• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1096285
異議申立番号 異議2001-71891  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-13 
確定日 2004-02-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3123549号「パチンコ機」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3123549号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3123549号の請求項1及び2に係る発明は、平成7年11月13日に特許出願した特願平7-294549号の一部を平成11年7月23日に特願平11-209489号として新たな特許出願としたものであって、平成12年10月27日に設定登録がなされ、その後、町田彬より特許異議の申立てがなされ、平成15年9月19日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年11月20日付けで訂正請求がなされたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
i.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「複数の図柄を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、
大当たり図柄として、予め特定図柄と非特定図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が非特定図柄である場合には、遊技者にとって有利な非特定大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定図柄である場合には、非特定大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、
図柄の変動開始後に、第1段階表示として非特定リーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として特定リーチ図柄を表示する機能を有しており、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることを特徴とするパチンコ機。」と訂正する。
ii.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載を、
「複数の図柄を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、
大当たり図柄として、予め特定図柄と非特定図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が非特定図柄である場合には、遊技者にとって有利な非特定大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定図柄である場合には、非特定大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、
図柄の変動開始後に、第1段階表示としてリーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として前記第1段階表示のリーチ図柄とは異なるリーチ図柄を表示する機能を有しており、かつ、第1段階表示のリーチ図柄が特定リーチ図柄である場合には、第2段階表示として非特定リーチ図柄を表示せず、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることを特徴とするパチンコ機。」と訂正する。
iii.訂正事項c
特許明細書の段落【0006】の【課題を解決するための手段】における「第2段階表示として特定リーチ図柄を表示する機能を有することにある。」、及び「第1段階表示のリーチ図柄が特定リーチ図柄である場合には、非特定リーチ図柄を表示しないことにある。」を、それぞれ、
「第2段階表示として特定リーチ図柄を表示する機能を有しており、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることにある。」、及び「第1段階表示のリーチ図柄が特定リーチ図柄である場合には、第2段階表示として非特定リーチ図柄を表示せず、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることにある。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項a及びbは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載される、リーチ図柄の第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された場合に、「第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させること」を付加要件として、より下位概念に具体化限定化しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、上記訂正事項cは、前記特許請求の範囲の減縮に伴って、減縮された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるため、課題を解決するための手段を訂正する、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、そして、これらの訂正事項a乃至cは、特許明細書に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議申立てについての判断
1.本件発明
特許第3123549号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、訂正が認められるから、本件の訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項(前記第2.1.i.及びii.参照)により特定されるものである。
2.取消理由の概要
当審が平成15年9月19日付けで通知した取消理由は、本件発明1及び2は、刊行物である下記の第1引用例乃至第8引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって取り消されるべきというものである。
第1引用例:特開平7-185081号公報
第2引用例:「パチンコ攻略マガジン」第7巻第11号通巻第113号、
1995年5月27日発行、024〜026頁
第3引用例:「パチンコ攻略マガジン」第7巻第23号通巻第125号、
1995年10月28日発行、016〜018頁
第4引用例:「パチンコ必勝ガイド」第7巻第11号通巻第169号、
平成7年6月2日発行、15〜17頁(甲第2号証)
第5引用例:特開平7-231976号公報(甲第1号証)
第6引用例:特開平4-193283号公報
第7引用例:特開平6-218121号公報(甲第5号証)
第8引用例:特開平6-134110号公報

3.引用例に記載の発明
(1)第1引用例に記載の発明
第1引用例〔特開平7-185081号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「本発明による遊技機は、複数の図柄を可変表示可能な可変表示器(例えば、特別図柄表示装置63)と、該可変表示装置における可変遊技状態を発生させ、該可変遊技状態における停止結果が特別図柄(例えば、「222」)で停止したことに基づいて遊技者に有利な特別遊技状態(例えば、大当り状態)を発生可能な制御を行う遊技制御手段(例えば、遊技制御手段400:CPU301、ROM302、RAM303)と、を備えた遊技機(例えば、パチンコ装置1)において、前記可変遊技状態における停止結果により特定図柄(例えば、「777」)を発生可能な特定図柄発生手段(例えば、遊技制御手段400:CPU301、ROM302、RAM303)と、前記特定図柄が発生したことに関連して、特殊遊技状態(例えば、大当り確率のアップ状態)を発生可能な特殊遊技状態発生手段(例えば、遊技制御手段400:CPU301、ROM302、RAM303)と、前記特殊遊技状態の発生中に、前記可変遊技状態における可変遊技時間を変化(例えば、可変遊技時間の短縮)させる可変遊技時間変化手段(例えば、遊技制御手段400:CPU301、ROM302、RAM303)と、を設けたことを特徴とする。」(第3頁第3欄第3〜24行)、
「特別図柄表示装置63は液晶部63aを有し、この液晶部63aに3列の図柄(例えば、後述の図12参照)を表示可能なように構成され、普通電動始動口64に玉が入賞したとき(ただし、始動記憶のタイミングは後述する)、液晶部63aに表示した可変表示図柄の内容を変化させ、その図柄が特別図柄(例えば、大当りのゾロ目状態:「777」など)になると、変動入賞装置(アタッカー)65が開放するようになっている。なお、特別図柄表示装置63の液晶部63aに表示可能な図柄は数字、記号に限らず、画像やキャラクタを用いたものでもよい。表示図柄は、左→中→右の順にスクロールして停止する。このとき、リーチスクロールも行われる。ここで、リーチスクロールとは、1個目の左図柄および2個目の中図柄が停止したときリーチ状態の出目(例えば、「22X」)が発生し、3個目の右図柄のを停止させるときに通常速度と異なる緩やかな速度で、3個目の図柄表示を変化(スクロール)させるような制御をいう。これにより、遊技者はリーチがかかっているから大当り(例えば、「222」)になる期待感を持ち、ゲームの臨場感が高まる。」(第4頁第6欄第22〜42行)、
「ここで、特図確率のアップ(大当り確率のアップ)とは、一定の条件下(例えば、大当り遊技終了後)で特別図柄表示装置63における大当り図柄の発生確率が低確率(例えば、1/230)から高確率(例えば、1/23)に変更されることをいう。特図確率がアップすると、大当りが発生し易くなる。」(第5頁第8欄第11〜16行)、
「ここで、大当り確率の変動は特別図柄表示装置63を用いて行われる。例えば、特別図柄表示装置63が特定の図柄(例えば、「777」)になると、その後の大当り確率が変動(アップ)する。」(第8頁第14欄第35〜38行)、
「このように、大当り確率の変動(アップ)中は特別図柄表示装置63の図柄変動時間を変化させて短縮することにより、可変表示遊技の所定時間中の回転率を向上させることができる。ここで、可変表示遊技の回転率とは、所定時間中にどんどん変動遊技を行って、遊技者に所定期間中に大当り乱数の抽選を多くさせて、次の大当りを早めるための図柄の回転率のことである。したがって、図柄変動時間を短縮すれば、可変遊技時間が短くなって次の大当りを直ちに発生しやすくすることができる。その結果、確率変動遊技(例えば、特図の高確率状態)になっても特別図柄表示装置63のスクロール状態やスクロール時間が変化しなかったために、確率変動遊技であるのにもかかわらず、次の大当りが直に発生しないという従来の欠点を解消し、遊技者に不満感を与える状態をなくすことができる。」(第10頁第17欄第23〜37行)。

(2)第2引用例に記載の発明
