• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41F
管理番号 1096372
異議申立番号 異議2003-70411  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-10 
確定日 2004-04-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3314351号「オフセット印刷機のローラ制御方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3314351号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3314351号の請求項1に係る発明についての出願は、平成9年5月6日に特許出願され、平成14年6月7日にその特許権の設定の登録がなされ、請求項1に係る特許について、岡本英希より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年6月9日に特許異議意見書の提出がなされたものである。

2.特許異議の申立てについての当審の判断
(1)特許異議申立ての概要
特許異議申立人岡本英希は、甲第1号証[特開昭55-57464号公報]及び甲第2号証[実願昭59-102522号(実開昭61-18837号)のマイクロフィルム]を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載の各発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する、あるいは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項あるいは同条第2項の規定に違反してされたものであると主張している。

(2)本件発明の認定
特許第3314351号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。また、本決定では、「発明を特定するための事項」という意味で、「構成」という用語を用いる。
「【請求項1】 版面に湿し水を供給する水着ローラ(5)、水元ローラ(2)及び調量ローラ(3)と、版面にインキを供給する第1インキ着ローラ(6)及びそのライダローラ(7)とを有するオフセット印刷機の湿し水/インキ供給系において、非印刷時に、版面から離間された状態の前記水着ローラ(5)及び第1インキ着ローラ(6)をライダローラ(7)により連結して回転させることを特徴とするローラ制御方法。」

ここで、オフセット印刷技術において、「ライダローラ」とは、主要なインキロールに1点で接するロールを意味すること(ジョン・マクフィー著、山崎雅彦訳、「平版印刷の基礎理論 第1巻 印刷メカニズム」、初版、財団法人印刷朝陽会、平成14年10月10日、P.247)、本件発明の「非印刷時に、版面から離間された状態の前記水着ローラ(5)及び第1インキ着ローラ(6)をライダローラ(7)により連結して回転させる」という構成は、非印刷時以外つまり印刷時には、水着ローラ(5)及び第1インキ着ローラ(6)が、ライダローラ(7)により連結されていないことを意味すること、本件発明の「第1インキ着ローラ(6)及びそのライダローラ(7)とを有する」という構成は、ライダローラ(7)は、第1インキ着ローラ(6)に接することを意味することから、本件発明は、印刷時に、ライダローラが、第1インキ着ローラのみに接する構成(以下、「構成A」という。)を有するものと認めることができる。

(3)引用刊行物の記載事項
甲第1号証及び甲第2号証(以下、「刊行物1及び刊行物2」という。)には、本件発明に関連する事項として、以下のような事項が記載されている(記載中「・・・」は中略を示す)。

[刊行物1:特開昭55-57464号公報]
ア.「本発明の課題は、オフセット印刷機の印刷開始前にインキと湿し液との間の平衡状態を迅速に達成し、印刷中断の間に十分な運転準備状態を保証し、反古紙の発生を最小にすることである。」(第3頁左下欄第15行〜第19行)

イ.「版胴6の回転方向で見て第1の着肉ローラ1は次の着肉ローラ2と中間ローラ7を介して接続されている。着肉ローラ2,3はインキ練りローラ8と接触・・・している。・・・第1の着肉ローラ1には湿し液が浸漬ローラ9から調量ローラ10と着肉ローラ1と協動する湿し練りローラ11とを介して供給される。浸漬ローラ9は湿し液ボツクス13の湿し液12に浸漬される。」(第5頁右下欄第6行〜第17行)

ウ.「着肉ローラ2は間隙33だけ版胴6から離される。・・・版胴6と、図示されたローラ11,1,7,2,8・・・は回転し始める。・・・第3図に示すように支承部材20が旋回させられることによつて着肉ローラ1が中間ローラ7と接触させられる。・・・・・・第1の着肉ローラは版胴6の表面から最大の間隔を有している。この間隔は間隙36によつて示されている。この場合、他の着肉ローラ2から5はその位置を変えていない。・・・次いで・・・第4図に示されているように、着肉ローラ1が版胴に接触させられる。」(第7頁左上欄第11行〜右下欄第19行)

エ.「ローラの独特な配置、すなわち第1の着肉ローラが湿し練りローラ11と中間ローラ3(決定注:「3」は「7」の誤記である。)と接触させられることによつて、第1の着肉ローラ1は主として湿し液12を版板にもたらすが、その他にも僅かなインキをも版板にもたらす。・・・中間ローラはこの段階的なインキと湿し液の引渡し状態が維持されたままに保たれ従つて実験が示すようにインキが申し分なく着けられ、すなわち良好な印刷状態が得られるようにするためだけに役立つ。」(第8頁右上欄第13行〜左下欄第5行)

