本願出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である上記甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条の2あるいは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって本件発明の特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものであると主張している。
なお、当審において通知した取消しの理由の趣旨は、異議申立人の上記申立理由と同じである。

3.甲第1号証ないし甲第4号証の記載等
甲第1号証の明細書には、「炭素数3以上のモノエポキシドの重合体であるポリオキシアルキレン鎖からなる主鎖を有ししかも分子内に少なくとも1つの加水分解性シリル基を含有する、分子量3500〜50000、かつ、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.35以下であるポリオキシアルキレン化合物(A)およびエポキシ基含有化合物(B)からなり、任意に、エポキシ基と反応しうる官能基および加水分解性シリル基を同一分子中に含有する化合物(C)を含有する硬化性組成物。」が記載されており(特許請求の範囲請求項1)、その用途について、「本発明の硬化性組成物は、シーリング剤、防水剤、接着剤、コーティング剤などに使用しうるが、特に硬化物自体の十分な凝集力と被着体への動的追従性が要求される用途、特に弾性接着剤に好適である」と記載されている(明細書段落【0036】)。また実施例には、「[製造例2]ジエチレングリコールをイニシエータとして亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、ポリオキシプロピレントリオールを得た。これにアリルクロライドを加えて両末端の水酸基をアリル基に変換した。ついで得られた末端アリル基含有ポリオキシアルキレン化合物にメチルジメトキシシランを白金触媒の存在下に反応させてアリル基をメチルジメトキシシリル基に変換した。得られた末端加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレン化合物の数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は10000、分子量分布(Mw /Mn )は 1.20であった。」(明細書段落【0039】)、「[実施例2]製造例2で得られたポリマー100重量部、エピコ-ト828を50重量部、2,4,6-トリス-(ジメチルアミノメチル)フェノール5重量部、ジブチル錫ジラウレート2重量部、アミノプロピルメチルジメトキシシランを2重量部をよく混合後、2mm厚のシ-トを作成し20℃で7日、さらに50℃で7日硬化養生後に物性の測定を行ったところ、Tb=78kg/cm2、Eb=900%という高強度かつ高伸度の硬化物が得られた。」(明細書段落【0042】)と記載されている。

甲第2号証には、「(a)架橋可能な加水分解性シリコン官能基を有し主鎖が本質的にポリエーテルである重合体100重量部 (b)アミノ基置換シラン系化合物0.01〜2重量部 (c)硬化触媒0.01〜10重量部を配合してなる密封下では安定で湿気にさらすことにより硬化する室温硬化性組成物」が記載されており(特許請求の範囲第1項)、発明の効果について、「本発明によれば、変成シリコーン系1液組成物の接着性は著しく向上し、ガラス、石材、金属はもとより、プラスチック、木材に対しても強い接着強度を有する室温硬化性組成物が得られる。」と記載されている(公報第4頁左上欄2行〜6行)。また実施例には、全末端の80%に加水分解性シリコン官能基を有する分子量8200のオキシプロピレン重合体に、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3またはH2NCH2CH2Si(OCH3)3を配合した室温硬化性組成物が記載されている(公報第4頁右上欄7行〜15行、同頁右下欄7行〜17行参照)。

甲第3号証には、加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを硬化成分とする湿気硬化性樹脂組成物が記載されており(特許請求の範囲請求項12参照)、「末端に不飽和基を有するポリアルキレンオキシドはそれ単独で硬化反応をおこし、弾性材料として用いることができる。又末端不飽和基の反応を利用して加水分解性シリル基などの他の官能基を導入することによって非常に柔軟な硬化性組成物を得ることができる」と記載されている(公報第2頁右上欄8行〜13行)。また、従来の方法では分子量分布の拡大や着色などの問題があり(公報第2頁右上欄14行〜右下欄5行参照)、その解決手段について、「本発明者らは、前述の問題点を解消すべく鋭意研究を重ねた結果、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて重合したポリアルキレンオキシドに末端不飽和基を導入する事によって、高分子量体で分子量分布が狭く、しかも着色等が少ない、実用性の高い末端不飽和基含有ポリアルキレンオキシドが得られる事をみいだした。」と記載されている(公報第2頁右下欄7行〜14行)。さらに用途について、「本発明の加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを含む湿気硬化性樹脂組成物は、建造物、航空機、自動車等の被覆組成物およびシーリング組成物またはこれ等の類似物として好適に使用する事ができる」と記載され(公報第5頁右下欄17行〜第6頁左上欄1行)、実施例3には、数平均分子量が25,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.20の加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを製造し、これに硬化触媒を加えて大気中の水分により硬化させたことが記載されている(公報第6頁右下欄4行〜第7頁左上欄14行)。