i.第2引用例〔「パチンコ攻略マガジン」第7巻第11号通巻第113号、1995年5月27日発行、024〜026頁〕には、豊丸産業株式会社が発表した「コマコマ倶楽部2」なるパチンコ機について、以下の事項が記載されている。
「このコマコマ倶楽部2は黄門ちゃま2タイプの確変デジパチ。1段〜9段、名人、銀将、金将、角行、飛車、王将の全15図柄の内、3、5、7段、名人、王将で大当りすれば次回までの確変に突入する。ただし、通常は16R継続なのだが、確変図柄で当たった場合は12R継続になるので、確変終了時の出玉は1800個+2400個=4200個という事になる。もちろん、再度確変絵柄で当たった場合はまたそこから継続されるわけだから、1回確変を引けば4200個+αの出玉が期待できるのだ。 確率変動に突入すると、それまで青色だったデジタル画面が緑色になり、デジタルの停止時間も短縮される。また、通常回転時間が19秒の小デジも約6秒に短縮され、確率も10分の1から、100分の97にアップする。おまけに電チューの開放も1回から3回になるので、確変時は出玉をほとんど減らさずに次の大当りが得られるというわけだ。」(第024頁)、
「この機種は全15図柄の内、3・5・7段、名人、王将で大当りした場合に限り確変突入となるわけだが、実はこれ以外の図柄で当たっても確変のチャンスはあるのだ。どういうことかというと、確変図柄以外の図柄で大当りした場合に限り、大当り直後に再度大当り図柄が動くのだ。例えば1段で大当りしたとしよう。当然この図柄は確変ではないので普通なら「ちぇっ、確変じゃねえよ」という事になるのだが、この機種の場合、大当り直後にいきなり図柄が回り出して、他の図柄に化けてしまう。つまり、確変以外で大当りしても、図柄が動いて確変図柄になってしまうことがあるのだ。もちろん最初に確変で当たった場合は、図柄は動かないので安心して欲しい。 「どの図柄で当たっても確変のチャンスがある。」こんなにアツイ確変デジパチは他にあるまい。ちなみにそのまま確変で大当りするのは全体の15分の1、通常図柄から再度動いて確変になるのは15分の4だからトータルの確変突入率は3分の1ということになる。」(第025頁)、
「確変に突入するのはダイレクトに確変図柄で当たるのが15分の1、通常絵柄で大当り後、動いて確変に図柄になるのが15分の4ということで、実戦データでもダイレクトに確変図柄で当たるより、通常図柄が動いて確変になることが多かった。やはり、どの図柄で当てっても確変が期待できるというのは良いモノです。通常図柄で当たった直後の緊張感-図柄が動いて確変になった時はまさに「キマったあ!」って感じで、ほんと最高の気分です。」(第026頁)、
「さて、最後になってしまったが、お待ちかねのリーチアクシヨンについて説明していこう。この機種のデジタル停止順は左・右・中で、リーチがかかった時の中出目は必ずリーチ図柄の7コマ手前から始まる。普通はこの後、1回大当り出目を通過し、再度大当り出目に来る前に停止してしまうのだが(ノーマルリーチ)、ここで停止せずに再び大当り出目まで来たら待望のスクリューリーチに突入。 スクリューリーチになったら中出目が高速回転になり、大当り図柄の5コマ手前から将棋の駒が「キュルキュルッ」っと回りながらコマ送りになって大当り図柄か、その1つ手前で停止する。かなりアツイぞ!」(第026頁)、
ii.第2引用例における前記摘示の記載及び掲載図面によれば、「コマコマ倶楽部2」なるパチンコ機が、図柄表示部に表示された図柄が変動を開始して、所定時間後に前記図柄表示部に停止表示された図柄が同一の組み合わせで揃った場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起する基本構造のものであることは、当業者にとって自明の事項であるから、第2引用例には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「複数の図柄(1段〜9段、名人、銀将、金将、角行、飛車、王将の全15図柄)を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組合せが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、
大当たり図柄として、予め確変図柄(3・5・7段、名人、王将)と通常図柄(1・2・4・6・8・9段、銀将、金将、角行、飛車)とが設定されており、
確定停止表示された大当たり図柄が通常図柄である場合には、遊技者にとって有利な通常大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が確変図柄である場合には、通常大当たりよりも遊技者にとって有利な確変大当たりが生起するパチンコ機であって、
図柄の変動開始後に、リーチ図柄を表示し、ついで、大当たり図柄を一旦停止表示した後、一旦停止表示した大当たり図柄を再度変動表示させ、一旦停止表示した大当たり図柄と同一あるいは異なる大当たり図柄を確定停止表示する機能を有しており、かつ、一旦停止表示した大当たり図柄が確変図柄である場合には、その一旦停止表示図柄を再変動することなく確定停止表示するパチンコ機。」

(3)第3引用例に記載の発明
第3引用例〔「パチンコ攻略マガジン」第7巻第23号通巻第125号、 1995年10月28日発行、016〜018頁〕には、豊丸産業株式会社が発表した「コマコマ倶楽部3」なるパチンコ機について、以下の事項が記載されている。
「次に再抽選、W抽選の仕組みについて触れていくことにしよう。まず大当り乱数を引いて、それが通常大当りとなった場合(確変か否かは中出目カウンタの値で決まる)。この時は必ず再抽選、もしくはW抽選機能が働くのだが、その振り分けは4分の1がW抽選になり、4分の3が再抽選になる(もちろんこの場合、確変大当りになることはない)。 次に大当り乱数を引いて、それが確変大当りになった場合。この時はまず初めに5分の3、5分の1の振り分け率で再抽選を行うか否かを選択、次に4分の1、4分の3の振り分け率でW抽選を行うか否かを抽選をする仕組みになっている。 つまり、最初の再抽選の選択で、「再抽選ナシ」を引き、次のW抽選の選択でも「W抽選ナシ」を引くとダイレクトに確変大当りとなり、「W抽選アリ」を引いた場合はW抽選の1回目で確変大当りとなる。 また、再抽選の選択で「再抽選アリ」、W抽選の選択で「W抽選ナシ」を引いた場合は再抽選で確変大当り、「W抽選アリ」を引いた場合はW抽選の2回目で確変大当りとなる。 以上のパターンをまとめると、確変突入は全部で4パターンあり、その振り分け率は下の表のようになる。」(第017頁)、
「前機コマコマ2では、再抽選のハズレが存在したが、今回はどうやらそのような処理は無いようだ(一安心)。よって、再抽選、W抽選で絵柄が回転したら、安心して確変大当りになるように祈っても良いわけです。ちなみに、一度確変で大当りしたら絶対に絵柄は動かないので、確変で大当り後、再抽選で通常絵柄になるということもありません。」(第017頁)。

(4)第4引用例に記載の発明
第4引用例〔「パチンコ必勝ガイド」第7巻第11号通巻第169号、平成7年6月2日発行、15〜17頁〕には、豊丸産業株式会社が発表した「コマコマ倶楽部2」なるパチンコ機について以下の事項が記載されている。
「大当り絵柄は一段〜九段・名人・銀将・金将・角行・飛車・王将と全て将棋にちなんだモノが15種類。それらの内、三段・五段・七段・名人・王将のいずれかで大当りすると確変に突入し、次回まで小デジタルの確率がアップする仕組みだ(継続アリ)。ただ、確変絵柄の大当りは最高12ラウンドまでとなっているため、確変が1回で終了した際の平均出玉は約4千発である。 また、この機種は通常時にデジタル回転時間短縮機能が働くのだが、これが結構有り難い。メモリーランプ3個点灯状態で入賞した玉は通常時約9.4秒ある回転時間がその半分の約4.7秒にまで短縮されるのである。ブン回る台ならば時間当りのデジタル回転効率は思いのほかアップするぞ。 しかし、これだけなら何の変哲もない確変機。なんとこの『コマコマ倶楽部2』には、通常絵柄で大当りとなった場合、もう一度大当り絵柄を決定し直すという再抽選機能が備わっているのだ。即ち、通常絵柄で大当りしても、そこから確変絵柄の大当りに変わってしまう可能性があるわけである。」(第15頁)、
「読者の皆さんは三洋の『プロレスII』という確率変動機を覚えているだろうか。この機種にも、大当りしてから再びデジタルが動きだし、大当り絵柄が変更されるというアクションが見られた。だが、この『コマコマ倶楽部2』に搭載されている再抽選機能は、ソレとはまたちょっと違うのだ。この機種の場合、確変絵柄のリーチから大当りした際には大当り絵柄の変更はナシ。そのまま確変に突入するようになっている。ところがである。通常絵柄のリーチから大当りとなった場合に限り、3つ揃ったデジタルが一斉に横に回転し始め、大当り絵柄が別の絵柄に変わってしまうのだ。通常絵柄での大当りは、必ずこの再抽選が行われるのである。変更された大当り絵柄は、最初に大当りとなった絵柄になることもあれば、他の通常絵柄の場合もある。無論、待望の確変絵柄に変更されるパターンもアリだ。 この『コマコマ倶楽部2』は、通常絵柄の大当りにも確変突入への可能性が秘められているのである。」(第16頁)、
「この機種は15種類ある大当り絵柄の内、5種類が確変絵柄となっているため、表示上の確変突入率は3分の1(約33%)になるわけだ。しかし、そこへ再抽選によって確変に突入する分が加わると、確変突入率は3分の1より高くなってしまうではないか。 仮に確変絵柄のリーチから大当りになるケースと、再抽選によって確変突入になるケースとがどちらも表示上通りだとしたらどうなるのか? それを示したのが下の表である。 なんと、確変突入となる2つのパターンが共に3分の1だった場合の確変突入率は50%以上という破格の高さになってしまうのだ。」(第4引用例16頁)、
「次に左の囲みを見て貰おう。これは再抽選された際の行き先を表わしている。再抽選による確変絵柄の出現率は、表示上の3分の1よりも若干低目という結果になったのだ。」(第17頁)、
「確変中は,リーチアクションはそのままだが,通常時約9.4秒あるメインデジタルの回転時間が約4.7秒に短縮され,小デジタルの回転時間も通常時の約20秒が約6秒に短縮される。そして、小当り確率が100分の97にアップすると共に、電チューも通常時0.8秒の開放を1回しか行わないのに対し,確変中は3回開放するようになるのだ。」(第17頁)、
「再抽選が見た目通りに行われているとしたら、変更された大当り絵柄の内、3分の1が確変絵柄になるハズ。だが、このデータによると若干ではあるがそれを下回っている。しかし、確変に突入する際は、確変絵柄のリーチで大当りするより再抽選による方のがはるかに多いのだ。」(第17頁)、
「現段階のデータでは、確変絵柄のリーチは当たりにくく、今一つ期待感に乏しいという結果になった。確変突入へのカギを握っているのは、むしろ通常絵柄で大当りした場合に行われる再抽選だ。ほとんどの確変突入パターンがこの再抽選によるものなのだから、通常絵柄の大当りはなかなか侮れない存在だったのだ。」(第17頁)。

(5)第5引用例に記載の発明
