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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  D21H
審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  D21H
管理番号 1096248
異議申立番号 異議2002-70276  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-06 
確定日 2004-03-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3195057号「艶消し塗被紙及びその製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3195057号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3195057号の請求項1〜2に係る発明についての出願は、平成4年6月26日に特許出願され、平成13年6月1日にその特許権の設定登録がなされ、その後、松本武男より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年6月2日に特許異議意見書と共に、訂正請求書が提出された、そして、訂正後の請求項1に対して、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年12月19日に、特許異議意見書と共に、先の訂正請求書の取下書、新たな訂正請求書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1「平均粒径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウム50〜95重量%とカオリン5〜50重量%からなる顔料成分を含む塗被組成物が塗被された原紙が、JIS B0651で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールで処理され、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)を35%以下にカレンダー仕上げされた艶消し塗被紙。」を
「平均粒径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウム50〜95重量%とカオリン5〜50重量%からなる顔料成分を含む塗被組成物が塗被された原紙が、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理され、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)を35%以下にカレンダー仕上げされた艶消し塗被紙。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2「原紙に塗被する塗被液の顔料成分として平均粒径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、JIS B0651で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)を35%以下に調整する如くカレンダー仕上げすることを特徴とする艶消し塗被紙の製造方法。」を
「原紙に塗被する塗被液の顔料成分として平均粒径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)を35%以下に調整する如くカレンダー仕上げすることを特徴とする艶消し塗被紙の製造方法。」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の段落番号【0006】、【0011】、【0019】及び【0023】の「JIS B0651で定義される表面粗さ(Rmax)」を「JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)」と訂正すると共に、明細書の段落番号【0009】及び【0017】の「JIS B0651で定義される表面粗さ(Rmax)」を「JIS B0651「触針式表面粗さ測定器」で測定した値に基づいたJIS B0601「表面粗さの定義と表示」で定義される表面粗さ(Rmax)」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書の段落番号【0017】の「重質炭酸カルシウムを50〜100重量%及びカオリン0〜50重量%」を「重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%」と訂正すると共に、明細書の段落番号【0018】の「重質炭酸カルシウムを50〜100重量%及びカオリン(エンゲルハード(株)製、商品名ウルトラホワイト90)を0〜50重量%」を「重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン(エンゲルハード(株)製、商品名ウルトラホワイト90)を5〜50重量%」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否についての判断
