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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  D01F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D01F
審判 全部申し立て 2項進歩性  D01F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  D01F
管理番号 1096355
異議申立番号 異議2001-72409  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-05 
確定日 2004-01-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3141727号「パラアラミドパルプおよびその製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3141727号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 同請求項3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3141727号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成7年6月9日に出願され、平成12年12月22日にその設定登録がなされ、その後、その請求項1〜3に係る発明の特許について、異議申立人イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知が通知され、その指定期間内である平成14年11月1日に特許異議意見書と訂正請求書が提出され、その後、訂正拒絶理由の通知を兼ねた再度の取消理由通知がなされたが、その指定期間内に特許権者からは何らの応答もなかったものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求める訂正の内容は、次の訂正事項a.を含むものである。

訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】カナダ式フリーネスとBET式比表面積との関係が、下記の式(1)

0.000035x2-0.036x+12≦y≦0.000026x2-0.039x+17 (1)

(式中、xおよびyは、それぞれカナダ式フリーネス(ml)およびBET式比表面積(m2/g)を表し、100≦x≦630、2≦y≦12の範囲である。)で表されることを特徴とするパラアラミドパルプ。」
との記載を、
「【請求項1】カナダ式フリーネスとBET式比表面積との関係が、下記の式(1)

0.000035x2-0.036x+12≦y≦0.000026x2-0.039x+17 (1)

(式中、xおよびyは、それぞれカナダ式フリーネス(ml)およびBET式比表面積(m2/g)を表し、367≦x≦630、2≦y≦12の範囲である。但し、(x、y)=(448,4.67)(494,3.06)(448,4.08)(478,4.05)(463,3.23)(448,2.97)の組み合わせを除く)で表されることを特徴とするパラアラミドパルプ。」
に訂正する。

これに対して、当審で通知した平成15年7月23日付けの訂正拒絶理由(再度の取消理由通知中)の概要は、訂正後の請求項1における、x(=カナダ式フリーネス(略称CSF))、y(=BET式比表面積)両値の組み合わせに係る、上記6つの(x、y)の組み合わせを除く旨の訂正は、先願の明細書に記載された事項のみを請求項1に記載した事項から除外するものということはできないから、いわゆる、新規事項の追加の例外として取り扱うことはできず、該訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない、というものである。

上記訂正拒絶理由に対して特許権者からは何らの応答もなく、そして、上記訂正拒絶理由は妥当なものと認められる。
したがって、上記訂正事項a.は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書きの規定に適合しないから、訂正事項a.を含む本件訂正は、全体として認められない。

3.特許異議申立について
(1)本件発明
本件請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】カナダ式フリーネスとBET式比表面積との関係が、下記の式(1)
0.000035x2-0.036x+12≦y≦0.000026x2-0.039x+17(1)
(式中、xおよびyは、それぞれカナダ式フリーネス(ml)およびBET式比表面積(m2/g)を表し、100≦x≦630、2≦y≦12の範囲である。)で表されることを特徴とするパラアラミドパルプ。
【請求項2】重量加重平均繊維長が0.6〜1.2mmの範囲にある請求項1記載のパラアラミドパルプ。
【請求項3】極性アミド系溶媒中に、固有粘度が1.0〜2.5dl/gの範囲にあるパラアラミドを4〜10重量%、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を2〜10重量%含有してなり、光学的異方性を有する低重合度パラアラミドドープを、水系溶媒中で紡糸し、得られるパラアラミド繊維を洗浄後、湿潤状態のまま繊維を切断し、ついで粘状叩解用リファイナーによりフィブリル化することを特徴とする請求項1記載のパラアラミドパルプの製造方法。

(2)特許異議申立理由の概要
異議申立人イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーは、甲第1号証(H.H.Yang著「Kevlar Aramid Fiber」JOHN WILEY & SONS社、1993年発行、第155〜156頁)、甲第2号証(国際公開WO96/27700号パンフレット)、甲第3号証(「1989 Retention and Drainage Short Course」TAPPI PRESS、1989年発行、第27〜28頁)、甲第4号証(特開平4-245908号公報)、甲第5号証(特開平6-41298号公報)、甲第6号証(データシート1)、甲第7号証(表面積対CSFを示す図)、甲第8号証(データシート2)及び甲第9号証(表面積対CSFを示す図)を提示し、
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、若しくは、先願である甲第2号証に記載の発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、
本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、
本件発明1〜2に係る特許を取り消すべき旨主張し、また、