i.第5引用例〔特開平7-231976号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「図柄表示装置に変動表示される複数の表示列の変動停止時に表示される図柄の組合せが複数種類設定される大当り図柄の組合せのいずれかと一致したときに大当り遊技状態を生起せしめるパチンコ遊技機において、該パチンコ遊技機の遊技盤に配置され且つ前記図柄表示装置に変動機能を付与する始動入賞口に打球が入賞したときに当該変動に基づく結果が大当りであるか否かを選択する大当り選択手段と、該大当り選択手段の選択結果が大当りであるときに、少なくとも1つの表示列の変動停止前に他の表示列に停止表示される図柄であって前記大当り図柄の組合せのいずれかと一致する可能性のあるリーチ図柄を選択するリーチ図柄パターン選択手段と、前記大当り選択手段の選択結果が大当りであるときに、最終的に停止する大当り図柄の組合せを選択する大当り図柄パターン選択手段と、前記大当り選択手段の選択結果が大当りであるときに、前記リーチ図柄パターン選択手段によって選択されたリーチ図柄に基づいて少なくとも1つの表示列を除く表示列の図柄が停止表示されるように変動制御し、その後すべての表示列を変動開始した後に前記大当り図柄パターン選択手段によって選択された大当り図柄に基づいてすべての表示列を変動停止制御する大当り変動制御手段と、を備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。」(第2頁第1欄第2〜26行)、
「ところで、リーチ時におけるリーチ図柄(すでに停止した表示列によって確定される図柄の組合せ)とその後すべての表示列が停止して大当りとなったときの大当り図柄の組合せとは、一般的に同じ図柄の組合せである。例えば、リーチ状態が「7・7・変動」という表示態様であり、その態様を経て大当りとなったときには、大当り図柄の組合せは、「7・7・7」である。したがって、リーチ状態となったときに、その後大当りとなったときの大当り図柄の組合せも容易に予測することができることとなる。しかし、近年、複数種類設定される大当り図柄の組合せのうち、特定の大当り図柄の組合せが表示されて大当り遊技状態になったときには、遊技者にとってさらに有利なように遊技を展開したり、あるいはサービスを提供したりするパチンコ遊技機が多数提供されている。例えば、さらに有利な遊技の展開としては、大当り後の図柄表示装置の変動において大当り図柄の組合せとなる確率が高確率に変更されたり、あるいは有利なサービスとしては、特定の大当り図柄の組合せが表示された以後の遊技においては、所定の大当り図柄の組合せによって大当り遊技状態が発生するまで、獲得した賞品球を使用して連続して遊技を行うサービスの提供を受けたりすることができる。」(第2頁第2欄第3〜24行)、
「【発明が解決しようとする課題】しかして、従来のパチンコ遊技機においては、上記のような有利な展開・サービスが受けられるか否かがリーチ状態のときに分かってしまうため、それだけ遊技に対する興趣を失ってしまうという欠点があった。本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、図柄が最終的に確定するまで大当り遊技状態がどのような種類の大当り図柄の組合せによって生じたか予測することができない図柄表示装置を備えたパチンコ遊技機を提供することにある。」(第2頁第2欄第26〜35行)、
「次に、前記した図柄表示装置20の構成について図2を参照して説明する。図2は、図柄表示装置20の正面図である。図2に示すように、図柄表示装置20は、遊技盤1の表面に取り付けられる取付基板21を有し、該取付基板21には、ほぼ長方形状の表示窓22が開設され、該表示窓22に液晶表示器23が臨むようになっている。そして、液晶表示器23は、縦方向に3つに分割された表示列24a〜24cを表示するようになっており、各表示列24a〜24cには、それぞれ3個の図柄を表示し得るようになっている。したがって、液晶表示器23には、縦横3個ずつ合計9個の図柄がマトリックス状に表示されており、図2に示すように、水平方向の3本の当りラインa〜cと対角線の2本の当りラインd,eとの合計5本の当りライン上のいずれかに同一図柄が表示されたときには、大当り遊技状態となる。また、各表示列24a〜24cには、「0」〜「9」までの数字(図柄)が予め定められた順序(0〜9までの数字が順番に配列されても良いし、0〜9までの数字がランダムに配列されても良い)に表示され、変動時にその順序通りに連続して変動表示される。また、その変動表示の開始は、同時であるが、停止は、左から右に所定の時間差をもって順次停止されるようになっている。なお、各表示列24a〜24cには、上記した「0」〜「9」の当り図柄の他に外れ図柄を当り図柄同士の間に配列させても良い。」(第4頁第5欄第3〜27行)、
「以上、実施例に係る図柄表示装置20を備えたパチンコ遊技機の構成及び作用について説明したが、本実施例によれば、打球の始動入賞口4,6a,6bへの入賞に基づいて変動結果が大当りであるか否かを選択するために大当り外れカウンタ33から1つの値が抽出され、その抽出された結果が大当りであるときに、リーチ段階におけるリーチ図柄が大当りリーチパターンカウンタ35によって選択され、また、最終の大当り段階における大当り図柄の組合せが大当りパターンカウンタ34によって選択される。そして、大当りに基づく変動において、まず、リーチ状態になるまで大当りリーチパターンカウンタ35によって選択されたリーチ図柄に基づいて表示列24a,24bの図柄が確定するように変動し、その後、その確定した図柄を含むすべての表示列24a〜24cが再度変動した後、大当りパターンカウンタ34によって選択された大当り図柄に基づいて変動停止する。つまり、本実施例においては、大当り時における変動過程において、リーチ状態時に表示されるリーチ図柄と最終的に表示される大当り図柄の組合せとがそれぞれ異なるパターンカウンタ34,35から選択されるので、必ずしもリーチ状態に表示される図柄と大当り図柄の組合せが一致せず、図柄が最終的に確定するまで大当り遊技状態がどのような種類の大当り図柄の組合せによって生じたか予測することができず、遊技者の興趣を最後まで引き付けることがで
きる。」(第7頁第11欄第6〜30行)、
「また、リーチ図柄が確定される状態として完全に停止した状態を示したが、必ずしも停止させる必要はなく、例えば、リーチ図柄として確定される確定図柄を確認することができる範囲の前後で上下動した状態で維持し、その後、すべての表示列を再変動するように制御しても良い。」(第7頁第11欄第33〜38行)。
ii.前記摘示の記載及び図面によれば、第5引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数の図柄を表示可能な複数の表示列(24a,24b,24c)が設けられており、図柄変動開始信号により前記表示列(24a,24b,24c)に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の表示列(24a,24b,24c)に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、
大当たり図柄として、予め特定の大当り図柄と特定の大当り図柄以外の大当り図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が特定の大当り図柄以外の大当り図柄である場合には、遊技者にとって有利な大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定の大当り図柄である場合には、大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、
図柄の変動開始後に、リーチ図柄を表示した後、リーチ図柄を再度変動表示させ、しかる後に大当り図柄を確定停止表示する機能を有しており、かつ、リーチ状態時に表示されるリーチ図柄と確定停止表示される大当り図柄の組み合わせとをそれぞれ異なるパターン選択手段により選択するようにしたパチンコ機。」

(6)第6引用例に記載の発明
第6引用例〔特開平4-193283号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「遊技領域6内に打込まれたパチンコ玉が前記始動入賞口12a〜12cのいずれかに入賞すれば、始動入賞玉検出器55a,55b,55cのうちの対応する始動入賞玉検出器によって検出され、その検出出力に基づいて前記可変表示装置9が可変表示を開始する。」(第3頁左上欄第14〜19行)、
「この可変表示装置9の停止制御は、可変表示の開始から一定時間が経過した後に、まず向かって左の図柄が停止され、所定時間(たとえば1〜2秒)経過した後に中央の図柄が停止され、さらに所定時間(たとえば1〜2秒)経過した後に右の図柄が停止され、左,中央,右の順番で行なわれる。」(第3頁右上欄第3〜9行)、
「そして、この可変表示装置9の停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合せ(たとえば777)になれば、大当り状態が発生し可変入賞球装置10の可動部材24a,24bを開成させて打玉が入賞しやすい第1の状態に制御される。」(第3頁左下欄第1〜6行)、
「一方、大当りが発生する図柄は、図柄表示LED30a,30b,30c(第2図参照)によって表示される3つの図柄が一致した場合であり、さらに図柄の種類は、0〜9,♪,F,Ω,V,人のマークの15種類である」(第6頁右上欄第13〜17行)、
「リーチ時とは、可変表示部の最後の1つがまだ停止していない状態においてその最後の可変表示部の停止時の識別情報如何によっては大当りが発生する可能性がある場合をいう。」(第7頁左下欄第4〜7行)、
「まず、第4E図により図柄変形処理のサブルーチンプログラムを説明する。S56により図柄LED表示切換条件が成立したか否かの判断がなされる。図柄LED表示切換条件とは、図柄表示LEDによって表示される図柄の外形を変形させるための予め定められた条件であり、具体的には、たとえば大当り中に前記繰返し継続条件が成立したことや、左図柄表示LED30aと中図柄表示LED30b(第2図参照)の表示が停止し右図柄表示LEDのみが可変表示している状態で前記左図柄と中図柄との図柄の種類が一致したいわゆるリーチ状態の発生等が考えられる。この図柄LED表示切換条件が成立した場合には、S57に進み、表示切換タイマが終了したか否かの判断がなされる。この表示切換タイマはS58においてセットされるものであり、たとえば100ms程度の短い時間である。そしてこの表示切換タイマが終了していない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、終了した場合にはS58に進み、表示切換タイマがセットされるとともに表示切換カウンタが「1」インクリメントされる。この表示切換カウンタは、図柄表示LEDで表示される図柄の外形がそれぞれ異なる5種類の図柄用LEDデータのうちそのカウント値に対応する種類の図柄用LEDデータを抽出するために用いられるものであり、抽出された図柄用LEDデータに対応する図柄が図柄表示LEDにより表示されることになる。」(第8頁右上欄第8行〜左下欄第15行)、