表面粗さ(Rmax)の定義に関して、訂正前は、「JIS B0651で定義される」と記載しているが、「JIS B0651」は、表面粗さを測定するための器具である触針式表面粗さ測定器についての規格であるため、「JIS B0651」では、「表面粗さ(Rmax)」は定義されないため、表面粗さ(Rmax)の定義として引用の規格「JIS B0651」は、誤記又は明りょうでない記載と解される。一方、JISにおいて「表面粗さ(Rmax)」は、「JIS B0601」で定義され、その中で、表面粗さの値は「JIS B0651」の触針式表面粗さ測定器等で測定されることが明記されているから、訂正事項a及びbによる表面粗さ(Rmax)の定義に関する訂正は、誤記又は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項aによるマットロールによる処理温度を限定する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項cによる訂正は、上記請求項1及び請求項2の訂正に伴い、明細書の記載を整合させるためのものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。
訂正事項dによる訂正は、カオリンを任意成分(0%)と記載した、請求項の記載と整合しない、段落番号【0017】及び【0018】の「重質炭酸カルシウム50〜100重量%及びカオリン0〜50重量%」の記載を、請求項の規定された通り、カオリンは必須成分であって、その使用量は配合割合の5重量%であること、そして、重質炭酸カルシウムの量をカオリンの使用割合の5重量%に対応させて、95重量%と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項a〜dによる訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
3.請求項2に係る発明についての独立特許要件の判断
異議申立の対象とされていない請求項2に係る訂正について、異議申立の証拠に基づいて、独立特許要件を判断する。
3-1.各証拠の記載
a.甲第1号証(特開平3-241094号公報)
a-1.「原紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗被組成物を塗被、乾燥した後、粗面化ロールを有するキャレンダーに通紙して艶消しに仕上げる艶消し塗被紙の製造方法において、該原紙を構成するパルプ組成中に、下記条件で生成される古紙再生パルプが3重量%以上含有せしめられ、原紙の動的濡れ値が-0.32〜+0.15gであり、且つ原紙表面の平滑度として、加圧条件20Kg/cm2下での正反射型平滑度計による値が12%以上である原紙をJIS B0601に準じる測定で粗面化ロールの表面粗さ(Rmax)が1〜30μmの範囲にあるキャレンダーに通紙して仕上げることを特徴とする艶消し塗被紙の製造方法。
〔古紙再生パルプの生成条件〕
『界面活性剤系の脱墨剤の存在下で古紙に圧縮力を付与せしめる機械的撹拌工程を含む脱墨処理により得られた古紙再生パルプ』」(特許請求の範囲請求項1)、
a-2.「実施例1〜3 OA用紙の古紙、上質系塗被紙及び非塗被紙の印刷物からなる古紙混合物を・・・・アルカリ水溶液と共に・・・・離解し、・・・・異物の除き、・・・・脱水した。このようにして得た古紙パルプ中に、・・・・脱墨剤・・・・を添加し、・・・・圧縮撹拌処理した後、約60℃で2時間保持した。次に、このパルプ液を・・・・稀釈し、フローテーション処理し脱墨後クリーナーで異物を除き、フイルターで脱水して白色度が78%の再生パルプを得た。このようにして得た古紙再生パルプを・・・叩解した。叩解後の再生パルプを40%、NBKP30%、LBK20%、及び共損紙10%からなるパルプ配合スラリー中に、・・・・・を添加して紙料を調成し、・・・・抄紙し、・・・・・サイジング処理し、・・・・正反射型平滑度値が15%である米坪100g/m2の塗被用原紙を得た。次に、カオリン(商品名;UW-90/EMC社製)25部、重質炭酸カルシウム70部、サチンホワイト5部からなる顔料中に、分散剤として顔料に対してポリアクリル酸ソ-ダ-0.8部を用いて・・・・顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに酸化澱粉・・・・スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス・・・を加え、・・・・塗被液を得た。この塗被液を上記原紙の両面に・・・・塗被し、・・・・乾燥して・・・・塗被紙を得た。・・・・・この塗被加工紙を硬質粗面化ロール2本とプラスチック弾性ロール2本よりなる4段キャレンダーを使用して、粗面化処理を行った。なお、このとき粗面化ロールとしては表面粗さ(Rmax)が4μm及び8μmのロールを用い、処理時のロール表面温度を35℃及び40℃として通紙処理を行い、艶消し塗被紙を得た。」(第9頁右上欄第3行〜右下欄下から第5行)、