甲第4号証には、メチルジメトキシシリルプロピル基を有するオキシプロピレン重合体であって分子量分布(Mw/Mn)の異なる3種の重合体を用い、本件発明の実施例の処方に従って室温硬化性組成物を調整し、それらの硬化物の接着特性を対比した結果が示されている。

4.対比・判断
(a)特許法第29条の2について
本件発明と、上記甲第1号証の出願当初の明細書(以下、「先願明細書」という)に記載された発明とを比較すると、先願明細書記載の発明における「ポリオキシアルキレン化合物(A)」は、その実施例の記載からみて、本件発明における「(1)分子量分布が1.5以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(但し、それぞれ分子量1,500〜10,000の2種のアリル出発モノオールを互にハロゲン化メタン、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びカーボネートより成る群から選択されるカップリング反応物でカップリングさせ、次いで該カップリングしたポリエーテルをアルコキシシランでヒドロシリル化することにより得られるものを除く)」に相当し、また、先願明細書記載の発明における「エポキシ基と反応しうる官能基および加水分解性シリル基を同一分子中に含有する化合物(C)」は、同じく実施例の記載からみて、本件発明における「(2)分子中に少くとも、1個の窒素原子を含有する加水分解性シリコン化合物」に相当し、かつ、組成物が接着剤として用いられる点においても両者は共通しているものである。
しかしながら、上記先願明細書記載の発明においては必須成分としてさらに「エポキシ基含有化合物(B)」を含有するのに対して、本件発明においては「エポキシ基含有化合物を含まない」と規定され、この点において両者は明らかに相違するものであるから、本件発明は上記先願明細書に記載された発明と同一ではない。