「次に、表示切換カウンタのカウント値に基づいて図柄の外形を変化させる制御の具体例を説明する。通常の可変表示中には、図柄が「0」→「1」→…→「 」のようにスクロール表示され、いわゆるリーチ状態が成立すれば、第6図に示すように、左図柄表示LEDと中図柄表示LEDとの図柄(図面では「7」)が表示切換カウンタの値に応じた外形になるように制御される。まず(A)に示した一番背の高い外形の図柄が表示されて表示切換タイマが終了したときに表示図柄が(B)図に示すように1ドット分背が低くなり、さらに表示切換タイマが終了すると(C)に示すようにもう1ドット分背が低くなり、次に表示切換タイマが終了すれば(D)に示すように逆に1ドット分背が高くなり、さらに表示切換タイマが終了すれば(E)に示すように図柄の背の高さはそのままの状態で図柄全体が上方に1ドット分シフトする。このような図柄の伸縮上下動を(F)〜(O)に示すように右図柄表示LEDが停止するまで繰返し行なう。このように、外形を変形制御すれば、遊技機前方側から見た場合に、図柄があたかも上方に繰返しジャンプしているように見えて遊技効果が高まる。」(第15頁左下欄第15行〜右下欄第18行)、
「前述した伸縮上下動や横方向の変形制御は、遊技者が図柄の原型を認識できかつ再び可変開始したと誤認しない程度に行なうのが望ましい。」(第16頁左下欄第15〜18行)。

(7)第7引用例に記載の発明
第7引用例〔特開平6-218121号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 予め定められた種々の図柄を変動表示する複数の図柄表示器によって構成され、球検知装置を備えた始動口を遊技球が通過すると、球検知装置からの球検知信号に基づいて各図柄表示器の表示図柄が変動を開始し、停止して種々の組合わせの図柄を表示する図柄組合わせ表示装置と、前記図柄組合わせ表示装置の各停止図柄が所定の組合わせである場合に開放作動する特別入賞口とを備えたものにあって、 図柄組合わせ表示装置の図柄表示器の表示図柄として、特定の図柄からなる更新図柄を含み、図柄表示器が前記更新図柄で停止表示又は停止に近い緩速度で表示された場合に、他の図柄表示器が停止表示又は停止に近い緩速度で表示された後に、更新図柄を表示した該図柄表示器を変化させて、再び図柄を表示させる制御指令手段を具備したことを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】 前記制御指令手段が、前記更新図柄が表示されても、変化する場合と、変化しない場合とを生じさせる制御内容を備えた請求項1記載のパチンコ機。」(第2頁第1欄第2〜19行)、
「【0017】 ここで図柄表示器7a,7b,7cの表示図柄は「0」〜「9」、「¥」、「$」及び「☆」の13種があって、循環順序はあらかじめ定められている。そして、「☆」を更新図柄xとしている。」(第3頁第3欄第33〜36行)、
「【0027】 尚、このように全て、「☆」で揃う場合にも変化を生じさせるようにしても良い。この場合に、「大当り」が確定してはいるが、例えば「7,7,7」で大当りとすると、普通図柄表示器10の確率変動を行なって、高確率とする等、付加価値のある特別な大当り図柄がある場合に、更新図柄xの変化によってこのような特別な大当り図柄への移行を期待することができ、一層遊技者に期待感を与えることとなる。
【0028】 そして、既に決定された当たり組合わせのうち、上記で選定された位置を、「☆」に置き換えて、表示器7a,7b,7cの順序で表示する。そして、各図柄が停止、または停止に近い緩速度で表示されてから、更新図柄xである「☆」が表示された表示器7a,7b,7cのみを変化させ、既に定められた当たり図柄を表示させる。このときも、更新図柄xが二つ出現した場合には、表示器7a,7b,7cの順で更新図柄xを変化させる。
【0029】 この表示経過中に図柄が7a=7bとなった場合には、上述したようにリーチ状態となって、低速変動等の変化作動を生ずる。従って、「☆,☆,X」の場合にもリーチ状態となる。尚、このリーチ作動は、図4,5のフローチャートでは省略している。
【0030】 ところで、「☆」が変化する直前において、各図柄は停止、又は停止に近い緩速度で表示されるが、ここで、停止に近い緩速度とは、視覚的には、停止していると同じ程度にわずかに動いていて、図柄の確定を認識し得るような状態を意味する。」(第3頁第4欄第28行〜第4頁第5欄第4行)。

(8)第8引用例に記載の発明
第8引用例〔特開平6-134110号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 入賞領域を形成する遊技部に、遊技球が入賞する特定入賞口と、当該特定入賞口への遊技球の入賞を条件に複数種類の図柄を可変表示する可変表示ゲームを行う可変表示装置と、遊技者にとって有利な第1状態と、遊技者にとって不利な第2状態とに変換可能な変動入賞装置とが設けられ、前記特定入賞口への遊技球の入賞に基づいて前記可変表示装置の各図柄表示部の図柄の変動表示を開始し、所定の条件を満たすことによって各図柄表示部に図柄を静止表示させて図柄の配列を完成させ、この図柄の配列が予め設定された当り図柄配列と一致した場合に前記変動入賞装置を第1状態に切り換えて特別遊技を実行するように構成された遊技機において、 前記可変表示装置の静止図柄配列が完成される前に、前記各図柄表示部の各図柄を順次整列させると共に、その各図柄を整列した状態で互いに同期させて変動表示させる図柄同調制御手段と、当該図柄同調制御手段によって互いに同期して変動表示されている各図柄表示部の図柄を、所定時間経過後に一斉に静止表示させて静止図柄配列を完成する図柄停止制御手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」(第2頁第1欄第2〜22行)、
「【0019】このように、特別図柄表示装置103は、始動口112,120,121のいずれかへのパチンコ玉の入賞で可変表示ゲームを開始し、役物制御装置800によって決定された図柄を各表示部に表示(即ち、図柄の配列を生成)する。そして、この配列が同一図柄であれば当たりとなり、また、特に所定の図柄の配列(例えば、「7,7,7」等)であれば大当たりが発生し、この大当たりでは連続して当たりが発生する可能性が高い状態、所謂連チャン状態が得られる。
【0020】また、普通図柄表示装置119は、1つの図柄表示部122を有し、特別図柄表示装置103と同様に役物制御装置800により制御される。
この普通図柄表示装置119は、通過型チャッカ109,110のパチンコ玉の通過で図柄表示部122に複数の図柄(例えば、「0」〜「9」までの数字)
を可変表示する可変表示ゲームを開始し、この表示部122に特定の図柄(例えば、「3」または「7」)が静止すれば当たりが発生し、電動役物111の誘導開閉部材111a,111bが所定時間開放する。」(第4頁第6欄第28〜46行)、
「【0042】ステップS617では、左図柄表示部104,中図柄表示部105と右図柄表示部106の各図柄の回転を同調させ(即ち、当りの場合には、「7,7,7」,「8,8,8」・・・「5,5,5」,「6,6,6」の図柄配列で同期回転させ、ハズレの場合には、例えば「7,7,3」,「8,8,4」・・・「5,5,1」,「6,6,2」等の図柄配列で同期回転させる)て、次のステップS619に移行する。」(第7頁第12欄第44行〜第8頁第13欄第1行)、
「【0044】尚、本実施例では、可変表示装置103の各図柄表示部104,105,106に可変表示される図柄の回転速度を高回転速度(一周5ms)と低回転速度(一周500ms)の二段階に切り換える場合について説明したが、これに限らず複数段階に亘って除々に回転速度を遅くするようにもでき、その場合には遊技者にとって通常の当りであるか或いは大当りであるかが、除々に判明するので可変表示ゲームの進行につれて期待感も高まり、パチンコ遊技機の興趣を一層高めることもできる。」(第8頁第13欄第18〜27行)、
「【0046】特に、この発明を、所謂”連チャン”可能な機種に適用した場合には、可変表示ゲーム実行中に、通常の当たりであるか、或いは”連チャン”状態発生を含む特別大当たりであるかの期待感を遊技者に抱かせることができ、より一層興趣に富む遊技を提供することができるという効果もある。」(第8頁第14欄第1〜6行)。

2.本件発明1と引用発明〔第5引用例に記載の発明〕との対比検討
(1)本件発明1と引用発明との対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における、「表示列(24a,24b,24c)」、「特定の大当り図柄」、「特定の大当り図柄以外の大当り図柄」は、それぞれ、本件発明における、「図柄表示部」、「特定図柄」、「非特定図柄」に相当する。
そして、引用発明は、リーチ状態時に表示されるリーチ図柄と確定停止表示される大当り図柄の組み合わせとをそれぞれ異なるパターン選択手段により選択するものであるから、リーチ図柄として非特定リーチ図柄を表示した後、該非特定リーチ図柄を再度変動表示させ、しかる後に大当たりが生起する場合には、特定図柄を確定停止表示して特定大当たりを生起させる機能を有するものと認められる。
そうすると、本件発明1と引用発明は、以下の点でそれぞれ一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.「複数の図柄を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、
大当たり図柄として、予め特定図柄と非特定図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が非特定図柄である場合には、遊技者にとって有利な非特定大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定図柄である場合には、非特定大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、
図柄の変動開始後に、非特定リーチ図柄を表示した後、該非特定リーチ図柄を再度変動表示させ、しかる後に大当たりが生起する場合には、特定図柄を確定停止表示して特定大当たりを生起させる機能を有するパチンコ機。」
相違点A.本件発明1は、図柄の変動開始後に、第1段階表示として非特定リーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として特定リーチ図柄を表示する機能を有しており、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させる構成であるのに対して、引用発明は、図柄の変動開始後に、非特定リーチ図柄を表示した後、該非特定リーチ図柄を再度変動表示させ、しかる後に大当たりが生起する場合には、特定図柄を確定停止表示して特定大当たりを生起させる機能を有する構成である点。

(2)相違点Aの検討
i.一般に、大当たり図柄を確定停止表示する前に、該大当たり図柄に対応するリーチ図柄を表示することは、周知技術であり、該周知技術において、特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定図柄が確定停止表示されて特定大当たりが生起することになるのは明らかである。
そうすると、引用発明に示される、非特定リーチ図柄を再度変動表示させた後に、特定図柄を確定停止表示して特定大当たりを生起させる構成において、前記周知技術に示される、確定停止表示する特定図柄に対応する特定リーチ図柄を表示する構成を採用して、前記相違点Aに係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