a-3.実施例5では、カオリン(商品名;UW-90/EMC社製)60部、微粒子重質炭酸カルシウム(商品名;カービタル90/富士カオリン社製)40部、の割合で顔料を含有する塗被液を用い、原紙の両面に塗被し、粗面化ロールとしては表面粗さ(Rmax)が10μm及び15μmのロールを用い、処理時のロール表面温度を60℃及び70℃として通紙処理を行い、艶消し塗被紙を得たこと。(第10頁左下欄下第7行〜第11頁左上欄第12行)
b.甲第2号証(特開昭57-176297号公報)
b-1.「顔料と接着剤を含有する高固形分濃度の塗被加工紙用塗被組成物に於いて、(a)顔料として1ミクロン以下の粒子含有率50wt%以上であるカオリンを全顔料の10〜80wt%、2ミクロン以下の粒子の含有率が70〜100wt%で、1ミクロン以下の粒子の含有率が55〜95wt%である重質炭酸カルシウムを全顔料の20〜90wt%含有し、(b)接着剤としてシアン化ビニル系モノマー3〜40重量部と他のモノマー97〜60重量部との乳化重合から得られる共重合体エマルジヨンを固形分換算で全顔料の3〜20wt%含有し、(c)固形分濃度が65〜80wt%であることを特徴とする塗被加工紙用塗被組成物。」(特許請求の範囲第1項)
b-2.「本発明の塗被組成物を塗工して得られる塗被加工紙は、スーパーキヤレンダー、グロスキヤレンダーなどの仕上げ装置を経て製品化された場合に本発明の塗被組成物の優れた特性が顕著に発揮されるが、軽い仕上げ処理又は仕上げ処理なしにマツト調の塗被加工紙としても使用できる。」(第6頁左上欄第9〜14行)
b-3.「実施例1,2,3,10,12、比較例1,2,3,5,6,7,8に用いた重質炭酸カルシウムはカービタル-90(富士カオリン社製)」(第8頁右上欄第8〜10行)
c.甲第3号証(富士カオリン工業株式会社発行のカービタル90の商品説明書)
富士カオリン工業株式会社の「カービタル(R)90」の粒度は、平均粒径0.6μであること。
d.甲第4号証の1(JIS B0601-1982)
「表面粗さの定義と表示 JIS B0601-1982」は、「1.適用範囲 この規格は,工業製品の表面粗さを表す中心線平均粗さ(Ra),最大高さ(Rmax)及び十点平均粗さ(Rz)の定義と表示について規定する。」と記載され、欄外に「関連規格:・・・JIS B0652 触針式表面粗さ測定器」と記載され、「JIS B0601-1982 表面粗さの定義と表示 解説」の「5.2 触針」の欄には、「JIS B0651(触針式表面粗さ測定器)では12.5μm以下と規定した。」と記載されている。
e.甲第4号証の2(JIS B0651-1976)
「触針式表面粗さ測定器 JIS B0651-1976」は、「1.適用範囲 この規格は,触針を用いて被測定面の断面曲線,粗さ曲線及び中心線平均粗さの記録若しくは中心線平均粗さの表示のいずれか,又はそのいくつかが行える形式の触針式表面粗さ測定器(以下,測定器という。)について規定する。」と記載されている。
3-2.対比・判断
甲第1号証は艶消し塗被紙の製造方法に関して記載され、甲第2号証は塗被加工紙用塗被組成物に関して記載され、甲第3号証は富士カオリン工業株式会社製造の重質炭酸カルシウムの商品名であるカービタルに関して記載されている。
訂正後の請求項2に係る発明(前者)と甲第1号証に記載された、「顔料と接着剤を主成分とする塗被組成物を塗被、乾燥した後、粗面化ロールに通紙して艶消し仕上げした艶消し塗被紙の製造方法」(後者)とを対比すると、後者の粗面化ロールの表面粗さ(Rmax)は、表面粗さ測定に際して一般的に用いられる測定器である、触針式表面粗さ測定器により測定されたものであると常識的には解釈されるから、両者は、「顔料と接着剤を主成分とする塗被組成物を塗被、乾燥した後、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される粗面化ロールの表面粗さ(Rmax)が特定の範囲にあるキャレンダーに通紙して艶消し仕上げする艶消し塗被紙の製造方法」で一致しているが、
前者は、(a)艶消し塗被液における顔料の重質炭酸カルシウムの平均粒子径を0.5〜1.5μmの範囲とすること、(b)マットロールによる処理の際の温度を100℃以上の高温とすること、及び(c)マットロールの表面粗さ(Rmax)を2〜8μmの範囲とすること、の3者の組み合わせを特定しているのに対して、後者は、そのことを明記していない点で相違している。