(b)特許法第29条第2項について
本件発明と上記甲第2号証の特許請求の範囲第1項に記載された発明とを比較すると、甲第2号証記載の発明における「(a)架橋可能な加水分解性シリコン官能基を有し主鎖が本質的にポリエーテルである重合体」が、本件発明における「反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(但し、それぞれ分子量1,500〜10,000の2種のアリル出発モノオールを互にハロゲン化メタン、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びカーボネートより成る群から選択されるカップリング反応物でカップリングさせ、次いで該カップリングしたポリエーテルをアルコキシシランでヒドロシリル化することにより得られるものを除く)」に相当することは実施例の記載からみて明らかであり、また、甲第2号証記載の発明における「(b)アミノ基置換シラン系化合物」が、本件発明における「分子中に少くとも、1個の窒素原子を含有する加水分解性シリコン化合物」に相当することは同じく実施例の記載からみて明らかであり、かつ、甲第2号証記載の発明の硬化性組成物も接着剤の用途に用いられるものであるから、両者は、本件発明の「反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体」はその分子量分布が1.5以下であるのに対して、甲第2号証記載の「(a)架橋可能な加水分解性シリコン官能基を有し主鎖が本質的にポリエーテルである重合体」は、その分子量分布について記載がない点でのみ相違し、その余の点では一致している。
上記相違点について検討するに、甲第2号証には、「(a)架橋可能な加水分解性シリコン官能基を有し主鎖が本質的にポリエーテルである重合体」の分子量や分子量分布について検討する旨の記載、あるいはこれを示唆するような記載はない。また、甲第3号証には加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを硬化成分とする湿気硬化性樹脂組成物が記載されており(特許請求の範囲請求項12参照)、その実施例には数平均分子量が25,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.20の加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを製造し、これを硬化させたことが記載されている(公報第6頁右下欄4行〜第7頁左上欄14行)。また、従来技術の問題点として分子量分布の拡大が挙げられており(公報第2頁右上欄14行〜右下欄5行参照)、特定の製造方法を採用することにより高分子量体で分子量分布の狭い実用性の高いポリアルキレンオキシドが得られたことが記載されている(公報第2頁右下欄7行〜14行参照)。
しかし、分子量分布の拡大が重合体の物性にどのような影響を与えるかについては甲第3号証には何も記載がなく、加えて上記湿気硬化性樹脂組成物は「建造物、航空機、被覆組成物およびシーリング組成物またはこれ等の類似物」の用途に用いられるものであって(公報第5頁右下欄17行〜第6頁左上欄1行参照)、接着剤として用いられるものではないことから、分子量分布の拡大に係る上記の問題点を接着剤の用途に用いた場合の問題点としてみることはできない。
したがって、甲第2号証記載の発明においては、「(a)重合体」として分子量分布の狭い重合体を用いるべき理由がなく、甲第3号証には接着剤を構成する重合体の分子量分布を狭くすることについては何も記載がないことから、甲第2号証記載の発明において甲第3号証の記載を参照しても本件発明における「分子量分布が1.5以下の」反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体を用いるという構成を導き出すことはできない。
そして、「分子量分布が1.5以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体」を用いることにより、接着特性と作業性に優れた効果が得られたことは実施例の記載からも明らかであり、本件発明は、接着耐久性に優れた接着剤組成物を得るという明細書記載の効果(本件公報段落【0027】参照)を奏するものであると認められる。
なお、異議申立人は、本件発明の実施例の処方に従って調整した室温硬化性組成物の接着特性について試験した結果、分子量分布が1.5以下の場合と1.5を超える場合とでは効果において格別な差異がなかったとする実験報告書(甲第4号証)を提出し、本件発明における効果は信憑性がないと主張している。しかし、接着特性の試験条件等については直接比較することができず、また、本件発明の実施例においては、上述したように分子量分布が1.5以下の場合と1.5を超える場合とでは効果において顕著な差異が認められることから、本件発明と類似する重合体を用いた接着剤組成物において本件発明とは異なる試験結果が得られたとしても、それだけでは本件発明の効果を否定する根拠とはなり得ず、異議申立人のこのような主張は採用することができない。
したがって、本件発明は上記甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