ii.また、第2引用例に記載の発明に示されるように、図柄の変動開始後に、リーチ図柄を表示し、ついで、第1段階表示として大当たり図柄としての通常図柄(非特定図柄)を一旦停止表示した後、一旦停止表示した図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として確変図柄(特定図柄)を確定停止表示する機能を有しており、かつ、一旦停止表示した大当たり図柄が確変図柄(特定図柄)である場合には、その一旦停止表示図柄を再変動することなく確定停止表示することは、周知技術(その他に第3引用例及び第4引用例参照。)である。
そして、第2引用例に記載の発明を含む前記周知技術においては、特定リーチ図柄を表示した後に、対応する特定図柄を一旦停止表示して、再変動することなく確定停止表示させるから、特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させるものである。
そうすると、引用発明に示される、非特定リーチ図柄を再度変動表示させた後に、特定図柄を確定停止表示して特定大当たりを生起させる構成において、第2引用例に記載の発明を含む前記周知技術に示される、大当たり図柄の表示態様としての再変動表示技術を、リーチ図柄の表示態様としての再変動表示に類推適用することにより、第1段階表示として非特定リーチ図柄を表示した後に再度変動表示させ、第2段階表示として特定リーチ図柄を表示するようにするとともに、特定リーチ図柄を表示した後に、対応する特定図柄を再変動することなく確定停止表示させて必ず特定大当たりが生起するようにして、前記相違点Aに係る本件発明1のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iii.本件発明1の作用効果は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が当然予測できるものである。

(3)まとめ
よって、本件発明1は、第5引用例に記載の発明(引用発明)及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.本件発明2と引用発明との対比検討
(1)本件発明2と引用発明との対比
本件発明1と引用発明との対比を踏まえて、本件発明2と引用発明とを対比すると、引用発明は、リーチ状態時に表示されるリーチ図柄と確定停止表示される大当り図柄の組合せとをそれぞれ異なるパターン選択手段により選択するものであるから、リーチ図柄と異なる大当たり図柄として非特定図柄あるいは特定図柄を確定停止表示する機能を有するものと認められる。
そうすると、本件発明2と引用発明は、下記の点で相違することを除き、その余の点で一致しているものと認められる。
相違点B.本件発明2は、図柄の変動開始後に、第1段階表示としてリーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として前記第1段階表示のリーチ図柄とは異なるリーチ図柄を表示する機能を有しており、かつ、第1段階表示のリーチ図柄が特定リーチ図柄である場合には、第2段階表示として非特定リーチ図柄を表示せず、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させる構成を有するのに対して、引用発明は、図柄の変動開始後に、リーチ図柄を一旦表示した後、該リーチ図柄を再度変動表示させ、該リーチ図柄と異なる大当たり図柄を確定停止表示して特定大当たりを生起させる構成である点。

(2)相違点Bの検討
i.一般に、大当たり図柄を確定停止表示する前に、該大当たり図柄に対応するリーチ図柄を表示することは、周知技術であり、該周知技術において、特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定図柄が確定停止表示されて特定大当たりが生起することになるのは明らかである。
ii.また、第2引用例に記載の発明に示されるように、図柄の変動開始後に、リーチ図柄を表示し、ついで、第1段階表示として大当たり図柄を一旦停止表示した後、一旦停止表示した図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として一旦停止表示した大当たり図柄と同一あるいは異なる大当たり図柄を確定停止表示する機能を有し、一旦停止表示した大当たり図柄が確変図柄(特定図柄)である場合には、その一旦停止表示図柄を再変動することなく確定停止表示することをもって通常図柄(非特定図柄)を表示しないようにすることは、周知技術(その他に第3引用例及び第4引用例参照。)である。
そして、第2引用例に記載の発明を含む前記周知技術においては、特定リーチ図柄を表示した後に、対応する特定図柄を一旦停止表示して、再変動することなく確定停止表示させるから、特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させるものである。
iii.そうすると、引用発明に示される、図柄の変動開始後に、リーチ図柄を一旦表示した後、該リーチ図柄を再度変動表示させ、該リーチ図柄と異なる大当たり図柄を確定停止表示して特定大当たりを生起させる構成において、前記周知技術に示される、確定停止表示する大当たり図柄に対応するリーチ図柄を表示する構成を採用するとともに、第2引用例に記載の発明を含む前記周知技術に示される、大当たり図柄の表示態様としての再変動表示技術を、リーチ図柄の表示態様としての再変動表示に類推適用することにより、第1段階表示としてリーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として前記第1段階表示のリーチ図柄とは異なるリーチ図柄を表示する機能を有しており、かつ、第1段階表示のリーチ図柄が特定リーチ図柄である場合には、第2段階表示として非特定リーチ図柄を表示せず特定リーチ図柄を表示するようにするとともに、特定リーチ図柄を表示した後に、対応する特定図柄を再変動することなく確定停止表示させて必ず特定大当たりが生起するようにして、前記相違点Bに係る本件発明2のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iv.本件発明2の作用効果は、引用発明並びに前記周知技術に基づいて、当業者が当然予測できるものである。

(3)まとめ
よって、本件発明2は、第5引用例に記載の発明(引用発明)並びに前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本件請求項1及び2に係る発明は、上記第5引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パチンコ機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の図柄を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、
大当たり図柄として、予め特定図柄と非特定図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が非特定図柄である場合には、遊技者にとって有利な非特定大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定図柄である場合には、非特定大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、
図柄の変動開始後に、第1段階表示として非特定リーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として特定リーチ図柄を表示する機能を有しており、
第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】 複数の図柄を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、
大当たり図柄として、予め特定図柄と非特定図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が非特定図柄である場合には、遊技者にとって有利な非特定大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定図柄である場合には、非特定大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、
図柄の変動開始後に、第1段階表示としてリーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として前記第1段階表示のリーチ図柄とは異なるリーチ図柄を表示する機能を有しており、かつ、
第1段階表示のリーチ図柄が特定リーチ図柄である場合には、第2段階表示として非特定リーチ図柄を表示せず、
第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることを特徴とするパチンコ機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パチンコ機に関するものであり、詳しくは、図柄を変動表示する図柄表示部が設けられており、その図柄表示部に表示される図柄の組み合わせが特定の組み合わせとなった場合に遊技者にとって有利な「大当たり状態」が生起する、いわゆる図柄合わせタイプのパチンコ機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図柄合わせタイプのパチンコ機としては、たとえば3つの特別図柄を表示可能な特別図柄表示部が設けられており、遊技球が所定の領域を通過、あるいは所定の入賞口に入賞することにより、普通図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に「当たり図柄」が表示された場合に普通電動役物が開成し、開成中あるいは閉成中の普通電動役物に遊技球が入賞することにより特別図柄表示部の特別図柄が変動を開始し、所定時間後に順々に停止表示となるとともに、「大当たり図柄」と称される所定の図柄の組み合わせ(たとえば「7,7,7」)が表示された場合に、「大当たり」となり、遊技者にとって有利な「大当たり状態」が生起するもの(いわゆる普通電動役物付き第1種パチンコ機、以下、単に第1種パチンコ機という)が知られている。
【0003】