しかし、甲第2号証及び甲第3号証には、前者における構成要件(b)及び(c)については何も記載がないから、甲第2号証及び甲第3号証からは、これらの構成要件を導き出すことはできないと認められる。
一方、前者は、前記相違点(a)〜(c)の点を構成要件とすることにより、本件特許明細書記載の顕著な効果(段落【0028】参照)を奏するものと認められる。
したがって、前者は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとは認められない。
また、「JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)」は、表面粗さの値は、規格「JIS B0651」の触針式表面粗さ測定器で測定されること、そして、その測定値から、規格「表面粗さの定義と表示」(JIS B0601)で定義されている「表面粗さ」に基づいて、「表面粗さ(Rmax)」すなわち、「最大高さ(Rmax)」が、規定されるのであるから、表面粗さ(Rmax)の定義に関して、記載不備は認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.本件発明
訂正は認められるから、訂正後の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された上記の通りのものである。
IV.特許異議の申立についての判断
1.申立ての理由の概要
申立人は、甲第1号証(特開平3-241094号公報)、甲第2号証(特開昭57-176297号公報)、甲第3号証(富士カオリン工業株式会社発行のカービタル(R)90に関するカタログ)、甲第4号証の1(「表面粗さの定義と表示」JIS B0601-1982)及び甲第4号証の2(「触針式表面粗さ測定器」JIS B0651-1976)を提出し、
(1)訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、
(2)訂正前の請求項1には、マットロールによるカレンダー仕上げの温度条件が、その発明の構成に欠くことができない事項であるのに、要件として記載されていないから、本件請求項1に係る特許は、特許法第36条第5項第2号で規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、旨主張する。
2.甲各号証の記載内容
甲第1号証〜甲第4号証の2の記載内容は、「II.訂正の適否についての判断」「3.請求項2に係る発明についての独立特許要件の判断」の「3-1.各証拠の記載」に記載したとおりである。
3.当審の判断
3-1.申立人の主張(2)について
請求項1において、マットロールによるカレンダー仕上げの温度条件処理において、「100℃以上の高温での処理」が訂正により規定され、前記II.「2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否についての判断」で記載したように、該訂正は認められるから、申立人が主張する明細書の記載不備は解消したと認められる。
3-2.申立人の主張(1)について
本件請求項1に係る発明(前者)と甲第1号証に記載された発明(後者)の艶消し塗被紙とを対比する。
後者には、「顔料と接着剤を主成分とする塗被組成物を塗被、乾燥した後、粗面化ロールの表面粗さ(Rmax)が特定の範囲にあるキャレンダーに通紙して艶消し仕上げした艶消し塗被紙」が記載され、顔料には、カオリンと重質炭酸カルシウムの組み合わせが記載され、そして、重質炭酸カルシウムには(商品名;カービタル90/富士カオリン社製)が記載(摘示記載a-5)されている、また、粗面化ロールの表面粗さ(Rmax)は、表面粗さ測定に際して一般的に用いられる測定器である、触針式表面粗さ測定器により測定されたものであると常識的には解釈されるから、両者は、「顔料と接着剤を主成分とする塗被組成物を塗被、乾燥した後、JIS B0651で測定した値に基づいてJIS B0601で定義される粗面化ロールの表面粗さ(Rmax)が特定の範囲にあるキャレンダーに通紙して艶消し仕上げした艶消し塗被紙」で一致しているが、
前者は、(a)艶消し塗被液における顔料の重質炭酸カルシウムの平均粒子径を0.5〜1.5μmの範囲とすること、(b)マットロールによる処理の際の温度を100℃以上の高温とすること、及び(c)マットロールの表面粗さの範囲を2〜8μmとすること、の3者の組み合わせを特定しているのに対して、後者は、そのことを明記していない点で相違している。
甲第2号証には、顔料と接着剤を含有する高固形分濃度の塗被加工紙用塗被組成物において、顔料として1ミクロン以下の粒子含有率が55〜95wt%である重質炭酸カルシウムに、カービタル90(富士カオリン社製)を用いることが記載され、甲第3号証には、カービタル90(富士カオリン工業株式会社)の平均粒形は、0.6μであることが記載されているから、甲第1号証に記載された発明において、重質炭酸カルシウムとして、カービタル90(富士カオリン工業株式会社)を用いる場合は、前者における構成要件(a)を満たすことが認められる。しかし、甲第2号証及び甲第3号証には、前者における構成要件(b)及び(c)については何も記載がないから、これらの構成要件を導き出すことはできないと認められる。