[主張1]本件発明3は、甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、
[主張2]本件発明3は、甲第5号証、若しくは甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、
本件発明3に係る特許を取り消すべき旨主張し、さらに、
[主張3]本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明には記載不備があり、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないものであるから、
本件発明1〜3に係る特許を取り消すべき旨主張している。

(3)取消理由通知の概要
当審で通知した平成15年7月23日付けの取消理由の概要は以下のとおりである。

[理由1]刊行物1(H.H.Yang著「Kevlar Aramid Fiber」JOHN WILEY & SONS社、1993年発行、第155〜156頁(異議申立人イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの提出した甲第1号証))、刊行物2(特開平4-245908号公報(同甲第4号証))、刊行物3(特開平6-41298号公報(同甲第5号証))及び参考資料1(刊行物1(同甲第1号証)の抄訳(同参考資料1))を提示し、本件発明1〜2は、上記刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり
、その特許は取り消されるべきものである。

[理由2]先願:1996.3.1に国際出願されたPCT/EP96/00914号(優先権主張1995年3月3日、オランダ、国際公開第96/27700号パンフレット参照、特願平8-526602号(特表平11-501087号公報参照))・・・異議申立人イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニーの提出した甲第2号証(及び同参考資料2)並びに刊行物4(「Retention and Drainage Short Course」TAPPI PRESS、1989年発行、第27〜28頁(同甲第3号証))を引用し、本件発明1は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された上記先願であるPCT/EP96/00914号(及び、特許法第184条の4の規定による翻訳文である特願平8-526602号)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であると認められ、しかも本件発明1の発明者は上記先願に係る発明の発明者と同一でも、本件出願の時において、その出願人が上記先願に係る出願の出願人と同一でもないので、本件発明1は、特許法第29条の2第2項の規定に違反してなされたものであり、その特許は取り消されるべきものである。

(4)甲各号証(各刊行物)記載の事項
甲第1号証(刊行物1)
甲第1号証は、ケブラーアラミドパルプに関する文献であり、
ア.その第155頁の「5.5.1.2 典型的な性状」には、「テーブル5.10は、異なったパーティクルサイズの3種のケブラーパルプタイプ[6g、31-33]の主要な物性が示されている。」と記載され(第155頁、下から4行〜同3行目)、
イ.第156頁の表「テーブル5.10 ケブラーパルプ[6g、31-33]の典型的な性状」には、マージナンバー1F-302、1F-305および1F-361の3種について、それぞれ、カナダ式フリーネス,mlが280、450及び150と、表面積,m2/gが8.5、7.5及び9.5と、カヤーニ平均長さ,mmの二次モーメント(重量平均)が1.1、1.4及び0.8であることが記載され(第156頁上段)、
ウ.第156頁には、「ケブラーパルプのフィブリル化度合は、カナダ式フリーネス(CSF)の方法により測定される。この方法は合体したパルプサンプルを通して水の体積流れを測定する。ほとんどのケブラーパルプは300-425mlのCSFを持っている。」と記載されている。(第156頁、第10〜13行、参考資料1の抄訳参照、なお、抄訳中の「ケルバー」は「ケブラー」の誤記と認められる。)