通常の図柄合わせタイプのパチンコ機においては、予め複数種類の図柄の組み合わせが「大当たり図柄」として設定されている。また、機種によっては、その「大当たり図柄」が、「特定図柄」と「非特定図柄」に分けられており、「特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起した場合には、「大当たり状態」終了後、次の「大当たり」が生起するまでの間、普通図柄が「当たり」となる確率を高めたり、普通図柄の変動時間を短縮したりして、普通電動役物への入賞率を増加させて遊技球がほとんど減少しない状態を生起させるとともに、特別図柄の変動回数を増大させて「大当たり」を生起し易くし、「非特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起した場合に比べて遊技者にとって有利となるように設定しているものもある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のパチンコ機は、「大当たり図柄」が表示された場合であっても、「特定図柄」が表示された場合と「非特定図柄」が表示された場合とでは「大当たり状態」終了後の遊技内容に違いがあるので、遊技者は、「非特定図柄」が表示されて「大当たり」が生起しても大して感動せず、かかる事態の連続により、遊技に対する興味を失い易かった。また、「特定図柄」が表示された場合と「非特定図柄」が表示された場合とでは「大当たり状態」終了後の遊技内容に違いがあるため、3つの特別図柄の変動後に「大当たり図柄」に含まれる特別図柄を順々に2つ表示した場合であっても、先に表示された2つの特別図柄が「非特定図柄」に含まれるものである場合には、遊技者はさして大きな期待を抱かず、かかる事態の繰り返しにより、遊技に対する興味を失うこともあった。さらに、従来のパチンコ機は、各特別図柄の変動開始から停止表示開始までの間(たとえば、約6秒間)、特別図柄表示部に各特別図柄が変動している様子を表示するだけであるので、遊技者は、かかる単調な時間の連続によって、遊技に対する興味を失うこともあった。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解消し、遊技内容が新鮮で趣向性が高く、遊技者がいつまでも興味を持って遊技することが可能なパチンコ機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の内、請求項1に記載された発明の構成は、複数の図柄を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、大当たり図柄として、予め特定図柄と非特定図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が非特定図柄である場合には、遊技者にとって有利な非特定大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定図柄である場合には、非特定大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、図柄の変動開始後に、第1段階表示として非特定リーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として特定リーチ図柄を表示する機能を有しており、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることにある。
請求項2に記載された発明の構成は、複数の図柄を表示可能な複数の図柄表示部が設けられており、図柄変動開始信号により前記図柄表示部に表示された図柄が変動を開始し、所定時間後に前記複数の図柄表示部に新たな図柄が確定停止表示されるとともに、確定停止表示された図柄の組み合わせが大当たり図柄である場合に、遊技者にとって有利な大当たり状態が生起するとともに、大当たり図柄として、予め特定図柄と非特定図柄とが設定されており、確定停止表示された大当たり図柄が非特定図柄である場合には、遊技者にとって有利な非特定大当たりが生起し、確定停止表示された大当たり図柄が特定図柄である場合には、非特定大当たりよりも遊技者にとって有利な特定大当たりが生起するパチンコ機であって、図柄の変動開始後に、第1段階表示としてリーチ図柄を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として前記第1段階表示のリーチ図柄とは異なるリーチ図柄を表示する機能を有しており、かつ、第1段階表示のリーチ図柄が特定リーチ図柄である場合には、第2段階表示として非特定リーチ図柄を表示せず、第2段階表示として特定リーチ図柄が表示された後に大当たりが生起する場合には、必ず特定大当たりを生起させることにある。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のパチンコ機の実施の一形態を図面に基いて詳細に説明する。
【0008】
[実施例1]
図1はパチンコ機の正面を示したものであり、パチンコ機1の正面の中央よりやや上方にはほぼ円形の遊技領域2が設けられている。また、図2はパチンコ機1の遊技領域2を拡大して示したものであり、遊技領域2の中央上部には、1枚の液晶板によって形成された特別図柄表示部3が設けられており、その下側にチューリップ形状の普通電動役物4が設けられている。普通電動役物4の両サイドには左ゲート5、右ゲート6がそれぞれ設けられており、さらに、普通電動役物4の下側には大入賞口7、電飾ランプ8等が配設されており、大入賞口7の下側には、普通図柄表示部9が設けられている。なお、遊技領域2には、それらの他にも種々の入賞口、風車、電飾ランプ、および多数の障害釘等が設けられている。
【0009】
パチンコ機1は、発射ハンドル14を操作することによって遊技球を遊技領域2に打ち込めるようになっており、その遊技球が大入賞口7に入賞した場合には15個の賞品球を、その他の入賞口(普通電動役物4等)に入賞した場合には5個の賞品球を、賞品球払い出し装置(図示せず)により払い出すようになっている。
【0010】
また、パチンコ機1は、左ゲート5、あるいは右ゲート6を遊技球が通過した場合に普通図柄表示部9に表示された普通図柄が変動を開始するようになっており、所定時間後に停止表示された普通図柄が特定の図柄である場合には、通常は閉成した状態になっている普通電動役物4が所定時間開成するようになっている。
【0011】
さらに、普通電動役物4に遊技球が入賞した場合には、普通電動役物4に付設された入賞検出装置(図示せず)から特別図柄表示部3に図柄変動開始信号が送信され、特別図柄表示部3に表示された左図柄10、右図柄11、中図柄12の各特別図柄が変動を開始するようになっている。図柄の変動は、特別図柄表示部3の液晶画面中の左図柄表示部位、右図柄表示部位、中図柄表示部位の各表示部位において、図5に示した15図柄、すなわち「一段」、「二段」、「三段」、「四段」、「五段」、「六段」、「七段」、「八段」、「九段」、「名人」、「銀将」、「金将」、「角行」、「飛車」、「王将」の図柄が上から下へ移動する動画を表示することによって行われる。そして、所定時間後に停止表示となった各特別図柄が特定の組み合わせである場合には、遊技者にとって有利な「大当たり状態」が生起し、大入賞口7がきわめて高い確率で断続的に開成するように構成されている(なお、後述するように、各特別図柄の変動時においては、各特別図柄が一旦、ほぼ停止したように表示される場合もあるが、以下、かかる特別図柄の停止表示を「一旦停止表示」といい、変動から所定時間後の最終的な停止表示を「確定停止表示」ということもある)。また、大入賞口7は「大当たり状態」以外では開成しないようになっており、閉成状態である場合には遊技球が入賞しないようになっている。一方、普通電動役物4は、閉成時においても、開成時に比べて低い確率ではあるが、遊技球が入賞するようになっている。
【0012】
一方、パチンコ機1には、普通図柄の「小当たり」を決定するカウンタであるFRAN、普通図柄の「はずれ図柄」を決定するカウンタであるHZFC、「大当たり」の生起を決定するカウンタであるTRAN、特別図柄表示部3に表示される各特別図柄の内の左図柄10を決定するカウンタであるHZAC、右図柄11を決定するカウンタであるHZBC、中図柄12を決定するカウンタであるHZCC等の各カウンタが内蔵されている。
【0013】
普通図柄の「小当たり」を決定するFRANは、電源投入時から0〜99(100通り)の間を約0.409秒毎に1ずつ加算しながらループカウント(最大値99の次には最小値0に戻る)しており、普通図柄の「はずれ図柄」を決定するHZFCは、電源投入時から0〜4(5通り)の間を約0.020秒毎に1ずつ加算しながらループカウントしている。HZFCのカウンタ値とそのカウンタ値に対応した「普通図柄」との関係を図3に示す。
【0014】
一方、「大当たり」の生起を決定するTRANは、電源投入時から0〜329(330通り)の間を約0.675秒毎に1ずつ加算しながらループカウントしている。また、左図柄10を決定するHZACは、電源投入時から0〜14(15通り)の間を約0.002秒毎に1ずつ加算しながら約0.030秒の周期でループカウントしており、右図柄11を決定するHZBCは、HZACが14から0になるときに0〜14(15通り)の間を約0.030秒毎に1ずつ加算しながら0.460秒の周期でループカウントしており、中図柄12を決定するHZCCは、HZBCが14から0になるときに0〜14(15通り)の間を0.460秒毎に1ずつ加算しながら約6.912秒の周期でループカウントしている。なお、HZAC,HZBC,HZCCのカウンタ値とそのカウンタ値に対応した図柄との関係は図4に示した通りである。
【0015】
なお、パチンコ機1においては、左図柄10、右図柄11、中図柄12として、図5に示した14通りの図柄の内の何れかが表示されるようになっており、左図柄10、右図柄11、中図柄12の全て同一な図柄の組み合わせ、すなわち、「一段,一段,一段」、「二段,二段,二段」、「三段,三段,三段」、「四段,四段,四段」、「五段,五段,五段」、「六段,六段,六段」、「七段,七段,七段」、「八段,八段,八段」、「九段,九段,九段」、「名人,名人,名人」、「銀将,銀将,銀将」、「金将,金将,金将」、「角行,角行,角行」、「飛車,飛車,飛車」、「王将,王将,王将」の15通りの図柄の組み合わせが「大当たり図柄」として設定されている。
【0016】
また、パチンコ機1は、特別図柄表示部3に「三段,三段,三段」、「七段,七段,七段」、「名人,名人,名人」、「王将,王将,王将」の何れかの「大当たり図柄」(以下、「特定図柄」といい、「特定図柄」以外の「大当たり図柄」を「非特定図柄」という)が表示されたことによって「大当たり」が生起した場合(以下、「特定大当たり」といい、「非特定図柄」の表示によって「大当たり」が生起した場合を「非特定大当たり」という)には、「大当たり状態」が終了した後に、「大当たり」の生起確率、および普通図柄の「小当たり」の生起確率が高くなる「高確率状態」が生起するように構成されている(以下、「高確率状態」以外の状態を「低確率状態」という)。
【0017】
以下、実施例1のパチンコ機1の作動内容について説明する。
【0018】
遊技者によって遊技領域2に打ち込まれた遊技球が左ゲート5あるいは右ゲート6を通過することにより、普通図柄表示部9に表示された普通図柄が変動を開始する。一方、遊技球が左ゲートまたは右ゲートを通過した瞬間のFRANの値が、(その回の)普通図柄の当たり判定データとして記憶される。そして、普通図柄の変動開始と同時に、記憶されている判定データが取り出され、普通図柄の当たり判定が行われる。判定データが「11,13,23,31,41,53,61,71,83,97」の場合(10通り)は「小当たり」、その他の場合(90通り)は「はずれ」となる。このように「低確率状態」においては、普通図柄が「小当たり」となる確率は10/100である。
【0019】
当たり判定の結果、「小当たり」と判定されれば、普通図柄表示部9に「7」が表示されるとともに、普通電動役物4が約0.401秒間開成する。また、「はずれ」と判定されれば、そのときのHZFCのカウンタ値に対応した図柄(図3参照)が普通図柄表示部9に表示される。なお、普通図柄の変動中、または普通電動役物4の開成中に遊技球が左ゲート5または右ゲート6を通過したときは、次回以降の普通図柄始動記憶として最高4個まで記憶される。また、低確率状態における普通図柄の変動時間は、約19.996秒である。さらに、普通図柄の変動開始から停止表示に至るまでのタイムチャートは、図6に示した通りである。
【0020】