IV.むすび
以上のとおりであるから特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、本件請求項1に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めないから、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
接着剤組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ▲1▼分子量分布が1.5以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(但し、それぞれ分子量1,500〜10,000の2種のアリル出発モノオールを互にハロゲン化メタン、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びカーボネートより成る群から選択されるカップリング反応物でカップリングさせ、次いで該カップリングしたポリエーテルをアルコキシシランでヒドロシリル化することにより得られるものを除く)と、▲2▼分子中に少くとも、1個の窒素原子を含有する加水分解性シリコン化合物を必須成分とする、接着剤組成物であって、エポキシ基含有化合物を含まない接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、接着耐久性の良好な弾性接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム材料をベースにした接着剤は、被着体の動きや衝撃、熱的ショック等を吸収する能力があるため、所謂弾性接着剤として注目を集めており、中でも反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体をベースとしたものは、その優れた接着特性で多用されている。しかしながら、従来の同重合体ベースのものでは、高弾性化を目的として架橋点間分子量を上げた場合、粘度が高くなりすぎ接着剤としては使用不適であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体をベースとして、被着体の動きや衝撃、熱的ショック等を吸収する能力がある接着耐久性の良好な弾性接着剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、分子量分布の狭い反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体を用いる事により、高弾性で作業性の良好な接着剤組成物が得られる事を見出した。
すなわち、本発明の上記課題は、▲1▼分子量分布が1.5以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(但し、それぞれ分子量1,500〜10,000の2種のアリル出発モノオールを互にハロゲン化メタン、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート及びカーボネートより成る群から選択されるカップリング反応物でカップリングさせ、次いで該カップリングしたポリエーテルをアルコキシシランでヒドロシリル化することにより得られるものを除く)と、▲2▼分子中に少くとも、1個の窒素原子を含有する加水分解性シリコン化合物を必須成分とする、接着剤組成物であって、エポキシ基含有化合物を含まない接着剤組成物により達成される。
本発明において分子量及び分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィーで測定した。
【0005】
本発明で使用される反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体は、代表的なものを示すと、例えば、下記一般式(1)
【0006】
【化1】
【0007】
〔式中、R1及びR2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R3)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在する時、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR3は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR6は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1、または2をそれぞれ示す。また、m個の下記〔化2〕基におけるbは異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする〕
【0008】
【化2】
【0009】
上記Xで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基が好ましいが、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からメトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
この加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、(a+Σb)は1〜5であるのが好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素中に2個以上存在する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0010】
反応性ケイ素中に、ケイ素原子は1個あってもよく、2個以上あってもよいが、シロキサン結合等によりケイ素原子の連結された反応性ケイ素基の場合には、20個程度あってもよい。
なお、下記〔化3〕の一般式(2)で表される反応性ケイ素基が、入手容易のてんからは好ましい。
【0011】
【化3】
【0012】
〔式中、R2、X,aは前記と同じ。〕
また、上記一般式(1)におけるR1及びR2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、R3がメチル基やフェニル基などである(R3)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基などが挙げられる。R1、R2、R3としてはメチル基が特に好ましい。
反応性ケイ素基はオキシアルキレン重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。重合体1分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が1個未満になると、硬化性が不十分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなる。
【0013】
反応性ケイ素基はオキシアルキレン重合体分子鎖の末端に存在してもよく、内部に存在してもよい。反応性ケイ素基が分子鎖の末端に存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれるオキシアルキレン重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度、高伸びで、低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
本発明の重合体における重合鎖を構成するオキシアルキレン重合体は、下記一般式(3)で表されるものが使用できる。
【0014】
一般式(3)
-(R-O)n- :(Rは炭素数1〜4の2価のアルキレン基)
しかしながら、入手の容易さの点からは下記一般式(4)で表される繰り返し単位を有するオキシアルキレン重合体が好ましい。
【0015】
一般式(4)
-CH(CH3)CH2O-