オ.「第3図は・・・「インキ機構の予湿切換え段」で示す図」、・・・第6図は・・・「継続印刷切換え段」で示す図」(第10頁左下欄第10行〜第16行)

カ.Fig.3には、第1の着肉ローラ1及び次の着肉ローラ2が、版胴6から離されていると共に、中間ローラ7により連結されていることが示されている。

キ.Fig.6には、第1の着肉ローラ1及び次の着肉ローラ2が、版胴6に着けられていると共に、中間ローラ7により連結されていることが示されている。

[刊行物2:実願昭59-102522号(実開昭61-18837号)のマイクロフィルム]
ク.「従来のわたしローラの使用方法の1例を第5図に、他の例を第6図に、それぞれ示した。第5、6図とも、(I)は湿し装置の脱状態を、(II)は湿し装置の着状態を、(III)は湿し装置の洗浄状態を、それぞれ示しており、第5図の場合には、湿し装置の脱、着時にわたしローラ(a)をインキ着ローラ(b)に接触させず、洗浄時のみに、わたしローラ(a)を手動により操作して、インキ着ローラ(b)に接触させるという2ポジションの切換え操作を行い、第6図の場合には、脱、着、洗浄の全ての時期に、わたしローラ(a)を手動により操作して、インキ着ローラ(b)に接触させるようにしている。・・・第5図の湿し装置では、わたしローラ(a)が洗浄時のみに使用され、湿し水の版面への供給がインキ部と分離しているので、水着けローラ(c)に版画線部のインキがからみ、・・・第6図の湿し装置では、わたしローラ(a)が常にインキ着ローラ(b)に接触しており、・・・湿し部へのインキの逆流等を生ずるという欠点があつた。」(明細書第1頁下から第5行〜第2頁下から第2行)

ケ.「第3図(I)乃至(IV)は同湿し装置の各状態を示している。(I)は、湿し脱(版面、給水なし)の状態、・・・これら(I)及び(II)は、印刷機の胴抜状態を示しており、・・・(III)は、湿し着(連続印刷での給水状態)で、印刷機は胴入状態にある。この場合、・・・わたしローラ(4)がインキ着ローラ(2)及び水着ローラ(3)の双方に接触する。・・・また第4図(I)乃至(IV)は、わたしローラ(4)の制御をインキ着ローラ(3)側から行つた他の例である。」(明細書第5頁第1行〜第5頁第11行)

コ.第6図の(I)には、インキ着ローラb及び水着ローラcが、版胴から離されていると共に、渡しローラaにより連結されていることが示されている。

サ.第6図の(II)には、インキ着ローラb及び水着ローラcが、版胴に着けられていると共に、渡しローラaにより連結されていることが示されている。

(4)対比・判断
本件発明と上記刊行物1及び2に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1及び2のいずれにも、本件発明の構成A及び「非印刷時に、版面から離間された状態の前記水着ローラ(5)及び第1インキ着ローラ(6)をライダローラ(7)により連結して回転させる」構成(以下、「構成B」という)を併せて備える点について、記載も示唆もされていない。
因みに、刊行物1に記載された発明は、非印刷時に、版面から離間された状態の第1の着肉ローラ1及び次の着肉ローラ2を中間ローラ7により連結して回転させるものである(上記(3)イ、ウ、オ及びカ参照。)が、印刷時に、中間ローラ7は、第1の着肉ローラ1及び次の着肉ローラ2の両方に連結されているものである(上記(3)エ及びキ参照。)。刊行物2に記載された発明は、非印刷時に、版面から離間された状態の水着ローラc及びインキ着ローラbを渡しローラaにより連結して回転させるものである(上記(3)ク及びコ参照。)が、印刷時に、渡しローラaは、水着ローラc及びインキ着ローラbの両方に連結されているものである(上記(3)ク及びサ参照。)。
また、上記構成A及びBを併せて備える点は、当該技術分野で周知の事項であるともいえない。
してみれば、上記構成A及びBを併せて備える点は、当業者が容易に想起できたものとは認められない。
そして、本件発明は、上記構成A及びBを併せて備えることにより、「バーコード汚れの発生を防止して、印刷品質を安定させ、連続給湿装置の本来的な性能を引き立たせることができる」(特許明細書の段落【0015】)という上記刊行物1乃び2に記載されていない効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、上記刊行物1又は2に記載の各発明と同一といえないばかりでなく、これらから当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

3.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-04-01 
出願番号 特願平9-130561
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B41F)
P 1 651・ 113- Y (B41F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 江成 克己畑井 順一  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 中村 圭伸
津田 俊明
登録日 2002-06-07 
登録番号 特許第3314351号(P3314351)
権利者 株式会社篠原鉄工所
発明の名称 オフセット印刷機のローラ制御方法  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