そして、普通電動役物4に遊技球が入賞した場合には、特別図柄表示部3の左図柄10、右図柄11、中図柄12が変動を開始する(なお、上述したように、普通電動役物4は閉成している場合であっても遊技球が入賞するようになっている)。
【0021】
さらに、遊技球が普通電動役物4に入賞した場合には、その瞬間のTRAN、HZAC、HZBC、HZCCの各カウンタの値が記憶される。なお、特別図柄の変動中、あるいは「大当たり状態」中に遊技球が普通電動役物4に入賞したときは、次回以降の特別図柄始動記憶として最高4個まで記憶する。
【0022】
TRAN、HZAC、HZBC、HZCCの各カウンタの値が記憶された後には、まず、TRANの値が取り出され、大当たり判定が行われる。低確率状態においては、TRANの値が「73」の場合に「大当たり」と判定され、「73」以外の場合には「はずれ」と判定される。
【0023】
「大当たり」と判定された場合には、記憶されているHZCCの値が取り出され、各特別図柄の変動開始から所定時間後に、そのHZCCの値に対応した図柄が、新たな左図柄10、右図柄11、中図柄12として、特別図柄表示部3に表示される。したがって、特別図柄表示部3には、前述の如き左図柄10、右図柄11、中図柄12がすべて同一の「大当たり図柄」が表示される。
【0024】
一方、「はずれ」と判定された場合は、各特別図柄の変動開始から所定時間後に、記憶されているHZAC、HZBC、HZCCの値に対応した図柄(図4参照)が、それぞれ、新たな左図柄10、右図柄11、中図柄12として、特別図柄表示部3に表示される。ただし、記憶されているHZAC、HZBC、HZCCの値が「大当たり図柄」に相当するものである場合には、HZCCのみ記憶された値から1が減算され、その値に対応した図柄が表示される(したがって、たとえば、「はずれ」と判定された場合であって、HZAC=1,HZBC=1,HZCC=1と記憶されている場合には、「左図柄、右図柄、中図柄」=「二段,二段,一段」の「はずれ図柄」が停止表示される)。
【0025】
なお、変動を開始した各特別図柄は、左図柄10、右図柄11、左図柄12の順に停止表示となる。低確率状態においては、変動開始から約5.951秒後に左図柄10が停止表示となり、左図柄10の停止表示から約0.786秒後に右図柄11が停止表示となり、右図柄12の停止表示から約0.786秒後に中図柄12が停止表示となるが、先に停止表示となった左図柄10、右図柄11が同一の図柄の組み合わせ、すなわち「リーチ図柄」である場合には、下記の(1)〜(6)の何れかの「リーチ動作」を実行し、右図柄11の停止表示から中図柄12の停止表示までの時間が延長される。なお、大当たり判定において「はずれ」と判定された場合には、下記(1)〜(6)の「リーチ動作」の内の(1)または(2)の「リーチ動作」を実行し、「大当たり」と判定された場合には、(3)〜(6)の内の何れかの「リーチ動作」を実行する。
【0026】
[リーチ動作(1)]
「リーチ図柄」が表示された時点で、特別図柄表示部3の中図柄表示部位を変動中の図柄を、大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄の6つ前の図柄と差し替えた後、中速変動A(約0.491秒で次の図柄に切り替える)で21図柄分だけ変動させ(したがって、中図柄表示部位には、HZCCの値に対応した図柄が表示されることになる)、しかる後、中速変動B(約0.327秒で次の図柄に切り替える)で11図柄分変動させ、さらに、約3.555秒間に4図柄分変動させて停止させる。なお、最後の4図柄分の図柄変動は、図柄が回転しながら上から下へと流れるかの如き動画を表示することによって行う(以下、「きりもみ変動」という)。
【0027】
[リーチ動作(2)]
「リーチ図柄」が表示された時点で、特別図柄表示部3の中図柄表示部位を変動中の図柄を、大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄の6つ前の図柄と差し替えた後、中速変動Aで7図柄分だけ変動させ、さらに、大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄が中図柄表示部位に表示されるまで変動させる。
【0028】
[リーチ動作(3)]
「リーチ図柄」が表示された時点で、特別図柄表示部3の中図柄表示部位を変動中の図柄を、大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄の6つ前の図柄と差し替えた後、中速変動Aで21図柄分変動させ、しかる後、中速変動Bで11図柄分変動させ、さらに、約4.587秒間に5図柄分変動させて停止させる。なお、最後の5図柄分の図柄変動は、「きりもみ変動」によって行う。
【0029】
[リーチ動作(4)]
「リーチ図柄」が表示された時点で、特別図柄表示部3の中図柄表示部位を変動中の図柄を、左図柄表示部位・右図柄表示部位に表示されている図柄に差し替え、一旦停止表示する(この時点で、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位には、「大当たり図柄」が表示されることになる)。しかる後、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に表示された3つの図柄を、中速変動C(約0.458秒で次の図柄と切り替える)で25図柄変動させた後、さらに、その速度のまま、大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄が表示されるまで変動させる。
【0030】
[リーチ動作(5)]
この「リーチ動作」においては、大当たり判定の時点で記憶されたHZBCの値に対応した図柄が、上下に揺れているかの如き態様で、左図柄表示部位・右図柄表示部位に表示されることによって(以下、コマずれ表示態様という)、「リーチ図柄」が表示されているが、「リーチ図柄」が表示された時点で、中図柄表示部位を変動中の図柄を、左図柄表示部位・右図柄表示部位に表示する図柄の6つ前の図柄と差し替える。しかる後、その中図柄表示部位で変動中の図柄を、中速変動Aで21図柄分変動させ、さらに、中速変動Bで11図柄分変動させた後、約4.587秒間に5図柄分変動させて、一旦、約0.491秒間停止表示する(この時点で、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位には、「大当たり図柄」が表示されることになる)。そして、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に表示された3つの図柄を、中速変動D(約0.245秒で次の図柄に切り替える)で2.269秒間変動させ、それらの変動中の3つの図柄を、大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄に差し替えて停止させる。
【0031】
[リーチ動作(6)]
「リーチ図柄」が表示された時点で、特別図柄表示部の中図柄表示部位を変動中の図柄を、左図柄表示部位・右図柄表示部位に表示されている図柄に差し替え、中速変動Cで25図柄分変動させた後、その速度のまま、大当たり判定の時点で記憶されたHZBCの値に対応した図柄が表示されるまで変動させてから、一旦、約0.491秒間停止表示する(この時点で、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位には、「大当たり図柄」が表示されることになる)。しかる後、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に表示された3つの図柄を、中速変動Dで約2.269秒間変動させた後、大当たり判定の時点で記憶されたHZCCの値に対応した図柄が表示されるまで変動させる。
【0032】
なお、上記の(4)〜(6)の「リーチ動作」における「一旦停止表示」は、最終的に特別図柄を停止表示する「確定停止表示」と異なり、各特別図柄を、完全に停止させず、各図柄表示部位において僅かな上下振動をさせる等の態様で表示する。一方、上記の(5)および(6)の「リーチ動作」においては、一旦「特定図柄」が表示されたにも拘らず図柄の再変動の後に「非特定図柄」が表示されることによって遊技者が不愉快な思いをする、という事態を回避するため、一旦、停止表示された左図柄10、右図柄11、中図柄12の組み合わせが「特定図柄である場合には、再度図柄が変動することなく「大当たり」が生起するようになっている。また、特別図柄の変動開始から停止表示に至るまでのタイムチャートは、図7に示した通りである。
【0033】
そして、「リーチ動作」の後、「大当たり図柄」が表示された場合(「確定停止表示」された場合)には、遊技者にとって有利な「大当たり状態」が生起する。「大当たり状態」が生起すると、所定の電飾ランプが点滅し、効果音が発生して、雰囲気が盛り上げられる。
【0034】
また、「大当たり状態」が生起すると、大入賞口7が、25秒間、あるいは9個の遊技球の入賞を検出するまで開成する。なお、図8に示す如く、大入賞口7の内部には載置部13が設けられており、大入賞口7の開成中に1個の遊技球を載置できるようになっている。大入賞口7の開成中に載置部13に遊技球が載置された場合には、大入賞口7が閉成する際に載置されている遊技球が大入賞口7の後方に流下し、特定領域(図示せず)を通過するようになっており、一旦大入賞口7が閉成してから約2秒後に再度開成する(すなわち、大入賞口7の開成時に遊技球が載置部13に載置されると大入賞口7は断続的に開成動作を繰り返す)。なお、1回の「大当たり状態」においては、大入賞口7は最高16回まで断続的に開成するようになっている。
【0035】
さらに、特別図柄表示部3に「特定図柄」が表示(「確定停止表示」)されて「大当たり」が生起した場合には、「大当たり」終了後に、遊技者にとって有利な「高確率状態」が生起する。なお、「高確率状態」が生起した場合には、所定の電飾ランプが点滅し、かかる事態が周囲に報知される。
【0036】
「高確率状態」においては、普通図柄の当たり判定で、記憶されているFRANの値が、3〜99(97通り)である場合に、普通図柄の「小当たり」が生起する。このため、普通図柄の「小当たり」の生起確率は97/100に増大する。また、これに加えて、大当たり判定で、記憶されているTRANの値が「73,103,137,179,251」の場合に「大当たり」と判定される。このため、「大当たり」の生起確率は5/330に増大する。
【0037】
さらに、「高確率状態」においては、普通図柄の変動時間が短縮されるため、普通電動役物4が頻繁に開成するようになるし、普通電動役物4の開成時間が2.3秒に延長され、遊技球が高い頻度で普通電動役物4に入賞し易くなるので、遊技者は、多くの賞品球を獲得することができ、ほとんど遊技球を消費しない。その上、特別図柄の変動回数が増大するとともに、上述の如く「大当たり」の生起確率が増大するため、きわめて高い確率で「大当たり」が生起することになる。また、「高確率状態」においては、普通図柄の変動時間ばかりでなく、特別図柄の変動時間も短縮される。
【0038】
上記の如く構成された実施例1のパチンコ機は、「大当たり図柄」として「特定図柄」が表示された場合と「非特定図柄」が表示された場合とで、「大当たり状態」終了後における「高確率状態」生起の有無の違いがあるとともに、(4)、(5)、(6)のリーチ動作の如く、図柄変動時において、一旦、「非特定図柄」が表示された場合であっても、図柄の再変動後に「特定図柄」が表示される場合がある。したがって、遊技者は、図柄変動中に特別図柄表示部3にきわめて高い関心を示し、いつまでも興味を持って遊技をし続けることができる。