一方、前者は、前記相違点(a)〜(c)の点を構成要件とすることにより、本件特許明細書記載の顕著な効果(段落【0028】参照)を奏するものと認められる。
したがって、前者は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができものとはいえない。
V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
艶消し塗被紙及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 平均粒子径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウム50〜95重量%とカオリン5〜50重量%からなる顔料成分を含む塗被組成物が塗被された原紙が、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理され、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)を35%以下にカレンダー仕上げされた艶消し塗被紙。
【請求項2】 原紙に塗被する塗被液の顔料成分として平均粒子径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)を35%以下に調整する如くカレンダー仕上げすることを特徴とする艶消し塗被紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は製本工程等で発生する印刷インキが白紙部に転移する問題を起こさず、且つ印刷インキの受理性が良く、白紙光沢度が低いにも拘わらず印刷後の光沢が高くコントラストに富んだ優れた印刷面を有する艶消し塗被紙及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、艶は無いが表面が平滑でインキ受理性の優れた艶消し塗被紙のニーズが多くなって来ており、主に高級な美術印刷、カタログ、パンフレット、カレンダーや商業出版用本文用紙に使用されている。
艶消し塗被紙のうち、マット調と呼ばれる印刷物は白紙面、単色印刷面、多色印刷面何れも光沢が低く、全面がフラットでしっとりとした視感、触感を与える。これに対し、白紙面の光沢は欲しないが、印刷面だけは或る程度の光沢が望まれる場合がある。つまり、文字の部分は低グロスにして読み易くし、画線部は光沢によって引き立たせることによってコントラストに富んだ印刷物にさせたいというニーズである。これにマッチするのがダル調と呼ばれているものである。ダル調のものはマット調とグロス調の中間にあり、一般に白紙光沢はマット調よりも若干高く、印刷後の光沢はグロス調のものよりも若干低い。我が国市場では、マット、ダルの特性差は各銘柄の特性として認識されているため両者は異なる品種として明確に識別されていない。また、最近ではダル調とグロス調の中間としてセミダル調と呼ばれるものも多く製品化されている。
【0003】
一般にマット調の艶消し塗被紙は、白紙光沢を低く抑えるために通常のグロス調の塗被紙に比較して、より粗い顔料である炭酸カルシウムを多量に含有した塗被組成物を各種コータで塗被し、そのまま製品化されるか或いは軽度のカレンダー処理のみで製品化される。これ等の艶消し塗被紙は、通常平滑性に劣り、印刷インキ受理性、印刷後の光沢の点でグロス調塗被紙に比較して劣っている。またダル調塗被紙と比較するとコントラストに劣る印刷仕上がりとなる。
【0004】
印刷工程で印刷された紙は、製本工程での折り機や丁合機で印刷部と白紙部が接触することにより、印刷インキが白紙部に転移したり、製本後の積み重ねで表紙と裏表紙が接触することにより、印刷インキが白紙面に転移して、印刷物の品質を大きく損ねるという問題点を抱えているのが現状である。印刷インキが白紙の部分に転移する主な原因としては、次のようなことが考えられる。艶消し塗被紙は白紙光沢を抑えるために、不定形で比較的粗い炭酸カルシウムを多く配合しているため、印刷部と白紙部が接触した際に、白紙部が印刷インキを掻き取って了うことが考えられる。また近年印刷の高速化が図られているため、印刷用紙に対して高いインキ乾燥性が要求されており、塗被紙がインキビヒクルを吸収し易い設計、即ち炭酸カルシウムを高配合した設計になっている。このため印刷したインキの被膜強度が弱くなり、印刷部と白紙部が接触した際にインキが落ち易いことが考えられる。艶消し塗被紙は、特に高級な印刷物に多く用いられていることから、上記の艶消し塗被紙に特有の、印刷したインキが白紙面に転移する問題を抱えていると、艶消し塗被紙が高級印刷用紙としての機能を果たさなくなるのが現状である。