甲第5号証(刊行物3)
エ「【請求項1】極性アミド系溶媒中に、固有粘度が1.0〜2.5dl/gであるパラアラミドを4〜10重量%、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を2〜10重量%含有してなり、かつ、光学的異方性を有することを特徴とする低重合度パラアラミドドープ。
【請求項2】請求項1記載の低重合度パラアラミドドープを紡糸して得られるパラアラミド繊維。
【請求項3】請求項2記載のパラアラミド繊維を切断して短繊維とし、該短繊維を高剪断力で機械的にフィブリル化した後乾燥して得られるパラアラミドパルプ。」(請求項1〜3)
オ.「フィブリル化のためには紙製造において使用されている各種のビーター・・・リファイナー等が好適に使用される。好ましいパルプの製造方法は、本発明の低重合度パラアラミドドープを紡糸して得られるパラアラミド繊維を湿潤状態で切断して短繊維とし、該短繊維を高剪断力で機械的にフィブリル化した後、乾燥してパルプを得る方法である。」(段落【0023】)
カ.「(2)比表面積
マイクロメリティクス社製フローソープII2300型を用いて、BET比表面積法により窒素の吸着量から、パラアラミドパルプの比表面積(m2/g)を求めた。」(段落【0026】)
キ.「実施例21〜24
〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の紡糸〕・・・製造したドープを、NMPを20wt%含む水溶液を凝固液として、・・・紡糸テストを行った。・・・紡糸後、水洗して乾燥した単繊維のデニール数と引張り強度を測定して表3に示した。」(段落【0037】)
ク.「実施例25
〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプの製造〕・・・製造したポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の湿潤糸を約30mmの長さに切断し、・・・パルプ化した。得られた・・・湿潤パルプを乾燥してその比表面積を測定したところ約2m2/gであった。」(段落【0039】)
ケ.「実施例35
〔ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)パルプの製造〕・・・製造した繊維をパルプ化した。該繊維を水で膨潤したままの状態で約6mmに切断して、・・・得られた短繊維を、・・・高濃度ディスクリファイナーに10回通してパルプを得た。・・・得られたパルプの比表面積は4m2/gであった。」(段落【0052】)

(5)対比・判断
(5-1)本件発明1〜2について
本件発明1〜2に対して、当審で取消理由(上記「3.(3)取消理由の概要」参照)を通知したところ、特許権者からは何らの応答もない。そして、上記取消理由は妥当なものと認められる。
よって、本件発明1〜2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により、若しくは本件発明1の特許は、同法第29条の2第2項の規定により、取り消されるべきものである。

(5-2)本件発明3について
〈[主張1]について〉
本件発明3(前者)と甲第5号証に記載された発明(後者)との対比・検討
甲第5号証には、上記エの記載より、極性アミド系溶媒中に、固有粘度が1.0〜2.5dl/gであるパラアラミドを4〜10重量%、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を2〜10重量%含有してなり、かつ、光学的異方性を有する低重合度パラアラミドドープを紡糸して得られるパラアラミド繊維を、切断して短繊維とし、該短繊維を高剪断力で機械的にフィブリル化した後乾燥してパラアラミドパルプを得ることが記載され、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)を20wt%含む水溶液を凝固液として紡糸(上記キ)すること、パラアラミド繊維を湿潤状態で切断して短繊維(上記オ)とすること及び高濃度ディスクリファイナーによりパルプ化(上記ケ)することが記載されていると認められる。
そして、後者における「NMPを20wt%含む水溶液を凝固液として紡糸」、「高濃度ディスクリファイナー」は、前者における「水系溶媒中で紡糸」、「粘状叩解用リファイナー」にそれぞれ相当し、両者は、
「極性アミド系溶媒中に、固有粘度が1.0〜2.5dl/gの範囲にあるパラアラミドを4〜10重量%、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を2〜10重量%含有してなり、光学的異方性を有する低重合度パラアラミドドープを、水系溶媒中で紡糸し、得られるパラアラミド繊維を洗浄後、湿潤状態のまま繊維を切断し、ついで粘状叩解用リファイナーによりフィブリル化するパラアラミドパルプの製造方法。」である点で一致するが、
前者においては、製造されるパラアラミドパルプが本件請求項1記載のパラアラミドパルプであるのに対し、後者においては、製造されるパラアラミドパルプが該請求項1記載のものであることを特定していない点において、両者は相違する。
そこでこの相違点について検討すると、甲第5号証には、製造されたパラアラミドパルプの比表面積については、約2m2/g及び4m2/gであること(上記ク、ケ)が記載されているが、カナダ式フリーネスについては何ら示唆するものがないことから、甲第5号証記載の製造方法により製造されたパラアラミドパルプが該請求項1記載のパラアラミドパルプと同一のものであるとはいえない。
したがって、本件発明3は、甲第5号証に記載された発明であると認めることはできない。