上記オキシアルキレン重合体は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、或いは、これらの混合物であってもよい。また、他の単量体等が含まれていてもよいが、上記一般式(4)で表される単量体単位が重合体中に50重量%以上、好ましくは80重量%以上存在することが好ましい。
本発明の反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体は、官能基を有するオキシアルキレン重合体に反応性ケイ素基を導入することによって得るのが好ましい。
【0016】
反応性ケイ素基を導入は公知の方法で行えばよい。すなわち、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)末端に水酸基等の官能基を有するオキシアルキレン重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、若しくは不飽和基含有エポキシ化合物との共重合により得られる不飽和基含有オキシアルキレン重合体を得る。次いで、得られた反応生成物に反応性ケイ素基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
(2)(1)法と同様にして得られた不飽和基含有オキシアルキレン重合体にメルカプト基及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
(3)上記末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネート基等の官能基(以下、Y1官能基という)を有するオキシプロピレン重合体に、このY1官能基に対して反応性を示す官能基(以下、Y2官能基という)及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0017】
このY2官能基を有するケイ素化合物としては、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのようなアミノ基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのようなメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのようなエポキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのようなビニル型不飽和基含有シラン基;γ-クロロプロピルトリメトキシシランなどのような塩素原子含有シラン類;γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなどのようなイソシアネート含有シラン類;メチルジエトキシシランなどのようなハイドロシラン類などが具体的に例示され得るが、これらに限定されるものではない。
以上の方法の中で、(1)の方法、または(3)のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法、が好ましい。
【0018】
上記反応性ケイ素基含有オキシアルキレン有機重合体としては、代表的なものを示すと、例えば、
特開昭50-156599号、同54-6096号、同57-126823号、同59-78223号、同55-82123号、同55-131002号、同55-137129号、同62-230822号、同63-83131号、特開平3-47825号、同3-72527号、同3-122152号、米国特許第3,632,557号、同4,345,053号、同4,366,307号、同4,960,844号等に開示されているものが例示できる。
【0019】
分子中に少くとも1個の窒素原子を含有する加水分解性シリコン化合物とは本発明に用いるアミノ基置換アルコキシシランまたはアミノ基置換アルコキシシラン誘導体化合物を具体的に例示すると、H2NCH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、(C2H5O)2SiCH2CH2CH2NHCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OC2H5)3等のアミノ基置換アルコキシシラン及び、上記アミノ基置換アルコキシシランと下記〔化4〕に示すようなエポキシシラン化合物との反応物、
【0020】
【化4】
【0021】
または、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2CH2Si(OCH2CH2OCH2)3のようなメタクリルオキシシラン化合物との反応物が挙げられる。アミノ基置換アルコキシシランとエポキシシラン化合物または、アクリロイルシラン化合物との反応は、アミノ基置換アルコキシシラン1モルに対し、当該シラン化合物を0.2〜5モルを混合し、室温ないし180℃の範囲で1〜8時間攪拌することによって容易に得ることができる。
【0022】
上記アミノ基置換アルコキシシランまたはアミノ基置換アルコキシシラン誘導体化合物は、末端に架橋可能な加水分解性シリコーン官能基を有するポリエーテル重合体100重量部に対し0.01〜20重量部使用されるのが好ましい。0.01重量部末端では期待される接着性が発現しにくいし、20重量部を越えると硬化後のゴム物性に悪影響を与えるからである。同化合物は上記重合体100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部使用すれば良い。接着特性付与に必須の成分である。
【0023】
接着剤組成物として、上記成分以外に必須に応じて硬化触媒、充填剤、可塑剤、タレ防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、シリコン化合物等を添加する事が出来る。
はじめ触媒成分以外を脱水しておいてから最後に触媒および必要に応じて脱水剤を添加することにより1成分形が触媒成分を別包装にする事により、2成分形が可能である。
【0024】
【実施例】
実施例1〜3
【0025】
【表1】
【0026】
全末端の85%に(CH3O)2Si(CH3)CH2CH2CH3-基を含有する各種分子量、分子量分布の表1記載のポリオキシアルキレン重合体100重量部に、脂肪酸処理された膠質炭酸カルシウム100重量部、ジオクチルフタレート50重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤1重量部、γ-アミノエチル-β-アミノプロピルトリメトキシシラン2重量部を、3本ベイントロールで混練した後、接着特性と作業性の評価に供した。
【0027】
【発明の効果】
本発明により、接着耐久性に優れた接着剤組成物を得ることができる。
【化1】
一般式(1)

【化2】

【化3】
一般式(2)

【化4】

【表1】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-12-24 
出願番号 特願平3-261391
審決分類 P 1 651・ 161- YA (C09J)
P 1 651・ 121- YA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 西川 和子
後藤 圭次
登録日 2001-02-23 
登録番号 特許第3161545号(P3161545)
権利者 鐘淵化学工業株式会社
発明の名称 接着剤組成物  
代理人 本多 弘徳  
代理人 高松 猛  
代理人 萩野 平  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 小栗 昌平  
代理人 添田 全一  
代理人 高松 猛  
代理人 栗宇 百合子  
代理人 市川 利光  
代理人 栗宇 百合子  
代理人 萩野 平  
代理人 添田 全一  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 市川 利光  
代理人 本多 弘徳  
代理人 長濱 範明  
代理人 小栗 昌平  

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