【0005】
以上のような製本工程での問題点を解決するために、これまで印刷インキ中にワックスを主成分とする耐摩擦コンパウンド等を添加して印刷面と白紙面の摩擦を軽減する等の措置が採られているが、問題点を解決するには至っていない。
このような問題点の解決策として、本発明者は先きに炭酸カルシウムを50〜80重量%及びカオリン20〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、更に100℃以上の高温でソフトカレンダー処理することにより、印刷インキの白紙面への転移を抑制し、且つ平滑性、印刷光沢に優れることを認めた(特願平3-279908)。
【0006】
本発明者等は更に詳細な検討を重ねた結果、原紙に塗被する塗被液の顔料成分として、平均粒子径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)が35%以下であるようにカレンダー仕上げすることにより、印刷インキの白紙面への転移を抑制し、且つ白紙光沢度が低くても、平滑度、印刷光沢が高く、マット調でありながらダル調並以上のよりコントラストに富んだ印刷面が得られることを認めたものである。
【0007】
塗被紙をマットロールで処理する方法に就いては特公昭59-53956が既に登録されているが、これは顔料としてサチンホワイトを使用することを規定しており、また本発明のような印刷インキの白紙面への転移の問題を抑制したものではないことから基本的に本発明と異なる。また特開平1-260094、特開平2-234993、特開平3-241094、特開平3-260198に就いても本発明の如く印刷インキの白紙面への転移の問題を抑制したものではなく、特定条件の粗面化ロールと弾性ロールを使用することにより、艶消し塗被紙のインキ平滑性やインキ受理性を改善するものであり、これに対し、本発明は特定条件の顔料の使用と2〜8μmであるマットロールを用い且つ100℃以上の高温で処理することとを組合せることにより初めて上述の品質上の効果が得られることを認めたものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、上記の如き艶消し塗被紙の有する難点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、原紙に塗被する塗被液の顔料成分として、特定粒子径の重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、特定の表面粗さを有するマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度が35%以下であるようにカレンダー仕上げすることにより、製本工程及び製本後に印刷インキが白紙面に転移する問題が無く、且つ白紙光沢度が低くても、平滑度、印刷光沢が高く、よりコントラストに富んだ印刷面が得られることを図るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、原紙に塗被する塗被液の顔料として、平均粒子径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、JIS B0651「触針式表面粗さ測定器」で測定した値に基づいたJIS B0601「表面粗さの定義と表示」で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)が35%以下であるようにカレンダー仕上げすることを特徴とする艶消し塗被紙及びその製造方法である。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
製本工程等で発生する印刷インキが白紙部に転移する問題は、印刷部と白紙部が接触した際の、白紙が印刷インキを掻き取る性質を改善し、また印刷時のインキビヒクルの吸収を抑制して、印刷インキの被膜強度の低下を防止すること等で解決可能と考えられる。
【0011】
粒子径の大きい炭酸カルシウムを高配合した塗被組成物を塗被した紙は白紙光沢が低い良好な艶消し面が得られるが、一方で塗被紙表面での顔料配向性に劣るため、白紙がインキを掻き取り易く、又平滑性に劣るため印刷後の光沢も劣る。本発明者等の先願では(特願平3-279908)このような問題点の解決策として、炭酸カルシウムを50〜80重量%及びカオリン20〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、更に100℃以上の高温でソフトカレンダー処理することにより、印刷インキの白紙面への転移を抑制し、且つ平滑性、印刷光沢に優れることを認めた。本発明者等は更に鋭意検討を重ねた結果、原紙に塗被する塗被液の顔料成分として、平均粒子径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)が35%以下であるようにカレンダー仕上げすることにより初めて印刷インキの白紙面への転移する問題を解決した上、更に白紙光沢度が低くても、平滑度、印刷光沢が高くよりコントラストに富んだ印刷面が得られることを認めた。