〈[主張2]について〉
本件発明3(前者)及び甲第5号証に記載された発明(後者)については、上記[主張1]についてで述べたとおりであり、両者の相違点は、上記[主張1]についてで述べたとおりである。
そこでこの相違点について検討すると、
甲第5号証には、本件請求項1記載のパラアラミドパルプを製造すること、あるいは、該パラアラミドパルプが製造可能であること等について何ら示唆されていない。
一方、甲第1号証には、上記ア〜ウより、本件請求項1記載のパラアラミドパルプに相当するパラアラミドパルプ、すなわち、式(1)を満たすパラアラミドパルプも記載されてはいるが、該パラアラミドパルプを製造するための製造方法、あるいは、該パラアラミドパルプを製造するときの技術的課題のような、パラアラミドパルプの製造方法に関する記載は全くなされておらず、まして甲第5号証の製造方法が適用可能ことを示唆するような記載も何らされていない。
してみると、甲第5号証記載のものに甲第1号証記載の技術を適用する根拠はなく、相違点に係る構成を当業者が容易に想到することができたものとすることはできない。
これに対して、本件発明は、この点により本件特許明細書に記載するような作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明3は、甲第5号証、若しくは甲第1号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

〈[主張3]について〉
異議申立人が主張する、本件特許明細書には記載不備があり、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないとする理由の概要は、次のとおりである。

(a)本件明細書において、本件発明のパラアラミドパルプを特定する要件として式(1)が記載されており、これによると、xがほぼ600で交差して、それより大きいx値ではこの式(1)は成立しない。にもかかわらず、100≦x≦630及び2≦y≦12と規定され、式(1)中においてxが100以上で630以下の値を、yが2以上12以下の値を取り得ることが記載され、xが式(1)が成立しない600を超えてさらに630まで採用できることとなっている。

(b)本件明細書の図1では概ねxが630で交差するように描いてあるが、これは式(1)の範囲を示したものではなく、また、本件特許明細書の表2の実施例における番号5、6及び7は、式(1)の範囲外となっており、図1がどのような式に基づくものか明らかでない。
そこで、これらの理由(a)、(b)について検討する。

(a)について
本件発明において、100≦x≦630及び2≦y≦12と規定したのは、式(1)を満たすためのx及びyの値の範囲を規定したものである。すなわち、100≦x≦630及び2≦y≦12の範囲にあって、式(1)を満たすx及びyが本件発明のx及びyに含まれることを意味し、本件発明の、x及びyがこの範囲にあれば、必ず式(1)を満たすということを意味するものでない。
したがって、x及びyがこの範囲にあっても、式(1)を満たさないx及びyや、あるいは式(1)を満たしても、この範囲を外れたx及びyは、本件発明のx及びyに含まれないことは明らかであり、例えば、xが600を超えて630までというような、上記規定の範囲内ではあるが式(1)が成立しないようなものについては、このようなxが本件発明のxに含まれないことは明らかであるから、100≦x≦630という、xが式(1)を満たさないものを含むとしても、本件発明が不明確であるとはいえない。

(b)について
一般に、特許図面は、その発明の特徴とするところを概念的に図示したものであり、設計図面のように精密に表現されたものでないから、本件明細書の図1に式(1)の特徴が概念的に表現されている以上、xが630で交差するように描いたような不備があるとしても、その不備をもって直ちに、図1には本件発明の特徴とする技術思想である式(1)が開示されていないとはいえない。
また、本件発明の実施例5、6及び7については、これら実施例が式(1)の範囲外であることから、実施例でないもの(例えば、比較例、参考例等)の誤記であることは明らかであり、また、本件発明の技術思想はこれら以外の実施例から充分具体化されていると認められ、このことだけをもって、本件明細書に記載不備があるとはいえない。
そして、実施例及び図1が式(1)に基づくことは明らかであり、図1がどのような式に基づくものか明らかでない、という異議申立人の主張は根拠がない。

したがって、本件特許明細書が特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていないという特許異議申立人の主張は、採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜2は、本件出願前の刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、また、本件発明1は、先願の明細書に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件発明1〜2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである
一方、本件発明3についての特許は、特許異議申立の理由及び証拠によっては取り消すことができない。
また、本件発明3についての特許は、他に取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-11-20 
出願番号 特願平7-143073
審決分類 P 1 651・ 531- ZE (D01F)
P 1 651・ 113- ZE (D01F)
P 1 651・ 121- ZE (D01F)
P 1 651・ 534- ZE (D01F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 野村 康秀
鴨野 研一
登録日 2000-12-22 
登録番号 特許第3141727号(P3141727)
権利者 住友化学工業株式会社
発明の名称 パラアラミドパルプおよびその製造方法  
代理人 橋本 傳一  
代理人 久保山 隆  
代理人 谷 義一  

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