【0039】
[実施例2]
実施例2のパチンコ機の構成は、実施例1のパチンコ機1とほぼ同一であるが、「リーチ動作」をする場合(すなわち、大当たり判定において「大当たり」と判定された場合、および、大当たり判定において「はずれ」と判定された場合であってHZAC、HZBCの両カウンタに記憶された値が同一である場合)における特別図柄の変動の態様が、実施例1のパチンコ機1と異なっている(なお、実施例2のパチンコ機の外観は実施例1のパチンコ機1と同様である)。
【0040】
実施例2のパチンコ機1は、下記の(1)〜(6)の「図柄変動パターン」の如く、「リーチ動作」をする際の図柄変動中に、特別図柄表示部3の左図柄表示部位および右図柄表示部位に、何れかの「リーチ図柄」(場合によっては「リーチ図柄」以外の図柄)を左図柄表示部位および右図柄表示部位に一旦停止表示した後、その「リーチ図柄」を再度変動させ、所定時間後に、その「リーチ図柄」と同一、あるいは異なる「リーチ図柄」を左図柄表示部位および右図柄表示部位に確定停止表示あるいは一旦停止表示することができるように構成されている(以下、先の「リーチ図柄」の一旦停止表示を「第1段階表示」といい、後の「リーチ図柄」の確定停止表示および一旦停止表示を「第2段階表示」という)。
【0041】
なお、大当たり判定において「大当たり」と判定された場合には、後述する(1)〜(6)の内の何れかの「図柄変動パターン」を実行するが、すなわち、大当たり判定において「はずれ」と判定された場合であってHZAC、HZBCの両カウンタに記憶された値が同一である場合には、(1)、(2)、(4)の内の何れかの「図柄変動パターン」を実行するようになっている。
【0042】
[図柄変動パターン(1)]
各特別図柄の変動開始から2秒後に、「第1段階表示」として、「特定図柄」に含まれる「リーチ図柄」(すなわち、「左図柄,右図柄」=「三段,三段」、「七段,七段」、「名人,名人」、「王将,王将」、以下、「特定リーチ図柄」という)を一旦停止表示する。そして、再度図柄を変動させた後に、「第2段階表示」として、「第1段階表示」の「特定リーチ図柄」と同一、あるいは異なる「特定リーチ図柄」を確定停止表示する。
【0043】
[図柄変動パターン(2)]
各特別図柄の変動開始から2秒後に、「第1段階表示」として、「非特定図柄」に含まれる「リーチ図柄」(すなわち、「左図柄,右図柄」=「三段,三段」、「七段,七段」、「名人,名人」、「王将,王将」以外の「リーチ図柄」、以下、「非特定リーチ図柄」という)を一旦停止表示する。そして、再度図柄を変動させた後に、「第2段階表示」として、「特定リーチ図柄」を確定停止表示する。
【0044】
[図柄変動パターン(3)]
各特別図柄の変動開始から2秒後に、「第1段階表示」として、「非特定リーチ図柄」を一旦停止表示し、再度図柄を変動させた後に、「第2段階表示」として、「非特定リーチ図柄」を一旦停止表示する。しかる後、一旦停止表示になっている左図柄10、右図柄11と同一の図柄を中図柄表示部位に一旦停止表示した後(すなわち、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に「非特定大当たり図柄」を表示した後)、再度全ての特別図柄を変動させて、所定時間後に、「特定図柄」、あるいは「非特定図柄」を確定停止表示する。
【0045】
[図柄変動パターン(4)]
各特別図柄の変動開始から2秒後に、「第1段階表示」として、「リーチ図柄」以外の図柄を一旦停止表示し、再度図柄を変動させた後に、「第2段階表示」として、「特定リーチ図柄」を確定停止表示する。
【0046】
[図柄変動パターン(5)]
各特別図柄の変動開始から2秒後に、「第1段階表示」として、「リーチ図柄」以外の図柄を一旦停止表示し、再度図柄を変動させた後に、「第2段階表示」として、「非特定リーチ図柄」を一旦停止表示する。しかる後、一旦停止表示となっている左図柄10、右図柄11と同一の図柄を中図柄表示部位に一旦停止表示した後(すなわち、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に「非特定大当たり図柄」を表示した後)、再度全ての特別図柄を変動させて、所定時間後に、「特定図柄」、あるいは「非特定図柄」を確定停止表示する。
【0047】
[図柄変動パターン(6)]
各特別図柄の変動開始から2秒後に、「第1段階表示」として、「非特定リーチ図柄」を一旦停止表示し、再度図柄を変動させた後に、「第2段階表示」として、「非特定リーチ図柄」を一旦停止表示する。しかる後、一旦停止表示となっている左図柄10、右図柄11と同一の図柄を中図柄表示部位に一旦停止表示した後(すなわち、左図柄表示部位・右図柄表示部位・中図柄表示部位に「非特定大当たり図柄」を表示した後)、再度全ての特別図柄を変動させて、所定時間後に、「特定図柄」、あるいは「非特定図柄」を確定停止表示する。
【0048】
なお、上記したように、実施例2のパチンコ機1は、一旦、「特定リーチ図柄」が表示されたにも拘らず図柄の再変動の後に「非特定リーチ図柄」が表示されることによって遊技者が不愉快な思いをする、という事態を回避するため、「第1段階表示」において「特定リーチ図柄」が表示された場合には、「第2段階表示」において必ず「特定リーチ図柄」が表示されるように構成されている。同様に、「第2段階表示」において「特定リーチ図柄」が表示されて「大当たり」が生起する場合には、必ず「特定大当たり図柄」が表示されて「特定大当たり」となるようになっている。また、実施例2のパチンコ機1は、「第1段階表示」において「リーチ図柄」が表示されない場合であっても「第2段階表示」において「リーチ図柄」が表示され、場合によっては「大当たり」が生起するように構成されているため、特別図柄の変動中においては、たとえ特別図柄の変動開始から2秒を過ぎた場合であっても、遊技者の特別図柄表示部3への関心がなくなることはない。また、実施例2のパチンコ機1も、実施例1のパチンコ機と同様に、「非特定図柄」が表示された場合であっても、再度の図柄変動の後に「特定図柄」が表示されて「特定大当たり」が生起し得るように構成されている。
【0049】
上記の如く構成された実施例2のパチンコ機1においては、図柄変動時に、変動開始からきわめて短い時間(約2秒)が経過した後に、一旦、「リーチ図柄」が表示され、しかる後、図柄の再変動後に再度「リーチ図柄」が表示される。したがって、遊技者は、図柄の変動開始後、直ちに「リーチ図柄」が表示されることを認識でき、従来のパチンコ機では退屈な時間であった図柄変動中においても、特別図柄表示部3にきわめて高い関心を示し、いつまでも興味を持って遊技をし続けることができる。また、先に「非特定リーチ図柄」が表示された場合であっても、図柄の再変動後に「特定リーチ図柄」が表示されて「特定図柄」が表示される場合があり、遊技内容が新鮮できわめて趣向性が高いので、実施例2のパチンコ機1によれば、遊技者は、パチンコ機1の醍醐味を十分に満喫することができる。
【0050】
上記各実施例においては、本発明を、第1種のパチンコ機に応用した一例について説明したが、本発明のパチンコ機は、その他の形式のパチンコ機に応用することも可能である。また、本発明のパチンコ機の構成は、上記した実施例の態様に何ら限定されるものではなく、各種入賞口の形状および個数、障害釘の配置、普通図柄、特別図柄の表示態様、大入賞口の構造、作動内容、普通電動役物の構造および機能、「リーチ動作」の内容、「図柄変動パターン」の内容(図柄変動開始後「第1段階表示」が行われるまでの時間等)、「大当たり状態」における作動内容、「高確率状態」における作動内容(「大当たり」生起確率、普通図柄の「当たり」生起確率、普通図柄・特別図柄の変動時間、普通電動役物の開成時間等)等を、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更できる。
【0051】
たとえば、遊技球が左右のゲートを通過した場合に普通図柄が変動する構成とせず、遊技球が所定の入賞口に入賞した場合に所定個数の遊技球の払い出しとともに普通図柄が変動を開始する構成とすることも可能である。
【0052】
また、実施例2のパチンコ機は、「第1段階表示」において「リーチ図柄」が表示されているにも拘らず「第2段階表示」で「リーチ図柄」が表示されないケースがきわめて低い確率で起こり得るように構成することも可能である。この場合に、「第1段階表示」において通常時に表示される図柄とは異なる図柄(たとえば、アラビア数字が使用された「7段」等の如き図柄)が左図柄表示部位あるいは右図柄表示部位に表示されたときは「第2段階表示」において「リーチ図柄」が表示され、「第1段階表示」において通常時に表示される図柄(たとえば、「七段」等の如き図柄)が表示されたときは「第2段階表示」において「リーチ図柄」が表示されないように構成することも可能である。このように構成した場合には、遊技者は、「第1段階表示」があった後直ちに「第2段階表示」において「リーチ図柄」が表示されるか否かを認識できるというメリットがある。
【0053】
【発明の効果】
本発明のパチンコ機は、図柄の変動開始後に、第1段階表示として「非特定リーチ図柄」を表示した後、第1段階表示の図柄を再度変動表示させ、第2段階表示として「特定リーチ図柄」を表示する機能を有しているので、先に「非特定リーチ図柄」が表示された場合であっても、図柄の再変動後に「特定リーチ図柄」が表示されて「特定大当たり」が生起する場合があり、遊技内容が新鮮できわめて趣向性が高いので、遊技者は、パチンコ機の醍醐味を十分に満喫することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
パチンコ機の正面を示す説明図である。
【図2】
パチンコ機の遊技領域を拡大して示す説明図である。
【図3】
カウンタ(HZFC)の値と普通図柄との関係を示す説明図である。
【図4】
カウンタ(HZAC,HZBC,HZCC)の値と特別図柄との関係を示す説明図である。
【図5】
特別図柄を示す説明図である。
【図6】
普通図柄の変動開始から停止表示に至るまでのタイムチャートである。
【図7】
特別図柄の変動開始から停止表示に至るまでのタイムチャートである。
【図8】
大入賞口を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・パチンコ機、2・・遊技領域、3・・特別図柄表示部、4・・普通電動役物、5・・左ゲート、6・・右ゲート、7・・大入賞口、8・・電飾ランプ、9・・普通図柄表示部、10・・左図柄、11・・右図柄、12・・中図柄、13・・載置部、14・・発射ハンドル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-12-25 
出願番号 特願平11-209489
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 白樫 泰子
塩崎 進
登録日 2000-10-27 
登録番号 特許第3123549号(P3123549)
権利者 豊丸産業株式会社
発明の名称 パチンコ機  
代理人 石田 喜樹  
代理人 石田 喜樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