【0012】
印刷インキの白紙面への転移を抑制し得る理由は、高温で処理することにより塗被面の極く表層部を可塑化させた上でマットロール面を塗被紙の塗被面に転写することにより、表層部に存在する炭酸カルシウムがより効率的に配向(圧入)されるため、白紙のインキの掻き取り易さを改善し、同時にインキビヒクルの吸収が抑制されたために印刷したインキの被膜強度の低下が起こらなかったものと考えられる。しかし予想に反しマットロールの表面粗さが8μmを超える場合にはその効果が認められなかった。この理由は定かではないが、恐らくロールの表面粗さが大き過ぎると塗被面の顔料配向を阻害するものと考えられる。
【0013】
また本発明者等の先願のように高温ソフトカレンダー処理した場合には使用する金属ロールの表面粗さが2μm以下であるため処理後の塗被紙の白紙光沢度が35%以上になって了い、結果として印刷後の光沢と白紙光沢度の差が小さくなりコントラストの点で不充分な印刷物となる。それに対し表面粗さが2μm以上のマットロールで高温処理することにより、平滑度は向上する(高温処理の効果)一方で、マットロールの艶消し面を塗被紙の極く表面に転写し、白紙光沢度を低下させることが可能となることを認めた。その結果、ソフトカレンダー処理の場合と同等の印刷後の光沢を維持したまま白紙光沢度が低下するため、コントラストに非常に富んだ印刷物が得られる。
【0014】
100℃以下で処理した場合には塗被紙表面を可塑化する効果が小さいため、平滑性の向上が少ない。また、表面粗さ8μm以上のマットロールでは平滑度の向上幅も小さくなって了うためコントラストに富んだ印刷物が得られない。
また本発明の艶消し塗被組成物は平均粒子径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%含有していることが必要である。平均粒子径が0.5μmに満たない場合には、カレンダー処理後の白紙光沢度の上昇が大きく好ましくない。また平均粒子径が1.5μmを超えるとカレンダー処理後の平滑度が不充分となり、印刷後の光沢に劣ることを認めた。次ぎに重質炭酸カルシウムの含有率が50重量%未満になると、やはりカレンダー処理後の白紙光沢度の上昇が著しい。又95重量%超では印刷したインキの被膜強度が劣る。
またマットロールの相手ロールとしては耐熱、耐圧性に優れた特殊樹脂ロールで、硬度は特に規定するものではないがショアD硬度で80〜90程度が好ましい。
【0015】
本発明に用いられる接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれ等をフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼイン、大豆たんぱく等の天然系接着剤等の一般に知られた接着剤が挙げられる。これ等の接着剤は顔料100重量部当り5〜50重量部、より好ましくは10〜30重量部程度の範囲で使用される。また必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等通常の塗被紙用顔料に配合される各種助剤が適宜使用される。
【0016】
斯くして調製された塗被組成物は一般の塗被紙製造に使用される塗被装置、例えばブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ等を用いオンマシン或いはオフマシンによって原紙上に1層或いは多層に分けて塗被されるものである。
また原紙としては、一般の印刷用塗被紙に用いられる坪量30〜400g/m2のペーパーベース或いはボードベースの原紙が用いられる。斯かる原紙への塗被組成物の塗被量は乾燥重量で10〜50g/m2程度塗被されるが、得られる白紙品質の面から15〜25g/m2の範囲で調節されるのが最も好ましい。
【0017】
以上、本発明者等は原紙に塗被する塗被液の顔料成分として、平均粒子径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン5〜50重量%を含有する塗被組成物を原紙に塗被した後、JIS B0651「触針式表面粗さ測定器」で測定した値に基づいたJIS B0601「表面粗さの定義と表示」で定義される表面粗さ(Rmax)が2〜8μmであるマットロールにより100℃以上の高温で処理し、光沢度(JIS P-8142 75度白紙光沢度)を35%以下であるようにカレンダー仕上げすることにより、製本工程及び製本後に印刷インキが白紙面に転移する問題が無く、且つ白紙光沢度が低くても、平滑度、印刷光沢が高く、よりコントラストに富んだ印刷面が得られることを認めた。
【0018】
【実施例】
本発明の実施例を示す。
原紙に塗被する塗被組成物の顔料成分100重量部に対し、平均粒径が0.5〜1.5μmの重質炭酸カルシウムを50〜95重量%及びカオリン(エンゲルハード(株)製、商品名ウルトラホワイト90)を5〜50重量%、接着剤として酸化デンプン(王子コーンスターチ(株)製、商品名王子エースB)6重量部と合成接着剤(旭化成(株)製、商品名L-1762)9重量部、及び分散剤(東亜合成(株)製、商品名アロンT-40)0.3重量部とを含有する塗被組成物(固形分濃度63%)をブレードコータにより原紙に塗被した後、カレンダー処理としてマットロールと樹脂ロール(ショア硬度D90)の組み合わせからなる2段のマットカレンダー(相模エンジニアリング社製)を用いて下記の実験を行った。
【0019】
実施例1
坪量90g/m2の原紙に平均粒子径が0.9μmの炭酸カルシウム(三共製粉(株)製、商品名エスカロン#2200)を70重量部、カオリンを30重量部配合した上記塗被組成物を、片面13g/m2両面塗工した塗被紙を、JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が5μmであるマットロールにより120℃でカレンダー処理した。なおカレンダーロールの線圧は40kg/cm、処理スピードは600m/分で行った。
【0020】
比較例1
カレンダーロール温度を70℃でカレンダ処理すること以外は総べて上記実施例1と同条件でカレンダー処理した。
【0021】
比較例2
ソフトカレンダーを用いること以外は、上記実施例1と同じ条件でカレンダー処理した。
【0022】
比較例3
平均粒子径0.9μmの炭酸カルシウムを30重量部、カオリンを70重量部配合した塗被組成物を用いた以外は、上記実施例1と同じ条件でカレンダー処理した。
【0023】
比較例4
JIS B0651で測定した値に基づいたJIS B0601で定義される表面粗さ(Rmax)が15μmであるマットロールを用いること以外は、上記実施例1と同じ条件でカレンダー処理した。
【0024】
〈品質評価方法〉
・平均粒径:セイシン企業光透過式粒度分布測定装置SHC5000を用いて、重量累積分布の50%点を平均粒径として測定した。
・白紙光沢度:JIS P-8142に従い角度75度で測定した。
・平滑度:JAPPN Tappi No5 王研式平滑度試験器で測定した。
・印刷後光沢:RI-II型印刷試験機を用い、サカタインクスオフセット印刷用インキ(商品名:ダイヤトーンGSL紅)を0.35cc使用して印刷し、1昼夜放置後、75度光沢度を測定した。
【0025】
・耐摩擦性:RI-II型印刷試験機を用い、東洋インキオフセット印刷用インキ(商品名:TKマークファイブニュー墨M型)を0.35cc使用して印刷し、1昼夜放置後、東洋精機製作所製サウザランド・ラブテスターを用い、印刷した試験紙と白紙を接触させ荷重1Lbで、43回/分の速度で20回往復摩擦を行い、印刷した紙から白紙に転移したインキの濃度を目視で4段階評価した。
なお、目視の評価基準は以下の4段階とした。
◎:インキ転移が殆んど無いもの
○:僅かにインキ転移するもの
△:インキ転移が多いもの
×:インキ転移が非常に多いもの
【0026】
・印刷仕上り:2色オフセット枚葉印刷機(リョービ社製:3302M)を用い、1色目藍、2色目紅インキを用いて印刷し、白紙と印刷面のコントラスト性を目視評価した。
目視の評価基準は以下の3段階とした。
◎:コントラストに非常に富むもの
△:コントラストは普通のもの
×:コントラストが不充分なもの
【0027】
【表1】

【0028】
【発明の効果】
表から明らかなように、実施例1は低白紙光沢の割りに高平滑、高印刷後光沢で、コントラストに非常に富んだ印刷仕上がりとなり、且つ耐摩耗性に優れている。これに対し比較例1は平滑度が低く、耐摩耗性、コントラスト性に劣る。比較例2及び3は白紙光沢度が高くなり過ぎるためコントラスト性に劣る。比較例4は平滑度が低く、耐摩耗性に劣り、コントラスト性も満足の行くレベルに達しない。従って、本発明の艶消し塗被紙の製造方法により製造された艶消し塗被紙は、従来に無い優れた品質を与え、その製品価値は極めて大なるものがある。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-02-17 
出願番号 特願平4-191354
審決分類 P 1 652・ 121- YA (D21H)
P 1 652・ 534- YA (D21H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 石井 淑久
石井 克彦
登録日 2001-06-01 
登録番号 特許第3195057号(P3195057)
権利者 日本製紙株式会社
発明の名称 艶消し塗被紙及びその製造方法  
代理人 野間 忠之  
代理人 野間 忠之  

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